ロボマインド・プロジェクト、第35弾
こんにちは、ロボマインドの田方です。
腕時計の電池がきれましてね、あぁ、電池交換せなあかんなぁ。
そや、時計屋行こ。
あっ、でも、今日、休みやったなぁ。
それやったら、アマゾンやったら、明日には届くよなぁ。
そんなこと、考えたとしましょ。
頭の中で考えるでしょ。
これ、言葉を使わずに考えること、できますか?
たとえば、映像だけで考えるとか?
止まった腕時計の写真を人に見せたとしましょ。
それ見て、「あっ、電池切れてるやん」って言ってくれますかねぇ?
普通、言わないですよね。
「ええ時計やん。ん、どしたん? 買うてほしん?」
とかなりますやん。
言葉を使わなかったら、「電池が切れた腕時計」の意味を表現するだけでも苦労しますわ。
今考えてるのは、それだけやないです。
電池交換せなあかんとか、
時計屋は、今日、休みやとか、アマゾンやったら明日届くとか。
こんなん、どうやって表現しましょ。
何が言いたいかというと、言葉ってすごいなぁってことです。
言葉って、人としゃべるだけやのうて、考えるのにも使うわけです。
言葉がないと、考えることもできないんです。
ロボマインド・プロジェクトで作ろうとしてるのは、人間の心や意識です。
人間と同じように考えることができないといけません。
今回は、人間が、頭の中で考えるのと同じことを、どうやってプログラムで実現するかについて考えていきましょ。
人間が頭の中で考える仕組みは、第22回「人工意識が生まれました」で説明しましたけど、想像仮想世界ってのを使います。
意識は、目の前の、この現実世界を仮想世界を通して認識してます。
意識は、この想像仮想世界に自由にオブジェクトを配置したり、動かしたりして、それを認識できるわけです。
じゃぁ、映像でなくて、この、想像仮想世界を使えば、考えることができそうです。
でも、ここで、また、問題がでてきました。
そこに、止まった腕時計を置いたとしましょ。
今度は写真じゃなくて、時計オブジェクトです。
今度は、写真じゃなくてオブジェクトです。
オブジェクトってのは、プログラム用語で、プロパティとメソッドがありましたよね。
詳しくは、第23回「人工知能が思い出を語り始めた」をご覧ください。
プロパティは状態を表すもので、腕時計だと、今の時刻とか、大きさとかです。
メソッドは、動作を表すもので、時間を合わせるとかです。
ここで、腕時計が止まってる状態を表すなら、まず、動いてるか、止まってるかを表すプロパティを用意します。
そして、そのプロパティで時計が止まってると示せば、止まってると表現できますよね。
でも、まだ、問題があります。
時計のプロパティには、時刻や大きさや重さとか、いろんなデータがありますよね。
そのうちの、何が言いたいのかわかるようにしないといけません。
そこで、なんか目印をつけときましょ。
「注目して欲しいのは、この、時計が止まってるってことですよ」ってことです。
ようやく、止まってる腕時計って表現できました。
でも、これで表現できたのは、腕時計が止まってるってことだけです。
「電池交換せなあかんなぁ」って、どうしましょ。
まず、「電池が切れた」ていう状態は、問題、課題ですよねぇ。
問題は、解決しないといけません。
これを表現しないといけないんです。
ます、「~しないといけない」って、どう扱いましょ。
「~しないといけない」って、行動の原動力となります。
行動の原動力となるのは、「心理パターン」です。
「心理パターン」は、第12回「コンピュータに心が生まれました」で説明してるので、そちらもご覧ください。
「~しないといけない」って心理パターンは、「~」を探します。
この場合、「電池が切れた」って問題の解決の方法を探索するわけです。
探索問題ですねぇ。
これは、AIが得意な処理です。
迷路とか、パズルを解くのと同じです。
記号操作ってやつです。
AI史のなかでは、記号主義にあたります。
詳しくは、第28回、29回「コネクショニズム派 vs. 記号主義」をご覧ください。
さて、問題を、どうやって解決しましょう?
たとえば、問題と解決策を書いた辞書を作っておきます。
「時計の電池が切れた」の解決策として、「時計屋さんで電池を交換する」とか、「自分で電池を交換する」とかって解決策を入れておくわけです。
そうすると、「電池が切れた」で検索すると、解決策が見つかるわけです。
こんな風にして、考える、思考するってことが実現できそうですよね。
こういった処理を、一つ一つ、意識で認識しながら、次の処理を考えることが思考です。
その過程を記号に落とし込んだのが、言葉ってわけです。
もう少し、丁寧に見ていきましょう。
人は、車を運転しながらおしゃべりとかできます。
でも、おしゃべりしながら本を読むとかできません。
車の運転は、無意識でできることです。
おしゃべりは、意識がすることです。
本を読むことも、意識がすることです。
脳は、心臓を動かしたり、息をしたり、いろんなタスクを同時にしています。
マルチタスクです。
これらは、無意識でやってます。
無意識で出来ることの一つが自動車の運転です。
つまり、無意識は、マルチタスクのようです。
おしゃべりや本を読むことは、言葉の処理です。
言葉の処理は意識が行います。
おしゃべりしながら、本を読むことができなということは、意識は一つのタスクしかできないようです。
つまり、意識はシングルタスクです。
意識は、一つのことにしか注意を向けれないとも言えます。
このことを、志向性といったりもします。
さっき、止まってる腕時計を表現しましたよね。
腕時計のオブジェクトの止まってるプロパティに目印をつけて表現しました。
この目印が、意識の注意といえそうです。
腕時計が何時を指してるかとか、重さがどのくらいかとかじゃなくて、止まってるってことに注目してくれってことです。
脳は、いろんな処理を同時にできるのに、意識は同時に一つのことしか注目できません。
なんか、意識って、ものすごくムダな気がしますね。
でも、そうじゃないんです。
たとえば、時計が止まってるってことに注目してるってことは、
時計の重さとか、大きさとか、時計のいろんな要素の中の「止まってる」ってことを取り出しているってことです。
つまり、多数の中から一つを選択してるわけです。
もし、この選択をしなかったらどうなるでしょう。
大きさに注目して、この時計は小さいなぁ。腕にはまるかなぁとか考えたりします。
重さに注目すると、この時計は、ちょっと重いなぁ。疲れるんちゃうかなぁとか考えたりします。
考えが止まらなくなります。
「あんた、さっきから、何、ぶつぶつ言ってんの?」って言われますわ。
「あっ、しまった。
今は、電池交換の話やった」
ってなりますよね。
思いつくことを、延々と考えるなら、たぶん、無意識でもできそうです。
でも、それをやってしまうと、無限に考えることが出てきてしまいます。
無意識で出来ることは、自動車の運転とか、心臓を動かしたりとか、息をしたりとかです。
やることが一つに決まってることです。
悩むことがない処理です。
車の運転でも、前の車との距離を一定に保つとか、車線からずれないようにコントロールするとか、やるべきことが決まってることは自動でできます。
今の自動車ですら、できてることです。
無意識で出来ないのは、右に曲がるか、左に曲がるかを決めることです。
二つの選択肢がある場合、どっちに行けばいいのかは無意識では判断できません。
それを判断するのは意識です。
目的地から考えて、どっちに曲がるのが正解かを決めるのが意識です。
だんだん、わかってきましたねぇ。
無意識でできることと、出来ないことの違い。
意識がなぜ、必要なのか。
選択とか、関係ありそうですよね。
どうも、このことと、言葉とは関係があるんでしょうか?
なぜ、意識は言葉を生み出す必要があったんでしょうか?
このことについては、次回、考えていきます。
それから、紹介した参考動画は、関連動画として説明欄に書いてありますので、そちらから見てくださいね。
それでは、次回も、お楽しみに!