ロボマインド・プロジェクト、第45弾
こんにちは、ロボマインドの田方です。
ガシャン、ガシャン、ガシャン
「俺は、いったい、何をやってるんだ!」
あっ、こんにちは。
お掃除ロボットルンバの新型です。
えっ、今までのルンバと何が違うかって?
それはね、意識を持つようになったんですよ。
あっ、前回、見てなかったんですか?
今ね、壁にぶつかってね、ちょうど、意識が目覚めたとこなんですよ。
前回のおさらいしますよ。
「俺は、いったい、何をやってるんだ?」
このセリフ。
このセリフが言えるってことは、俺、つまり自分というものを理解してるってことです。
自分というものがわかるってことは、自分と世界とを区別してるってことです。
これが意識の特徴の1番目です。
ここに、書いておきますね。
意識の特徴
1. 自分と世界を区別する。
意識の特徴が、自分と世界を区別するなら、逆に言えば、自分と世界が一体だと意識はありません。
たとえば、風に舞う木の葉は意識がありませんよね。
風といった、環境に踊らされてるだけです。
環境に反応してるだけです。
先輩のルンバは、壁にぶつかったら、向きを変えて掃除を続けますよね。
これは、そういうふうにプログラムされてるからです。
環境に応じた決められた反応をしてるだけなので、意識はないってことです。
自立的に動いたからと言って、意識があるわけじゃないんです。
「俺は、いったい、何をしてるんだ?」
はい、このセリフ、もう一つ、重要なことを示しています。
それは、自分が何かをしてるかってことを、自分でわかってるんです。
つまり、自分を客観的に見てるんです。
センサーに応答して、動くだけじゃ、自分を客観視することなんて、できませんよね。
意識がないと、自分を客観視できません。
意識の2番目の特徴として書いておきましょう
2. 自分を客観視できる。
さて、意識の特徴は、まだあります。
意識の第一の特徴は、自分と世界を区別するでしたよね。
その逆は、世界に反応するだけです。
ロボットだけでなく、昆虫とかもいっしょです。
エサを見つけたら食べる。
天敵が来たら逃げる。
一瞬でも遅れると、食べられてしまいます。
世界の今の状況に、すぐに対応しないと生き延びれません。
今の世界の状況に、必死に反応してるわけです。
つまり、今、現在を生きていると言えます。
これに対して、意識をもったルンバはどうでしょう。
「俺は、いったい、何をしてるんだ?」って考えることができます。
これは、世界に反応してるんじゃなくて、世界を認識してるわけです。
世界の中にいる自分を客観的に捉えているわけです。
世界を空間として捉えれば、世界を認識するとは、空間の中の自分を客観視してるわけです。
これを、空間でなく時間軸で考えてみましょう。
すると、世界に反応するとは、今、現在の中だけで生きていると言えます。
ということは、世界を認識するってことは、今、現在を客観的に認識してるわけです。
時間軸の中の今、現在を客観的に認識できるってことは、時間軸をずらして認識することもできそうです。
現在から時間軸をずらすって、つまり、過去や未来にずらすってことです。
過去や未来にずらすです。
はい、時間の概念が生まれました。
意識をもつことで、時間が生まれたんです。
意識の3番目の特徴として書いておきましょう。
3. 時間を理解できる。
さて、前回、意識はソフトウェアだって話をしました。
ほんで、意識のソフトウェアの設計図を考えようってことで、ルンバに意識を持たせようとしたわけです。
ソフトウェア開発で最初にすることは、要件定義です。
要件定義って、ソフトウェアがどんなふうに動くかってことを決めることです。
今、考えた意識の3つの特徴は、意識の要件定義とも言えます。
次は、この要件定義を基に、意識をもったルンバの設計にはいりますよ。
ここで、ちょっと気を付けないといけないのは、意識を持つ、持たないは、見た目ではわからないってことです。
ヘタすると、先輩ルンバと同じになってしまいます。
前回、哲学的ゾンビの話をしましたよね。
哲学的ゾンビって、人間と全く見た目が同じです。
見ただけじゃ、人間と区別がつかないけど、じつは、内面的経験をもたないんです。
喜んだり悲しんだりするような行動はするけど、喜ぶとか悲しむって感情がないんです。
意識をもったルンバを作ったつもりが、哲学的ルンバにならないか。
これは、考えとかなきゃいけないです。
どうなったら、意識を持ったルンバっていえるんでしょう。
そこで、思いついたのが、自分で考えることができるってことです。
課題を自分で解決できるルンバです。
たとえば、電池が切れそうになったら、自分で充電器に戻って充電するとかです。
そんなの、普通のルンバでもやってます。
でも、それはプログラムどおりに動いてるだけです。
電池残量が少なくなったってセンサーで検知したら、今の仕事を中断して、充電器に戻って充電するってプログラムが動いているだけです。
意識を持ったルンバはちがいます。
「このまま仕事してたら電池が切れて動けなくなってしまう!」
そう考えて、どうやったらいいか自分で考えます。
「そうだ! 充電しよう」って思いついて、仕事を中断して充電器に戻るんです。
教えなくても、それができたら、すごいですよねぇ。
それができたら、意識を持ってるって言ってもいいですよね。
それじゃぁ、そんな新型ルンバを設計しましょう。
意識の特徴を確認してみます。
1. 自分と世界を区別する。
2. 自分を客観視できる。
これは、世界の中に存在する自分を、客観的に見る視点が必要ってことですよね。
例えば、部屋の地図を思い描いて、自分の位置をそこに表示すればどうでしょう?
GPSみたいなイメージです。
ルンバは、床の上を動くだけなので、部屋を上から見下ろした2次元の地図で十分です。
たとえば、こんな感じです。
部屋があって、机やタンスがあって、これがルンバです。
これがリアルタイムで部屋の中を動くわけです。
そんなシステムを作るわけです。
ほんで、このシステムを観察するのが、ルンバの意識ってわけです。
さて、これで、意識の条件は満たすでしょうか?
まず、1の「自分と世界を区別する」です。
ルンバにとって、部屋が世界です。
部屋の中に自分がいますよね。
ちゃんと、世界と自分を区別できていますよね。
次に、「2.自分を客観視する」です。
このシステムを認識するのは、ルンバの意識です。
自分で、自分を見ているわけです。
これって、自分を客観視してますよね。
それでは、「3.時間を理解できる」はどうでしょう?
たとえば、ルンバが移動したとします。
こんな風に移動して、部屋を掃除したとします。(ホワイトボードを書き換える)
ほんで、その後は、こう移動して、部屋を全部掃除するとします。
今まで移動した軌跡、ここにルンバがいたわけですよね。
これはルンバの過去を示しています。
こっちは、これから移動するところだから、ルンバの未来を示してるわけです。
つまり、この図でいうと、これが過去、これが現在、これが未来です。
この図を認識するのは、ルンバの意識です。
つまり、これが認識できるということは、時間の概念を理解してるってことになりますよね。
ルンバの意識は、時間を理解してるわけです。
意識の3つの条件を満たしているようです。
こんなシステム、本当にできるんでしょうか?
そのぐらいのこと、今の技術で十分できます。
たとえば、カメラで部屋を撮影して、それを2次元の地図に落とし込むとか。
また、レーダーなんかをつかって、部屋のどこに自分がいるかを検出して、地図にリアルタイムで書き込むことも可能です。
それでは、この、意識を持った新型ルンバ、旧型ルンバとの一番の違いはなんでしょう?
それは、外の世界を、地図に変換したことです。
外の世界を、自分のシステム内部に持たせたことです。
旧型ルンバは、外の世界を検知するセンサーに直接応答していました。
そのため、世界と自分とを区別できなかったわけです。
ところが、新型ルンバは、外の世界を、地図としてシステム内部に持たせることで、自分を客観的に認識できるようになったわけです。
次は、自分で考えれるかどうかです。
次回は、どうやったら自分で充電するって思いつくか。
それについて考えてみますね。
興味がある人は、チャンネル登録して、ロボマインド・プロジェクトに参加しましょう!
それでは、次回も、お楽しみに!