ロボマインド・プロジェクト、第373弾!
こんにちは、ロボマインドの田方です。
久しぶりに岩波の科学雑誌『科学』を読みました。
岩波の『科学』といえば、夏目漱石の一番弟子の寺田寅彦が創刊した雑誌として有名です。
その頃から続いてるって、凄い雑誌ですよね。
さて、たまたま、目に留まった『科学』の最新号がこれです。
2023年6月号
『意識とクオリアの科学は可能か?』
これは読まないわけにはいかないです。
岩波の科学で取り上げる内容なので、これが今の意識科学の主流と言ってもいいです。
これを見たら、今の意識科学は何を目指して、何ができて、何ができないのかがわかります。
それを踏まえて、この30年の意識科学がどのように発展して、ロボマインド・プロジェクトと何が違うのかまで解説話をしたいと思います。
これが今回のテーマです。
岩波『科学』
意識とクオリアの科学は可能か?
それでは、始めましょう!
クオリアというのは、意識が認識するもののことです。
赤の赤らしさとか、青の青らしさとかって言ったりします。
赤色って、物理世界だと波長約700nmの電磁波って定義されます。
でも、クオリアで重要なのは、波長とか客観的に測定できるもののことじゃなくて、意識とか主観が感じるもののことです。
だから、同じ赤を見ても、僕が感じてる赤とあなたが感じてる赤が同じとはいえません。
これが、意識とかクオリアの難しさです。
今回の雑誌のタイトルは「意識とクオリアの科学は可能か?」っとなってますよね。
つまり、意識とかクオリアって、主観でしか感じられないのに、そんなものが科学の対象になるのかって、そもそもの疑問があるわけです。
この「意識は科学で扱えるのか?」って視点で読み解くと、今までの意識科学が何を目指してるのか、ひいては今の意識科学の問題点が見えてきます。
さて、同じ赤を見て、他人も同じように感じてるのかって問題に明確な答えをだしたのが、東京大学の大泉匡史(まさふみ)准教授です。
大泉先生は、人が感じる色の関係性に注目しました。
赤と青はどのくらい離れてるとか、主観で感じる関係性を数値化してベクトルで表現したんです。
すると、同じ赤は、ほかの人も同じように感じてたってことがわかったそうです。
ただ、この結論、多くの人は、当たり前と思いますよね。
でも、注目すべきは、そこじゃないんです。
注目すべきは、主観的に感じてたクオリアをベクトルで表現したってとこなんです。
つまり、客観的な数値で表現できるようになったので、クオリアを科学の土俵に載せることができたわけです。
この研究で一番重要なのは、ここなんです。
大泉先生は、以前は、ジュリオ・トノーニの研究室にいました。
トノーニといえば、意識の統合情報理論で有名です。
統合情報理論というのは、意識はネットワーク内部で統合された「統合情報量」で定量化されるって考えで、現在の意識科学の主流の考えです。
これも、意識を、統合情報量という数値で表現することで、科学で扱えるようにしたといえます。
おそらく、大泉先生も、その流れでクオリアの定量化に挑んだんでしょう。
それから圏論の話もでてきました。
圏論って数学理論そのものを扱う学問で、群とかの対象間の関係がどうとかって、かなり抽象的な話です。
近年、プログラム言語のHaskelとかRustに圏論が採用されたりして、圏論がちょっとしたブームになってます。
新しい理論とか概念がでてくると、今まで解決できなかったものが、それで解決できるんじゃないかって思いますよね。
意識の謎は量子力学で解決できるんじゃないかって言われています。
ロジャー・ペンローズが、『皇帝の新しい心』って本で、そのことを取り上げて、茂木健一郎さんも、この本に触発されて意識の研究をするようになったともいってました。
ペンローズは、ニューロンのマイクロチューブルの量子力学的振る舞いが意識に関係するんじゃないかって言ってます。
ただ、茂木さんも、最近は、マイクロチューブルは意識には関係ないよなぁって言ってます。
意識は量子力学だっていうのは、よくわからない意識は、よくわからない量子力学で解決するんじゃないかって以上の根拠はなかったんじゃないかなって思います。
意識を圏論で解明しようってアイデアも、それに近いんじゃないかなって思います。
圏論は、とにかく抽象度が高い話で、意識のような抽象的な概念を記述できるような気がしますから。
それに、なんといっても圏論は数学です。
科学のど真ん中にあるのは数学です。
意識を科学で扱うのに圏論はぴったりです。
こういうこともあって、意識科学と圏論が結びついたんじゃないかって思っています。
この雑誌には、土谷尚嗣先生と谷口忠大先生の対談もありました。
土谷先生は、統合情報理論を研究してて、谷口先生はロボットから記号を創発させようって研究をしてます。
二人は、クオリアといえば、茂木さんの影響が大きすぎるっていってました。
まぁ、たしかに、クオリアって言葉を一般に知らしめたのは茂木さんですし、対談でも、茂木さんが、今、どう考えてるのか知りたいって言ってました。
というのも、茂木さんは、統合情報理論に対しては否定的ですから。
意識は、確率統計じゃないって、ずっと言ってます。
茂木さんが『脳とクオリア』って本を書いたのが1997年です。
ペンローズの『皇帝の新しい心』が出たのが1994年なので、その3年後です。
僕も読みましたし、このころから、これからの科学は意識とかクオリアを扱わないといけないって気運が生まれました。
トノーニが意識の統合情報理論を発表したのが2004年のことで、意識に関心のあった多くの研究者が統合情報理論に飛びついたわけです。
この雑誌に登場してる土屋先生とか、大泉先生とかがその一派です。
これは僕の想像ですけど、たぶん、岩波も、今回の特集で、茂木さんに声をかけたんじゃないかと思うんですよ。
でもメンバーを見て、茂木さんも断ったんじゃないでしょうか。
僕も、意識について茂木さんがどう考えてるか知りたくて、YouTubeは、よくチェックしてます。
統合情報理論には、相変わらず反対してますけど、かといって、それに代わる理論はまだ見つけられてなくて、いつか、自分が見つけたいって意気込みは良く語っています。
その中で、気になる発言もしていました。
それは、意識って、どうも、AD変換してるんじゃないかって発言です。
つまり、物理世界のデータがアナログデータです。
それを、一種のデジタル符号化して、符号となったデータを扱うのが意識という考えです。
これ、僕の考えにかなり近いんです。
それでは、こっからは僕なりの意識の考えを述べたいと思います。
まず、現代の意識科学の一番の問題です。
それは、あまりにも漠然とし過ぎてるってことです。
意識って、未だ定義も決まってない抽象的な概念です。
そんな抽象的な概念に対して、意識とは統合された情報だとか、量子力学だとか、圏論だというのが現代の意識科学です。
これも、かなり抽象的な理論ですよね。
抽象的な概念を、抽象的な理論で説明しても、なにが解明されるのか、よくわからないです。
じゃぁ、なんでこんなことになったのかというと、最初にもいいましたけど、意識を科学で扱おうってことに執着しすぎてるからなんですよ。
量子力学とか情報量とか圏論とか、科学に置き換えることを最優先したため、どんどんわけがわからなくなっていると思うんです。
本当に正しい理論なら、それによって意識とか脳の謎を説明できるはずです。
でも、意識科学で解明できたことってあまりないんですよ。
解明できたことと言えば、自分が感じる赤と他人が感じてる赤はかなり近いってことぐらいです。
それから、統合情報理論だと、植物人間のように動かなくなった患者の脳波を測定することで、その患者に意識があるって判断した事例がありました。
他の医者は、その人は意識がなくて、何も感じてないだろうって言ってた患者です。
その人が、後に意識が戻ったとき、動かない間も意識があったって言って、意識があったことが証明されました。
これは、実際に役に立つ、凄いことだと思います。
でも、かなり特殊な例といえますよねぇ。
だって、意識とかクオリアといえば、もっと身近な疑問がいっぱいあります。
たとえば、言語とか、脳の中でどうやって意識やクオリアが生まれるとか生物学的な視点、それから自由意志も関係ありそうです。
ただ、そういったことが、統合情報理論や圏論から説明されたって話は聞いたことがありません。
実際、統合情報理論で計算すると、インターネットにも意識があることになるそうです。
そう考えると、情報統合理論って、本当に人間の意識を解明したことになるのか、かなり疑問です。
僕が思うに、意識科学がまず決めないといけないのは、解明しようとする意識の定義です。
まさか、インターネットにも意識があると証明したいための理論を作ろうとしてるわけじゃないと思うんですよ。
その点、ロボマインドは明確です。
ロボマインドが目指すのは、あくまでも、人間の意識です。
そして、次に考えないといけないのは、意識が生まれた理由です。
僕の考えでは、意識は哺乳類とかヒトとか、高度に進化した生物しか持ち得ません。
つまり、意識は進化によって獲得しました。
逆に言えば、意識を持たない生物もいるわけです。
意識を持たない生物は、ただ反応するだけです。
意識を持つことで、反応だけじゃなくて、考えて行動できるようになりました。
「ああして、こうしよう」とか、
「もし、こうなったら、こうしよう」とかって。
こう考えるのが意識です。
じゃぁ、考えるときに必要なものって何でしょう?
まず必要なのは、世界を認識することです。
信号が赤だとかって認識するわけです。
認識して、赤だから止まろうとか、青になったら、横断歩道を渡ろうって考えるわけです。
さて、今、認識したのは赤とか、青ですよね。
これがクオリアです。
つまり、クオリアとは世界を表現したものです。
でも、クオリアは外の世界に存在しません。
頭の中にしか存在しません。
じゃぁ、何のためにクオリアを作り出したのでしょう?
それは、意識が世界を認識するためです。
でも、そんなことしなくても、意識が直接世界を認識すればいいじゃないでしょうか?
なんで、わざわざ、クオリアを介して世界を認識するんでしょう?
それは、考えるためです。
もし青になったらって考えるには、頭の中に青信号を作り出さないといけませんよね。
でも、直接現実世界しか認識できないシステムだと、現実にないものを想像することができません。
いや、現実にないものを想像する必要なんか、ないんじゃないですか。
だって、赤なら止まって、青なら進むって決めとけばいいだけですから。
それが、意識のない生物です。
外界に対する行動が生まれる前から決まってる生物です。
生まれる前から決まっていたらそれも可能です。
でも、生まれる前に信号があるなんて分からないですよね。
それは、生まれた後に教えられるわけです。
「信号が赤なら止まりなさい」とかって。
この意味を理解するには、目の前にない現実を頭の中に思い浮かべられないといけません。
その仕組みが、クオリアと意識です。
そして、信号のルールを教えるときに使ったのが言葉です。
クオリアを使って世界を認識することで、言葉も生まれたわけです。
外の世界にある物を意識が扱えるデータに変換したのがクオリアです。
言い換えれば、外の世界にある物を符号化したのがクオリアというわけです。
さっき言った、僕と茂木さんの考えが近いってのは、このことです。
まだ続きますよ。
赤信号だけど、止まってたら、学校に遅刻するとします。
そんな場合、「自動車も来てないし、行っちゃえ」って信号無視することもできます。
今、そう判断したのは意識ですよね。
つまり、ルールがあるからと言って、それに従うかどうかは自分の意志で決められるんです。
つまり、自由意志です。
クオリアと意識の組み合わせで自由意志も獲得したと言えるんです。
昨日、面白いネットニュースを見ました。
オーストラリアのニセフトタマムシの話です。
なんでも、オーストラリアの「スタビー」というビール瓶が、ニセフトタマムシの魅力的なメスの条件にぴったり一致するとかで、捨てられたビール瓶にオスが吸い寄せられて、交尾をしようとするらしいです。
しかも、これが原因で、ニセフトタマムシが絶滅の危機に瀕してたそうです。
いやぁ、タマムシも「何かおかしいぞ」って思わないのかって思いますよね。
でも、そう思うのは、僕らがクオリアを使って世界を認識してるからです。
クオリアを持たずに、外界に反応して生きてる生物は、こうなってしまうんです。
これじゃぁ、絶滅しそうだってことで、ビールメーカーはビンの形状を変えたので、絶滅せずに済んだそうです。
これが自由意志を持てない生物です。
人は自由意志がないって考えが、今の科学や哲学の主流ですけど、僕は、人は自由意志があると思っています。
だって、どんなに魅力的に見える女の人がいたとしても、全人類がそれに群がって種が絶滅するなんてこと、絶対にあり得ないですよね。
男がいくらバカだといっても、そこまでバカじゃないですよね。
自由意志がないってのは、こういうことです。
自由意志の話は置いといて、僕が言いたいのは、意識やクオリアを考えるとき、全体を考えないと意味がないってことです。
全体を考えるっていうのは、意識が関係すること、全てをちゃんと説明できるってことです。
それが、言語とか、進化とか、脳とか心の関係です。
脳に関しては、今回取り上げなかったですけど、僕の理論ではクオリアは、側頭葉の腹側視覚路で生成されます。
それから、自閉症とか精神障害がどうやって起こるのかって理屈も、僕の理論で説明がつきます。
統合情報理論や圏論で、こういったクオリアや精神障害説明ができるってあまり聞いたことがありません。
そして、僕の理論は、それらを説明できるだけじゃなくて、実際に作ってもいます。
それが、プロジェクト・エデンです。
いま、説明したように、意識やクオリアは、本来、頭の外の世界を理解するための仕組みです。
そこで、プロジェクト・エデンでは、メタバースを使って、外の世界を作るところから始めています。
そして、メタバースで生きるAIアバターの頭の中に、意識やクオリアを生み出すシステムを作るわけです。
これが、意識の正しい探求の仕方だと思います。
逆に、今の意識科学の問題は、科学を意識しすぎてると思うんですよ。
なんとか、科学の仲間に入れてもらおうと、必死なんです。
その結果、見た目は数式とか量子力学とか科学っぽく見えるようになりました。
でも、本来解明すべき、肝心の中身が置き去りになってるんですよ。
その点、僕は、岩波の『科学』に取り上げてもらおうなんて思っていません。
僕が目指すのは、月刊『ムー』です。
いつか『ムー』でロボマインド特集が組まれることを目標にしています。
はい、今回の動画がおもしろかったらチャンネル登録、高評価お願いしますね。
それから、ロボマインドの意識理論に関して興味がある方は、こちらの本も読んでください。
それじゃぁ、次回も、おっ楽しみに!