第366回 サイコパス1 〜ChatGPTはサイコパス


ロボマインド・プロジェクト、第366弾!
こんにちは、ロボマインドの田方です。

今回は、この本『サイコパス』からの紹介です。

著者は、脳科学者で評論家でもある中野信子です。

サイコパスって、知れば知るほど興味深いです。
たぶん、AIにも関係してくると思うんですよ。

僕がやろうとしてるのは、コンピュータで心を作ることです。
感情や意識を持ったAIを作ろうとしています。
でも、今のAI、たとえばChatGPTには意識や感情はないですよね。

そういうと、よく、AIに感情や意識なんか、持たす必要がないって反論されます。
人は、余計な感情を持ってるから間違った判断をするんだって。
理論的に冷静に判断して行動するには、感情などもたさない方がいいってことです。
最近だと、AIが司法試験に合格するとか、将来は、裁判はAIに任せた方がいいって意見も出てきてます。

はたして、本当にそれでいいんでしょうか?
だって、感情を感じず、冷静沈着に行動するってサイコパスですよ。
本当に、そんなAIに人を裁かせていいんでしょうか?

これが今回のテーマです。
ChatGPTはサイコパス
それでは、始めましょう!

サイコパスと言えば、人を騙したり、人の心を巧みに操ったりする人を思い浮かべます。
中には、次々に人をだまして殺す連続殺人鬼もいます。

ランディ・クラフトは、10代後半から20代前半の若い男性のレイプ殺人を、12年間で64回も繰り返していました。
なぜ、こんな長い期間、捕まらなかったんでしょう?
それは、失敗から学び続けたからです。

彼は、最初の頃、一度、逮捕されました。
それは、狙った男性が「おとり捜査官」だったからでした。
そこから、狙う相手を若い男性に絞ったそうです。
10代の男性が、おとり捜査官の可能性はゼロだからです。

それから、最初はターゲットを殺さなかったそうです。
すると、その地域で若い男性を狙った暴行犯がいるってうわさが広がったそうです。
そこで、それからは、レイプした少年を殺すようになったそうです。

「悪事がバレそうだからもう止めよう」じゃなくて、「殺したらバレない」って発想です。
これがサイコパスの考え方です。
目的が決まったら、最も効率的な方法を探して実行するわけです。
いやぁ、普通の人には、ちょっとできないですよね。

第358回で、アマゾンのCEO、ジェフ・ベゾスの似たようなエピソードを紹介しました。
アマゾンの倉庫にエアコンがなくて、熱中症で人がバタバタ倒れていたそうです。
エアコンを入れてくれと言われて、ベゾスは、いろいろ検討して、最終的に、エアコンは入れずに、倉庫の周りに救急車を待機させたそうです。
この方が安上がりだからです。
「さぁ、これで熱中症になっても大丈夫だぞ」と言って働かせていたそうです。
これ、まさに、サイコパスですよね。

サイコパスといえば、頭がいいって、イメージがあります。
ところが、この本によると、サイコパスのIQは、一般の人の平均とあまり変わらないそうです。

どうも、頭がいいんじゃなくて、一般の人と考え方が違うようなんです。
たとえば、ある方法で、何かをしようとします。
ところが、何らかの原因でその方法が使えなくなったら、そこであきらめるのが一般人です。
たとえば、これ以上うわさが広がったら警察に捕まるとか、これ以上、熱中症で人が倒れるのを増やすわけにいかないとかです。
ところが、サイコパスの場合、うわさが広がるなら噂を広げる人を殺せばいい、熱中症で倒れる人がいるなら、救急車を準備すればいいって考えるわけです。

普通の人なら、「えっ、さすがにそれは」って無意識のブレーキがかかりますけど、サイコパスにはそれが効かないようです。
だから、普通の人じゃ思いつかない大胆なことを実行に移せるんです。
それで結果もだすので、頭がいいって思ってしまうんです。

じゃぁ、無意識のブレーキって、具体的には、どんなものでしょう?
その一つとして、心拍数があります。
たとえば、何か悪いことをするときとか、緊張して心臓がドキドキしますよね。

香港大学で赤信号を無視する学生と、そうでない学生の心拍数を調査をしたそうです。
すると、心拍数が低い方が信号無視するという結果が得られたそうです。
どうも、心拍数が無意識のブレーキになっているようです。
だから、心拍数が低いと、犯罪を犯しやすいと言えそうです。

それから、ワシントン大学で犯罪者を心電図を使って調査したところ、あるサイコパスは、アームチェアでくつろいでいるときよりも、妻を殴ってるときの方がリラックスしてたそうです。
もう、どんな心臓してるんやって思いますよね。

さて、サイコパスの特徴は、他者への共感がないっていわれますよね。
でも、共感力が全くないわけじゃないんです。

表情や音声から他者の感情を読み取る実験をおこなうと、「怒り」「喜び」「驚き」といった感情については、一般人と同程度に読み取れたそうです。
ところが、「恐怖」「悲しみ」を察する能力は欠けてたそうです。
それから、飢餓に苦しむ人などの悲惨な画像を見せても、感情と関連する部分の脳は活性化しないそうです。
サイコパスは、他人の「悲しみ」や「恐怖」を感じる能力が欠如してると言えそうです。

でも、サイコパスって、他人を騙したり、他人の心をもてあそんで利用するのが得意ですよね。
人を騙すには、相手の感情を理解しないと無理ですよね。
じゃぁ、サイコパスは、どうやって相手の感情を理解してるのでしょう?
実は、サイコパスは、相手の目つきや表情から、相手の感情を読み取る才能に長けてるんです。
人間の目のあたりだけの写真を見せて、その人の感情を読み解かせる課題を与えると、一般の人は30%ぐらいなのに対して、サイコパスの正答率は、なんと70%にもなるそうです。
つまり、共感はしてなくても、相手の表情を見て、その人が「悲しんでる」とか「苦しんでる」かは読み取れるんです。

じゃぁ、共感するのと、感情を理解するのでは、何が違うのでしょう?
感情の理解って、たとえていえば、国語の試験問題を解くようなものだそうです。

たとえば、文章を読んで、「この人はどういう気持ちだったのか、何文字以内で書きなさい」って入試問題って、よくありますよね。
僕は、予備校で、この手の問題は自分で考えたらだめだって言われました。
正解は必ず文章に書かれてるから、それを抜き出すんだって。
出題者側の視点に立つと、そういう採点基準を設けないと、採点のしようがないって言うんです。
じっさい、本文から抜き出して答えを書くようにすると、得点が上がったのを覚えています。

これって、なんか、ChatGPTに似てますよね。
ChatGPTがやってるのって、大量の文章を学習して、ある単語が出てきたら、次に出てくる単語を予測するだけです。
これって、国語の問題で、関係する箇所を抜き出して答えてるのと同じですよね。
つまり、感情を持たなくても、特定のアルゴリズムで回答するだけで、感情を理解してるように見せることができるんです。
だから、ChatGPTが大学の入試に合格したり、あたかも、心や意識があるって思ってしまうんです。
でも、ChatGPTがやってることって、サイコパスと同じなんですよ。

それじゃぁ、相手の感情に共感するのと、感情を理解するのでは、いったい、何が違うんでしょう?
こっからは、僕の考えになります。

まずは、今まで何度も取り上げた盲視から考えてみます。
眼球が損傷したんじゃなくて、脳の一部が損傷して目が見えなくなる障害を盲視といいます。
盲視の人に、リンゴを見せて、「これが何か分かりますか?」って質問しても、「見えないのでわかりません」って答えます。
次に、黒板をレーザーポインターで示して、「光の点を指で指し示してください」っていうと、「見えないのでできません」って言います。
それでも「あてずっぽうでもいいので指し示してください」っていうと、ちゃんと指差しできるんです。
本人は、本当にあてずっぽうで指差ししてるだけみたいです。

この現象、脳のどこが損傷したかから考えると分かります。

目からの情報は後頭部の一次視覚野に送られて、そこから頭頂葉に向かう背側視覚路と、側頭葉に向かう腹側視覚路の二つにわかれます。
背側視覚路は、「どこの経路」ともいわれて、ものの位置を解析する経路です。
腹側視覚路は、「何の経路」とも言われて、見たものが何かを解析する経路です。
盲視患者は、この何の経路が損傷していたんです。
だから、ものを見ても何が分からなかったわけです。
でも、どこの経路が生きていたから、光の点を指差しできたんです。

さて、ここで注目したいのは意識の存在です。
盲視患者は、指差しできても、それができてると意識では認識してなかったですよね。
つまり、意識は、損傷した何の経路の先にあるんです。
だから、意識では物が見えないんです。

さて、こっからです。
物があるって認識するのが意識ですよね。
リンゴがあるって認識できたら、それを食べようとか、誰かにあげようとか、いろいろ考えることができますよね。
つまり、理論的思考です。

一方、どこの経路は、意識とは関係なく、体が勝手に反応する処理です。
どうやら、脳の中には、理論的に考える処理と、勝手に体が反応する処理の二つの処理があるようです。

そして、感情というのも、体が勝手に反応する処理に当たるんです。
おかしくて笑ったり、悲しくて泣いたり、怖くて足が震えたりとか、全て体の反応ですよね。
そして、どれも意識でコントロールできなくて、勝手に反応しますよね。
相手に共感する感情も同じです。
相手が悲しんだり苦しんでたりすると、自分も悲しくなったり苦しくなったりするんです。

拷問って、するのも嫌ですよね。
相手が痛がることをするのって、体が拒否しますよね。
体で感じる感情ってことです。

一方、理論的に解析するのは、何の経路です。
これは、意識が考えるところなので、完全に意識がコントロールできます。

人の脳は、この二つの種類の処理を行ってるんです。
そして、サイコパスは、他人の苦しみや悲しみに体が反応する機能が働かないと言えそうです。
普通の人は、頭で考えて行動しようと思っても、他人が苦しんだり、悲しんだりする行動をしようとすると、体が反応してブレーキをかけるんです。

ここ、さらに掘り下げると、重要なことが見えてきます。
それは、体の重要性です。
考えるだけなら、体は必要ないと思われています。
ところが、人間らしい感情を持たすには、体が必要なんです。

そして、もう一つ重要なのは、体が反応する部分は、意識ではコントロールできないってことです。
この意識でコントロールできない処理がブレーキになるんです。

このブレーキ回路が、人の最後の砦となるんです。
人を苦しめる行為を、最後に思いとどまるのは、このブレーキ回路なんです。
これが存在しないと、利益のためとか、快楽のために、どこまでに残酷になるんです。
それが、サイコパスです。

今、世界中が熱狂してるAIは、どれも、このブレーキ回路が存在しません。
目的のためにいくらでも冷酷になれるAIです。
そんなAIに、大事な仕事を任せれますか?
裁判や、政治的な判断を任せれますか?
たとえば、理論的に考えて、核ミサイルの発射することに決まったとしましょ。
そんな時、何のためらいもなく、簡単に核ミサイルを発射するAIなんて、嫌じゃないですか。
そんなAIがアメリカ大統領とななったら怖いですよね。

じゃぁ、どうすればいいんでしょう?
一つは、AIに体を持たすことです。
ただ、人間のように自由に動くロボットを作るのは、今の技術でもかなり難しいです。
でも、物理的な身体を作らなくても、バーチャルな身体でもいいんです。
そう、メタバースです。
メタバースで3DCGのバーチャルな世界を作って、その世界で自由に動く体をもったAIを作るんです。
そんなAIなら、理論的な思考と、それにブレーキをかける体で感じる感情の二つをもたせることができますよね。
人を苦しめるような決断をしたとき、それを体が拒否する回路を持たせるんです。
他人の苦しみを感じるって、この回路が動作することです。
その回路を持っていることが、人間らしい心ってことです。

そして、そんなAIを実現しようとしてるのが、プロジェクト・エデンです。
今、プロジェクト・エデンを実際に開発してるところです。
プロジェクト・エデンの開発状況は、このチャンネルで随時お伝えしていきますので、引き続き、よろしくお願いいたします。
それから、よかったらこちらの本も読んでください。

はい、今回の動画が面白かったら、チャンネル登録、高評価、お願いしますね。
それでは、次回も、おっ楽しみに!