第42回 自由意志は存在するか? ④ 〜リベットの実験で時間を操作してた意外な犯人


ロボマインド・プロジェクト、第42弾!
こんにちは、ロボマインドの田方です。

いよいよ、リベットに実験も大詰めです。
人間には、自由意志はあるんでしょうか?
あるとするなら、リベットの実験は、どこが間違ってるんでしょうか?

リベットの実験については、第40回、第41回の「自由意志は存在するか」で詳しく説明しましたが、もう一度、おさらいしておきましょう。

リベットの実験っていうのは、被験者に、好きなタイミングで手首を動かしてもらうわけです。
そのときの脳波のグラフがこれです。
ここが、実際に手首が曲がり始めた瞬間です。(0の位置)
そして、500ミリ秒前から、脳波が立ち上がり始めてます。
ほんで、「今、動かそ」って思ったタイミングが、この赤い位置です。
脳波の立ち上がりから300ミリ秒後に、「今、動かそ」って思ったわけです。

この実験の不可解な点は、ここです。
一連の行動のスタートは、「今、動かそ」って頭で思ったことですよね。
ところが、これ見ると、何か脳波が出てから「今、動かそ」って思ってるわけです。
これを素直に解釈すると、誰かに、「今、動かそって思え」って思わされてるわけなんです。
これって、自由意志がないってことになりますよね。
これがリベットの実験です。

さて、前回の「自由意志は存在するか? ③」では、意識の仮想世界仮説の話をしました。
意識の仮想世界仮説っていうのは、意識が認識する世界は、頭の中に創った仮想世界だっていう説です。
ほんで、仮想世界を作ってるんが美術さんです。

美術さんは、目からの映像データを基に世界を創ります。
耳からのデータも管理してて、音と映像のタイミング合わせなんかもしてます。
タイミング合わせは、音と映像だけじゃないです。

たとえば、これを見てください。
これは、前々回の「自由意志は存在するか? ②」で説明したもう一つのリベットの実験です。
手に甲にパチって一瞬だけ電気刺激を与えても、意識には上りません。
パチパチパチって500ミリ秒も続けて、ようやく、意識に上ります。
でも、脳に直接電気刺激を与えた場合は、すぐに意識に上ります。

さて、問題は、ここからです。
次に、皮膚への刺激と脳への刺激を同時に行ってみました。
左手への刺激と、右手に相当する脳へ、同時に電気刺激を行ったわけです。
皮膚への刺激は、500ミリ秒絶たないと意識に上らないので、当然、右手に、先に刺激を感じますよね。
そして、その後、左手に刺激を感じますよね。

ところが、実験してみると、右手と左手に同時に刺激を感じたらしいんです。
これは、どういうことでしょう。

意識にとって重要なのは、現実世界でどの順で起こってるのかです。
順番って、めっちゃ重要です。
原因があって、結果が起こります。
結果があって、その後原因が起こることは、絶対にないです。
だから、順番はめっちゃ重要なんです。

(ホワイトボードを指差して)
皮膚刺激は、500ミリ秒待たないと意識に上りません。
でも、刺激の開始がどこかは分かっているわけです。

だから、右手と左手が同時に刺激を感じられるように、タイミングを合わせることはできるはずです。
このグラフを見て、右手と左手を同時に感じたとなると、一見、時間を遡ってるように見えます。
でも、いくらなんでも、それはあり得ません。

じゃぁ、どうすれば矛盾なく説明がつくかといいますと、意識に提示するタイミングの方を、500ミリ秒遅らせるんです。
つまり、意識に上るタイミングは、実際に感じてから500ミリ秒後となるわけです。

これの意味すること、わかりますか?
意識が感じてる「今」って、本当はいつってことです。

現実世界、物理世界で起こってる「今、現在」はここです。(0を指す 上のグラフ)
でも、意識が感じる今は、ここなんです。(500を指す 上のグラフ)
つまり、矛盾のない世界を創るために、本当の「今、現在」を犠牲にしてるんです。
意識が感じてる「今、現在」は、本当の「今、現在」から、500ミリ秒遅れてるわけです。

美術さんは、意識さんに矛盾のない世界を提供するのが使命です。
でも、100%完璧に矛盾のない世界なんて作れないです。
何かは犠牲にしないといけません。
そこで、犠牲にしたのが、「今、現在」ということなんです。

さて、そろそろ、本題に入りましょう。
意識で感じること、すべて、裏で美術さんがタイミングをコントロールしているようです。

目や耳や皮膚感覚だけじゃなくて、「今、手首を動かそう」っていう意志のタイミング。
(ホワイトボードのー200の位置を指し示す)
このタイミングが美術さんにコントロールされてないって、どうして言えるんでしょう。
意志が発生したタイミングが、美術さんにコントロールされてるって考えたら、全て解決するんですよ。

つまり、本当に「手首を動かそう」って思ったタイミングは、じつは、ここなんです。(-500の位置を指し示す)
それを、美術さんによって、ここだって遅れて思わされてるわけなんです。(-200の位置を示す)

「いや、そんな、アホな。
自分の頭で思いついたこと。
それを、後から自分で変更するって。
いくらなんでも、それはないんちゃうの?」

なんで、そう言い切れるんです?
目や耳で感じたこと、皮膚で感じたこと、これ、全部、自分で感じたことですよ。
そのタイミングを、美術さんは、勝手に遅らせてるんですよ。
それができるんやったら、頭で思いついたタイミングも遅らせることができて、
何も、おかしないでしょ。

たとえば、「今、動かそ」って思いが、心の底から湧き上がってきたとしましょ。
まだ、意識に上る前です。
その時に、美術さんが、ちょっとまってってタイミングを遅らせるわけです。
ほんで、タイミングを見計らって意識に上らせるわけです。
ねぇ、できそうでしょ。

「う~ん、まっ、分かりました。
そこはできたとしましょ。
じゃぁ、なんで、タイミングを遅らせる必要があるんですか?」

それでは、その説明をしましょ。

僕らは、世界って、常に目の前にあるって思ってますよね。
ほんで、好きな時に、好きなタイミングで世界をみたら、常に、今の世界が存在するって思っていますよね。
あったり前の話です。
でも、これが、あったり前じゃないってこと、ちょっとずつ、分かってきましたよね。

本当は、どうかというと、意識が見てる世界って、美術さんが作ってるわけです。
ということは、意識が、世界を見ようと思いますよね。
そしたら、見ようと思った瞬間から、美術さんが世界を作り始めるわけですよ。

リベットの実験で、被験者に与えられてた課題って何でした?
「今、動かそ」って思った瞬間の時計を見ることでしたよね。

ということは、どういうことかというと、もし、「今、動かそ」って思った瞬間、時計を見たとすると、その時計は、まだ、完成してないんですよ。

ここで、意識が、物を見るってどういうことかって話をします。
意識が見るのはクオリアです。
クオリアについては、第30回~第34回の「クオリアってなんだ」シリーズで説明したので、よかったら、そちらも見ておいてください。

たとえば、第32回では、お札のクオリアの話をしました。
僕が、夢うつつの変性意識状態のときみた、お札の話です。
そのとき見えたのは、モアレ模様のクオリアとか、数字のクオリアとかでした。
数字のクオリアってねぇ、数字っていうのは分かるんですけど、いくら目を凝らしても、何の数字かわからないんですよ。
変性意識状態だったから見えた、完成前の世界でした。

タイミングが早いと、完成前の時計を見てしまうんです。
完璧な世界を提供することが使命の美術さんにとっては、それは、絶対にあってはならないことなんです。
じゃぁ、どうすればいいんでしょう?

それは、意識が「今」と思った瞬間を遅らせることなんです。
これが、美術さんが取った戦略です。

「今、動かそ」って思いが出てきますよね。(-500の位置を指し示す)
美術さんは、この時、今の世界を創り始めるわけです。
それと同時に、「今、動かそ」って思いが意識に上るのは、ちょっと待ってもらうわけです。

ほんで、て今の世界が完成したとき、(-200の位置を指し示す)
「今、動かそ」って意志を放つわけです。

そのときは、既に世界は完成してるから、完璧な、「今」の世界を見れるわけです。
そのときの、時計の針の位置を確認するわけです。
これで、全て解明できました。

「今、動かそ」って本当に思った瞬間(-500)と、
「今、動かそ」って意識が認識する時間が(-200)が、
300ミリ秒、ずれたわけです。

リベットの実験が、矛盾なく説明できました。
僕らは、誰かに操られてるわけじゃなかったんですよ。
ちゃんと、自由意志があったんですよ。

全て、背後で美術さんがコントロールしてたわけです。
意識さんが、「今だ」と思った瞬間に、今の世界を見れるように手配するわけです。
そのために、自由意志のタイミングの方を、遅らせたわけです。

リベットさんが、こんな実験さえしなければ、誰も気づかなかったことです。
まさか、自由意志まで美術さんにコントロールされていたとは驚きですよねぇ。

40年近く謎に包まれてたリベットの実験も、意識の仮想世界仮説で、キレイに説明がつきました。

これからも、意識の仮想世界仮説を使って、難問を解決していきますよ。

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それでは、次回もお楽しみに!