ロボマインド・プロジェクト,第416弾!
こんにちは,ロボマインドの田方です.
このチャンネルでは,盲視の話は何度も取り上げてますよね.
脳が損傷して目が見えなくなったって話です.
眼球は機能してるけど,脳内の情報処理で見えなくなったわけです.
今回の主人公は,交通事故で色が消えたジョナサンです.
網膜に異常はないけど,大脳が損傷することで色盲となったわけです.
ネタ元は,今回も,オリヴァー・サックスの『火星の人類学者』です.
色がわかるって当たり前のことですよね.
だって,この世界には色があって,それを見てるだけですから.
でも,じつは,この時点で間違ってるんですよ.
色って,電磁波の可視光のことです.
まず,わかって欲しいのは電磁波は波長だけで決まるので1次元だってことです。
ということは,表現できるのは濃淡だけです.
白黒のグレースケールにならないとおかしいんです。
こう言うと,網膜には赤緑青の三原色に反応する錐体細胞があって,その組み合わせで色が見えるって言うと思います.
それは間違ってないです.
でも,ジョナサンは眼球は損傷していません.
ちゃんと脳に三色の情報は送られています.
それなのに,色を全く識別できなくなりました.
事故後,トマトは真っ黒に見えるそうです.
トマトジュースも真っ黒です。
すべてが白黒に見えます。
なので、食欲もなくなりました。
赤いトマトを思い出そうと思っても,思い浮かべるトマトも真っ黒だそうです.
色のついた夢も見れなくなったそうです.
色が見えるって,一体,どういうことなんでしょう?
これが今回のテーマです.
世界に色など存在しない
あるのは脳の中だけだ!
それでは,始めましょう!
ジョナサンは,事故後,世界から色が消えました。
でも、逆に視力は良くなったそうです.
なんと,100m先の毛虫も見えるようになったそうです.
それから,興味深いのは,文字も読めなくなったそうです.
町の看板とか,本とか,普段見慣れてる文字が,ギリシャ文字とかヘブライ文字に見えるそうです.
これ聞いて思い出した話があります.
僕は,都市伝説が大好きです.
タイムリープしたとか,パラレルワールドとかって話をYouTubeでよく見ます.
パラレルワールドっていうのは,この世界とそっくりの世界が無限に存在するって説です.
何かの拍子にパラレルワールドに迷い込んだ人って、意外といるんですよ。
パラレルワールドにも、この世界と同じ町があって,同じ人が住んでるそうです.
ただ、パラレルワールドって,ちょっとずつ違っていて,近いパラレルワールドはほとんど一緒で,離れるほどかなり違ってきます.
だから、近いパラレルワールドに行った人は,最初,気が付かないらしいんですよ.
でも,ちょとした違いがあって,それで気づくんです.
その違いで多いのが,文字なんですよ.
看板の文字とか,コンビニに入ってみた雑誌の文字が,見たこともない文字で書かれてるそうです.
かなり近いパラレルワールドだと,だいたい読めるけど,見たこともないひらがなとか漢字が含まれてるとかです.
これがパラレルワールドあるあるです.
今回の話聞いて,もしかして,パラレルワールドって,何らかの脳障害で,文字が読めなくなったんじゃないかなって思ったんですよ.
まぁ,パラレルワールドの話は置いといて,色の話です.
最初にも言いましたけど,色って,頭の中にしか存在しないんですよ.
そう言われても,いまいち,ピンとこないですよね.
今回の話,色に関して面白い実験がいっぱい出てきます.
例えば白黒写真のフイルムがあるとするでしょ.
女の人が映ってるフイルムで,それを二台のプロジェクターで重ねて投影するんです.
一つは,普通の白色の光を使います.
もう一つは,フィルタを通して赤色の光を使います.
赤と白を重ねるんですから,当然,ピンクがかった像が浮かび上がると思うでしょ.
ところが,実際は全然違ったんです.
金髪の髪,薄いブルーの瞳,赤いコート,驚くほど自然な肌色が見えるんです.
でも,色は写真の中にも,光源にもありません.
じゃぁ,一体,この色はどこから来たんでしょう?
あるとすれば,それは,脳の中で作られたんです.
つまり,色は外界に存在するわけじゃないんですよ.
色って言うのは,波長が色に一対一に変換されるとか,そんな単純な話じゃないんです.
これ,実例を見たかったんですけど,残念ながら,探しても見つかりませんでした.
ただ,面白い錯視は見つけました。
これ,有名なチェッカーシャドーって錯視ですけど,見たことありますよね.
明るいところの黒マスと影のところの白マスが同じ色だって錯視です.
これを実際に作って確かめた動画が見つかりました。
この黒とこの白が同じ色なんですよ.
ちょっと信じられないですよね.
じゃぁ,動かしてみますよ.
ほら,一緒でしょ.
戻します.
もう一回やります.
いやぁ,何度見ても不思議ですよね.
何が言いたいかって言うと,色って,波長と色が固定して対応してるわけじゃないってことです.
周りの状況から,脳が勝手に作り上げるんです.
それから,何年か前,ツイッターで話題になったこのドレス,思えてますか?
人によって,ドレスの色が違って見えるんです。
白色と金色に見える人と,青色と黒色に見える人がいるそうです。
同じものを見ても,人によって見える色が違うってことです.
つまり,色って,外の世界にあるんじゃなくて,それぞれの脳の中で作られるんですよ.
皆さんは,このドレス,何色に見えますか?
ちなみに僕は,金色と青色です.
今の実験から,色って,波長より,周囲の状況に左右されて、脳内でつくられるってことがわかりますよね.
そこで,周りの状況に惑わされないように,こんなランダムな図形に色を付けて色の見え方を確かめる実験があります.
これに白,赤,緑,青の光を当ててどう見えるか実験します.
次に,この中から一色,たとえば緑色だけ取り出して,同じように三色の光をあてて,どう見えるか確かめるんです.
そうしたら,なんと、グレーに見える層なんです。
何色の光をあてても,グレーにしか見えないそうです.
これはどういうことかというと,色っていうのは,周りの色との関連で生まれるってことです.
周りの色との波長の違いを読み取って,そこから脳内で色を生成するんです.
つまり,色って絶対的な波長じゃなくて,周囲との相対的な波長で生み出されるんです.
だから,比べる色がないと,グレーに見えるんです.
これも不思議な話ですよねぇ.
整理すると,頭の外の現実世界にあるのは波長です.
そこにはまだ色はありません.
ただし,網膜の錐体細胞は,周波数を検出する機能を持ってて,それを脳内に送ります.
脳内で周波数の相対的な比較をします.
色は,そこで生み出されるんです.
そして,それが脳のどこで行われてるかも既に分かっています.
目の網膜からの信号は後頭部の一次視覚野V1に送られます.
V1では,波長に反応するけど色に反応しない細胞があります.
つまり,この段階だと白黒のグレースケールなんです.
V1からの情報は頭頂葉と側頭葉に分かれて,側頭葉だとV2を介してV4野に送られます.
V4野には,波長を比較する細胞があって,波長の差に応じたデータが生み出されるんです.
このデータが,他でもない色です.
外の世界の波長は,脳内のV4野に来て,初めて色になるんですよ.
そして、この情報を最終的に受け取るのが意識です。
だから,意識は色を感じることができるんです.
V4野で色が生み出されることは実験でも確かめられています.
V4野を電気的に刺激すると,目の前に色の輪が見えるそうです.
目の前に見えますけど,現実世界に色があるわけじゃありません.
色があるのは,あくまでも脳の中です.
その人しか見えない,色の幻覚が見えたわけです.
そして,ジョナサンは,このV4野を事故で損傷したんです.
だから,色を生み出すことができなくなったんです.
でもV1は生きているので,波長の違いは分かります.
波長の違いしか分からないから白黒のグレースケールの世界となるわけです.
これがジョナサンに起こったことです.
他の色と比較しないと色がみえないってのが面白いですよね。
視界に緑一色しかないと,グレーに感じられるんです.
この理屈、色だけに限らないと思うんですよ.
僕は,ずっと意味を理解するとはどういうことかって考えてます.
どうも,今回の話から、理解するって比較することと同じじゃないかって思うんですよ.
例えば時間です.
時間って,記憶がないと理解できないと思うんですよ.
過去の出来事を記憶できて,それと今を比較して初めて時間って感覚を感じるんですよ.
このチャンネルで何度もとりあげたジル・ボルト・テイラーの話があります.
彼女は,脳卒中で左脳が停止して,右脳だけで感じる世界を体験しました.
そのとき,体の境界が感じれなくなって,自分と世界が一体となった感覚を感じたそうです.
自分が消えたんです.
それから,時間も消えたって言ってました.
時間の流れを感じれなくなったって.
あるのは今この瞬間だけだって.
これも,自分と世界とか他と区別するから,自分ってものが存在するって思えるといえそうです.
たぶん,比較する機能って左脳にあるんです.
ジルは,左脳が停止して,比較することができなくなったんです.
だから,自分が消えたんです.
それから,時間もです.
過去と今を比較できなくなったんです.
だから,時間が消えたんです.
色も,他の色と比較するから赤とか青って認識できるんです.
緑一色の世界だと,色を区別する意味はないですよね.
必要なのは濃いか薄いかだけです.
だから,緑一色の世界だと,グレースケールの世界になるんです.
こう考えたら,意味って比較から生まれるって言えますよね.
たとえばお金もです.
超お金持ちで生まれた子や,貧乏で生まれた子の話を聞くと,子供の時,これが普通だと思ってたって言いますよね.
自分が金持ちとか貧乏とかって気づくのは,学校に行って,友達と比較してからです.
このことは近代言語学の創始者ソシュールも言ってます.
ソシュールは,言語とは差異のシステムだって言いました.
リンゴの意味は,バナナでもオレンジでもブドウでもないって意味です。
他と違うってことでしか定義できないってことです.
リンゴってものが現実世界にあるからリンゴを認識するんじゃないんです.
リンゴと,それ以外を区別するから,リンゴは存在するんです.
色も同じです.
しかも,色の場合,脳のどの細胞がそれを行ってるかまで特定できています.
色も時間もお金持ちも貧乏も,そんなものは世界には存在しないんです.
あるのは脳の中だけなんです.
さて、ジョナサンは,色を区別する脳細胞は失いましたけど,記憶はできましたよね.
だから思い出すことはできます.
でも,思い浮かべたトマトも真っ黒だって言ってましたよね.
これはどういうことでしょう.
これは,意識の仮想世界仮説で考えたら分かります.
意識の仮想世界仮説というのは,僕が提唱する意識仮説です.
人は,目で見た現実世界を頭の中に仮想世界として構築します.
意識は,この仮想世界を介して現実世界を認識します.
これが,意識の仮想世界仮説です.
仮想世界は,コンピュータなら3DCGでつくります.
目の前のトマトは,3Dオブジェクトのトマトとして生成します.
それから,オブジェクトは色を持っています.
トマトオブジェクトは真っ赤です.
色は,脳内のV4で生成されるんでしたよね.
その色を基にトマトオブジェクトを作って,それを意識が認識します.
これは,記憶から作るときも同じなんです.
記憶の中にトマトは赤いってデータがあるわけです.
そのデータを基に仮想世界に真っ赤なトマトを生成します.
色を生成するのはV4です.
でも,ジョナサンはV4を損傷してるので,赤が黒になってしまうんです.
だから,思い出したトマトも真っ黒なんです.
でも,僕らは赤いトマトも黒いトマトも想像できますよね.
でも,想像できるのは,V4野が機能してるからです.
V4野が機能しなくなると,色を思い出すこともできないんです.
これは,逆に考えれば,認識できる世界の限界が存在するとも言えます。
僕らが認識できるのは,脳の中で想像できることだけです.
赤いトマトが存在していても,脳が赤を生成できなければ,黒いトマトしか想像できないんです.
そう考えたら,この世界には,僕らに認識できないものがいっぱいあるのかもしれません.
今見えてる世界って,たまたま脳が認識できるものだけです.
本当の世界って,もしかしたら全然違うのかもしれませんよ.
はい,今回はここまでです.
面白かったらチャンネル登録,高評価お願いしますね.
それから,動画で紹介した意識の仮想世界仮説に関しては,よかったらこちらの本も読んでください.
それじゃぁ,次回も,おっ楽しみに!