ロボマインド・プロジェクト、第49弾
こんにちは、ロボマインドの田方です。
どの動物まで意識があって、どの動物から意識がいなんでしょう?
そういうの、実験して、確かめてないんでしょうか?
色々さがしてたら、面白い実験が、見つかってきたんですよ。
今回は、どの動物まで意識があるのか、
実際の実験から紹介しますね。
今回は、頭で考えるだけの思考実験じゃないですよ。
ホンマモンの脳科学の実験ですよ。
それじゃぁ、最初に、意識について、復習しておきましょ。
意識と無意識の違いです。
盲視の話、覚えていますか?
第19回「意識って何? 世界って幻想?!」で語った話です。
眼自体には問題ないけど、脳のなかの一部が損傷して見えなくなった人の話です。
それが、ちょっと、意味がわからない症状なんです。
どんな症状かというと、本人は、目が見えないっていいます。
でも、壁とかにライトで光の点をあてて、どこに光があるって聞くと、ちゃんと指差すことができるんです。
でも、本人は見えてないっていうんですよ。
言われたから、あてずっぽうで指さしてるだけだって言うんです。
意味、わからないでしょ。
眼から入った情報は、二つの経路で処理されるらしいんです。
一つは、物の位置を判別する「どこの経路」で、もう一つは、物が何かを判別する「何の経路」です。
それで、この人の場合、「何の経路」が損傷して、「どこの経路」だけが機能してたらしいんですよ。
だから、指を指したりできたわけです。
ほんで、「何の経路」が損傷してたから、意識に上らなかったわけなんです。
ここから言えることは、「何の経路」は意識に関係するってことです。
それと、どこの経路だけでも、環境に応じた適切な行動をとることができるってことです。
これは、逆に言うと、意識を持たなくても、生物は生きていけるってことです。
つまり、人間以外の生物は、「どこの経路」だけで生きてるかもしれないってことです。
さて、意識の仕組みについては、第21回「意識の仮想世界仮説」で詳しく説明しましたけど、簡単に説明しますと、頭の中に仮想世界を創って、意識は、それを認識してるってわけです。
さて、ここから本題です。
もし、目からの映像が上下反転したらどうなるでしょう?
見ている世界が上下反転するので、意識は混乱するでしょう。
でも、目からの映像で仮想世界を創って、意識はそれを認識してるのなら、脳は、仮想世界を反転するとかして、何とか、反転した世界に対応するんじゃないでしょうか?
逆に、「どこの経路」だけで生きてる生物の場合、目からの映像に直接反応してるので、反転した世界に対応できないんじゃないでしょうか?
人間の場合、これを検証するのは簡単です。
プリズムを使って上下さかさまに見える反転眼鏡っていうのがあって、それを使えば、上下反転した世界を経験できます。
実際、逆さ眼鏡を付けると、手を下から上に上げると、上から下に手が降りてくるようにみえます。
最初は、まっすぐ歩くのも大変だそうで、ずっとかけてると気分が悪くなるそうです。
でも、そんな生活を2週間も続けてると、慣れて、普通に歩いたり、自転車に乗ることもできるようになるそうです。
人間以外、たとえばカエルはどうでしょう。
映像が上限反転して入力されても順応できるでしょうか?
ただ、カエルに眼鏡をかけさせるのは難しいですよね。
調べてみると、神経心理学者のロジャー・スペリーが、実験してたんですよ。
(神経心理学者 ロジャー・スペリー 1913~1994)
スペリーは、動物の手術が得意で、カエルの目を上下逆さまに移植したそうなんです。
「どこの経路」は、目で見た映像に直接反応します。
ハエが上にいると、上に舌を伸ばして捕まえます。
ところが、目を上下逆さまに移植したカエルは、ハエが上にいると下に舌を伸ばしたそうなんです。
ほんで、これは、いつまで経っても治らなかったそうです。
この実験から、カエルは、どこの経路しかないといえそうです。
もう一つの実験を紹介しましょう。
それは、サルがクオリアを持ってるかを確認した実験です。
クオリアについては、第30回~34回の「クオリアってなんだ」シリーズを見ていただきたいんですけど、簡単に説明すると、意識が認識するものは、すべて、クオリアです。
今、見て、ホワイトボードとか、ペンとかって認識できてるのは、ホワイトボードのクオリア、ペンのクオリアを見てるわけです。
眼からの信号は脳に送られますよね。
そのうち、意識に上るのがクオリアです。
意識に上るってのは、見えるってことです。
単に、見えればクオリアってわけです。
盲視の患者の場合、意識に上らないのに、光の点を指差せましたよね。
光の点を指差せるってことは、ちゃんと脳で処理されてるってことです。
でも、見えないと感じるということは、意識には上ってないことです。
つまり、クオリアが見えてないってことです。
クオリアが見えたり、見えなかったりを、簡単に体験できる実験があるんです。
それを、両眼視野闘争っていいます。
それは、こんな風に縦じまと横じまを左右の目に別々に見せるわけです。
たとえば、右目には横じま、左目には縦じまを見せます。
これが、どう見えるかって実験です。
この実験、やってみたらわかると思いますけども、最初、縦じまと横じまが重なったように見えるんです。
それが、しばらくすると、たとえば、縦じまだけとか、どっちかだけになるんですよ。
ほんで、そのまましばらく見ていると、今度は逆転して、横じまだけが見えるんですよ。
これが交互に繰り返されるんですけど、どのタイミングで変わるかは決まってなくて、ランダムなタイミングで、縦じまと横じまが入れ替わるんですよ。
こうやって、右目と左目が、互いに視野を奪い合ってるので、両眼視野闘争っていいます。
さて、ここで、縦じまが見えるということは、縦じまのクオリアが見えてるってことです。
横じまも目に入ってきてるはずですけど、見えないってことは、横じまのクオリアは見えてないってことです。
つまり、両眼視野闘争が起こるってことは、クオリアを見てるって、証拠になるわけです。
この、クオリアを、サルも見てるかって実験をしたそうです。
詳しくは、この、渡辺正峰(まさたか)先生の「脳の意識、機械の意識」に書いてあります。
こういう実験って、人間なら、どっちが見えるかって、言葉で聞けばいいだけなんですけど、サルの場合、言葉が通じないんで、実験するのが大変なんですよ。
そこで、縦じまが見えたらレバーを倒すとかって訓練させたそうです。
レバーを倒すタイミングが、ランダムなら、両眼視野闘争が起こってると言えるわけです。
その結果ですけど、見事、ランダムにレバーを倒したそうです。
つまり、サルも両眼視野闘争が起こっていたわけです。
つまり、サルもクオリアを見てたわけです。
これが、世界で初めて、人間以外でも、クオリアを持ってると確認できた実験なんです。
カエルは、意識はなくて、サルは、クオリアを持つってとこまで、実験で確認できたと言えます。
つぎは、人間のように言葉を話すには、何が必要ってことになります。
それは、頭の中の仮想世界を自由に操作できる想像仮想世界です。
人間の意識が、想像仮想世界を使って、言語を操る方法については、第25回「言語を再定義」を、ぜひ、見てください。
参考動画は、説明欄に書いてますので、興味がある方は、ぜひ、ご覧ください。
それでは、次回も、お楽しみに!