第337回 世界が消えていくのに、なぜ、誰も気づかない!


ロボマインド・プロジェクト、第337弾!
こんにちは、ロボマインドの田方です。

おや、君は、誰だい?
えっ、ロボマインド君?
この子、いつも見てくれてるCoinCowArtジャパンさんが作ってくれました!
ありがとうございます!
ロボマインドのイラストや応援メッセージ、待ってます!

さて、今回は、懐かしい、アハ体験です。
今から10年以上前、脳科学者の茂木健一郎さんがテレビで紹介して流行りましたよね。
それでは、さっそく見てみましょう。
この画像を見てください。
どこかが変化しますよ。

はい、分かりましたか?
正解は、これです。(前後の画像を交互に見せる)
案内表示機が消えましたよね。
結構、大きなものが消えたんですけど、意外と、わからなかったですよね。

いやぁ、不思議ですよねぇ。
当時から、いったい、どうして起こるのか不思議でした。
でも、茂木さんも、メカニズムまでは説明してくれなかったです。
「脳って不思議でしょ」で終わりなんですよ。

最近は、脳に電極を埋め込むBMI技術なんかが盛んで、ものすごい勢いで脳が解明されてます。
でも、解明されてるのは、脳のなかでも、機械で観測できる部分だけです。
でも、脳には、もう一つの側面があります。
それは、意識から見る側です。
さっきの、アハ体験も、意識から見る側になります。
脳の中でも、意識の側は、ほっとんど何にもわかってないんですよ。
だから、アハ体験、不思議だなぁで終わりなんですよ。

でも、さっき見ましたけど、駅の案内表示機が消えても気が付かないんですよ。
世界が消えていってるんですよ。
不思議だなぁで済ませるわけにはいかないですよね。

これが今回のテーマです。
世界が消えていくのに、
なぜ、誰も気づかない!
それでは、始めましょう!

眼が一度に捉える範囲って、どれくらいか知ってますか?
じつは、角度にして1度。
手を伸ばして、親指を立てたときの爪ぐらいです。
眼球は、サッケードといって常に高速で動いています。
こんな感じです。

右の白い丸が、一度に眼球が捉える範囲です。
つまり、目が見た世界を、意識が直接見てたとしたら、左みたいに見えるはずなんです。
でも、皆さん、今、そんな風に見えてないでしょ。
右みたいに全体が見えてるでしょ。

これ、どういうことかわかりますか?
これ、僕らは、直接世界を見てないってことです。
左で見えた部分を組み合わせて右のような全体を組み立ててるんです。
そして、意識は組み立てられた右の世界を見てるってことです。

これが、最初に話した脳の二つの側面です。
機械で測定できるのが左です。
機械では測定できないけど、意識が感じてるのが右です。
そして、意識が感じる右の世界は、今の脳科学では、ほとんど解明されていません。

じゃぁ、なぜ、右のように全体が見えるのか。
これは、僕が提唱する意識の仮想世界仮説だと、きれいに説明がつきます。
意識の仮想世界仮説では、人は、目で見た世界を頭の中で仮想世界として構築します。
意識が見るのは、この仮想世界です。
だから、今、皆さんが見てるような全体が見えるんです。

プロジェクト・エデンで使われるマインド・エンジンは、この意識の仮想世界仮説を基に作られています。
これがマインドエンジンです。

マインド・エンジンでは、現実世界をカメラで捉えて、無意識に送ります。
無意識は、その情報を基に現実仮想世界を作ります。
現実仮想世界は、たとえば3DCGで作られます。
机があれば、3Dの机オブジェクトを生成します。
そして、意識は、この現実仮想世界を認識するわけです。

じつは、これだけじゃ、まだ、意識は、世界を見たことにならないんですよ。
第332回で、太郎君の部屋に花子さんが来たことに気づく仕組みを解説しました。
この時使ったのがイベント処理です。
たとえば、PCで、クロームとかのブラウザでサイトを見てたとします。
そのサイトのリンクをクリックすると、リンク先のサイトに切り替わりますよね。
クリックした時発生するのがマウスクリックイベントです。
このイベントというのは、OSに搭載されている仕組みです。
つまり、意識が、「気付く」って言う仕組みを、イベントって仕組みで実現したわけです。
これ、何をしたか分かりますか?
つまり、脳科学で絶対に解明できなかった意識の側の仕組みを、コンピュータで再現したんです。

じゃぁ、今度は逆に、これを脳に当てはめてみましょう。
脳にはデフォルトモードネットワークという状態があります。
これは、車のエンジンでたとえると、赤信号で信号待ちしてるときの状態です。
エンジンを止めるんじゃなくて、アイドリングして、いつでも動ける状態です。
そうすると、青信号になった時、すぐに発進できますよね。
発進って行動を決めるのが意識です。
意識が、デフォルトモードネットワーク状態にあるとします。
そして、意識に信号が変わったって通知する仕組みがあるわけです。
通知するのは無意識です。
そして、意識が無意識から通知を受けたこと、これが「気付く」です。
こう考えると、PCと脳の仕組みってよく似てるでしょ。

つまり、PCで言うとOSが無意識です。
マウスがクリックされてないか、OSがずっと見張ってるんです。
そして、その上で動くプログラムが意識です。
OSからイベントが来ると、意識プログラムは、イベントに応じた処理を実行するわけです。

たしかに、脳とPCの仕組みは似てますよね。
ただし、脳とPCじゃ、少し違うところがあります。
こっからが本題です。

無意識には、もう一つ重要な役割があります。
それは、現実仮想世界を作ることです。
意識は、現実世界を直接見てなかったですよね。
意識が見てるのは、無意識が作った仮想世界です。
でも、意識は、その仮想世界を、現実と信じきってます。
皆さんも、今、目の前に見えてるこの世界を、実際に存在すると信じて、疑ってないですよね。
現実仮想世界を作ること、これが無意識の一番重要な役割なんです。

ということはですよ。
無意識は、現実世界で何かの変化を検知すると、まずやるべきは、現実仮想世界に反映させることです。
花子さんが現れたら、花子さんを現実仮想世界に作り出すんです。
イベントを発生させるのは、その後です。
先にイベントを出したら、意識は、まだ花子さんができてない世界を見てしまいます。
そしたら、どうなると思います?
空中から花子さんが少しずつ実体化する様子を見てしまうんです。
そんなん、生まれてこの方、見たことないでしょ。
つまり、無意識は、必ず、世界を作ってから、イベントを発生させるんです。
だから、「あっ」て気づいたときには、花子さんは完全にできてるんです。
だから、「あっ、花子さんが来た」って思うんです。

これが大前提の話です。
こっからが、アハ体験の話です。

人の行動には、意識してする行動と、無意識でする行動の二つがあります。
無意識の行動って、自動でできる単純な行動です。
僕は、よく自転車の運転を例にあげます。
初めて自転車に乗った時って、ハンドルをしっかり握って、体でバランスを取りながら、足でペダルを漕ぐとかって頭で考えながら運転しましたよね。
でも、頭で考えてるうちは、うまく運転できないんですよ。
それが、うまく運転できるようになったときは、もう、頭で考えてないんですよ。
体が勝手に反応して、バランスを取りながらペダルを漕いでるんですよ。
この時が、無意識の行動です。

じゃぁ、意識の役割は何でしょう?
それは、自動で決められない行動の決定です。
考えないと決められないことです。
自転車だと、右に曲がるか左に曲がるかは、自動で決められません。
どっちに曲がるかは、その時の目的地によって決まります。
そういったことを決めるのが意識です。
これが役割分担です。
自動でできることは、無意識がやって、考えないとできないことは意識がやります。

その自動処理の一つが、現実仮想世界を作りだすってことです。
ただ、現実仮想世界を作ると言っても、テレビ画面みたいに1秒間に何十回って画面全体を書き換えてるわけじゃないです。
効率よく処理するために、動いたところだけ、書き換えます。
だから、部屋に花子が入ってきたことを検出したら、部屋はそのままにしておいて、花子さんだけ生成するわけです。

ここまでは分かりますよね。
じゃぁ、無意識は、なんで、部屋はそのままで、花子さんだけ書き加えたらいいって判断できるんでしょう?
それは、経験から学習したんです。
現実世界は三次元だ。
三次元空間の中に物体が配置されるぞ。
部屋は動かなくて、人は動くぞ。
そんなことを経験から学んだんでしょう。
だから、花子さんだけ書き換えたらいいってわかるんです。

さて、問題はこっからです。
無意識は経験から自動で現実世界の変化を検出するんですよね。
じゃぁ、もし、現実世界が、今まで経験したことがない変化をしたら、どうなるでしょう?
それも、気付かないくらいのゆっくりゆっくり変化したらです。

はい、そうです。
これが、アハ体験の動画です。
駅の案内表示機が薄くなるって、今まで、経験したことないでしょ。
それも、ちょとずつ薄くなって、最後は消えるんです。
無意識は気づきようがないんですよ。
じゃぁ、無意識が気づかないとどうなります?

現実仮想世界に反映させようがないですよね。
つまり、現実仮想世界は変化しないんです。
だから、何も変化してないって、意識は思うんです。
これがアハ体験です。
あんなに大きなものが消えても、気づかないわけです。
だって、本当に、意識が見る世界は変化してないんですから。
わかりましたか?

でも、アハ体験って、答えを知ってから、もう一回、見ると、ちゃんと消えていくのが分かりますよね。
あれは、なんででしょう?

これも、イベント処理で考えるとわかります。
今までは、現実世界が変化すると、無意識が自動でイベントを送ってきてました。
でも、無意識が気づかないと、意識にイベントも送れません。
そこで、意識の出番です。
変化する場所を特定したら、そこが変化したら知らせるようにイベントを設定するんです。

眼球が一度に捉える範囲って、ほんのわずかでしたよね。
だから、眼球はまんべんなく動き回らないといけないんです。
でも、ここが変化するって特定したら、無意識は、そこだけを集中して観察することができます。
そうしたら、案内表示機が少しずつ薄くなるのに気づきます。
そしたら、現実仮想世界の案内表示機も少しずつ薄くして、意識に知らせます。
意識は、それを受けて、「あっ、少しずつ、薄くなってる!」って気づくんです。

わかりましたか?
これが注目するってことです。

ただ、漫然と受け身で見てたら、世界がいくら変化しても気づかないんですよ。
常識にとらわれていたら、大事な物を見過ごしてしまうんですよ。

受動的に、送られてくる情報だけを見てたんじゃ、自分が知ってる世界しか見えません。
同じ見るでも、注目するって見方は違います。
世界に対して能動的に働きかける見方です。
自分から世界を見に行くわけです。
そうしたら、初めて、本当の世界が見えてくるんです。

もし、あなたが、毎日退屈だ、何も起こらないって思ってるとしたら、それは、ただ、漫然と受け身で世界を見てるだけだからかもしれません。
気が付いたら、大事な物や人が消えてるかもしれませんよ。
今なら、まだ、間に合うかもしれません。
注意して世界を見てください。
変わらないと思ってた大事な物や人が、もしかしたら、消えかけてるかもしれませんよ。

はい、今回の動画が面白かったらチャンネル登録、高評価お願いしますね。
それから、動画で紹介した意識の仮想世界仮説に関しては、こちらの本で詳しく解説してますので、よかったら読んでください。
それじゃぁ、次回も、おっ楽しみに!