第425回 スピリチュアル体験は,脳障害か芸術か 〜閃輝暗点 片頭痛


ロボマインド・プロジェクト,第425弾
こんにちは,ロボマインドの田方です.

久しぶりにアマゾンで自分の本を見てみたら,なんと,人工知能の人気ギフトランキングの5位に選ばれてたんですよ.

いや、この本,プレゼントで送るような本じゃないですよ.
たぶん,面白い!って思ったから送ってくれたんやと思います.
それはそれで嬉しいです。
でも,面白いと思ったのは,あなただからです.
贈られた人も同じように感じるとは限らないんですよ。

それから,たとえ贈ったとしても,絶対やめた方がいいことがあります。
それは、本の感想を聞くことです.

これ、僕も,何度も経験しましたけど,みんな,本当に困った顔するんですよ.
特に、頭のいい人とか、AIの専門家とかです。
頭のいい人とか専門家って「これはあの話ですよね」って言って、当然、自分も知ってましたよっ顔をしたいんです。
でも、僕の話、どれも完全なオリジナルです。
だから、どう答えていいかわからなくて、困るみたいなんです。

贈るんだったら,二位に入ってる孫泰蔵さんの「冒険の書」はおすすめしますよ.
僕も,第396回で紹介しましたけど,この本はめちゃくちゃ面白いです。

さて,今回の主人公はドイツ中世の修道女,ヒルデガルト・フォン・ビンゲンです.

この人,いろんなことで有名です.
修道女ですけど,薬草の研究もしてます。
ハーブ療法の母とも言われて、アロマやハーブのテキストにも出てきます.
作曲家としても有名で,今でもCDが売れています。

この人,体は弱かったそうですけど,修道女として規則正しい生活したたからか,82歳まで生きたそうです.
当時の平均寿命が30歳ですから,すごいですよねぇ.
日本でも、ほぼ同時代の親鸞は89歳、一休は87歳まで生きてます。
こんな話を聞くと,本来の人間の寿命って,90歳ぐらいが限界なんやと思います.
病気を治したり,延命治療で生きれる限界ってことです。
そっから先は,病気を治すんじゃなくて,人工臓器とか再生医療とか,本人が元々持ってないものを使って長生きすることになるわけです。
人類は,これから,そこに向かおうとしてるみたいです。

さて,ヒルデガルトといえば,一番有名なのは幻視体験です.
彼女は、神からの啓示をヴィジョンとして受け取りました.
これは,後にローマ教皇によって、正式に神からの啓示と認められました.

さて,今回のネタも,サックス博士の『妻を帽子と間違えた男』からです.

サックス博士らしく,この幻視を脳障害から解き明かします.
この現象,実は,結構多くの人が体験してるんです.
調べたら,ゴッホや芥川龍之介も同じ障害を持ってたようです.
どうも,スピリチュアル体験と脳障害,芸術は深くかかわりがあるようです.
これが今回のテーマです.
スピリチュアル体験は,脳障害か芸術か
それでは,始めましょう!

さて、ヒルデガルドは、自分が見た幻視について、こう語っています。
「私が幻肢を見たのは眠ってるときでも夢のなかでもありません。
もちろん狂気の状態で見たのでもありません。
肉体の目で感じたのではありません。
それは、心の目で見えるのです」

つまり、精神状態が普通にあるときに見えます。
ヒルデガルドは、それを多くの絵にのこしています。
たとえば、これとか

これです。

共通するのは、中世の城砦です。
もっと言えば、砦の上のギザギザです。

それから、こんな同心円も多く描かれています。

聖母マリアの背後にも同心円が描かれています。

これを見て、サックス博士は、ヒルデガルドに何が起こったかはっきりと分かったって言います。
それは、片頭痛の前兆で見える閃輝暗点です。
片頭痛が起こる前、こんな風に、視野の一部にギザギザした光が見えることがあるそうです。

ヒルデガルドが見た砦のギザギザは、これでしょう。
このギザギザを神の砦と解釈したんでしょう。

閃輝暗点は、キラキラと美しく光ります。

敬虔なクリスチャンなら、神のビジョンととらえても不思議はないですよね。

それから、閃輝暗点は時間とともに同心円状に広がっていきます。

これも、ヒルデガルトの絵に現れていましたよね。

ヒルデガルトには、これがマリアの後光に見えたんでしょう。

片頭痛持ちのうち10~15%の人が、この閃輝暗点を見るそうです。
僕もたまに片頭痛がしますけど、ロキソニン飲んで寝たらすぐに直る軽い片頭痛です。
閃輝暗点が見えるタイプの片頭痛は、かなり重いらしくて、吐き気も伴うそうです。

この閃輝暗点、不思議な魅力があるようで、いろんな芸術作品に登場します。

たとえば、芥川龍之介の歯車です。

この作品は、芥川が自殺する直前の壮絶な心象風景を描いたものと言われています。
ちょっと読んでみます。

「僕は視野のうちに妙なものを見つけ出した。
絶えず回っている半透明の歯車だった。
歯車は次第に数を増やし、半ば僕の視野をふさいでしまう、が、それも長いことではない、しばらくの後には消えふせる代わりに、今度は頭痛を感じ始める」

歯車が消えた後、頭痛を感じるってあるので、これは明らかに閃輝暗点ですよね。

それから、ゴッホの絵も閃輝暗点を描いたものだって言われています。

これは、ゴッホの有名な糸杉です。
ゴッホも片頭痛に悩まされてたので、渦のようなのが閃輝暗点を描いたものかもしれません。

片頭痛で閃輝暗点をもつ人のブログに、「糸杉の月は、間違いなく閃輝暗点だ」書かれてました。
それから、「よく見たいけど、これ以上、見続けることができない」とも書いてます。
なんでかっていうと、これ以上みつづけると吐きそうになるからだそうです。
ただ、それでも見ずにおれない不思議な魅力があるそうです。

それから、時代をもっとさかのぼると、イエス・キリストの伝道者、パウロも閃輝暗点を見たんじゃないかって言われています。
パウロは元々ユダヤ教徒で、キリスト教徒を迫害していました。
あるとき、「パウロ、なぜ、私を迫害するのか」ってキリストの声を聞いたそうです。
そのとき、まぶしい光で目が見えなくなったそうです。
これが、閃輝暗点じゃないかって言われています。
閃輝暗点って、かなり不思議な現象なので、神からのメッセージとして受け取ったんでしょう。
パウロは、その後、目から鱗のようなものが落ちて目が見えるようになりました。
これが、目から鱗が落ちるの語源です。

さて、この閃輝暗点、ある程度メカニズムは解明されています。
後頭部の視覚野に送られる血管の拡張と収縮が原因です。
血管が収縮して視覚野へ送られる血流が減少して、画像処理がうまく行かなくて、閃輝暗点が見えるわけです。
その後、収縮した血管が過度に拡張することで片頭痛が起こるようです。

ただ、これはハードウェアからの解明です。
閃輝暗点を見るのは意識です。
意識はソフトウェアなので、ソフトウェアの側から、もう少し探ってみます。

意識はソフトウェアというのは、僕が提唱する意識の仮想世界仮説の話です。
人は、目で見た世界を頭の中で仮想世界として構築します。
意識は、この仮想世界を介して世界を認識します。
これが、意識の仮想世界仮説です。

仮想世界は、コンピュータなら3DCGで再現できます。
だから、ソフトウェアなんです。
さっきの血管の話は、コンピュータならCPUの配線です。
だからハードウェアの話です。
CPUは電磁波の影響でノイズが発生することがありますけど、それと同じです。
画像処理回路の配線にノイズがのったから、意識が見る世界にもノイズが見えたわけです。
それが閃輝暗点です。

今、世界っていいましたけど、これは、ソフトウェアで作られた仮想世界のことです。
つまり、僕らは現実世界を直接見てるんじゃなくて、ソフトウェアで作られた世界を見てるわけです。
もっと言えば、僕らの意識はソフトウェア側にあるんです。

この視点で考えると、いろいろ面白いことたわかってきます。
まず、閃輝暗点の見える位置です。

本を読んでるとき、閃輝暗点がでると、文字が読めなくなるそうです。
つまり、閃輝暗点は目と本の間にあるわけです。
これ、考えたら不思議です。

たとえば、共感覚で考えてみます。
共感覚っていうのは、別の知覚が混じり合う、一種の脳障害です。
たとえば、数字に色を感じたり、文字に味を感じたりするそうです。
この共感覚を持ってる人って意外と多いそうです。
でも、自分が共感覚をもってるって気づいてない人も多いんです。
なぜかというと、ほかの人もおなじように感じてると思ってるからです。

何が言いたいかというと、共感覚は、本人は違和感を感じないんです。
言い換えたら、共感覚は世界に統合されてるんですよ。

でも、閃輝暗点は、意識で違和感を感じてますよね。
そんなものが見えるのはおかしいって思ってるわけです。

閃輝暗点がどうやってできるのか、もう少し探ってみます。
意識が見てるのは仮想世界です。
じゃぁ、仮想世界を作ってるのは誰でしょう?
それは、無意識さんです。
目からの情報は側頭葉の腹側経路で順に解析されます。

たとえば、単純な形なら四角とか十字です。
それから色とか動きも、専用の脳細胞が解析します。

それらを組み合わせて、最後にそれが仮想世界にオブジェクトとして生成されます。

そうやって、たとえばリンゴオブジェクトが生成されます。
意識は、それをみてリンゴがあるとかって思うわけです。
リンゴオブジェクトは、甘いとか、果物とかって様々な情報も含まれてます。
だからリンゴを見ただけで、かじったら甘いだろうなぁとか、果物の一種だって考えることができるんです。
これがソフトウェアの処理ってことです。

共感覚の場合、オブジェクトを作るときに、なぜか、数字に色とか、別の感覚の情報を追加したんでしょう。
リンゴオブジェクトに甘いとか果物とかって情報を追加するのと同じです。
ただ、オブジェクトに統合されてるから意識は、違和感を感じないわけです。

でも、閃輝暗点は、共感覚とは違います。
明らかに別オブジェクトとして生成されてますよね。
共感覚は、無意識さんがわかってオブジェクトを作り出してるんです。

でも、閃輝暗点は、ノイズなので、うまくオブジェクトに統合できなかったんでしょう。
いや、ノイズとわかれば、無意識さんは除去してるはずです。

ノイズキャンセリングイヤホンってありますよね。
あれと同じ機能は脳の中にもあります。
だから、人込みの中でも相手の声だけ拾って会話できるんです。
これをやってるのが無意識さんです。

音だけでなくて視覚でもやってます。
眼球の構造上、視界の中央には絶対に見えない盲点があります。

でも、そんなこと、普段、気づかないですよね。
それは、世界を作るとき、無意識さんが盲点を消し去ってるからです。
無意識さんも盲点は見えません。
見えないけど、たぶん、周りと同じ色してるだろうって思って、盲点を塗りつぶしてるんです。
ノイズキャンセリングと同じです。
だから、意識は絶対に盲点に気づくことはありません。

でも、閃輝暗点は違います。
さっき、側頭葉で丸とか三角とかって物の形を解析するって説明しましたよね。
そのなかにギザギザを解析する脳細胞があるんです。
脳の血管が収縮したとき、その脳細胞が刺激されるんです。
それから、光を解析する脳細胞も刺激されます。
無意識さんは、その解析結果をもとにオブジェクトを作ります。
だから、キラキラしたギザギザの閃輝暗点オブジェクトを作り出したんでしょう。

三次元世界のオブジェクトには、必ず位置情報が含まれてます。
でも、このオブジェクトには位置情報がありません。
そんな場合は、とりあえず、目の前に配置するんでしょう。
だから、本と目のあいだに閃輝暗点が見えるんです。

無意識さんの役目は、現実世界と完全に一致する仮想世界を作ることです。
だから、仮想世界のオブジェクトと現実世界を重ね合わせて、ずれがあったら、常に補正する機能が働きます。
これを閃輝暗点にも適用しようとします。
でも、閃輝暗点は現実世界に存在しないので、重なりません。
あれ、ずれてるのかなって無意識さんは思って、合うとこを探してちょっとずつ動かすんです。
だから、閃輝暗点は徐々に広がっていくんです。

こう解釈すると、うまく説明できますよね。
いかにも、そんな画像処理アルゴリズムってありそうじゃないですか。

たぶん、幽霊も、同じやと思います。
霊感っていうのは、網膜で知覚するんじゃなくて、脳細胞を直接刺激してるんですよ。
たとえば顔を識別する脳細胞とかです。
無意識さんは、それを感じ取って仮想世界に女の人の像を生成するんです。
その後、現実世界との一致判定処理が走るんですけど、あれ、こんなにはっきりしてないぞ。
もう少し薄いかなと思ってちょっとずつ薄くしていくんです。
そうやって、幽霊は消えていくんです。

こうやって、意識の仮想世界で考えたら、閃輝暗点から幽霊まで、いろんなことが説明できるでしょ。
ただ、意識の仮想世界仮説は、僕の仮説です。
閃輝暗点が見える仕組みをソフトウェアとして解説した本なんてこの世にないです。
だから、お医者さんにこの動画を見せて、感想を聞いても、なんて答えていいかわからないんです。
「へぇ、そうだったんですね」とも、「それは間違ってる」とも言い切れないので、困った顔をするんです。

それを分かったうえで、もし、こんな話に興味がある人がいれば、ちょうどいい本があります。
今、アマゾンで人気ギフトランキング5位になってる本、『ドラえもんの心のつくり方』です。

今回紹介した意識の仮想世界仮説に関して分かりやすく解説してますので、よかったら、プレゼントしてあげてください。

はい、今回はここまでです。
おもしろかったらチャンネル登録、高評価お願いしますね。
それじゃぁ、次回も、おっ楽しみに!