ロボマインド・プロジェクト、第405弾!
こんにちは、ロボマインドの田方です。
今見て、目の前にあると感じてる世界って、目の前にあるんじゃなくて、脳の中にあるんです。
そんな話は、今まで何度もしてきましたけど、最近、脳関係の動画を見てて、どこまで分かってきてるかがはっきりしてきました。
逆に言えば、これ以上は、脳科学じゃわからないって限界も見えてきました。
それはなにかっていうと心です。
考えたり、ドラマを見て感動したりする心です。
一番身近な部分なんですけど、これがほとんどわかってないんです。
そこで、今回は、脳科学で分かってる部分を明確にして、なぜ、心が分からないかを徹底解説いたします。
これが、今回のテーマです。
脳科学で、なぜ、心がわからないのか?
それでは、始めましょう!
まずは、目で見たものを、どうやって認識するかを見ていきます。
目からの情報は、後頭葉の一次視覚野に映し出されます。
これは知ってる人もいると思いますけど、実は、見た光景がそのまま一次視覚野に映し出されるわけじゃないんですよ。
ここ、ちょっと複雑なんで、丁寧に説明しますね。
左の眼球は1~4の視野があります。
右の眼球は2~5の視野があります。
それが脳の一次視覚野に送られるんですけど、その時、左側の視野は右脳、右側の視野は左脳に送られます。
これは分かりますよね。
問題は、こっからです。
この図、よく見てください。
1~2の左端の部分、女性の右手がありますよね。
これが一次視覚野のどこにくるかというと、中央なんですよ。
一次視覚野の1って書いた部分です。
同じように4~5の部分も中央の5と書いた部分に来ます。
逆に中央の女性の顔の3は、一次視覚野だと左側半分が右端の3に行きます。
顔の右側半分が左端の3に行きます。
つまりね、見てる光景が真ん中で分解されて、左右バラバラに投影されてるんですよ。
これ、どう考えてもおかしいでしょ。
だって、今、僕らが見てる光景はバラバラになってませんよね。
端から端まで連続につながっていますよね。
これ、意識が見てるのは、一次視覚野に投影された光景を見てるわけじゃないってことです。
じゃぁ、何を見てるんでしょう?
それは、これを基に再構築した仮想世界です。
現実世界を直接見てないってことなんです。
じゃぁ、一次視覚野は何をしてるんでしょう。
それを見ていきます。
これは、一次視覚野の2ミリ四方の断片です。
これが一つの皮質モジュールを構成します。
皮質モジュールは6層になっていて、左右の目からの情報は中央の第四層に到達します。
一つのモジュールには上下に伸びる円柱があって、それぞれちょっとずつ傾きが違う線に反応します。
つまり、ここで何度の角度の線かを判定するわけです。
まず、行うのは、見えてる光景を小っちゃくわけて、それぞれの線の傾きを判定するわけです。
だから、全体がバラバラでも気にしないんです。
それに、こんな処理やってるなんか気づかないでしょ。
意識が気づくのは、もう少し処理が進んだ先です。
一次視覚野の情報は頭頂葉に向かう経路と側頭葉に向かう経路の二つに分かれます。
頭頂葉に向かう経路は「Whereの経路」とか「どこの経路」といわれて、空間的な位置を解析します。
側頭葉に向かう経路は「Whatの経路」とか「何の経路」といわれて、形や色を解析します。
たとえば、ニンジンがあるとします。
これを何の経路でどう解析するかというと、色を2色にわけたり、グレースケールにしたり、輪郭を抽出したり、輪郭の一部を取り出したりして、基本的な形に分解していきます。
右に示してるのは基本的な形の一例です。
色とか、模様とか、星とか三角って形がありますよね。
ニンジンを、こんな基本的な形の組み合わせで再現するわけです。
つまり、ニンジンは、どれとどれの基本形の組み合わせからなるって記憶してるんですよ。
これがニンジンを見分けられるってことです。
つまり、ニンジンを見たとき、これらの組み合わせを含めば、「ニンジンだ」って思うわけです。
これがものを見てわかるってことです。
側頭葉には、こんな基本的な形に反応する神経細胞がいっぱいあるわけです。
さらに、側頭葉には、単純な形だけじゃなくて、もっと複雑なものに反応する脳細胞があります。
たとえば、これをみてください。
青の部分は、物体に反応します。
「何かものがある」って思ったとき、反応する部分です。
赤の部分は顔に反応します
これがあるから、木の木目をみただけで、「顔がある!」って思うわけです。
緑の部分は、場所に関して反応します。
たとえば、建物とか風景、それから家具のレイアウトなんかに反応します。
黒い部分は、生き物の動きに反応するんです。
これはちょっと面白いですよ。
たとえば、これ見てください。
人が歩いてるって感じますよね。
そう感じるってことは、この部分が反応してるってことです。
歩いてるとか、走ってるとか、ボールを投げてるとかって、人の動きは見たらすぐ分かるでしょ。
足をこう動かしながら手をこう動かしてるから、歩いてるにちがいないって理屈で考えないでしょ。
パッと見てわかるんです。
パッと見てわかるってのは、見て判定する脳細胞があるってことです。
それから黄色い領域は、人の体のパーツに反応します。
腕とか足とかって体の部分に選択的に反応します。
こうやって見てみると、人がどうやって世界を認識してるかってわかってきますよね。
そして、意識が認識してるものが言葉になるわけです。
顔とか家とかって名詞から、歩くって動詞まで、それに反応する脳細胞があるわけです。
脳の中で、もう、ここまで解明されてきています。
脳科学ってすごいですよね。
だから、つい、これが脳のすべてだって思ってしまうんですよ。
実際、脳科学の本を読んでも、ほぼこう言った内容で埋め尽くされています。
でも、それは大きな勘違いです。
脳でわかっているのは、まだ半分です。
分かってないことが、まだ半分あります。
その半分っていうのが、心です。
具体例を挙げましょう。
今まで何度も取り上げたヘレン・ケラーの話です。
ヘレンは、目も見えず、耳も聞こえません。
そんなヘレンに、サリバン先生は何とか言葉を教えようとしていました。
左手にカップを渡すと、右手にさっとCupって書きます。
左手に人形を渡すと、右手にさっとDollって書きます。
頭のいいヘレンは、すぐにできるようになりました。
でも、それは物に触れると、それに応じた動きをするって覚えただけです。
名前って概念を理解したわけじゃありません。
そこで、サリバン先生は、カップに水をいれて、中に入ってるのが水、入れ物がカップと理解させようとしました。
でも、ヘレンはこれが良く理解できませんでした。
このころのヘレンは、思い通りにならないとすぐに癇癪を起していました。
この時も、持っていた人形を床にたたきつけて壊してしまいました。
その後、サリバン先生が散歩に行く準備をすると、今度は大喜びです。
そのときの状況によって、ころころと感情が変わります。
まるで動物のようです。
その後、サリバン先生と井戸に辿り着きました。
映画や劇の「奇跡の人」で有名な井戸のシーンです。
サリバン先生が井戸の水を流して、ヘレンは冷たい水を左手に感じました。
サリバン先生は、右手に素早くwaterって綴りました。
最初は、はしゃいでましたけど、急に、ヘレンの表情が変わりました。
何かに気づいたようです。
今、左の手のひらを流れているものはwaterだ。
それは、今朝、カップの中に感じたものと同じだ。
状況は違うけど、どちらも同じwater。
もしかして、waterというのは、この流れてる水、そのものを指しているの?
もしかして、物自体を、別の方法で指し示す方法があるってこと?
ヘレンは、ついに、「名前」って概念を獲得したんです。
その時までに、ヘレンの脳の中には、いろんなものに反応する脳細胞はできていました。
つまり、この世界には、いろんなものがあるってことは理解してたわけです。
今、それに名前を付けることができるってことを理解したわけです。
さて、本当の事件はこの10分後に起こりました。
物には名前があるって理解したヘレンは、帰り道、手に触れる物、全ての名前をサリバン先生に聞きました。
家に帰るまで、30もの名前を覚えたそうです。
そして、家に帰ってきました。
部屋に入ると、足元に何かを感じました。
それは、人形の破片でした。
今朝、癇癪を起して床にたたきつけて壊した人形の破片でした。
それは、サリバン先生にもらった大切な人形でした。
そのことを思い出したヘレンは、自分はとんでもないことをしたと、今になって気づきました。
そして、ヘレンは壊れた人形を抱きしめて涙を流しました。
生まれて初めて、後悔って感情を感じたんです。
今朝までのヘレンは、嫌なことがあると癇癪を起して、楽しいことがあるとすぐに喜んでました。
まるで動物のようです。
それが、今は、自分の犯した罪を後悔するようになったんです。
これぞ、まさに人間の心ですよね。
人間の心をヘレンは獲得したんです。
でも、それが脳のどこにあるのか、脳科学の本には一切書いてないんですよ。
こんな大事なことが未だに脳科学じゃわかってないんですよ。
これは大問題ですよね。
でも、あまりこのことは誰も指摘しないんですよ。
もちろん、気付いてないわけじゃないです。
ただ、まだわかってないだけだと思ってるみたいなんです。
今、脳科学は、BMIの時代になってきました。
脳に直接チップを埋め込んで、脳からデータを読み出す時代です。
イーロンマスクが立ち上げたニューラリンクもそれです。
BMIの臨床実験をするには、米FDAの厳しい審査を通らないといけません。
ニューラリンクは、初めてそれに通って、年内にも人で臨床試験を行うそうです。
それができるようになったら、心の中身も読み出すことできますよね。
って、そんな甘くないんですよ。
なんで甘くないのか。
今の脳科学の延長じゃ、心は見えないんですよ。
その理屈を、みんなわかってないんですよ。
じゃぁ、いまから、それについて説明します。
さて、ヘレンは物には名前があるって知ってから後悔って感情を理解できるようになりました。
なんででしょう?
その鍵は言葉にあります。
でも、言葉なんかなくても、後悔を表現できるんじゃないでしょうか?
たとえば、映像です。
自分が人形を床にたたきつけて壊す映像を脳内に流すんです。
それを見れば、後悔するって感情が生まれるじゃないですか。
さて、そうでしょうか?
たしかに、人形をたたきつけたのはヘレンですから、原因はヘレンになりますよね。
でも、その映像に、それが表現されるでしょうか?
見ようによっては、人形が壊れたのは床が硬いからとも言えます。
または、人形を何かと勘違いして床にぶつけたのかもしれません。
少なくとも、映像だけからは何とでも言えます。
じゃぁ、どうやれば正しく伝えれるでしょう?
それが、言葉です。
「自分が人形を壊したから」と言葉にすれば、誤解のしようがありません。
これを、脳で考えていきます。
人がいるとします。
それを見たとき、顔だったり、歩いてる動きだったり、いろんなものに反応する脳細胞があるわけです。
そのうち、どれに注目するかを指し示さないといけません。
その時必要となるのが言葉です。
たとえ言葉を使わないにしても、何かを指し示す必要がありますよね。
ヘレンの場合はどうでしょう?
まず、今朝の出来事、つまり、人形を床にたたきつけて壊した状況を指し示す必要があります。
さらに重要なのは、ヘレンが自分の意志で人形を壊したことです。
それから、時間の概念も理解してないといけません。
過去に戻ることはないってことです。
その上で、人形を元に戻したいと思ってるわけです。
こういった自分の意志や気持ち、時間の概念って、映像じゃ表現できません。
じゃぁ、どうすればいいでしょう?
それは、出来事のうち、必要な要素を指し示すわけです。
そして、それを因果関係でつなげます。
自分が行った行為が原因で良くない結果となった。
できることなら、元に戻したいと思ってる。
でも、時間は元に戻せない。
つまり、自分は、取り返しのつかないことをしてしまった。
これが後悔という感情です。
分かりましたか。
後悔の感情を理解するには、時間とか、原因結果といった関係を理解しないといけないんです。
これは、名詞や動詞って単語の理解とは違います。
物の形は脳細胞の組み合わせで作れます。
動きも、脳細胞で作れます。
これらに名前をつけることもできます。
名前を付けるってことは、一種の記号化です。
ここまでは脳細胞に対応してます。
問題は、関係です。
時間なら時系列関係です。
原因結果も関係です。
記号化したものを関係でつなげるんです。
それは一種の文になります。
必要なのはそれだけじゃありません。
「~したい」とか、「できる」「できない」とかって文法機能も必要です。
そうやって記号化したものをつなげて文を作るわけです。
「~したいけど、~となった原因は自分にあって、もう元に戻せない」
これが文です。
ここから生まれるマイナス感情が後悔です。
ただの嫌とは違います。
ただの嫌なら、今までのヘレンや動物でも持ってます。
でも、後悔は人間しか持てない複雑な「思い」です。
そして、その思いは、脳の中に見つからないんですよ。
でも、どっかにはあるはずですよ。
でも、今、この脳細胞だって言えないんです。
なぜでしょう?
それは、「思い」は文で表現されたものだからです。
文は、単語を関係とか文法機能でつなげて作ります。
単語は、脳細胞の組み合わせで出来たものを指し示す一種の記号です。
問題はここです。
記号化された時点で、その記号は、脳細胞と直接のつながりが無くなるんです。
そっからあとは、記号をつなげたり、入れ替えたり記号操作です。
そのときは、もう脳細胞からは完全に切り離されてるんです。
おそらく、記号操作空間のようなものがあって、文はそこで作られるんでしょう。
この記号操作空間、これが脳のどこにあるのかわからないんです。
だって、それは脳細胞とは完全に切り離されてるからです。
いくら脳にチップを埋め込んでも読みだせないんです。
これが、脳科学の限界なんです。
じゃぁ、どうすればいいんでしょう?
心は科学で解明できないんでしょうか?
いえ、一つだけ方法があります。
それは、脳内で行ってるのと同じ仕組みをコンピュータで作るんです。
作りながら解明するわけです。
この方法を、構成論的アプローチっていいます。
ただ、そのやり方をやってるところはどこにもないんですよ。
世界で唯一、それをやってるのがロボマインド・プロジェクトです。
はい、今回の動画が面白かったらチャンネル登録、高評価お願いしますね。
それから、僕らが作ってる心の理論については、こちらの本に詳しくかいてありますので、良かったら読んでください。
それじゃぁ、次回も、おっ楽しみに!