ロボマインド・プロジェクト、第407弾!
こんにちは、ロボマインドの田方です。
サブリミナル広告って聞いたことありますか?
有名なのは、1956年に広告業者のジェイムズ・ヴィガリーが、ニュージャージー州の映画館で行なった実験です。
ウィリアム・ホールデン主演の映画『ピクニック』の上映中に、「ポップコーンを食べろ」「コカ・コーラを飲め」ってメッセージを1/3000秒だけ挿入しました。
1/3000秒って、人間には知覚できません。
それを、5秒おきに流したそうです。
実験は6週間続けられて、入場者は延べ4万5000人にのぼりました。
その結果、ポップコーンの売り上げが57.5%、コカ・コーラの売り上げが18.1%も増加したそうです。
これがサブリミナル広告です。
これは危険だと判断されて、1958年には連邦ラジオテレビ放送事業者連盟がサブリミナル広告を放送しないと自己規制に踏み切りました。
ところが、この実験、今では、かなり疑問視されています。
今回のネタ本はこれです。
『狼少女はいなかった:スキャンダラスな心理学』です。
作者は実験心理学が専門の新潟大学の鈴木光太郎教授です。
この本には、歴史的に有名な心理学の学説のなかの捏造事件を取り上げています。
タイトルの狼少女は、このチャンネルでも取り上げたことがあるインドの発見された狼に育てられた少女、カマラとアマラの話です。
狼少女の本、僕も読んで、信じてたんですけど、完全な捏造だったんですよね。
それで、この本には、サブリミナル広告の実験も、捏造じゃないかって取り上げています。
実は、僕は、サブリミナル広告、学生時代、結構本気で調べたことがあったんですよ。
なんで調べたかっていうと、当時、テレビCMでサブリミナル広告が頻繁に放送されてたんです。
でも、このことは、一般にはほとんど知られていません。
僕は、それを偶然発見したんです。
何度か語ったことがあると思いますけど、ロボマインド・プロジェクトの始まりは物語の自動生成です。
AIで面白い物語を生成しようとしたんですけど、そのためにはコンピュータに意識を発生させないといけないとなって今にいたるわけです。
その面白い物語を作ろうってきっかけとなったのが、学生時代、夢中になって見てた海外ドラマ、デヴィッド・リンチの『ツインピークス』です。
1992年のことです。
深夜に放送してて、ビデオで録って見てたんですけど、時々、CMがチラ、チラってすることに気づいたんですよ。
まぁ、特に気にも留めてなかったんですけど、ある時、何が映ってるんだろうと思ってスローで再生してみたんですよ。
そしたら、当時、CMで繰り返し放送してた英会話学校NOVAのCMの一シーンでした。
NOVAと言えば、NOVAうさぎが有名ですけど、その当時はまだNOVAうさぎはいませんでした。
その頃のNOVAのメインキャラクターは、このおばあちゃんです。
このおばあちゃんが、ツインピークスのCMに一瞬だけ、毎回、映るんですよ。
このことに気づいて、サブリミナル広告について調べてたら、広告業界の意外な事実が見えてきました。
えっ、こんなに簡単に消費者をコントロールできるのって、正直、驚きました。
これが今回のテーマです。
CM業界の闇
サブリミナル広告の真実!
それでは、始めましょう!
さて、1956年に行われた実験ですけど、1/3000秒の映像を挿入したと言ってましたけど、まず、こっからが怪しいです。
だって、1/3000秒って3000フレームレートです。
フレームレートっていうのは、動画1秒に何枚の画像を表示するかです。
映画だと24~60フレームレートです。
3000フレームレートで映画を上映するなんて、当時の技術じゃ不可能なんです。
しかも、この実験、論文も報告書も存在しないし、学会で発表もされていません。
ただ、ヴィガリーが言ったことが新聞や雑誌の記事になっただけです。
それが、本人が思った以上に噂が広がったそうです。
論文にもなってないので、実際にどんな実験をしたのか詳細は分かりません。
たとえば、コーラの売り上げなんか、気温によってかなり変わります。
店のどの位置に置くかでも売り上げはかわりますけど、そういった詳細が一切不明なんです。
ただ、人が知覚できない閾値以下の刺激が潜在意識に与える影響がないとはいえません。
ただ、証明するのは難しいです。
だって、本人が気付かずに行動してるわけですから、たまたまなのかどうかが分からないわけです。
ただ、もし本当なら、消費者を無意識で操ることになるので、アメリカでは急いでサブリミナル広告を禁止したわけです。
でも、日本はそうはなりませんでした。
少なくとも、1990年代はサブリミナル広告は日本では禁止されていませんでした。
それをいいことに、日本では、CMにサブリミナル広告を、こっそり忍び込ませることがあったみたいなんですよ。
さっきも言いましたけど、一番激しくサブリミナル広告を出していたのがNOVAでした。
当時の日本はバブルの真っただ中で、海外旅行や英会話がブームになってました。
そんなか、NOVAのテレビCMの量は半端なくて、かなり広告費をかけてたのは間違いないです。
ただ、後にNOVAは倒産しました。
なんで倒産したかっていうと、英会話教室のビジネスモデルです。
NOVAがやったのは、英会話チケットの前売り販売です。
チケットをまとめて買った方がお得だといって、なんと、3年分のチケットを買わせていました。
それがちゃんと消化できてたら問題ないんですけど、バンバンCMをしてたせいで生徒はどんどん増えてたので、みんな、予約が取れなくて、そのまま期限切れになるってパターンが多かったんですよ。
僕も、当時、友達からNOVAのチケットあるから使わないって言われたことがあります。
そんな無茶な売り方をしてたせいで、生徒から訴えられて返金に応じないといけなくなって資金が回らなくなって倒産したわけです。
当時から、そんな悪い噂をきいてたので、あのNOVAならサブリミナル広告をしててもおかしくないって思いました。
たぶん、その友達も、サブリミナル広告を見てNOVAに通うことになったんじゃないかって思ってました。
それで、サブリミナル広告に興味を持っていろいろ調べたんですよ。
当時は、ネットがまだなかったので本を探しました。
そしたら、『潜在意識の誘惑』って本が見つかりました。
作者は、ウィルソン・ブライアン・キィです。
この本は、なかなか面白かったですよ。
さっきも言いましたけど、アメリカではラジオやテレビでサブリミナル広告を流すことが禁止されました。
でも、禁止されたのは放送だけです。
放送以外の広告は禁止されていません。
それをいいことに、あちこちにサブリミナル広告が使われはじめたそうです。
それを暴いたのがこの本です。
どういったものかというと、広告写真にこっそりとサブリミナル刺激を忍び込ませるんです。
たとえば、これは、さっきの本の原書です。
キィがいうのは、何気ない写真に動物や人の顔を忍び込ませるそうです。
意識では気づいてないですけど、潜在意識がそれに気づくことで、妙に、その広告が気になるわけです。
さて、この本の表紙の写真、何か気になりませんか?
それじゃぁ、アップにしますよ。
氷の表面に、もの憂げな男の顔が見えるでしょ。
意識してなくても、潜在意識は、この男に気づいてるんです。
お店で、この写真を使ったお酒のポスターを見たとき、何か気になって、つい買ってしまうんです。
この本には、こんな広告の例がいっぱい載ってました。
そう思って、身の回りの広告写真を見てたら、動物とか人の顔とか、いっぱい見つかりました。
これが広告業界かって驚きました。
サブリミナル刺激の基になってる考えは、フロイトです。
フロイトは、無意識を発見したことで有名ですよね。
特にフロイトが唱えたのは性的抑圧です。
人は、無意識に性的な欲求を抑圧してるというわけです。
フロイトの有名な理論に、エディプスコンプレックスというのがあります。
男の子は異性である母親を独占したいと思います。
でも、そのことを父親に知られると、父親から去勢させられるのじゃないかって不安に感じます。
これがエディプスコンプレックスです。
フロイト心理学では、人間の根源にあるのは性的抑圧です。
だから、キィがいうのは、性的なシンボルが最も効果があるとのことです。
広告写真にもかなり使われてるそうです。
しかも、このことは、フロイトのはるか以前から知られていて、中世の宗教画にも見られるそうです。
宗教こそ、広告以上に、人々をひきつけなければいけませんから。
たとえば、これです。
一見、ただのキリストのはりつけの絵に見えますよね。
でも、よく見ると、お腹に男性シンボルが描かれてるんですよ。
キィが言うには、この世はサブリミナル刺激だらけなんです。
さて、サブリミナル刺激の中でも最も強力なのが放送です。
アメリカでは禁止されましたけど、日本では禁止されてません。
Wikipediaによると、当時は、結構、テレビにサブリミナルを忍ばせてる例があったようです。
たとえば、オウム真理教が日本を震撼させてた1995年5月、日本テレビ系列のテレビアニメ『シティ・ハンター』で麻原彰晃の顔が1フレームだけ挿入されたことがTBSにすっぱ抜かれて問題となりました。
この話はこれで終わりませんでした。
その翌月、今度は、逆にTBSのオウム真理教関連番組で、麻原の顔などの画像を関係のないところで、何度も挿入してたことが、日本テレビにすっぱぬかれました。
それ以外に、テレビ番組「マネーの虎」のオープニングに1万円札が一瞬映るとして問題視されたこともありました。
結構、日本のテレビはサブリミナルを積極的に取り入れてたんです。
ただ、オウム真理教のサブリミナルは、当時、かなり話題となったので、1995年には日本でもテレビでサブリミナル刺激を禁止することが禁止されました。
たとえば、NHKの番組基準には、
「通常知覚できない技法で、潜在意識に働きかける表現はしない」って明記されましたし、
同じ内容は、民放の放送基準にも明記されました。
これで、日本のテレビから、一切のサブリミナル広告が消えました。
ところが、2004年に、またもやサブリミナル疑惑が持ち上がったんです。
報道したのは『週間現代』と『週間実話』です。
CMに一瞬だけ、別のCMのフレームが写ってることが確認されたんです。
たとえば、この名探偵コナンです。
分かりましたか?
それじゃぁ、スローにしますね。
見えましたか?
直前まで、広島ガスの広告でしたよね。
それが、番組が始まる直前、大阪ガスの広告のフレームが挿入されたんですよ。
さて、これの意味、分かりますか?
じつは、これは意図的じゃないんですよ。
この現象が起こった原因は、地方局で放送するとき、CMを差し替えるからです。
『名探偵コナン』は大阪の読売テレビ制作です。
それを、地方局に配信されるとき、CMだけ、その地方のCMに差し替えられます。
そのとき、一瞬、元の大阪のCMが残ることがあるんです。
だから、広島ガスの広告の後に、一瞬、大阪ガスのCMが映ったんです。
つまり、サブリミナル広告じゃなかったんですね。
調べたら分かることなんですけど、『週間現代』と『週間実話』は、それを大げさにサブリミナル広告だって騒ぎ立てたわけです。
これで、ぼくの長年の疑問も解消されました。
たぶん、NOVAもそれだったのでしょう。
当時、かなりCMを流してたので、差し替えるとき、NOVAのCMの最後の1フレームが残ることがあったんでしょう。
NOVAさん、30年以上、疑ってまして、申し訳ないです。
それから、ウィルソン・キィの本も、いまではトンデモ本扱いになってます。
見ようと思ったら、いろんなとこに顔が見えますからね。
ただ、まだ、信じてる人もいますけど。
まぁ、その意味で言ったら、フロイト心理学も、僕はトンデモ心理学と思ってますけど、こちらも、未だに信じてる人はいっぱいいますよね。
はい、今回の動画が面白かったらチャンネル登録、高評価、お願いしますね。
それから、よかったらこちらの本も読んでください。
それじゃぁ、次回も、おっ楽しみに!