言語学ってね、100年以上、何も進歩してないんですよ。
なぜか、わかりますか?
それはね、言葉の表面的なことしか見てないからです。
意識は、なぜ、言語を生み出したのか?
これがわかると、言語の本質が見えてくるんですよ。
全てが繋がるんです。
ロボマインド・プロジェクト、第36弾
こんにちは、ロボマインドの田方です。
前回は、腕時計の電池が切れて、時計屋さんで交換してもらうか、アマゾンで電池買うかって話でしたよね。
あっ、いや、話の中身じゃなくて、考えるってどういうことかって話です。
その一例が、腕時計の話ってわけです。
考えるとき、言葉で考えます。
言葉がないと、考えることもできません。
考えるとか、思考とか、これは意識のする仕事です。
無意識で出来る事は、自動で出来ることです。
車の運転とかも無意識で出来ます。
でも、右に曲がるか、左に曲がるか、無意識で判断できない場合があります。
そんなときが、意識の出番です。
意識がすることは、複数の選択肢があった場合、どれにするかの選択です。
ここにに書いておきます。
(意識の特徴 1.選択)
それから、もう一つありました。
それは、同時に一つの事しか注目できないということです。
注意とか、志向性とも言います。
(2.注意(志向性))
ここまでが、前回のお話でした。
さて、このことを念頭に置いて、考えるとか、思考について、もう少し深く考えていきます。
考える必要がある場合って、複雑な状況におかれている場合です。
複雑な状況って、どういうことでしょう?
生物の環境で考えてみましょう。
生物は、地球で生きています。
生きている環境は、みな同じです。
じゃぁ、何が違うのでしょう?
それは、環境でなくて、生物が認識する世界が違うんです。
つまり、外の現実の世界じゃなくて、内側で認識する世界が違うわけなんです。
たとえば、アメンボで考えてみましょ。
食べ物を探して、移動して、食べ物が見つかれば食べます。
敵がいたら逃げます。
これがアメンボの世界です。
単純ですよねぇ。
世界にあるものは、食べれるか、食べれないか。
今の状況は、危険か安全か。
これしかありません。
行動するのに、悩むことはなにもないです。
ところが、人間の場合、どうでしょう。
腕時計一つとっても、いろんな要素がありましたよね。
大きさとか、重さとか、値段はいくらかとか、動いてるのか、止まってるのかとか。
考えられることがいくらでもあります。
これが人間が認識してる世界です。
考えるべきことが多すぎるわけです。
アメンボなら、腕時計は食べれない、危険はないで終わりです。
それだけです。
行動するのに悩む必要がないわけです。
これなら、自動で行動を決定できます。
無意識でできることです。
人間は、仮想世界を創ることで、世界を正確に認識できるようになりました。
頭の中で、自由に考えることもできるようになりました。
目の前に腕時計があるとします。
考えるとは、こういう事です。
頭の中の仮想世界に、目の前の腕時計のオブジェクトを生成します。
腕時計には、重さとか、大きさとか、形といった状態が管理されてます。
その中で、たとえば、傷がついてるって気づいたとしましょ。
傷がつくとは、悪いことです。
良い悪いは、心理パターンです。
心理パターンについては、第13回「好かれるAI、嫌われるAI」で解説してますので、良かったら、そちら参考に見ておいてください。
心理パターンっていうのは、次の行動や、考えのきっかけとなります。
悪いことが起こった場合なら、その原因を解明しようとします。
たとえば、こんな感じです。
「あっ、こんなとこに傷がついてる」
「こんな傷、いつできたんやろ」
「先週、山、登ったときかなぁ」
とかです。
問題を見つけて、その原因を探るわけです。
さて、こっからが重要な話になります。
意識が、なぜ、生まれたかって話になります。
無意識は、現実世界そのものに反応します。
一方、意識は、現実世界を再構築した仮想世界を認識します。
そのおかげで、現実世界とは離れて、自由に考えることができるようになりました。
腕時計を見て、「先週、山登った時、この傷ができたんやなぁ」とか。
「たしか、いつもの三人で行ったよなぁ」
「いや、も一人おったよなぁ。誰やったかなぁ」
とか、いくらでも考えてしまうわけです。
でも、僕らが生きてるのは現実世界です。
頭の中の空想の世界だけで生きているわけじゃありません。
そこで、空想や思考の世界から現実に引き戻さないといけません。
その仕組みが必要なんです。
図に書いてみます。
現実世界がありまして、これが時間の流れです。(→)
こっちが思考の世界とします。
時計の傷見て、「この傷どこで着いたんかなぁ」
「先週、山登った時やなぁ」
「誰と言ったんやったかなぁ」
って次々、考えることができます。
それを、どっかで現実に戻す必要があるんです。
この仕組みが必要なんです。
そんで、現実に戻ってきたら、
「えーと、今、何やらなあかんかったんかなぁ。
あっ、そうや、電池交換せなあかんかったんや。
誰と山行ったかとか、今はどうでもええわ」
ってなるわけです。
意識の重要な機能が出てきました。
3番目の特徴として書いときます。
3.現実への引き戻し
これが重要なんです。
こうやって、今、何をしないといけないかに立ち戻るわけです。
本来の目的は何やったんやって思い出すわけです。
「そや、電池交換や」ってなるわけです。
ほんで、電池交換をどうやってするか考えると、時計屋で交換してもらうって思いつくわけです。
ほんで、次は、時計屋に行くことを考えると、今度は、時計屋は、今日、休みやって思いだすわけです。
じゃぁ、つぎ、どうしよかってなるわけです。
こうやって、何か考えるごとに、現実に戻って、目的と照らし合わせて、目的を達成するように、次のことを考えるわけです。
そうやって、次の、行動を決めるわけです。
これが意識の仕組みです。
さて、もう一回、この図を見てください。
こうやって、何か考えるたびに現実に戻りますよね。
ほんで、今の目的に注意を向けて、次に考えることを選択していきます。
この過程、これが、いわば思考の過程です。
意識が考えてたのは、この流れです。
「時計が止まったなぁ」
「電池交換せなあかんなぁ」
「時計屋しまってるなぁ」
思考の流れ。これ、今、言葉にして言ったとおりですよね。
これが言葉です。
今回のテーマ、覚えてますか。
「考えるって、どういうこと」です。
最初に言ったこと、覚えてますか。
「言葉がないと、考えることもできない」って。
まさに、その通りなんです。
意識で考えること、そのまんまが言葉なんです。
う~ん、ちょっとちがうかなぁ。
言葉が、意識の流れを繋ぎ止めるんです。
言葉は目印なんです。
前回、目印の話、しましたよね。
時計には、いっぱいプロパティがあるけど、今は、「時計が止まってる」ってことに注目しましょ。
そのために、止まってるってプロパティに目印を付けときましょって。
その目印が、言葉なんです。
その目印をつなぎ合わせたのが文章なんです。
時計が止まってる。目印
電池交換しないといけない。目印
時計屋に行こう。目印
時計屋は、今日閉まってる。目印
これが思考の流れです。
その目印を言葉に置き換えたのが文章です。
これが言語です。
最後に、もひとつ重要なことを言いますよ。
この図で、他人と共有してるのはどこでしょう?
それは、ここ、現実ですよね。
そう、ここを共有できるから、他人とコミュニケーションが成立するのです。
コミュニケーションの具体的な方法が、言葉です。
言葉の役割は、他人とのコミュニケーションです。
そして、もう一つ、重要な役割があります。
それが、現実世界への繋ぎ止めです。
この繋ぎ止めがなくなると、思考世界に行って帰ってこれなくなります。
そうなると、他人とコミュニケーションも取れなくなります。
現実世界への繋ぎ止めの機能。
これが言語の本質です。
この考えが今までの言語学にはなかったんです。
たとえば、近代言語学の父といわれるソシュール
(フェルドナン・ド・ソシュール(1857-1943) 近代言語学の父)
ソシュールは、シニフィアンとシニフィエという概念を提唱しました。
現実の犬そのものは、シニフィエ。
イヌっていう音はシニフィアンです。
記号ですね。
そして、シニフィアンとシニフィエは、人間が勝手に結びつけたものです。
だから、アメリカ人は、イヌといわずに、ドッグって言うんです。
難しいこといってるようで、当たり前のこと、言ってるだけですよね。
わざわざ、大学で教えなくても、そんなことぐらい、分かりますよね。
問題なのは、100年経っても、言語学って、こっからほとんど進歩してないってことなんですよ。
知らんけど。
まぁ、ええですわ。
で、なんでこんなことになってるかっていうと、言葉しか見てないからです。
表面に現れた言葉だけ、いくら研究しても、イヌとドッグの違いがあるってことぐらいしか見えてこないんですわ。
そうやのうて、言葉を使う意識の仕組みはどうなってるのか、意識は、なんで、言葉を生み出したのか。
そういった視点で見ないと、言語の本質は理解できないんですよ。
そして、言語の本質が見えてくると、AI最大の問題も解決できます。
人工知能最大の問題、それはフレーム問題といいます。
次回は、フレーム問題を解いていきたいと思います。
それでは、次回もお楽しみに!