第474回 『テクノ・リバタリアン 世界を変える唯一の思想』橘玲③ 〜国家なき究極の自由 クリプト・アナキズム


ロボマインド・プロジェクト、第474弾!
こんにちは、ロボマインドの田方です。

あいかわらず、政治不信が続いていますよね。
国民から集めた税金を、一部の政治家が自分のために使ってるとかです。
国民から預かったお金、ちゃんと国民に分けろよってことです。
そんな風に居酒屋で息巻いてるサラリーマンとかいますよね。
じゃぁ、そういう人が、総理大臣になったらいいんじゃないでしょうか。
たぶん、そうなったら、その人は税金を自分のために使います。
それが人間というものです。

何が言いたいかというと、誰が政治家になっても同じだってことです。
かつては王や貴族が国を治めていました。
近代になって、国民から選ばれた人が国を治めるようになりました。
それが民主主義です。

でも、居酒屋で偉そうなこと言ってるサラリーマンが総理大臣になっても、ちゃんと国を統治できると思えません。
何が問題かというと、統治しないといけない国があることです。

いっそ国がなければ、誰もが自由に生きれますよね。
国家を否定する考えをアナキズムといいます。
国がないと言うことは政府も警察もありません。
そうなると、いったいどんな世界になるでしょう?
おそらく北斗の拳とかマッドマックスみたいな世界です。


「ヒャッホー!」とか言ってる強い者だけが生き残る世界です。
それは嫌ですよね。

でも、自由にはいきたいです。
一件、矛盾する両方を実現するのがクリプト・アナキズムです。
クリプトというのは暗号通貨のことです。
話が全然つながらないですか?
それじゃぁ、詳しく解説しましょう。
これが今回のテーマです。
国家なき究極の自由
クリプト・アナキズム
それでは、始めましょう!

王や貴族を倒して、民衆のための国を作ろうってなったのが近代です。
誰もが自由に生きられる世界、それが理想です。
それを実現するために、20世紀は二つの政治勢力が生まれました。
一つがマルクス共産主義、もう一つが資本主義です。
共産主義は、資本家に資本が集中することを問題視して、富を労働者に均等に分けることを目指します。
だから、共産主義は、共産党による統治が必要としました。

一方、資本主義は、自由な経済活動を守ることを重視します。
資本主義も経済活動を守るために国や政府が必要です。
ただし、統治するのはかつての王や貴族でなく、国民から選ばれた人たちです。
でも、国民から選ばれた人が正しい統治ができるかどうかは、今の日本の政治をみればわかりますよね。

20世紀は、資本主義と共産主義に大きく二つにわかれましたけど、共産主義が崩壊して資本主義が残りました。
でも、資本主義も完璧かというとそうじゃないです。

ここにもう一つの考え方があります。
ロシアのバクーニンは、マルクスの共産党による統治は独裁だと批判しました。
そして、共産党による一党独裁でなくて、非中央集権的な労働運動を目指しました。
目指すのは政府のない社会です。
これが無政府主義、アナキズムです。
20世紀には実現しなかったですけど、もう一つの理想的な政治体制、それがアナキズムです。

じゃぁ、なんでアナキズムは実現しなかったんでしょう?
まずは、ヒャッホー問題です。

国家や政府がなくなるとこんな世界になりますよね。
でも、これは警察を作れば解決します。
いわゆる小さな政府に近い考えです。
安心して暮らせる治安維持を目的とする警察を設置するわけです。
これでヒャッホー問題は解決します。

つぎは自由な経済活動について考えます。
もし、経済が完全に自由になれば、資本のある者に富が集中して誰もが幸せになれないんじゃないでしょうか?
じつはそうじゃないんですよ。
自由競争が働くと、安くていい商品が増えるので、結果として、社会全体の幸福は最大化するんです。
これがアダム・スミスの唱えた「神の見えざる手」です。
その逆が日本です。
日本にはウーバーイーツはありますけど、肝心のウーバーは入ってきていないですよね。
ウーバーというのは、誰もが空き時間にタクシー運転手になれるシステムです。
この仕組みで安くて、安心なタクシーが世界中で普及してますけど、日本はタクシー業界を守るために政府がウーバーを許可していません。
その結果、国民は世界で最も高いタクシー料金を払わなくてはならなくなっています。
このことだけ見ても、自由経済は必要だってわかりますよね。

でも、自由経済を実現するのに、もう一つ大きな問題があるんですよ。
それは国が発行するお金です。
日本なら、円です。
お客さんが、円で払ってくれるから安心して受け取れますよね。
これが、もし、ジンバブエドルで払うっていわれたらどうでしょう。
今、ジンバブエで最も高価な紙幣は100兆ジンバブエドルです。

タクシー料金を100兆ジンバブエドルでもらったらもらったら嬉しいですよね。
おつりはいらないって言うんですよ。
いやぁ、これだけあれば、たぶん、一生、遊んで暮らせますよね。
でも、残念ながらそうはならないんですよ。
100兆ジンバブエドルって、日本円に換算するとたった0.3円なんですよ。
1円にもならないんですよ。

これって、いったいどういうことでしょう。
つまりね、お金の価値って、国が保証してるってことなんですよ。
保証する国の信頼がなくなればお金の価値も下がるです。
完全な自由経済を目指して、独自の通貨を発行したとします。
でも、国が発行してないお金なんて信用できません。
「日本円で払ってくれ」ってなります。
つまり、国がなくなると、信頼できる通貨を供給できないし、まともな経済活動なんかできないんですよ。

ここでお金について考えてみましょ。
そもそも、お金の価値ってどうやって保証されてるんでしょう?

まず、そのお札がニセ札だったら困りますよね。
もしニセ札を自由に作れるようになったら、どんどんお金の価値が下がります。
将来、価値が下がるお金だったら誰もそのお金を持ちたがりません。
つまり、流通されなくなってお金の意味がなくなります。

つまり、このお金をもっていても安心だって誰もが思えるには、ニセ札を作らせない仕組みが必要なんです。
ニセ札がつくられにくくなってるのは、ニセ札を作ったら厳しく罰せられる法律があるからです。
法律を作るのは国です。
つまり、信頼できるお金には、それを裏付ける国家が必要なんです。
これをPOA、Proof of Authority、「権威による検証」といいます。

それじゃぁ、国以外にお金を保証する仕組みってないんでしょうか?
お金以外だと、あります。
たとえば金です。

金は合成できないので発掘するしかありません。
でも、地球上にある金は限りがあります。
つまり、金の価値は埋蔵される金の総量と、それを発掘する労働のバランスで決まります。

これと同じ事がお金でもできれば、国家の裏付けがなくても価値を担保できますよね。
つまり、国家から完全に独立した通貨になります。

それを暗号技術で実現したのが暗号通貨です。
暗号通貨は、埋蔵される金を発掘するように、計算によって通貨を発掘するって仕組みです。
金をどれだけ発掘できるかは、人や機械をどれだけ投入したかによって決まりますよね。
それと同じで、暗号通貨の発掘はコンピュータの性能と電気代で決まります。
そのバランスが保たれるように調整することで、暗号通貨の価値が保証されるわけです。
これをPOW、Proof of Work「労働による検証」と言います。

これって、画期的なことなんですよ。
まず、この仕組みによって、国家から完全に独立した通貨を作ることができます。
しかも、その価値はアルゴリズムで保障されています。
むしろ、国家の保証しかない通貨より安全といえます。
だって、クーデターで政府が倒れたら、その国の通貨なんて紙くずになってしまいますから。

でも、国が保証するのはお金だけじゃありません。
国民も国家が保証します。
国民が、どこに住んでる誰それとか、そういったことを国が管理して保証するわけです。
その保証があるから、赤の他人でも信用して取引したり、雇ったりできるわけです。
これは、いってみれば、個人情報を国に譲り渡すことで、個人を保証してもらってるともいえます。
お金だけ国家から独立しても、まだまだ中央集権的な国家は必要だってことです。

ところが、これも暗号で管理できればどうでしょう。
暗号通貨というのは、通貨の価値をアルゴリズムで保証するわけです。
中央集権的な国家がなくても通貨の信頼性が担保されてるわけです。

それと同じで、その人の信頼性をアルゴリズムで保証するわけです。
個人情報を国家に譲り渡すことなく、個人を保証する仕組みです。
この仕組みを使えば、中央集権的な国家から独立した完全に自由な個人が確立できますよね。
人類の歴史上、初めて、国家や政府を必要としない世界が可能となるんです。
その基盤となるのが暗号です。
これがクリプト・アナキズムです。

人類が初めて手にした完全な自由です。
誰にも管理されず、すべて自分で決定できる完全な自由、完全な無政府の社会です。
今までだと、無政府社会を作ろうとしても、信用できる貨幣がつくれませんでした。
それから、見知らぬ他人を信用するわけにもいかないので、信頼できる者だけが集まった小さいコミュニティにしかなりません。
小さな村の中だけで、お金を使わず、物々交換する社会です。

ところが、クリプト・アナキズムはこれらを全て解決します。
個人情報を暗号化することで、自分の情報を明かさずに、他人に信頼を示すことができます。
これで安心して商売したり、働いたりできます。
そこで流通する通貨は、暗号通貨です。
国家が信用を担保しなくても安心して使える通貨です。

さて、そのような自由な世界、本当に理想な世界なんでしょうか?
クリプト・アナキズムの創始者のひとり、物理学者のティモシー・メイらは、1992年に「第一回クリプト会議」を行って、「暗号アナキスト宣言」を行いました。
これは、マルクスの共産党宣言をもじったものです。
それから数十年経って世の中は大きく変わりました。
ビットコインが登場し、クリプト・アナキズムが、いよいよ現実味を帯びてきたんです。

さて、それでは、クリプト・アナキズムは本当に人類を解放した理想の社会なのでしょうか?
イギリスのジャーナリスト、ジェイミー・バートレットがティモシー・メイにクリプト・アナキズムの真意についてインタビューした記事があります。
そこでメイはこう語っています。
「私たちは、役立たずのごくつぶしの命運が尽きるところを目撃しようとしてるんですよ」
「この惑星上の40億~50億の人間は、去るべき運命にあります。暗号法は、残りの1パーセントのための安全な世界を作りだそうとしているんです」

聞きましたか?
地球の99パーセントは役立たずのごくつぶしだそうです。
国家というのは、そういった人たちを生きながらえさせてきた仕組みです。

その国家がなくなったとき、生き残るのは残り1パーセントです。
それが国家なき無政府状態です。

アナキズムはヒャッホーの世界を生み出すんです。
いや、クリプト・アナキズムで生き残るのはヒャッホーじゃありません。
ずば抜けた数学能力を持っていたり、極端に合理的に考える人たちです。
それは、テクノ・リバタリアンです。

クリプト・アナキズムとテクノ・リバタリアンとは同じ方向を向いてるってのが分かりますよね。
さて、本当にそんな世界が来るんでしょうか。

はい、今回はここまでです。
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それから、よかったらこちらの本も読んでください。
それじゃぁ、次回も、おっ楽しみに!