ロボマインド・プロジェクト、第349弾!
こんにちは、ロボマインドの田方です。
さて、前回から紹介してるのがこの本、橘玲の『バカと無知』です。
言ってはいけない人間の本性を、脳科学や認知科学の実験から解き明かすって本です。
前回は、能力が低い人、つまりバカがテーマでした。
橘玲は、「バカの問題は、自分がバカであることに気づいてないことだ」って言います。
もちろん、ちゃんとした科学的な根拠も示してます。
その一番の基本は、人の脳は、上方比較を損失、下方比較を報酬とするって原理です。
つまり、能力が高い人と自分を比較すると、劣等感を感じます。
これが損失です。
能力が低い人と自分を比較すると、優越感を感じます。
これが報酬です。
この大原則で、人間の不可解な行動がうまく説明できるんです。
今回も、この原則を使って、人間の本性が暴かれて行きます。
たとえば、「平等の概念は教育によって後から獲得するものか、それとも生まれつきもっているのか」とか。
それから、「子供は本当に純真なのか」といったことを、いろんな実験を例に挙げて解き明かしていきます。
そして、その中心にあって、問題を起こす根源にあるのが自尊心です。
これが今回のテーマです。
やっかいな自尊心
それでは、始めましょう!
さて、まず出てくるのが、平等とか公平って概念です。
人は平等であるべきって思いますよね。
でも、それって、教育によって学習したものだと思いますよね。
でも、じつは、そうじゃないようなんです。
まだ、話すことができない幼児でも、公平って概念は持ってるみたいなんです。
でも、そんなこと、どうやって確認するんでしょう。
それは、見つめてる時間で判断します。
たとえば、1歳7か月の子に、こんな場面を見せます。
おもちゃで遊んでる二人の子供が、大人から、「お片付けしなさい」って言われて、二人とも、お片付けします。
その後、大人は、二人に、平等にご褒美をあげるか、一人だけにあげます。
すると、幼児は、一人だけご褒美をもらった場面の方を長く見続けたそうです。
これはどういうことかというと、平等にご褒美がもらえると予想してたのに、一人しかもらえなかったので、そっちを長く見続けたってことです。
今度は、一人がズルをして片付けなくて、もう一人の子が一人で全部片づけました。
その後、大人は、二人に平等にご褒美をあげました。
すると、今度の方が、さっきより長く見続けたそうです。
どういうことかというと、今回は、さっきより、より不公平が増したわけです。
幼児は、そのことを見抜いたわけです。
人間は、2歳になる前、まだ、言葉もちゃんと話せない段階から、公平とか平等って概念を持ってるんです。
つまり、公平とか平等って概念は、教育によって獲得したものじゃなくて、生まれながらにもってる概念といえるんです。
これは、人間だけでなくてチンパンジーでも持っているそうです。
「平等であるべき」って、遺伝子に深く刻まれた、持って生まれた本能と言えるんです。
さて、面白くなるのは、こっからです。
人が、生まれ持ったえげつない本性が、少しずつ、暴かれて行きます。
今度は、同じ保育園に通う3歳~5歳の子を対象にします。
二人ペアにして、積み木を片付けるごとにステッカーをあげます。
ここで、同じように片づけたのに、一人にはステッカー2枚、もう一人にはステッカー4枚あげたとします。
すると、損をした子は、「ずるい」って、抗議します。
でも、得した方は、特に何も気にしてないようなんです。
しかも、抗議されて、ステッカーを譲った子は、10人に一人もいなかったそうです。
ここからわかるのは、人は、生まれながらに不公平に敏感だけど、それを強く意識するのは、自分が損をした場合だけのようです。
得した場合は、「そんなものだ」と思って受け入れるようなんです。
実験は、まだ続きます。
今度は、5歳~10歳の子を対象にした実験です。
見ず知らずの子とペアになります。
そして、二人におもちゃの引換券を配ります。
このとき、「どちらも1枚ずつもらえる」と「自分が2枚で、相手が3枚もらえる」を選択できます。
1枚より2枚もらえる方が嬉しいですよね。
でも、多くの子供が、1枚しかもらえない1対1の配分を選んだんです。
つまり、自分より相手が多くもらえるぐらいなら、たとえ少なくなっても、自分と相手が同じとなる方を選ぶんです。
次は、「二人とも2枚ずつもらえる」と「自分は1枚で、相手は0枚」です。
さすがに、これは二人とも2枚ずつもらえる方を選択しますよね。
でも、そう選択したのは、年長の子だけだったそうです。
5歳児と6歳児は、自分が1枚で相手は0枚を選択したんです。
つまり、幼い場合は、対等になることすら我慢できないんです。
何が何でも、相手に勝ちたいわけです。
たしかに、ちっちゃい子って、ちょっと負けたらすぐに泣きますよね。
それほど、負けたくないんですよ。
その傾向が幼いほど現れるってことは、負けたくないって気持ちは、より本能に近いってことなんでしょう。
これが人間の本性ってわけです。
さて、こっから本題の自尊心の話です。
今までの話で、人は、生まれつき、どちらが上か下かをものすごく気にするってことが分かりましたよね。
そして、それは上下非対称です。
つまり、上にいる側は、上にいることをそれほど気にかけてないですけど、下にいる側は、ものすごく気にします。
下になると、「不公平だ」「平等になるべき」って思うわけです。
差別するなってことです。
社会では、多数派のことをマジョリティと言います。
少数派はマイノリティです。
一般に、マジョリティが強くて、マイノリティが弱くて、社会は、マジョリティとマイノリティに分断されます。
そして、それぞれの集団は、地位による階層があります。
ここから、具体的な例を挙げて説明します。
この図を見てください。
アメリカ社会は、マジョリティの白人とマイノリティの黒人に分断されています。
それぞれ、地位が高い方が自尊心が高くて、地位が低い方が自尊心が低くなります。
ここで、それぞれの集団に対して、肯定的な意見と否定的な意見を伝えます。
たとえば、白人に対する肯定的な意見としては、「世界最強の国家を作り上げた」とかで、否定的な意見は「いまだに黒人を差別している」とかです。
黒人に対して肯定的な意見は、「音楽やスポーツで華々しい成果を上げた」で、否定的な意見は、「白人に比べて犯罪率が際立っている」です。
そして、こういった意見にたいして、どう感じたかを調べました。
すると、白人はスゴイって意見に対しては、自尊心の高い白人より自尊心の低い白人の方が、より強く熱狂して受け入れました。
同様に、白人はダメだって意見に対しても、自尊心が低い方が、猛反発しました。
なぜ、こうなるんでしょう?
これは、自尊心の高い人は、集団に依存しなくても自尊心を保たれてるので、属してる集団を褒められたりけなされたりしても、あまり気にしないわけです。
それに対して自尊心の低い人は、他では自尊心を持てないので、自分の属する集団に依存するわけです。
だから、属する集団を褒められたりけなされたりすると、より敏感に反応するわけです。
トランプ大統領の支持基盤である白人の低所得者層が、白人至上主義なのも、これで説明できます。
興味深いのは、この現象が、マイノリティになると逆転することです。
つまり、地位が高くて、自尊心の高い黒人ほど、「黒人はスゴイ」って意見に熱狂して、「黒人は犯罪率が高い」とか言われると、猛反発します。
逆に、自尊心の低い黒人は、「黒人の犯罪率が高い」などと言われても、「当然のことだ」「仕方ないこと」として受け入れて、あまり反発しないんです。
マジョリティとマイノリティでは、こんな風に、自尊心が高いか低いかで反応が逆転するんです。
これは、日本にも当てはまります。
日本では人種差別はあまりありませんが、その代わり、男女差別は先進国で最悪です。
女性の大臣がほとんどいないのを見れば、分かりますよね。
図で表すと、こうなります。
それでは、この図を読み解いていきます。
マジョリティが男性社会です。
男性社会で地位が高く、自尊心の高い者って、どんな人でしょう。
橘玲は、それは高収入のモテ男だって言います。
そして、マジョリティで自尊心が高いと、その集団に依存しなくなるので、男っぽさを強調しなくなります。
たとえば、イクメンとなって積極的に子育てしたりします。
じゃぁ、逆に、男性社会で地位が低く、自尊心の低い者って、どういう人でしょう。
橘玲は、それは非モテ男だと言います。
マジョリティで自尊心が低いと、集団への依存度が高くなるので、男性社会の地位を脅かす存在に過剰に反応します。
たとえば、フェミニストを過剰に攻撃したりします。
図で表すと、こんな風に、自尊心が低いほど、集団に対する依存度が高くなります。
次は、マイノリティの女性社会を見てみます。
マイノリティは、マジョリティとは反対に、自尊心が低い者ほど、集団への依存度が小さくなりましたよね。
つまり、性の役割分担に抵抗がなくなって、男女差別に甘んじたり、むしろ、積極的に受け入れようとします。
たとえば、会社で出世して自分の地位をあげようとするより、専業主婦になりたいって思います。
または、「貧しくても家庭があれば幸せ」とかって考えになりがちです。
そして、地位が高く、自尊心の高い女性は、男女差別は絶対に許さないって思うわけです。
つまり、フェミニストです。
そして、自尊心の高いフェミニストと、一番激しく対立するのが、自尊心の低い非モテ男となるわけです。
フェミニンと非モテ男が対立して炎上してるのって、ツイッターでおなじみの光景ですよね。
こうやって、マジョリティとマイノリティの対立を自尊心に分解して読み解くと、今、社会で起こってる出来事が、分かりやすく整理されるんです。
さて、今まで見てきたように、社会的な生き物である人は、常に地位を確認して、なんとか自分の地位をあげようと思っています。
そして、最終的に、今の自分の地位を受け入れるわけです。
こうやって階級社会が出来上がるわけです。
自分の階級を受け入れるとは、上の階級に服従するということです。
これは、決して悪いことじゃなくて、そうしないと、しょっちゅう階級闘争の争いが起こって、安定した社会が成り立ちません。
強いものに服従するってのは、チンパンジーとか、群れで行動する動物がすべてもつ本能です。
この服従するって本能が、どのくらい強力かを測定した実験があります。
これは、ミルグラム実験とかアイヒマン実験と呼ばれる有名な実験です。
どういう実験かというと、被験者は、「記憶と学習に関する科学研究」のためといってイエール大学に集められます。
ここでのポイントはイエール大学です。
イエール大学は、アカデミズムの権威ということです。
最も上の階級に属するわけです。
被験者は記憶研究のために、研究者の指示に従って生徒に電気ショックを与えるように言われます。
ただ、生徒も電気ショックも偽物で、生徒役の子は、電気ショックが与えられたように演技してるだけです。
これは、研究者からの指示で、被験者が、どこまでの電気ショックを与えるかを見る実験なんです。
すると、なんと65%もの人が、致死レベルといわれる450ボルトの電気ショックを与えたそうです。
被験者は、どれも、普通のアメリカ人ですよ。
ここで、橘玲が指摘するのは、共感力に違いがなかったってことです。
共感力の低い男性の被験者は、こういってました。
「生徒が本当に死んでも私は平気だったでしょう。わたしは仕事でやってただけですから」って。
ここまで言うのは、この男はサイコパスい近いですよね。
まぁ、これは分かります。
問題は、共感力の高い女性です。
その女性は、不良少年を愛情によって正しい道に導こうとするボランティアを熱心にやってる大卒の主婦です。
彼女は、実験中「ごめんなさい、もうできません」と自分に言い続けながら、450ボルトの電気ショックを3回も与えたんです。
共感力というのは、弱いものの気持ちを感じ取って、相手を助けようとする力です。
相手の気持ちを感じ取るって、人間しか持ち得ない美しい心です。
そんな美しい心をもってしても、権力者から指示されると服従してしまうんです。
共感するより、服従する力の方が、よっぽど強いってことです。
これが人間の本性なんです。
最後は、人間の持つきれいな心の話で終わらせようと思ったんですけど、残念ながら、そうはならなかったです。
相手に共感する人間らしい美しい心より、サルでも持つ強いものに服従するって本能の方がはるかに強いってことです。
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それから、よかったらこちらの本も読んでください。
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それでは、次回も、おっ楽しみに!