第382回 人類は、いかにして意味を獲得したか


ロボマインド・プロジェクト、第382弾!
こんにちは、ロボマインドの田方です。

「自分は何のために生きてるんだろう?」って、誰もが一度は考えたことありますよね。
生きる目的とか、何のために生まれてきたのかとか。

でも、こんなこと考えるのは人間だけです。
動物は、何のために生きるのかなんか考えません。
そもそも、動物は「意味」を考えるんでしょうか?
たぶん、ここなんですよ。
動物と人間の一番の違いは。

人間は、ある時から意味を考えるようになったんですよ。
そのときから人間らしくなったともいえますし、人間の苦しみが始まったともいえると思うんですよ。

これは、東田直樹さんの「自閉症の僕が跳びはねる理由2」を読んでて思ったんですよ。

自閉症の人は、人類の古い時代の心が残っていると僕は考えています。
たとえば、自閉症の子は、強いこだわりがあったり、スケジュール通りに物事が進まないと怒ったり、パニックになったりします。

なんでそんなことでパニックになるのかわかりませんでした。
でも、これ、「意味」に注目すると、きれいに整理できるんですよ。
何のために行動するとか、意味を考えて行動するってことが、たぶん、人間になってできるようになってきたんですよ。
これが、今回のテーマです。
人類は、いかにして意味を獲得したか
それでは、始めましょう。

自閉症の子はこだわりが強いといいます。
たとえば、同じ食べ物しか食べなかったり、食べる順序が決まってたりとかです。
それから、ミニカーを見ると、一列に並べないと気が済まなかったりとか、スケジュール通りに厳密に行動したがるとかです。
それだけ好きなのかと思うと、そうじゃないみたいです。

東田さんの本を読むと、こだわりと好きとは違うようなんです。
自分でもやりたいわけじゃないけど、やらないと気が済まないと言うか、気持ちが悪いそうです。

これ、強迫症とかも同じだと思います。
外出した時、鍵を閉めたかどうか気になって仕方がないとか、何かに触ると、何度も手を洗わずにおれないとかです。
これなら、僕もちょっとわかります。

僕がいっつも散歩する道に、マンホールが規則的に並んでる道があるんですよ。
その道を歩いてて、マンホールを右足で踏んだら、次のマンホールを左足で踏まないと気持ち悪いんですよ。
ただ、マンホールの間隔が微妙に歩幅とずれてて、歩幅を調整しないといけないんですよ。
何とか次のマンホールを左足で踏んだら、その次のマンホールを右足で踏むために、また調整しないといけないから、なんかおかしな歩き方になってしまうんですよ。
だから、止めたいんですけど、なんか踏まなかった足の裏がムズムズして気持ち悪いんですよ。
あれって、なんなんでしょうねぇ。
たぶん、自閉症の人のこだわりとか強迫症って、これのもっと強烈な感じやと思います。

さて、これを心の進化から読み解いていきます。
たとえば、動物は人間みたいに考えて行動してないと思うんですよ。
シマウマがライオンに追いかけられて逃げてるとするでしょ。
このとき、捕まったら食べられるから、必死で逃げなあかんとかって思ってるでしょうか?

そんな風に考えるのは人間だけです。
シマウマは、ライオンを見たら、走りだしてるんです。
何か考えて行動してるわけじゃないんです。

逃げてて、目の前に大きな岩が出てきたらよけます。
これ、「このまま走ったら岩にぶつかるからよけよ」とか考えてるわけじゃありません。
考えずに方向転換してます。

何が言いたいかわかりますか?
動物の行動は、外部環境が決めてるんですよ。
頭で考えてないんですよ。
考えて行動するのは人間だけです。

動物が感じてる世界観は、分かりやすく言えば、ゲームのスーパーマリオみたいなものです。
(第380回の6:22~で使ったマリオの動画)
決められたルートがあって、スタートすると世界が進み始めて、決められたことが起こると決められたアクションをするって世界です。
ブロックがあったらジャンプして崩すとか、キノコがきたらジャンプしてやっつけるとかです。

世界にはルールがあって、ルールに従って動かないといけないって世界観です。
ルールに従わないといけないっていうのは、マンホールを交互に踏まないといけないと感じたり、何かに触ると手を洗わずにおれないと感じるのと同じです。

じゃぁ、そのルールを作ったり、ルールに従わなかったら気持ち悪く感じさせているのは誰でしょう?
それは、無意識です。

無意識が、ルールに従って体を動かしてるわけです。
どうやって動かすかというと、そうせずにおれないように感じさせるんです。

ライオンが追いかけてきたら、恐怖って感情を作り出すわけです。
電車でつり革に触ったら、手を洗わないと気持ち悪いって感じさせるんです。
無意識は単純なルールに従って感情を発生させて体をコントロールします。
これは、考えて行動してるのとは違います。

じゃぁ、考えてるのは何でしょう?
それは意識です。

意識は進化の過程で生まれました。
おそらく、哺乳類ぐらいまで進化して意識が生まれたと思っています。
ただ、動物は、意識より無意識の影響が強いです。
だから、ほどんどの行動は感情に従った行動です。

スーパーマリオの世界なら、キノコやカメにぶつかったら死にますし、アフリカのサバンナなら、ライオンに食べられたら死にます。
そんな単純な世界なら、無意識が作りだしたルールに従っていれば、それほど問題はありません。

でも、現代社会はそれほど単純じゃありません。
いろんなリスクがあります。
鍵をかけないと泥棒に入られるとか、物にはバイキンがついてるとかです。
無意識は、そんなリスクから体を守るために様々なルールを作り出します。
それが、「ちゃんと鍵をかけてきたか?」って不安に思わせたり、つり革に触ったら「手を洗いたくなる」って思わせたりするわけです。
これが強迫症です。

このぐらいは、まだ分からないわけじゃありません。
なかには、マンホールは交互に踏まないといけないとか、ミニカーは一列に並べないといけないとか、よく分からないルールもつくり出すんです。

こうなると、意味がわからないですよね。
はい、出てきました。
「意味」です。

ようやく出てきました。
今回のテーマ、「意味」です。

意味があるとか、意味がないとか。
これ、一体、誰が考えてるんでしょう。

それは意識です。
ここで、意識と意味が結びつくんです。

ここで、整理します。
動物の体は無意識が制御しています。
どうやって制御するかというと、感情や感覚を使うわけです。
危険から遠ざけるために、ルールに従って恐怖や不安って感情を作り出すわけです。

起点は外部環境です。
ライオンが来たとか、つり革に触ったとかです。
無意識は、それを感覚器で知覚して、ルールに従って感情を発生させます。
その感情を感じ取った体は、逃げだしたり、手を洗いたいって衝動で行動するわけです。
これが動物が生きてる世界観です。

それじゃぁ、意識は、この世界観にどうかかわってくるんでしょう?
それは、今までの行動に疑問を投げかけるんです。
「これって、本当に意味があるの?」って。

マンホールを交互に踏む意味があるの?
ミニカーを一列に並べる意味があるの?って。
これ、新しい行動原理ですよね。

今までの行動の原動力は、恐怖とか不安って感情です。
新たに獲得した行動の原動力は、感情とは違います。
じゃぁ、それは何でしょう?

それは、言ってみれば理性です。
合理的とか理屈です。
恐怖とか不安は脳の中の偏桃体から生みだされます。
具体的には、ドーパミンなどの神経伝達物質です。
これが動物の体を支配していました。

理性は、神経伝達物質とは違います。
物理的な物質じゃなくて、理屈です。
いってみればソフトウェアです。
もっといえば、情報です。
今までと全然違う次元にあるんです。

そして、情報で体を動かすんです。
これって凄いことですよ。
だって、物理的に存在しない情報が、物理的存在である肉体を動かすんですから。

そう考えたら、とんでもない進化が起こったといえますよね。
だって、情報は、物理世界から抜け出た、別次元にありますから。
それが情報世界です。
情報世界から物理世界にある、この肉体を制御して動かすんです。

または、物理世界に縛られてた肉体を自由にしたとも言えます。
そして、情報を処理するのが意識です。

意識は、外部環境に対して、どう行動したら、目的とする結果が得られるかを判断します。
そして、目的とする結果が得られること、それが「意味がある」ことです。

それじゃぁ、意識が今までと何が違うか分かりますか?
今までは、無意識が作ったルールに従うことしかできませんでした。
つまり、ルールを変更できないんです。
単純な世界なら、それでも問題ありません。

でも、社会が複雑になると、ルールが正しいか評価する仕組みが必要になってくるんです。
そして、評価するのは意識です。
そして、評価の基準となるのが意味です。
だから、頭の中で、つねに何か考えています。

これって意味あるの?
もっと合理的な方法あるんちゃうの?
とかって。

そうやって、意識を獲得した人類は、あらゆる行動に意味があるかどうかで考えるようになりました。
というか、意味を考えずにおれないんです。
だから、「自分は、何のために生きてるのか」なんてことで悩むんです。

でも、そんなことで悩む必要なんてないんです。
そんなことで悩むのは、意識を獲得して意味を求めるようになったからです。
この地球上のほとんどの生物は、意味なんか求めてません。
意識を獲得することで、人は常に意味を考えずにおれなくなりました。

東田さんは、自分のことを原始人の心が残ってるといいます。
原始人の心だと、考えた通りに手足を動かすのが難しいそうです。
動物の行動様式と、人間の行動様式の狭間でもがいてるんでしょう。

東田さんは、「どんな時に安らぎますか?」って質問に「水の中にいるとき」と答えています。

水中ではとてもゆったりして、手足をどう動かせばいいのか考える必要がないって。
言葉もいらない、宇宙を漂っているようだって。
そんな時、ほんとうの自由を感じるって言ってます。

同じようなことは、ジル・ボルト・テイラーも言っていました。
左脳が脳卒中になって、右脳で感じる世界を体験したジル・ボルト・テイラーの話は、このチャンネルで何度も取り上げました。
ジルは、脳卒中になった時、体の感覚が消えたといってました。
自分の肉体と、世界の境界がだんだん消えて、やがて世界と一体となったそうです。
そのとき、頭の中で一切の思考が消えたそうです。
そして、この上ない幸福感を感じたそうです。

体が存在しないと、意味も消えるみたいです。
そして、本当の幸せは、思考とか意味が消えたところにあるようです。

生きる意味とか、意味に押しつぶされそうになったら、このことを思い出してください。
本来、意味なんか存在しないんです。
体を感じなければ、自分も意味も消えるんです。
そうして、宇宙と一体になったとき、本当の自由を感じるんです。

はい、今回の動画が面白かったらチャンネル登録、高評価お願いしますね。
それから、よかったらこちらの本も読んでください。
それじゃぁ、次回も、おっ楽しみに!