ロボマインド・プロジェクト、第362弾!
こんにちは、ロボマインドの田方です。
今回で、橘玲の『スピリチュアルズ「わたし」の謎』の最終回です。
今まで、サイコパスが世界を変えてきたとか、愛が戦争を生むとか、いろいろ刺激的な話をしてきましたけど、最後も、かなり刺激的ですよ。
最後のテーマは教育です。
ただし、今までの教育論とは真逆です。
家庭環境は教育に関係ないとか。
褒めると成績が下がるとか。
最新の研究結果を踏まえて、今までの教育論を真っ向から否定します。
これが今回のテーマです。
反教育論
家庭も褒めも無関係!
それから、2か月続いたクラウドファンディングがついに終了しました。
最後に、結果報告をしますので、最後までお楽しみください。
それでは、始めましょう!
教育の話をするとき、必ず出てくるのが「氏か育ちか」という問題です。
つまり、遺伝と環境、どちらの影響が大きいかです。
これに関しては、多くの研究がなされていて、性格や才能、認知能力から精神疾患に至るまで、人生のすべての領域で遺伝が関わっていることはわかっています。
たとえば、性格や個性などのパーソナリティの遺伝による影響は、50%程度と言われています。
つまり、パーソナリティは、半分は遺伝で決まるけど、残りの半分は環境によって決まります。
たしかに、学年が変わってクラスが変わったら、急に外向的になることってありますよね。
つまり、環境の変化で、簡単にパーソナリティが変わるので、遺伝か環境か、どっちの影響かなんか、簡単には分かりません。
ただし、明らかに相関性がある法則が一つだけあります。
それは、「極端なパーソナリティほど遺伝率が高くなる」という法則です。
極端なパーソナリティというのは、一言で言えば、精神疾患のことです。
たとえば、鬱病や統合失調症の遺伝率は70~80%にもなります。
こうした精神疾患は、遺伝による影響が大きいので、環境を変えても、簡単に変わらないということです。
精神疾患でなければ、パーソナリティの半分は環境によってつくられます。
つまり、どんな家庭で育って、どんなふうにしつけられたかが、パーソナリティの形成に影響を与えるわけです。
ところが、行動遺伝学で驚くべき事実が確認されてるんですよ。
なんと、パーソナリティを形作るのに、家庭環境はほとんど関係ないそうです。
どういうことかというと、家庭環境以外にも、学校とか、家の外の環境がありますよね。
そして、パーソナリティの形成に寄与するのは外の環境だけだそうです。
家庭環境は、全くといっていいほど関係ないそうです。
これ、分からないでもないです。
同じ親に育てられてるのに、兄弟の性格が全く違うことってよくありますよね。
僕には兄がいますけど、性格は全く違います。
兄は、僕と正反対で社交的です。
つまりね、子供の人生を決めるのは、遺伝子と家庭以外の環境ってことなんですよ。
実例を挙げます。
ニューヨークのスラム街で育った黒人の若者がいました。
彼は、バスケが好きですけど、補導歴があって、高校も中退しました。
そんな彼が、遠く離れた土地に転居させられるプログラムに選ばれました。
ニューメキシコ州の小さな町の中流の白人家庭に引き取られました。
高校も転校しました。
2年後、彼は高校のバスケットボール部のエースとして活躍して、学校の成績もAとBばかりで大学進学を目指すまでになりました。
この奇跡の原因は、何か分かりますか?
それは、周囲の期待が変わったことです。
今までは、「将来、ギャングの下っ端になるしかない黒人」とみられていたのが、引っ越ししてから、「俺たちのバスケチームのスーパースター」に変わったわけです。
これが、家庭環境以外の影響の力です。
このことは、大規模な実験でも確かめられています。
今より豊かな地域に引っ越した家庭と、今と同じ地域にとどまった家庭とに分けて、子供の追跡調査をしたそうです。
引っ越しは、13歳以下の時で、20代半ばに達したとき、調査しました。
そしたら、引っ越したグループの収入は、引っ越さないグループより30%以上高かったそうです。
その他、大学に進学する確率は15%以上高くて、大学のランクも大幅に上がってたそうです。
この実験は、家族は同じで、引っ越すか引っ越さないかの違いだけです。
つまり、子供のパーソナリティに影響をあたえたのは、家庭の外の環境だということです。
家庭での育て方は、子供にほとんど影響を与えないんです。
もっと言えば、子育ての努力は、あんまり意味がないってことなんですよ。
実際、これに反する研究結果は、今のところ、アカデミズムでは、まだ提示されていないそうです。
いやぁ、子育てって、何なんでしょうねぇ。
もっと面白い研究もあります。
よく、褒めて育てるっていいますよね。
褒めて自信をつけさせて、やる気を出させようってことです。
そこで、自尊心を高めると、どれだけ伸びるか大規模な実験をしたそうです。
その結果、自尊心を高めたからといって、勉強ができるようになることはなかったそうです。
どんな実験をしたかっていうと、まず、中間試験でC以下の学生を無作為に選びます。
そして、「君ならできる」とか、「君は、本当は凄い力を持ってる」とかって、自信を持たせる励ましのメッセージを毎週送り続けます。
対照群の学生には、事務的なメールだけ送ります。
そしたら、励ましのメッセージを受け取った学生の方が、対象群の学生より、成績が悪くなったそうです。
それどころか、中間試験より成績が下がって落第必死になったそうです。
なぜ、こんなことになったんでしょう?
原因は簡単です。
自尊心って、原因じゃなくて結果に伴うものです。
つまり、50m走で最下位の子に優勝トロフィーを渡しても、足が速くなるわけじゃないってことです。
結果が出てないのに褒めてたら、これで十分だと勘違いして、それ以上、努力しなくなるわけです。
だから、余計に成績が下がったんです。
「もっと勉強しないと」って自分で思わないと勉強しないわけです。
そんな当たり前のことが、実験で確かめられただけってことです。
この研究は、さまざまな形で、いろんな研究者が行ったんですけど、どれも同じ結果が出てるそうです。
そのため、今では、まともな心理学者は、出来なくても褒めたらできるようになるなんて主張する人はいません。
重要なのは、褒めて自尊心を高めることじゃなくて、努力していい結果が出て、それで、「やればできる」って自信をもつことです。
いやぁ、褒めて育てるのは間違いだったんですね。
でも、さすがに、愛情は必要ですよね。
愛情をもって子育てしないと、子供はちゃんと育ちません。
ハーロウの代理母実験という有名な実験があります。
これは、アカゲザルの赤ちゃんを、二つの代理母の人形で育てるって実験です。
一つは、哺乳瓶を取り付けた針金の人形。
もう一つは、柔らかいタオルで覆われた人形です。
そしたら、赤ちゃんは、タオルの代理母にずっと抱き着いていたそうです。
ここから、ミルクをくれる相手でなく、肌触りがいい相手に愛着を感じることがわかったそうです。
愛着が子供にとってどれだけ重要かってことです。
これは分かります。
次に知りたいのは、人間の子が、母親に愛着を感じて育った場合と、そうでない場合で、その後の成長にどんな影響が出るかです。
まさか、人間の子を、サルの赤ちゃんみたいに実験するわけにはいきません。
そこで、精神分析家のジョン・ボルヴィは、母親に愛着を感じる赤ちゃんと、愛着を感じてない赤ちゃんを比較して調べました。
母親との愛着をどうやって調べたかというと、生後12か月の子どもと母親を研究室に呼んで、しばらく遊んでもらいます。
その後、母親が部屋からいなくなって、子供は知らない大人と遊びます。
しばらくして母親が戻ってきたとき、母親に駆け寄って抱き着いたりする子が母親に愛着を持ってるグループとしました。
もう一つは、母親が戻ってきても気づかないふりをしたり、床にうずくまって動かなかったりするグループで、こちらを愛着が少ないグループとしました。
その後、二つのグループの追跡調査をします。
すると、愛着を受けて育った子は、自立心が育って積極的になることが確認できたそうです。
一方、愛着が少ない子は、学校や友達関係にうまく適応できなくて、その結果、退学したり、将来の収入が低かったりするそうです。
つまり、幼少期の愛着による効果は一生続くということです。
これは説得力がある話ですよね。
ところが、橘玲はこの説に疑問を投げかけます。
それは、愛着が少ないとされた判断に対してです。
母親が声をかけても無視したり、床にうずくまったまま動かないというのは尋常ではありません。
これは、いまなら、真っ先に発達障害が疑われます。
もしそうなら、友達関係にうまく適応できなかったり、高校を中退するのは理解できます。
そして、最初にも言いましたけど、精神疾患といった極端なパーソナリティは、遺伝による影響がかなり高いです。
つまり、母親の愛着はあまり関係ないと言えそうです。
ここで言いたいのは、愛情は必要はないということじゃありません。
愛情をもって育てるのは当然です。
ただ、親の愛情じゃどうしようもないことがあるってことです。
つまり遺伝による影響も一定数あるんです。
それを親の愛情不足だと責めるのは間違いだということです。
さて、今まで7回にわたって『スピリチュアルズ』の本を紹介してきましたけど、総まとめをしたいと思います。
この本が基にしてるのはビッグファイブといわれるパーソナリティ特性の五分類です。
この本の最後に簡単なテストがあって、僕の場合、ビッグファイブのうち、「経験への開放性」が飛びぬけて高いことがわかりました。
経験への開放性が高い人は、常識にとらわれない革新的なことをする一方、形式的なことが苦手で、統合失調症になりやすいそうです。
それから、僕は協調性と外向性がかなり低いです。
協調性や外向性が高い人は、たとえばパーティが好きだったり、みんなと一緒にテレビで野球やサッカーを応援するのが好きなタイプです。
たしかに、ぼくは、こういうのが一番苦手です。
それから、もう一つ、面白いテストが載ってました。
それは、自分の額にアルファベットの大文字のQを書いたところを想像するテストです。
皆さんも、想像してみてください。
想像しましたか?
正解は、こうです
(イラスト)
Qのしっぽ、右と左、どっちに書きましたか?
相手から見て正しくQに見えないといけないので、自分の左側にしっぽが来るのが正解です。
これは、相手から自分がどう見られているかを正確に把握できるかのテストです。
これをセルフモニタリングといいます。
左にしっぽを書いた人は、セルフモニタリングが高くて、右にしっぽをかいた人はセルフモニタリングが低いというわけです。
セルフモニタリングが高い人は、上司が期待する振る舞いをすることができるので、組織で昇進しやすいそうです。
セルフモニタリングが低い人は、他人からどう見られるか気にせず、自分の価値観で行動するのであまり昇進できないそうです。
このテスト、僕は、何の疑いもなく、Qのしっぽを右に書きました。
つまり、自分の価値観だけで行動して、組織には向いてないようです。
こうして自分のパーソナリティを分析すると、かなり当たってます。
協調性がなくて、他人の価値観に合わせるのが苦手で、自分が面白いと思うものしか興味がありません。
僕は、子供のころから物を作るのが好きでした。
それも、全くのゼロから作るのが好きです。
だから、プラモデルとかじゃ、あまり満足できませんでした。
暇になると、「この世にない全く新しいものを作りたい」って思ってました。
そんな僕が、今から20年前、やりたいことを見つけました。
コンピュータで心や意識を作るってことです。
それ以来、「全く新しいものを作りたい」なんて思わなくなりました。
ずっと、そのことを考えてるからです。
そうやって、独自に心のモデルを解明してきました。
でも、まぁ、だれも理解できないだろうなぁと思ってました。
それが、YouTubeを始めたら意外と多くの人に興味を持ってもらえました。
チャンネル登録も2万近くになりました。
そして、クラウドファンディングです。
まだ、プロトタイプもできてなくて、構想段階です。
リターンは形だけなので、実質、寄付です。
この動画を撮ってる時点で、終了まで1週間ありますけど、応援してくれる人が、すでに130人以上、総額160万円以上集まっています。
いや、もう、十分です。
人は、変えることのできないパーソナリティを持っています。
そのパーソナリティを、今の環境で発揮できる人は幸せです。
でも、そうじゃない人もいっぱいいます。
定年まで一つの会社で働くなんて、今の時代、あり得ないです。
そんな会社人間になるための教育は不要ですよね。
これからの教育で重要なのは、会社人間に育てることじゃなくて、その人にあった居場所を見つけることだと思うんですよ。
さっき、人生に影響を与えられるのは、外の環境だけっていいましたよね。
正しい居場所にいれば、人は、勝手に成長します。
ギャングにしかなれないと思われていた黒人青年が、バスケチームのスーパーヒーローになるんです。
今の場所じゃ、誰からも理解されないと思っていても、場所を変えたら、理解してくれる人が出てくるんです。
僕は、わけの分からない研究を一人でやってましたけど、YouTubeで発表したら、応援してくれる人が出てきたんです。
それから、「すごいですねぇ」って、口先だけで褒めても人は変わりません。
かけっこでビリの子に優勝トロフィーをあげても足が速くならないのと同じです。
でも、本気の応援は、人を動かします。
今回、そのことが本当によくわかりました。
クラウドファンディングの目的は、認知度を上げることでした。
多くのメディアに取り上げられて、その目的は達成しました。
でも、それ以上に受け取ったものがあります。
それは、本気の応援です。
正直、応援の力が、これほど力を与えてくれるとは思っていませんでした。
これだけ応援されて、まさか、裏切るわけにはいきません。
今後も、開発の状況は随時、YouTubeで報告していきます。
コンピュータが心を持つとはどういうことか、そんな誰も見たことのない光景を、皆さんに、お見せしますよ。
今回応援してくれた人が、「私は、あのロボマインドの最初の支援者だ」って、周りの人に自慢できるものをきっと作ります。
5年、いや、3年以内に必ず作ります。
今回は、本当に、ありがとうございました。