ロボマインド・プロジェクト、第367弾!
こんにちは、ロボマインドの田方です。
今回は、前回の続きで、この本『サイコパス』からの紹介です。
前回は、サイコパスの特徴から、人間の心に必要なものについて語りました。
それは、心は二つの情報処理をしてるってことです。
一つは、理論的な思考です。
最適な結果を出すために、どうすればいいのかって思考する部分です。
もう一つは、感情とか情動の部分です。
笑ったり、泣いたり、怒ったり、ドキドキしたり、全て感情です。
そして、感情というのは、体で感じるものです。
意識は、理論的な思考と、体で感じる感情の二つを感じて、行動を決定するわけです。
感情は、自分だけでなくて、相手の感情も感じます。
それが、共感です。
そして、サイコパスは、共感という感情をほとんど感じない人です。
他人が悲しんだり、苦しんでいても、何も感じません。
さて、今回は、この部分を、脳と遺伝子の観点から見ていきたいと思います。
これが今回のテーマです。
サイコパスの脳と遺伝子。
それでは、始めましょう!
人間の脳は三階層で考えると分かりやすいです。
第一層は、は虫類脳と言って、反射とかを司る部分です。
熱い鍋に触って、思わず手を引っ込めるとかがここです。
魚類とかは虫類、カエルといった両生類は、この部分の脳しかありません。
その上の第二層は、哺乳類脳と言われます。
ここは、感情とか情動を司る部分です。
怖がったり、喜んだり、悲しんだりって感情は、この部分が司っています。
犬とか猫は、カエルとかとちがって、喜んだり、甘えたりしてかわいいですよね。
それを司ってるのが哺乳類脳です。
そして、さらにその上の第三層が人間脳です。
ここは、理性的に考えたり、言葉をしゃべったりするところです。
まずは、第二層の哺乳類脳から考えます。
哺乳類脳にあたるのが、脳のなかの大脳辺縁系と呼ばれる部分です。
大脳辺縁系は、複雑な構造をしていて、長期記憶を司る海馬とかもここにあります。
そして、偏桃体が恐怖や不安を司ります。
たとえば、生まれてから一度もヘビを見たことのないサルにヘビを見せると、怖がって逃げます。
ところが、偏桃体を取り除くと、ヘビを捕まえようとしたり、全く怖がらなくなります。
それから、目の前でライオンとかが、ウーってうなっていても、怖がりません。
動物のうなり声とか、悲鳴、怒りといった否定的なサインを理解できなくなるんです。
つまり、偏桃体は、相手の否定的な感情を理解する役割があるわけです。
そして、サイコパスは、この偏桃体の活動が弱いこともわかっています。
さて、次は人間脳です。
人間脳は、脳全体を覆う大脳新皮質です。
大脳新皮質は、複雑な大脳辺縁系とちがって、見た目はどこも同じような構造です。
これは僕の考えですけど、大脳新皮質の情報処理はソフトウェアとして行ってるので、見た目は単純なんだと思います。
大脳辺縁系は、ハードウェアで処理してるので、感情や記憶といった処理を担当する部分が物理的構造の違いとして見て取れるんです。
言語のような複雑な処理は、ハードウェアで実現するにはあまりにも複雑すぎるってことです。
歯車を組み合わせてコンピュータを作るのが難しいのと同じです。
ソフトウェアでないと実現は難しいほど複雑なのが、人間脳の処理ってことです。
さて、それじゃぁ、人間脳のソフトウェアって、どんな仕組みでしょう。
僕の考えは、仮想世界です。
簡単に説明します。
人は、目で見た世界を頭の中で仮想世界として構築します。
意識は、仮想世界を介して現実世界を認識します。
これを、意識の仮想世界仮説といいます。
さらに、人は、今、目の前の現実世界以外に、過去の出来事や、未来を想像できます。
そのときに使うのが、想像仮想世界です。
コンピュータで仮想世界を実現するとしたら、たとえば3DCGです。
考えるってことは、想像仮想世界でシミュレーションするのと同じです。
ああすれば、どうなるだろうってシミュレーションするわけです。
これが、人間のみが持つ理性的な思考です。
さて、それじゃぁ、共感はどうやったら生まれるんでしょう?
まず、感情は大脳辺縁系で生まれましたよね。
これは、自分の感情です。
共感って、相手の感情ですよね。
相手の感情を想像するには、想像仮想世界で相手のことを想像する必要があります。
想像は、大脳のうち、前頭前皮質で行われます。
そして、単に想像するだけじゃなくて、相手の感情を感じるのが共感ですよね。
つまり、前頭前皮質でシミュレーションして、その結果を大脳辺縁系で受け取るんです。
これで、相手の感情を、自分のことのように感じられるんです。
ここをもう少し詳しく見ていきます。
前頭前皮質は偏桃体と2か所で結びついています。
一つは、眼球を収める空洞のすぐ上にある眼窩前頭皮質です。
もう一つは、前頭前皮質の内側になる内側前頭前皮質です。
偏桃体は、恐怖や不安など、行動のブレーキとなる感情を生み出します。
たとえば、誰かにひどい仕打ちを受けて、殺してしまいたいって衝動にかられたとします。
このとき、まず、前頭前皮質で相手を刺したところをシミュレーションするわけです。
すると、眼窩前頭皮質を介して偏桃体に送られ、相手は痛いだろうなぁって感情が湧いたり、血がいっぱい出るところを想像して、怖いとか思うわけです。
つまり、眼窩前頭皮質が活性化することで相手に共感するわけです。
それから、内側前頭前皮質は、「良心」のブレーキです。
「相手を殺す」って想像したら、内側前頭前皮質を介して偏桃体に送られて、「そんなことしちゃいけない」って思いが湧きおこるわけです。
この二つの部分の機能が高い人は、衝動的な行動が抑えられ、対人関係で適切なふるまいができるわけです。
そして、サイコパスは、この二つの部分の活動が弱いことが確認されています。
さらに、この二つの部分と偏桃体のつながりが弱いことも確認されています。
サイコパスが、共感力が低かったり、良心や道徳心が低い理由が脳の構造から明らかになってきています。
じゃぁ、前頭前皮質と偏桃体のつながりは、どうして弱くなるんでしょう?
これも、原因がわかってきています。
神経細胞は軸索を介してつながっています。
この軸索は、髄鞘とかエミリン鞘といわれる脂質で何重にも包まれています。
この髄鞘は、電気信号の伝達を加速させる役割があります。
髄鞘化の期間は、脳の部位によって異なっていて、手足を動かす運動野の髄鞘化は1歳で完了しますけど、前頭葉の髄鞘化は20年ぐらいかかります。
つまり、高度な思考力などは20年かけて完成するわけです。
比較的時間がかかる前頭葉の髄鞘化ですけど、偏桃体とつながる二つの部分は、2〜3歳ころに完成するそうです。
そして、サイコパスの原因に、幼少期の精神的虐待や、性的虐待が挙げられます。
おそらく、虐待を受けたとき、何も感じないように、髄鞘化が遅れたんでしょう。
結果として、偏桃体と前頭前野のつながりが弱くなって、共感できなくなったり、良心が育たない心にとなったと考えられます。
それから、サイコパスになりやすい遺伝子も特定されています。
それは、MAOAと呼ばれる遺伝子です。
オランダに、放火やレイプ、露出癖などの犯罪者を多く輩出する家系があって、その家系の遺伝子を調べてMAOA遺伝子が発見されました。
MAOというのは、モノアミン酸化酵素のことで、セロトニンやドーパミン、ノルアドレナリンといった神経伝達物質の総称です。
そして、MAOAというのは、MAOのAタイプという意味で、セロトニンやドーパミンといった神経伝達物質を分解する役割があります。
そして、およそ30%の人に、MAOAの活性が低い人がいます。
その人は、セロトニンやドーパミンを分解できないので、その効果が長く持続します。
セロトニンは、幸福感を感じる神経伝達物質なので、一見、穏やかになると思いますが、そうじゃありません。
幸福感を感じるということは、不安を感じないわけです。
すると、先の不安を感じなくて、今だけ楽しむって刹那的な快楽を求めてしまいます。
そのため、反社会的な行動を取りやすくなって、女性の場合だと、売春したり、男性の場合は、攻撃的になります。
ただし、MAOA遺伝子の活性化が低い人が、必ず反社会的な行動を取るわけではありません。
遺伝子というのは、スイッチがあって、スイッチがオンになって、初めて活性化します。
例えば、成長の過程でスイッチがオンになって、男性らしい体になったり、女性らしい体になったりするわけです。
それ以外に、環境によってスイッチがオンになったりします。
そして、MAOA遺伝子の場合、幼少期に虐待などをうけると、スイッチが入って、反社会的行動を取ることになるようです。
今までの話をまとめると、サイコパスになる要因は3つあります。
一つ目は、偏桃体と、眼窩前頭皮質、内側前頭前皮質の機能低下、およびその結合の低下。
二つ目は、MAOA遺伝子。
三つ目は、幼少期の精神的、身体的虐待。
この三つです。
サイコパスの著作もある神経科学者のジェームス・ファロンは、この三つが揃わないとサイコパスにならないと述べています。
そして、驚くことに、ファロン自身も、最初の二つの要件を満たしているそうです。
ただし、三番目の幼少期の虐待はなかったので、サイコパスにならずに済んだと述べています。
なんか、すごい話ですよねぇ。
こうして見てみると、遺伝子も重要ですけど、環境って重要ですよね。
そういう意味で、サイコパスが活躍する環境というのもあります。
たとえば、戦場だと、平気で人を殺せるほうが優位です。
兵士を育てた人の証言によると、人を殺しても何とも思わない人は、100人に一人か二人ぐらいだそうです。
サイコパスは1%ぐらいといわれてるので、その数字には納得しますよね。
それから、ブラジルのアマゾンにヤノマミ族という先住民族が暮らしています。
ヤノマミ族は、ほとんど働かなくても食べていける豊かな土地に住んでいます。
そして、争いが頻繁に起こって、殺人することで、集団での地位が上がり、女性にモテます。
それから、一夫一婦制でなくて乱婚です。
生まれた子供を育てるか殺すかは母親が決めます。
殺すと決めたら、赤ちゃんを蟻塚に放置して、シロアリに食べさせるそうです。
いやぁ、幼児虐待どころじゃないですよね。
サイコパスが生きやすい社会と言えます。
それと対照的なのが、南アフリカのカラハリ砂漠の狩猟採集民、クン族です。
クン族は、食料に乏しくて土地で暮らしているので、協力体制をとらないと生きていけません。
共同で狩りに行って、成果は平等に分配されて、ウソは厳しく禁じられてます。
一夫一婦制で、子供は一族で面倒を見ます。
現代日本社会に近いです。
こんな社会だと、サイコパスは生きにくいわけです。
さて、今まで、サイコパスというパーソナリティが、どうやって発現するかを見てきました。
これは、サイコパスに限る話じゃありません。
見方によっては、自分のもついいパーソナリティをどうやったら生かせるかのヒントにもなります。
パーソナリティというものは、半分は遺伝子、半分は環境で決まります。
持って生まれた遺伝子は変えることはできないので、いかに、それを生かすかが重要です。
遺伝子を発動させるには、スイッチを入れないといけません。
遺伝子のスイッチを入れるのは、環境です。
たとえば、音楽の遺伝子も持っていても、その遺伝子のスイッチを入れなければ、生かされません。
よく、バンドはある時期、思いっきりライブに集中して、その時期に急成長したとか言います。
ビートルズも、デビュー前に、ドイツのハンブルグ修業時代というのがありました。
そこで、一日何ステージもこなすことで、一気に音楽の才能が開花しました。
僕の場合ですけど、3年前にYouTubeを始めることを決めました。
目的は、ロボマインド・プロジェクトの中身を充実させるためです。
それまで、だらだら考えてたんですけど、週に2本の動画をあげるって決めて、強制的に、ロボマインド・プロジェクトについて考えないといけない環境を作ったわけです。
正直、これはかなり厳しかったです。
ただ、これをやるようになって、ロボマインド・プロジェクトが急速に進んだのは間違いないです。
システムの中身が、はっきりと形になって見えてきました。
たぶん、遺伝子のスイッチがオンになったんだと思います。
皆さんも、好きなこと、夢中になれることがあると思います。
それは、その遺伝子をもってるってことです。
後は、その遺伝子のスイッチをオンにするだけです。
スイッチをオンにするには、それしかできない環境に自分を追い込むだけです。
何かのヒントになればと思います。
はい、今回の動画がおもしろかったらチャンネル登録、高評価お願いしますね。
それから、今日、でてきた意識の仮想世界仮説に関しては、この本で紹介してますので、よかったら読んでください。
それじゃぁ、次回も、おっ楽しみに!