第359回 スピリチュアルズ 「わたし」の謎4 〜共感 愛が戦争を生む


ロボマインド・プロジェクト、第359弾!
こんにちは、ロボマインドの田方です。

今回も、橘玲の『スピリチュアルズ -「わたし」の謎』の続きです。
今回のテーマは、共感です。
じつは、前回の当初のテーマが共感でした。
共感の反対の特性としてサイコパスを軽く紹介するつもりが、サイコパスのエピソードを語ってたら終わってしまいました。
僕は、偉人の面白エピソードとか好きで、あちこちで集めたエピソードをサイコパスで読み解いたら、予想以上にはまってしまって、つい、語りすぎてしまいました。

さて、今回こそ、共感です。
共感って、他人を思いやる気持ちですよね。
もっと言えば、愛です。
そして、共感力が極端に低い人がサイコパスです。
愛のある人の方がいいですよね。
冷徹なサイコパスは嫌ですよね。
ところが、この本では、その真逆のことを主張するんです。
これが、今回のテーマです。
共感
愛が戦争を生む
それでは、始めましょう!

共感力に似たものにメンタライジング力というものがあります。
メンタライジングといのは、ちょっと聞きなれない言葉かもしれませんけど、「心の理論」とも言われます。
これは、他人の信念を理解する能力のことです。
他人の信念を理解するテストとして有名なのが、「サリーとアン課題」です。
それは、こんなテストです。

これはサリーです。
これはアンです。
サリーはカゴをもっています。
アンは箱を持っています。

サリーはビー玉を持っています。
サリーはビー玉を自分のカゴに入れました。

サリーは外に散歩に出かけました。

アンはサリーのビー玉をカゴから取り出すと、自分の箱に入れました。

サリーが帰ってきました。
サリーは、自分のビー玉で遊びたいと思いました。
さて、サリーがビー玉を探すのは、どこでしょう?

簡単ですよね。
答えは、カゴです。

みなさん、正解、しましたよね。
正解したということは、他人の信念を理解することができるってことです。
つまり、メンタライジング力があるということです。

でも、2〜3歳ぐらいの子供は間違うそうなんです。
このテストに合格するのは、4〜5歳ぐらいになってからだそうです。
それから、自閉症の人も、このテストを間違えるそうです。

自閉症は、最近は自閉スペクトラム症といって、程度が弱い場合はアスペルガー症候群と呼びます。

このメンタライジング力を縦軸に、共感力を横軸にすると4つに分けられます。
これで、サイコパスからアスペルガー症候群までを整理できるんです。

①は、メンタライジング力も共感力も高い人で、ここが、コミュニケーション能力が高い人です。
その対極にある③は、メンタライジング力も共感力も低い人で、これは、コミュニケーション能力が低いとなります。
そして、この究極が自閉症です。
②は、メンタライジング力が高いけど、共感力が低い人です。
これがサイコパスです。
その対極の④は、共感力は高いけど、メンタライジング力が低い人で、これがアスペルガーとなります。

それでは、この図を読み解いていきます。
アスペルガーの人は、他人の感情を理解できないと言いますけど、これは正確じゃありません。
メンタライジング力が低いですけど、共感力はあります。
たとえば、自閉症で社会的に成功してる人として、女性の動物学者のテンプル・グラディンがいます。
グラディンは、食肉プラントなどの家畜の管理システムの設計を手掛けています。
グラディンは、動物の気持ちが分かると言います。
これは、共感力があるからです。

その他、他人が悲しんでるとか、他人の大雑把な感情は分かるそうです。
でも、皮肉とか、嫉妬とといった複雑な感情は理解できないそうです。
こういった複雑な感情を理解するには、メンタライジング力が必要です。

メンタライジング力というのは、アンとサリーの話だと、サリーの視点で世界を理解する能力のことです。
つまり、実際はアンがビー玉をカゴから箱に移しても、それをサリーが見てないなら、サリーはビー玉がカゴに入ってると理解できる能力です。

人は、自由に想像できますよね。
想像するっていうのは、ああして、こうしてって、一種のシミュレーションを行うことです。
シミュレーションするには、たとえば、まず、自分や相手を思い浮かべます。
そして、相手がこうして、自分がこうしてって想像するわけです。

想像なので、自分や相手の立場に立つこともできます。
たとえば、アンの視点から見た世界とか、サリーの視点から見た世界とか、自由に視点を切り替えることができます。
これは、言い換えれば、複数の世界を認識できるってところです。

人は、進化の過程で、相手の視点で考える能力を獲得したと言えます。
この能力のおかげで、人は、さらに高度な心理能力を得ることができました。
それは、嘘をつくという能力です。

自閉症の人は、メンタライジング力がありません。
これは、相手の視点で考えられないということです。
自閉症の人が認識できるのは、現実世界、ただ一つです。
それは、真実の世界とも言えます。
つまり、真実とは異なる別の世界を想像することが出来ないんです。
真実とは違う世界って、嘘の世界ともいえますよね。
だから、嘘をつくことも出来ないんです。

グラディンは、自分が作った動物管理システムが、なぜか、時々故障することに気づきました。
良く調べてみると、故障するのは、ある男が働いているときだと分かりました。
そこで、その男を問い詰めてみると、犯人はその男でした。
よく聞いてみると、その男は、同業者でした。
グラディンのシステムが優秀で、その男のシステムが売れなくなってたそうです。
それで、逆恨みして犯行に及んでたわけです。

グラディンは、その男の気持ちが全く理解できないといいます。
だって、いいシステムが売れて、良くないシステムが売れないのは当たり前のことですから。
いいシステムを壊しても何も解決しません。
これが、現実世界しか認識できないということです。

でも、僕らは、その男の気持ちもわかりますよね。
その男にしたら、自分のシステムが売れなくなった原因はグラディンにあるわけです。
そのグラディンが困るようなことが起こったら、自分の気持ちが晴れるわけです。
褒められたことじゃないですけど、理解はできます。
これが理解できるのは、相手の視点で物を考えられるからです。
これがメンタライジング力を持ってるということです。

メンタライジングを持つことで、こんなことしたら相手がどう思うかってことを想像できるようになるんです。
その能力を持つことで、嫉妬したり、嘘をついたりできるようになるんです。
こういえば、相手はこう思うに違いないって想像する能力があるから、嘘を付けるんです。
相手がどう思うか想像できないと、嘘も付けないんです。

これで、自閉症の人は、複雑な感情を理解できないってことが分かりましたよね。
自分が見てる世界と別の世界を他人が見てるとは、想像もつかないんです。
だから、嘘の意味もわからないんです。

アスペルガーの人は、メンタライジング力は低くても、共感能力はあります。
共感とは、相手と同じ感情を感じることです。
共感とメンタライジングとは違います。

感情は、行動を駆り立てます。
たとえば、恐怖の感情は、逃げたいって行動を駆り立てます。
重要なのは、感情は理屈じゃないってことです。
無意識から湧き起こって、自然と体が反応してしまうものです。
悲しいと涙がでるのは、理屈じゃなくて、体の反応です。

そして、共感は、相手の感情を、自分のことのように感じることです。
だから、相手が悲しんでいれば、自分も同じように悲しいわけです。
共感したとき、実際に悲しんだり、苦しんだりするんです。
これは、理屈じゃありません。
自然と、相手と同じ気持ちになって、体が震えるんです。

一方、メンタライジングは理屈です。
だから、相手の視点で世界を考えることです。
自閉症の人は、このメンタライジング力がありません。
こんなことをすれば、相手はどう思うかってことを想像できないんです。

だから、自分のシステムが売れたことで、古いシステムが売れなくなって、古いシステムを作っていた人は、嫌な感情を感じるとかを想像できません。
相手の立場にたった細かい気遣いができません。
だから、「あなたの能力が低いからこうなったんじゃないですか?」とかって、はっきり言ってしまいます。
これじゃぁ、人間関係がうまくいかないですよね。

次は、サイコパスについて考えてみます。
サイコパスは、メンタライジング力が高いので、相手の視点で考えれます。
相手が考えてることを高精度に想像できるんです。
だから、相手が、自分のことを疑ってるなって気付いたら、すぐに別の視点で説明したりできるんですよ。
この切り替えが早いから、聞いてる方は、ころっと騙されるんですよ。
サイコパスは頭の回転が早いとか、口がうまいとか、嘘がうまいって言いますけど、それって、視点を次々に切り替えてるってことなんですよ。
これが、メンタライジングが高いってことです。
ただ、その一方、共感力が極端に低いです。

共感力があると、相手の感情を感じます。
感情というのは、無意識から沸きあがって、体を反応するものですよね。
高いつり橋の上に立つと、恐怖で足がすくんだり、悲しいと、目から涙がこぼれたりとかです。
湧き上がる感情は意識でコントロールできません。
意識がコントロールできる部分は、理屈とか理論的な思考の部分です。

ここを分けて考えないといけないんです。
メンタライジング力というのは、理屈とか理論の思考の部分です。
意識でコントロールできる部分です。
共感っていうのは、意識でコントロールできない部分です。
自然と、体が反応してしまう部分です。

サイコパスは、相手の視点で考えることができますけど、それは、相手の感情を感じるのとは別なんです。

さて、改めてこの図を見てください。

橘玲は、共感力とメンタライジング力でサイコパスとアスペルガーをきれいに整理しました。
これ、ほんと、上手く整理できてます。
ほんと、頭がいいですよね。

ただ、ちょっと抵抗は感じました。
何に抵抗を感じたかというと、「アスペ」と「サイコ」って呼び方です。
「アスペ」って言い方、本人は嫌がりますよねぇ。
ただ、頭のいい橘玲は、そのぐらいのことは気付いてます。
ちゃんと注釈に「この言葉には侮蔑的なニュアンスがあることはわかっている」って書いてます。
ただ、「他に適当な言葉を思いつかなかったので、将来、適切な命名がなされたらそれに従う」って書いてます。
視点の切り替えが速いです。
でも、わかっても、そう呼ぶってことは、僕が感じる抵抗は感じてないんでしょう。
共感力を持たないって、こういうことです。
これがサイコパスです。

サイコパスを自認してる橘玲は、今度は、共感力の問題点を指摘します。
共感が問題だって、あまり聞いたことないですよね。
でも、橘玲の話は、なかなか説得力がありますよ。

たとえば、女性は共感力が高いです。
そのため、自分を犠牲にして相手に尽くす困難な人生を歩む人がいます。
たとえば、DV男から離れられないとか、ホストクラブで大きな借金を作るとかです。
なるほど、それはありそうですよね。

それから、共感は、相手の感情を自分ごとのように感じます。
これは、一種の愛情といえます。
ただ、愛情は全ての人に公平に向けられるというより、身近な人に向けられます。
ここが問題なんです。

そのことを確かめた実験があります。
そこで使われたのがトロッコ問題です。

線路を走ってたトロッコが止まらなくなりました。
このままだと、前方の5人が轢き殺されてしまいます。
トロッコの進路を切り替えれば、5人は助かりますけど、その代わり、別の線路にいる一人が死んでしまいます。
あなたは、線路の切り替え機のそばにいます。
さて、あなたは、切り替え機のスイッチを切り替えるでしょうか?
これが有名なトロッコ問題です。

この思考実験に、オランダの心理学者が、ちょっとした工夫を加えました。
5人に名前を付けたんです。
一つのグループは「ペイター」といったオランダ人のグループ。
もう一つは、アフメドといったアラブ人のグループ。
もう一つは、ヘルムートというドイツ人のグループです。
被験者は、オランダ人です。
さて、被験者は、名前を付けたことで、自分たち、オランダ人を助けるようになったかってことです。
実験によると、ほとんど差は出なかったそうです。
現代のオランダ人は、人種や国籍で差別することはないということです。
リベラルな考えが浸透してるわけです。

さて、面白くなってくるのはこっからです。
次に、被験者にオキシトシンを嗅がせました。
オキシトシンは、愛と絆のホルモンと呼ばれているもので、ハグしたりスキンシップをすると分泌されます。

さて、その結果、どうなったでしょう?
すると、自国のオランダ人を救おうとする割合が劇的に増えたんです。

つまり、オキシトシンによって愛情が活性化されると、身内との絆を強く感じて仲間を助けようとしたわけです。
外国人や人種差別などせず冷静に対処してた人が、愛情が高まると、外国人を犠牲にして仲間を助けようって行動が変わったんです。

よく、「愛が地球を救う」って言いますよね。
愛があれば平和になるって、みんな信じ切っています。
ところが、それは真逆だったんです。
この実験で、その常識が見事に覆されました。

愛があるから、外国人は殺してもかまわないって思うんです。
愛があるから戦争になるんです。

共感力を抑えて、冷静に対処したほうが戦争がなくなって世の中は平和になるんです。
つまり、サイコパスが増えたら世界は平和になるんです。

どうです?
反論のしようがありませんよね。
さすが、サイコパスです。
見事に、納得させられてしまいました。

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