ロボマインド・プロジェクト、第369弾!
こんにちは、ロボマインドの田方です。
今回は、プロジェクト・エデン、初のデモ動画です。
おそらく、今回のデモは、後に、意識科学の転換点になったといわれますよ。
さて、今回のキーワードは粒度です。
粒の大きさのことです。
これは、システム開発の分野でよく使われる用語です。
システムを設計するとき、機能ごとにモジュールに分割して、さらに細かいプログラムに分割します。
システム全体の大きな粒でみるか、モジュールで見るか、さらに細かいプログラムで見るか、これが粒の大きさってことです。
今のAIの意識とか言葉の意味理解の議論って、議論の粒が大きすぎるんですよ。
たとえば、ChatGPTは意味を理解してるのかって議論がありますよね。
国語の入試問題が解けたから、言葉の意味を理解してるとかって言ったりします。
これなんか、意味を理解するとはどういうことか定義すらしてないので、かなり大雑把な議論ですよね。
たぶん、一部は理解できてると言ってもいいですし、理解してないと言える部分もあると思います。
じゃぁ、その一部とは何かって、細かい議論ができないんです。
これが粒が大きい議論しかできないってことです。
それから、意識といえば、ハードプロブレムって言葉があります。
脳細胞で解明できるレベルの問題はイージープロブレム、それじゃ解明できないレベルの問題がハードプロブレムです。
たとえば、主観や意識が感じるクオリアとかがハードプロブレムといわれてます。
重要な話なんですけど、これも、かなり粒が大きいですよね。
意識科学が生まれて30年、AIが生まれて60年になりますけど、今まで、大きい粒の話しかしてなかったんですよ。
じゃぁ、小さい粒ってどういうものでしょう?
それは、意識の具体的な仕組みのことです。
こんな重要な議論を、今まで一切してこなかったんです。
なぜでしょう?
それは、今まで、意識の仕組みを設計した人がいなかったからです。
ChatGPTとか、意識から設計したわけじゃありません。
設計したのは学習の仕方だけです。
大量の文書を学習させて、会話できるようになったのがChatGPTです。
だから、この部分が意識とかって議論ができないんです。
意識があるとか無いとかって、大雑把な議論にしかならないんです。
それに対して、僕らが作ってるマインド・エンジンは、設計段階から意識を組み込んでいます。
だから、意識のここがおかしいとかって、小さい粒の議論ができるんです。
さて、このマインド・エンジンを、AIアバター、もこみに実装しました。
いよいよ、もこみが、動き始めました。
これが今回のテーマです。
もこみ 覚醒
それでは、始めましょう!
さっそく、メタバース「エデン」を見てもらいます。
メタバースなので、ユーザーが操作するアバターがいます。
それを太郎くんとします。
太郎くんは、公園に行くと、もこみちゃんを見つけたので、もこみちゃんの方に歩いていきます。
太郎くんは、キーボードで操作します。
もこみちゃんは、AIアバターなので、自律的に動きます。
もこみちゃんが、太郎くんに気づいたようです。
そこで、太郎くんは、もこみちゃんに話しかけます。
キーボードから「こんにちは」と入力します。
はい、もこみちゃんが、「こんにちは、太郎くん」って返してくれましたよね。
ねぇ、スゴイでしょ。
以上でおわりです。
「えっ、これだけ?」
「こんなん、30年前からあるやん」
まさか、そんなこと、思ってないですよね。
賢明な皆さんなら、今のデモで、驚愕してると思います。
でも、まぁ、中には、どこが画期的なのか分からない人もおられるかもしれません。
そういう人のために、もう少し丁寧に解説します。
今、やりたいのは、意識の議論の粒を小さくすることですよね。
そのために、まずやるべきことは、意識とそうでないものを区別することです。
具体的には、人間の脳と同じように動作するシステムをつくります。
脳の中で、すでに解明されているところは同じように作ります。
そうやって、分からない範囲を狭めていくんです。
つまり、意識を追い詰めるわけです。
そうして、最後に残ったもの、そこが意識です。
これが、粒を小さくするってことです。
じゃぁ、出発点はどこでしょう?
脳全体でしょうか?
それもあります。
でも、それよりもっと重要なことがあります。
それは、脳に入力されるデータです。
たとえば、眼から入力されるデータです。
つまり、今見てる光景です。
それを人間と同じにしないといけません。
つまり、AIと人間が、同じ世界を共有するんです。
そこでメタバースが登場するんです。
メタバースなら、人間のアバターが見る世界と、AIアバターが見る世界は同じですよね。
つまり、入力データは全く同じとなるわけです。
次が、脳内の処理です。
入力されたデータは、脳の中で解析されます。
解析された結果を認識するのが意識です。
ここで、意識が出てきましたけど、意識がどんな処理をしてるのか、まだ、解明されていません。
そこで、僕は、意識仮説を提唱しています。
人は、目で見た世界を頭の中で仮想世界として構築します。
意識は、この仮想世界を介して、現実世界を認識します。
これを、意識の仮想世界仮説といいます。
マインド・エンジンは、この意識の仮想世界仮説に基づいて作っています。
これが、マインド・エンジンです。
マインド・エンジンは、いってみれば、もこみの心の中です。
左上に意識ってウィンドウがあって、その下に無意識ってウィンドウがありますよね。
真ん中には、上に視覚入力、その下に仮想世界ってウィンドウがありますよね。
まず、注目してほしいのが、視覚入力と、仮想世界の中の現実仮想世界です。
視覚入力っていうのが、もこみの目が捉えてる光景、そのものです。
その下の現実仮想世界っていうのは、もこみの意識が認識してる世界です。
詳しい説明は後にして、さっそく動かしてみます。
中央に見えてるのが、さっき見せたメタバースです。
つまり、ユーザーの太郎が見てる画面です。
これを横にどけます。
はい、後ろの視覚入力と、その下の現実仮想世界に同じ光景が出てますよね。
メタバースのもこみを見てください。
噴水の方を見てますよね。
だから、もこみの視点からみたら、噴水が見えるんです。
視覚入力が、もこみが見てる光景です。
これと、下の現実仮想世界、同じように見えますけど、じつは、この二つ、全く意味が違うんです。
こっからが面白くなってくるんで、よく、注意して聞いてくださいよ。
マインド・エンジンとメタバースとは、データのやり取りをしてます。
それから、マインド・エンジンの中には、意識とか無意識とか仮想世界ってモジュールがあって、それぞれデータのやり取りをしています。
データのやり取りを行っているのは、脳でいえば、ニューロンです。
脳のうち、視覚処理は、かなり細かいところまで解明されています。
こんな感じです。
下のV1っていうのが一次視覚野で、ここから上に順に処理されて行きます。
10年以上前から、世界中で脳全体をコンピュータでシミュレーションしようって研究が行われてます。
ヨーロッパだと、ヒューマン・ブレイン・プロジェクト。
アメリカだと、ブルー・ブレイン・プロジェクト。
日本だと、全脳アーキテクチャってのがあります。
これと、ロボマインド・プロジェクトの違いは、アプローチの違いです。
世界中で行われてるのは、脳をニューロンレベルから再現して、脳全体を作ろうとしています。
そうすれば、やがて、意識が発生するだろうって考えです。
ニューロンレベルって、粒の大きさでいえば、砂粒みたいなものです。
最終的に、どんな形になるかわからないけど、とにかく砂粒を積み上げていけば、何か見えてくるだろうってことです。
それに対して、ロボマインドは、意識モジュールから脳全体を作ろうってアプローチです。
意識モジュールは、脳って大きな粒と、ニューロンって砂粒の中間って感じです。
意識の詳細は、まだ解明されてないですけど、仮説に基づいて意識モジュールを作るわけです。
そうやって、すでに解明されてる脳の他の機能と組み合わせて、脳全体を作るわけです。
その上で、実際の人間と、同じように振る舞うか検証するわけです。
具体的には、メタバース内で、人間のアバターと、AIアバターが違和感なく会話できるかを検証するわけです。
これが、意識を追い詰めて解明するってことです。
だから、ロボマインドでは、ニューロンと同じ信号を再現しようとは考えていません。
機能的に同じなら、別の形でも構わないだろうってことです。
そこで、モジュール間を流れるデータは、コンピュータが扱いやすいJSONといわれる形式となっています。
さて、話を戻します。
マインドエンジンの視覚入力で表示されてるのは、これは、メタバースから送られてくる画像データそのものです。
単なる二次元画像です。
ここで、人の視覚処理について説明します。
さっき説明したように、視覚処理は、かなり細かいところまで解明されています。
目からの視覚情報は、まず、最初に後頭部の一次視覚野V1に送られます。
そこから、最初は単純な形、たとえば線の傾きとかを解析して、次々に送られて、最終的に、これは「カップ」だって分かります。
そして、意識が認識するのは、解析されたカップです。
これが「カップ」の意味を理解してるってことです。
さて、じゃぁ、カップの意味とはなんでしょう。
それは、形とか色とか、使い方とか、そういったものを含んだデータです。
コンピュータでは、それはオブジェクトとして表現できます。
たとえば3Dオブジェクトは、色とかとか形といったプロパティを持っています。
飲むとかって動作もメソッドという形で持てます。
つまり、意識が物を認識するとは、オブジェクトとなったデータを認識するということです。
これが、意味を理解するということです。
意味理解には、他にもいろんな種類がありますけど、物の意味を理解するとは、意識が認識するオブジェクトを生成することといえそうです。
こうやって、小さい粒で言葉の意味理解を定義できましたよね。
そして、この意識が認識するオブジェクト、これは、意識科学でいうところのクオリアとなります。
それから、重要なのは、意識が認識してる世界は、オブジェクトでできた世界だということです。
それが、現実仮想世界です。
上が視覚入力で、下が現実仮想世界です。
一見、同じに見えますけど、上は単なる二次元画像、下は、3DCGで生成した画像なんです。
この意味を、もう少し詳しく説明します。
目の網膜に映るのは二次元画像です。
これが、マインド・エンジンの視覚入力です。
網膜の映像は一次視覚野に送られて、順に画像解析されて、最終的に「カップ」といった意味のあるオブジェクトになりましたよね。
オブジェクトとして認識するから、カップの柄をもって飲むとかってわかるわけです。
これって、別の見方をすれば、過去の経験から知ってるといえますよね。
つまり、カップの使い方って、今、見えてる視覚情報には含まれていません。
ということは、「見る」というのは、自分の知ってる情報からオブジェクトを作り出すってことといえそうです。
マインド・エンジンは、これと同じ機能ができるなら、細かい処理は省こうって考えです。
人間の脳は、画像解析してオブジェクトを生成します。
マインド・エンジンでは、そこをごっそり省きました。
どうしてるかというと、メタバース自体が3Dオブジェクトでできてるので、オブジェクトそのものを送ることにしました。
厳密には、オブジェクトを特定するIDです。
やってることは、メタバースから、もこみの視界にあるオブジェクトIDと位置情報をJSON形式でマインド・エンジンの無意識に送ります。
マインド・エンジンは、3Dモデルを持っています。
だから、3DモデルのIDと位置情報があれば、3D世界を構築することができます。
そうやって、無意識は、現実仮想世界を構築します。
右にオブジェクトって表が見えてますよね。
ここに表示されるのが、メタバースから送られてきたオブジェクトIDです。
花壇とか家とかベンチとかってありますよね。
これらのオブジェクトをその通りに配置して作ったのが現実仮想世界です。
意識は、オブジェクトとして認識するので、これは噴水だとか、水が出るものだとかって意味も読み取れるんです。
分かってきましたか?
「見る」と一言で言っても、脳内でこれだけの処理を行ってるわけです。
そして、その脳内の処理を忠実に再現したのがマインド・エンジンです。
いや、忠実に再現したんじゃなくて、機能的に同じ処理を再現したんです。
機能レベルで、マインド・エンジンは、脳を再現してるわけです。
そして、マインド・エンジンを実装したAIアバターが、メタバースの中で人間と共存して会話するわけです。
その中で、うまくいくこともあれば、うまくいかないこともあります。
でも、うまくいかない場合、どこがおかしいのか、プログラムを見ればわかりますよね。
これが、より小さい粒で議論できるってことです。
いやぁ、「見る」って説明だけで、今回は、時間になってしまいました。
次回は、「こんにちは」ってあいさつするまでの説明をしたいと思います。
見て、「太郎だ」って意識が認識するところまでは、今の脳科学でもわかっています。
分からないのはそっから先です。
あいさつをするとか、会話するとかです。
これは、完全に意識が行う処理です。
意識が、どうやって処理してるのかは、ほとんど解明されていません。
実際、全脳シミュレーションは、10年以上、世界中で研究されてますけど、未だに、これといった成果をあげられていません。
たとえば、ヨーロッパのヒューマン・ブレイン・プロジェクトなんて、1800億円もの予算をかけて何も成果が出ないもんだから、当初の実行委員会は解散させられてます。
まぁ、これも分からないでもないです。
だって、ニューロンレベルで組み立てていったら、たぶん、何かわかるだろうで始めて、後は運任せですからね。
たとえて言えば、日本の原発事業が、使用済み核燃料の処理方法なんて、50年後には発明されてるだろうって踏み切ったのと同じです。
科学って、お金と時間さえかければ何とかなるって、そういうもんじゃないんですよ。
さて、ヒューマン・ブレイン・プロジェクトの1万分の一も予算がないロボマインド・プロジェクトが、ヒューマン・ブレイン・プロジェクトに勝てるでしょうか?
次回、その肝となる、意識プログラムの本質に迫ります。
今回紹介した意識の仮想世界仮説については、興味ある方は、こちらの本を参考にしてください。
今回の動画がおもしろかったら、チャンネル登録、高評価、お願いしますね。
それじゃぁ、次回も、おっ楽しみに!