ロボマインド・プロジェクト、第438弾!
こんにちは、ロボマインドの田方です。
パーキンソン病って難病があります。
手足が震えたり、筋肉がこわばったり、バランスがとれなくて、歩くのも困難になります。
結構、有名人もなっていて、たとえば、バック・トゥ・ザ・フューチャーのマイケル・J・フォックスとか、プロボクサーのモハメッド・アリ、それkら日本人だと岡本太郎もなってます。
パーキンソン病には、不思議な特徴があります。
それは、人間しか発症しないってことです。
人間以外の動物で、パーキンソン病は確認されていません。
これ、掘り下げていくと、人間とは何か、自然とは何かって深い問題が現れてくるんですよ。
これが今回のテーマです。
なぜ、パーキンソン病は人間しか発症しないのか?
それでは、始めましょう。
今回も、ハロルド・クローアンズの『失語の国のオペラ指揮者』からです。
ある日、ハロルドのところにピーターがやってきました。
診察してみると、間違いなく、パーキンソン病です。
ピーターは72歳、退職して6年になります。
41年間、溶接工として働いていました。
ピーターは労働組合の書記をしてたので仲間のこともよく知っています。
詳しく聞いてみると、50歳以上の溶接工のうち、5%近くがパーキンソン病だそうです。
一般に、50歳以降でパーキンソン病にかかるのは約1%なので、これはかなり高いです。
さらに聞いてみると、溶接の種類はハード溶接というものでした。
これは、マンガン含有率が高い溶接です。
もしかしたら、これが原因かもしれません。
じつは、パーキンソン病の発症原因は、まだ、よく分かっていません。
ただ、何らかの外部要因がきっかけとなることは分かっています。
つまり、ガンみたいに確率的に発症するんじゃなくて、外部の原因物質が直接原因で発症します。
そこで、原因物質が何か、疫学的に調べられました。
疫学的というのは、集団調査などで統計的に原因を探る手法です。
ある地域とか、ある集団で特定の病気の発生率が高いと、その地域、その集団に何らかの原因があると推定できるわけです。
たとえば水俣病は、水俣湾周辺で多く発症して、調べてみると、工場のから排出されたメチル水銀化合物が原因と分かりました。
これと同じように、パーキンソン病の原因物質を探す試みが行われました。
ある時、麻薬中毒の若者の中でパーキンソン病に似た症状が現れたことがありました。
使っていたのはMPTPという合成麻薬でした。
ここから、パーキンソン病の原因は何らかの化学物質だと言われるようになりました。
それから10年以上、さまざまな調査が行われました。
まず、疑われたのは除草剤、殺虫剤といった薬剤です。
ただ、パーキンソン病が最初に発見されたんは1817年です。
それ以前から存在する化学物質でないといけないので、これらは関係ありません。
それから、パーキンソン病は世界中に見られます。
どこかの地域に偏ってるわけでもないので、原因物質があるとすれば、世界中、どこにでもある、ありふれたもののはずです。
それから、パーキンソン病の発症率は100年前と変わっていません。
一方、アメリカ人のライフスタイルはこの100年で激変しています。
100年前のアメリカ人のほとんどは農業を営んでいましたけど、今は全人口の3%しか農家はいません。
それなのに、パーキンソン病の発症率が変わらないということは、この100年の生活環境の変化に関係してないと言うことです。
パーキンソン病の原因といわれる毒物として、いくつか候補はあげられましたけど、どれも今言った理由で、決定打に欠けます。
それから、奇妙なのは、たとえそれらがパーキンソン病の原因物質だったとしても、発症するのは極少数の人だけだということです。
これが不思議なんです。
何らかの原因物質が存在するなら、水俣病みたいに、必ず、患者集団が現れるはずです。
でも、パーキンソン病に限って、それが現れてこないんですよ。
そして、最も奇妙なのは、冒頭にも言いましたけど、パーキンソン病は、人間にしか現れないんです。
なぜか、人間だけが、その毒物にやられるんです。
もしその物質が本当に毒物なら、人間以外の動物にもパーキンソン病が発症してないとおかしいんです。
でも、パーキンソン病の動物は存在しません。
あらゆる点で、ふつうの病気と違います。
じゃぁ、パーキンソン病の本当の原因って何なんでしょう?
これだけの条件を満たす理由があるとしたら、原因は一つしかないとハロルドはいいます。
それが何かと言うと、それは、進化です。
それじゃぁ、詳しく解説します。
パーキンソン病が発症する原因物質は特定されていませんけど、病巣は特定されています。
それは、脳の中の黒質という部分です。
黒質というのは、脳の中心部にあって、反射運動をコントロールします。
反射運動というのは、たとえば姿勢を保ったり、歩くときに両手を振るとか、自然とバランスを取る動きに関係します。
教えられなくても自然と身に付く持って生まれた運動機能です。
そして、パーキンソン病にかかると、これらの機能に障害が出ます。
黒質は脳の中心部にあるということは、動物でも持ってる原始的な運動機能です。
こういった原始的な神経は教えられて獲得するものじゃないので遺伝の影響が大きいです。
走るのが早いとか、運動能力は遺伝の影響が大きいということです。
さて、自然界で足が遅いとどうなるでしょう?
シマウマだったらライオンに追いつかれて食べられて死んでしまいます。
逆に、ライオンの足が遅かったら獲物に逃げられるので、長生きできません。
つまり、運動能力が劣る個体は子孫を残せなくて自然淘汰されます。
これがダーウィンの進化論です。
運動能力は黒質に依存します。
つまり、黒質の出来がいい個体は子孫を残せますけど、黒質の出来が悪い個体は自然淘汰されます。
黒質の出来がいいというのは、黒質細胞の密度が高かったり、毒物に対する耐性が高いとかです。
黒質の出来が悪いとは、細胞密度が低かったり、毒物耐性が低いとかです。
ここで正規分布の話をします。
正規分布というのは、何らかの特性の確率分布です。
たとえば、100人のテストの点数を調べると、50点を取った人が一番多くて、10点と90点を取った人は少ないって感じで、中央が高くて周辺が低くなるベルカーブを描きます。
これを黒質で考えてみます。
たとえば横軸を毒物耐性として、縦軸をその特性を備えた個体数とします。
毒物耐性が低いと問題がありますし、高すぎると、もしかしたら逆に運動能力が劣るといった特性があるかもしれません。
毒物耐性が低かったり、運動能力が低いと自然淘汰されて、中央が最も多くなるベルカーブを描きますよね。
つまり、毒物耐性も運動能力も程よく持つ最適な黒質をもった個体が最も多くなるわけです。
つまり、進化によって毒物耐性が低い個体はほとんどいなくなります。
ところが、人間の場合はどうでしょう?
人間の場合、多少、運動能力が劣ったとしても、母親や家族が守って育てますよね。
つまり、毒物耐性が低い黒質を持った人が生き残ります。
そうした個体同士が子孫を残すと、毒物耐性が低い個体がさらに生き残ります。
そうやって、自然淘汰が起こりにくくなると、ベルカーブは、山が低くて、両側に広がった緩やかなカーブとなります。
これが人間に起こっていることです。
つまり、本来なら自然淘汰されるべき毒物耐性の低い黒質を持った個体が、人間だけ、ある一定の割合で存続しているんです。
その個体は、ふつうの人ならなんともないありふれた毒物であっても黒質が損傷してしまいます。
すると、反射運動に障害が出るわけです。
それがパーキンソン病です。
その毒物の一つがマンガンやMPTPなんでしょう。
おそらく、他にももっといっぱいあるはずです。
それは、昔から地球に存在するありふれた物質です。
ふつうの人や動物にとっては、毒物でさえないかもしれません。
そんなありふれた物質で、黒質が損傷する個体の遺伝子を持った人がパーキンソン病になるんです。
だから、パーキンソン病は、世界中どこでも、ごく少数だけ、ある一定の割合で発症するんです。
これでパーキンソン病の謎が解けました。
さて、話はこっからです。
この話、いろんなことを考えさせられます。
よく、多様性が重要だって言いますよね。
これからは多様性の時代だとか。
自然はもっと多様だとか。
でも、今の話を聞いたら逆だってわかりますよね。
自然に任せると、多様性が失われるんです。
でも、なんかおかしいですよね。
だって、自然は多様です。
まだ発見されてない昆虫なんていくらでもいます。
でも、じつは、そうじゃないんですよ。
自然が多様なのは、まだ、淘汰されてないからです。
別の見方をすれば、自然の多様性は、淘汰するために作り出されたといえるんです。
これ、考えたら残酷ですよね。
だって、ほとんどの種は淘汰されるためにあるといえるんですから。
その証拠に、進化の頂点に立つ人類はホモ・サピエンス、一種しかいません。
ネアンデルタール人とか、他の種を絶滅させて唯一生き残ったのが我々です。
多様性を認めようとか、すべての人に生きる権利があるとかって考えは、じつは不自然な考えなんです。
自然にそった生き方をしようっていうのは、社会に適用できない人は淘汰すべきっていってるのと同じなんです。
このことで思い出す話があります。
それはピダハンです。
このチャンネルでは、何度もピダハン族の話は取り上げてきました。
ピダハンは、アマゾン奥地に住む原住民です。
「時間って概念を持たない民族」とか、「世界で最も幸せな民族」とかって紹介してきました。
ただ、僕が紹介したエピソードは、どれもピダハンのプラスの面ばかりです。
今日は、今まで、あえて紹介しなかった、ピダハンのマイナス面の話をしたいと思います。
『ピダハン』の作者、エベレットはピダハン村に夫婦で住み着いて暮らしていました。
ある時、ピダハンの若い女性が赤ちゃんを産みました。
ところが、その女性は赤ちゃんを産んだ直後に亡くなってしまいました。
残された赤ちゃんも、どんどん弱っていきます。
村には、赤ちゃんを育ててる女性は他にもいましたけど、自分の子ども以外の面倒を見る余裕がありません。
エベレットが、長老に「あの赤ちゃんはどうなるのか?」って聞くと、「死ぬ運命にある」といいます。
「それはあんまりだ。自分たちで育てる」といってその赤ちゃんを引き取ることにしました。
長老は、「それは構わないが、あの赤ん坊は死ぬ運命にある」としかいいません。
エベレット夫妻は、なんとか赤ちゃんに哺乳瓶でミルクを飲ませようとしました。
ただ、かなり衰弱しきっていて、ミルクを与えても飲もうとしません。
一晩中、そんな状態でしたけど、夜明け前に、ようやくミルクを飲み始めました。
そして、たっぷりミルクを飲んで、朝には、ぐっすり眠っていました。
ここまでくれば一安心です。
そこで、川まで水を汲みに行くことにして、その間、父親に赤ん坊の面倒を見てもらうことにしました。
二人で水を汲みに行って帰ってきたときです。
家の周りに何人か集まっていました。
中に入ると、強いお酒の臭いがします。
気になって急いで赤ちゃんを見に行くと、既に、死んでいました。
哺乳瓶でラム酒を飲まされたんです。
赤ちゃんは、村人に殺されたんです。
いったい、なんで殺されたんでしょう。
その子は、たとえ、生き延びたとしても、何らかの障害を負うか、かなり体が弱いはずです。
そんな子は、狩猟民族のこの村で生きていくのは難しいです。
みんな、そのことを分かっているんです。
そんな子を生き延びさせたとしても、苦しむのはその子です。
それより、赤ん坊のうちに殺した方がその子のためなんです。
自然に沿った生き方とはこういうことです。
社会に適応できない子は、殺さなければならないんです。
なぜなら、それが自然の望みだからです。
多様性を認める社会っていうのは、実は、自然にとことん逆らってるんです。
自然に沿った社会と、多様性を認める社会とは相反するんです。
ただ、もし、黒質の毒物耐性が低い個体が淘汰されてたら、マイケル・j・フォックスも岡本太郎も生まれなかったですし、バック・トゥ・ザ・フューチャーも太陽の塔も生まれなかったのは間違いないです。
はい、今回の動画が面白かったらチャンネル登録、高評価お願いしますね。
それから、よかったらこちらの本も読んでください。
それじゃぁ、次回も、おっ楽しみに!