ロボマインド・プロジェクト、第342弾!
こんにちは、ロボマインドの田方です。
今回は、クラファン用のロボマインド解説動画、第3回、最終回です。
さて、最終回のテーマは、自由意志と愛です。
重いテーマが続くので、息抜きに、アニメ『エデン』を、チラ見せしますね。
はい、ここまでです。
プロジェクト・エデンの意外な背景が明らかになってきましたねぇ。
本編公開まで、もう少しお待ちください。
それでは、始めましょう!
さて、次は、自由意志について考えます。
まずは、意識レベルのおさらいです。
カエルは、現実世界を直接認識します。
だから、カエルレベルの意識は、外界に反応して行動するだけです。
犬レベルの意識になると、頭の中に仮想世界を作って、仮想世界を介して現実世界を認識します。
だから、認識したオブジェクトのプロパティを変更することができます。
これで、「オテ」とか「マテ」を覚えることができるようになりました。
人レベルの意識は、現実仮想世界に加えて、想像仮想世界を持ちます。
これによって、オブジェクト自体を想像したり、動かしたりして、自由に考えることができるようになりました。
考えるだけでなく、考えたことを行動に移すこともできます。
これが自由意志です。
こう考えると、自由意志って有るか無いかって話じゃなくて、連続する自由度の幅で捉えた方がよさそうです。
進化の過程で、意識、仮想世界、想像仮想世界といった仕組みを獲得することで、徐々に自由度が増えてきたんです。
僕らは、普通に、考えたり、悩んだりしますよね。
これ、当たり前と思ってるでしょ。
でも、これ、当たり前じゃないんですよ。
僕らの心は、巧妙に組み立てられた精密機械みたいなもんなんです。
あまりに自然に動くから、裏にある複雑な仕組みに気づかないだけです。
そのことに気づくとしたら、故障した時だけです。
たとえば脳の障害です。
最初に話した盲視も、その一つです。
盲視患者のおかげで、意識が感じてる世界以外に、もう一つ、無意識が感じてる世界があるって気づきました。
無意識は現実世界を直接認識しています。
一方、意識が感じてる世界は、現実を写し取った仮想世界です。
つまり、世界って外と内の二重構造になってるんです。
さて、僕らは、手首を曲げようと頭で考えたり、考えた通り手首を曲げたりできますよね。
これって、当たり前と思ってますよね。
でも、これができるには、巧妙な仕組みが必要なんです。
だって、頭で考えるのは内側の世界だけです。
でも、実際に曲げるとなると、内側の世界と外側の世界を同期させないといけないんです。
じゃぁ、どうやって、脳で考えた通りに手首を同期させて動かすか。
それは、こうやって手首を曲げてるとき、関節から、曲がってるってフィードバック信号が脳に送られてるんですよ。
その仕組みで同期がとれるんです。
「ふぅ~ん、それだけ」って思うかもしれません。
でも、実は、これ、ものすごく重要な感覚なんですよ。
脳の障害で、このフィードバックを一切受け取れなくなった女性がいます。
その女性、どうなったと思います。
ベッドから起き上がれなくなったんです。
いや、起き上がれないだけじゃなくて、指一本動かすことができなくなったんです。
なんでか分かりますか?
ここに、内側の世界と外側の世界をつなぐ巧妙な仕組みがあるんです。
意識が今見てる手首、これ、本当は、仮想世界のオブジェクトです。
でも、意識は、現実の手首と思って、曲がれって指令を出します。
脳はその指令を受け取って、現実の手首を曲げる筋肉を収縮させます。
でも、脳は、本当にその筋肉で正しいのかどうかわかりません。
だから、常に、確認しながら指令を出します。
その確認が、関節からのフィードバック信号です。
実際に曲がってるってフィードバック信号を受け取ることで、間違いないって確認できます。
これで、手首を曲げることができます。
もし、このとき、フィードバック信号が返ってこなかったらどうなります?
脳は、「あ、間違った」って思って、筋肉への指令を止めますよね。
これが、フィードバックを感じれなくなった女性に起こったことなんです。
指一本動かせなくなったんです。
つまり、体を動かすっていうのは、関節からのフィードバックがあって、初めて、体を動かせるんです。
動かすって情報が一巡して戻ってきて、初めて、意識は、「動かした」って感じるんです。
ようやく準備が整いました。
何の準備かというと、冒頭で説明したリベットの実験です。
被験者は、いつでも自由に指を動かせます。
でも、動かそうと思った瞬間より、350ミリ秒も前に出る脳波がありました。
これをそのまま解釈すると、意識は、動けって思わされてたってことになります。
つまり、自由意志は存在しないってことです。
それでは、謎解きを始めますよ。
さて、今、意識は、指を動かそうって思いました。
自由意志が存在するとしたら、そう思った脳波は、これになるはずです。
そして、指を動かそうと思ったとき、同時にタイマーを見ます。
その時の時刻がここです。
問題は、この差、350ミリ秒です。
さて、ここで思い出してください。
世界は二重構造になっていましたよね。
意識が見るのは内側の仮想世界です。
そして、外には現実世界があるわけです。
それから、内側の世界と外側の世界とは、同期してましたよね。
同期する仕組みがフィードバックです。
体を動かす場合なら、関節からのフィードバックを受けて、初めて、意識は動かしたと感じるんでしたよね。
実は、この仕組み、これは体を動かす場合に限らないんです。
どういうことかと言うと、目で見る世界も、同じ仕組みとなってるんです。
意識が見る内側の世界と、現実の世界とが、フィードバックで同期がとられる仕組みになってるんですよ。
意識が見る仮想世界は、無意識が作っています。
盲視の話で説明しましたけど、見たものを「何の経路」で分析して、そのオブジェクトを仮想世界に生成します。
何の経路って、たとえばVI野だと、縦線とか横線を分析します。
それから、TE野だと、顔や手といった複雑な形を分析します。
何の経路って、形だけじゃなくて、動きも分析するんです。
たとえば、MT野は、滑らかな動きを作り出します。
MT野が損傷した女性がいます。
その人は、街に出ると、自動車がパッパッパッ近づいてくるように感じるそうです。
僕らは、自動車の動きが滑らかに見えますよね。
それは、MT野が滑らかな動きを作り出してるからなんです。
つまり、無意識が作りだす仮想世界って、完璧に現実世界と同じってわけじゃないんです。
だいたい同じってぐらいなんです。
全く同じにするなんて、脳の処理能力から無理なんです。
このタイマー、滑らかに回転してるように感じますよね。
これも、MT野が、回転するタイマーを作り出してるからです。
意識が、ぼぉ~っと見る限りは、なんか回ってるなぁってことさえわかればいいんです。
これが内側の世界です。
さて、指を動かそうと思ったとき、同時にタイマーを見ようとします。
それがこの位置です。
でも、その瞬間のタイマーは、回ってるだけのタイマーです。
そこから、正確なタイマーを作り出さないといけません。
そうして、準備が整ったのがここです。
このとき、無意識からフィードバック通知が来るわけです。
この時が、意識が「見た」って感じた瞬間です。
分かりましたか?
見ようと思っただけじゃ、まだ、タイマーを見たと思ってないんですよ。
見ようと思ってから、見る準備が整うまで0.35秒かかります。
この間は、意識は時間を感じてないんです。
盲点の話をしましたよね。
無意識は、意識に矛盾のない世界を提供するために、世界の穴を埋めてましたよね。
世界の穴を埋めて意識をだますことぐらい、無意識にとったら簡単なことです。
意識が見ようと思ってから、準備ができるまでの、350ミリ秒を、一瞬の出来事だって思わすことなんか、無意識にとったら朝飯前なんですよ。
意識は一瞬と思ってますけど、外の世界で観測したら、350ミリ秒もかかってたんです。
これが、リベットの実験のトリックです。
350ミリ秒の謎は、無意識が作りだしてたんです。
全ての原因は、内の世界と外の世界が全く同じだと意識に思わためです。
そんな無茶な要求を実現するために、無意識は、今と言うこの一瞬を犠牲にしたんです。
350ミリ秒を犠牲にして、内と外の世界を一致させたるんです。
ねぇ、心が精密機械みたいに複雑だって、分かるでしょ。
さて、アニメ『エデン』に話を戻します。
テーマは、AIは人間の心を持てるかですよね。
そして、心の最終目標が愛でしたよね。
最後は、愛について考えます。
まずは、簡単な例から考えます。
AIアバターの太郎君は、花子ちゃんが大好きです。
今、太郎君は、野菜炒めを食べようとしています。
でも、ピーマンが嫌いなので、ピーマンを除けて食べようとします。
そのとき、思い出しました。
花子ちゃんは、好き嫌いする子が嫌いだって。
ピーマン除けて食べてるの見たら、花子ちゃんに嫌われる。
そう思って、我慢してピーマンを食べました。
好きな女の子に嫌われたくない。
まずは、こんな簡単なとこから始めることにしました。
ところが、これが、とんでもなく難しいんですよ。
どこが難しいかって、まず、悩むってとこです。
お腹が空いてて、おいしそうな食事が出されたら、特に、何も考えずに食べますよね。
これは、無意識で自動でできる行動です。
さて、食べようと思ったら、ピーマンを発見しました。
「おっ」って、思うわけです。
「食べたくない」って感情を意識が感じるわけです。
このとき、何が起こったかわかりますか?
無意識で行ってた行動から、自分の意志で、行動を選択するモードに移ったんですよ。
つまり、自由意志で行動選択できるようになったわけです。
ここで、重要なことをいいます。
実は、意識が感じる感情や感覚って、自由意志のためにあるんです。
どういうことかというと、たとえば、熱い鍋に触って、無意識で思わず手を引っ込めるときを思い出してください。
このとき、熱いと感じてなかったですよね。
熱いと感じるのは、手を引っ込めた後です。
そして、熱いと感じてから、意識は、その後の行動を決めることができます。
何が言いたいかって言うと、もし、最初から行動が決まってるなら、わざわざ熱いと感じる必要はないんです。
だから、無意識が手を引っ込めたときには、熱さを感じてないんです。
じゃぁ、なんで、意識は熱いと感じるかです。
それは、行動を選択できる意識に対して、行動の指針を示すためです。
「もう一回、鍋に触ることもできますよ。ただし、熱くて危険ですよ」
って、意識に警告するためです。
これが、感覚や感情の役目です。
さて、今の場合、太郎君は「食べたくない」って感じたわけです。
ということは、この段階で、意識は「食べる」も「食べない」も、行動を選択できるわけです。
ただし、最低限の行動指針として「食べたくない」って感情を作り出したんです。
まずは、これをマインド・エンジンで、どうやって再現するかです。
今、AIアバター太郎のマインド・エンジンがピーマンを認識しました。
太郎の認識したピーマンオブジェクトのプロパティには、「まずい」って設定されてるわけです。
意識プログラムは、この「まずい」プロパティを読み取って、「食べたくない」って感じるわけです。
これで、「食べたくない」がプログラムで実現できました。
ただ、これだけでは悩みになりません。
悩みになるには、もう一つ、相反する選択肢が必要です。
それは、「食べないといけない」です。
「~しないといけない」ってルールです。
ルールはスクリプト・プログラムで実現できるんでしたよね。
さっき、じゃんけんのルールのスクリプトを紹介しました。
スクリプトは、世界で起こる出来事を記述できます。
つまり、「花子ちゃんは、好き嫌いする子が嫌い」って情報も、スクリプトで書けます。
ただ、これは、じゃんけんのルールとちがって、ちょっと複雑です。
じゃんけんのルールは、自分が、そのとおりに行動するだけです。
でも、「花子ちゃんは、こういう人が嫌い」ってスクリプトは、自分の行動が書いてるわけじゃありません。
ここで、原点に立ち返ります。
今、決めようとしてるのは、ピーマンを食べるか、食べないかって行動です。
つまり、花子ちゃんの情報から、自分の行動決定に落とし込む必要があります。
プログラミングの手法の一つにエージェント・プログラムってのがあります。
エージェントっていうのは代理人って意味で、人間の代わりとなるプログラムのことです。
そこで、スクリプトに出てくる人間を、エージェント・プログラムにやらせるわけです。
まず、太郎エージェントと花子エージェントを作ります。
そして、「好き嫌いをする人」を太郎エージェントにやらせます。
その上で、「花子ちゃんは、好き嫌いをする子が嫌い」ってスクリプトを実行します。
すると、「花子エージェントは、太郎エージェントが嫌い」って結果が返ってきました。
ピーマンを食べないと、太郎君は花子ちゃんに嫌われるわけです。
つまり、ピーマンを食べないと、どうなるかって自分の行動指針が示されたわけです。
二つの行動指針が出ました。
一つは、嫌いだからピーマンを食べたくないです。
もう一つは、花子ちゃんに嫌われたくないからピーマンを食べるです。
そして、この二つを比較するわけです。
これが悩むってことです。
そして、悩んだ結果、どちらかの行動を決めるわけです。
ただ、これで終わりじゃありません。
食べると決めて、勇気を出して、ピーマンを口元に持ってきます。
ピーマンが間近に来ると、やっぱり嫌だって感じますよね。
はい、今、嫌だって感じましたよね。
意識が感じるっていうのは、自由意志の発動を意味します。
ここで、また、食べるか食べないか悩むんです。
もう一回、行動を選びなおすんです。
こうやって、何度も何度も悩みながら、少しずつ、ピーマンを食べるんです。
ただ、前回よりは、少し楽になります。
こうやって、人は、悩みながら少しずつ成長するんです。
こんなこと、動物にはできません。
精密機械のような心の仕組みがあって、初めてできるんです。
さて、今のテーマは愛でしたよね。
花子ちゃんに気に入られようと努力してピーマンを食べるのは立派ですけど、愛とは言えないですよね。
それじゃぁ、愛って、どう定義したらいいんでしょう?
これはかなり難しい問題ですけど、一つの例として、自分のことより相手のことを思うってのはどうでしょう?
『エデン』を思い出してください。
もこみは、100m走で、じんに負けたくないって思っていました。
そして、決勝戦でじんに、あと少しで勝てるところまできました。
ところが、最後に、じんを助けて、じんを勝たせました。
なぜでしょう?
それは、じんの思いを知ってるからです。
現実の世界では、走ることもできない。
でも、エデンでは思いっきり走れます。
運動会でヒーローになれます。
その思いを知ったもこみは、決勝戦でじんを勝たせたんです。
自分のことより、相手の幸せを思っての行動です。
これって、愛がないと出来ないですよね。
この時起こっているのは、さっきの悩みとは違うんと思うんですよ。
悩みっていうのは、Aする場合とBする場合って選択肢があって、どうすれば、最終的に自分が一番得するかで決めてるわけです。
でも、もこみは、どうすれば自分が得するかって視点で決めてないですよね。
ここで思い出すのが、ジル・ボルト・テイラーです。
ジル・ボルト・テイラーは、脳神経科学者で、自身が脳卒中になりました。
ジルの話は、TEDでも語られて、最も再生されたTEDトークの一つになっています。
ジルは、左脳が脳卒中になって、右脳の世界を体験しました。
脳卒中になったとき、徐々に、自分の体の境界がわからなくなってきたそうです。
壁に手をついたとき、どこまでが自分の手で、どこからが壁かわからなくなりました。
自分の体を構成する粒子が崩壊して、自分の体が、膨張するのを感じました。
そして、やがて、世界と一体となった感覚を感じました。
そこは、自分と他人、自分と物を区別するって感覚がない世界です。
そして、その時、この上ない幸福感も感じたそうです。
これが、右脳が感じる感覚です。
そして、これは、生まれる前、感じてた感覚だって思い出したそうです。
母親の羊水の中に浮かんでたときの感覚です。
全てが完璧な世界です。
そこから、この現実世界に生れ落ちました。
すると、左脳が少しずつ、世界を作り上げていきます。
まず、世界から自分を切り出します。
自分だけでなく、他の人や物など、あらゆるものを切り分けます。
切り分けることで、区別して認識できるようになりました。
すると、二つを比較できるようになりました。
自分と相手はどっちが上かとか。
そんなことを考える世界です。
それが左脳の感じる世界です。
理論的な思考ができる世界です。
右脳で考えたとき、自分も相手も区別がありませんでした。
これは、自分の存在が消えているといえるかもしれません。
相手の幸せが、自分のことのように感じられる世界です。
自然と、相手のことを思って行動できる状態です。
もしかしたら、それが愛なのかもしれません。
さて、これをAIで実現するとすれば、どうなるでしょう。
たとえば、行動決定するとき、自分の重みづけのパラメータを0にします。
そうすると、自分が消えて、100%相手の感情だけで行動を決定することができますよね。
そうすれば、相手の幸せだけを考えて行動できるでしょう。
それができたら、愛をもったプログラムと言えるんじゃないでしょうか。
それじゃぁ、パラメータは、どうやって0にするんでしょう?
意識が自分の意志で書き換えることはできないはずです。
そんなことすれば、自由意志がなくなります。
自由意志で自由意志をなくすなんて矛盾します。
おそらく、特別なプログラムがあるんでしょう。
生まれる前から組み込まれてるプログラムです。
そして、特別な状況で、そのパラメータの書き換えが発動するんです。
たぶん、人間の場合、それを実現するのは、脳内ホルモンでしょう。
特別な人や、特別な状況で、ドーパミンとか、オキシトシンが分泌されて、深い愛情を感じたり、普通じゃ取れない行動を取ったりするんでしょう。
好きな人、愛しい人に対して、自分のパラメータを0にして、相手の幸せを我がことのように感じる仕組み。
それが愛なんでしょう。
もこみは、じんを特別な存在だと感じたんでしょう。
愛しいと感じたんでしょう。
そう感じたとき、動き出すプログラムがあるんです。
自分のパラメータを0にするプログラムです。
そのプログラムが起動すると、相手の思いを自分のことのように感じます。
相手の苦しみを自分の苦しみとして感じます。
相手の幸せが、自分の幸せとして感じます。
これが愛のプログラムなんでしょうか?
さて、どうでしょう?
こんなAIアバターがいたら、もう、心をもってると言ってもいいんじゃないでしょうか?
(342回のエンディング)
はい、今回の動画が面白かったら、チャンネル登録、高評価お願いしますね。
それから、よかったら、こちらの本も読んでください。
クラウド・ファンディングも、楽しみにしていてください。
それじゃぁ、次回も、おっ楽しみに!