ロボマインド・プロジェクト、第503弾!
こんにちは、ロボマインドの田方です。
さて、橘玲の『DD論「解決できない問題」には理由がある』
を読んでいますけど、相変わらず、厄介な問題ばかり取り上げます。
今回は自殺とか安楽死です。
2019年にALS(筋委縮性側索硬化症)の女性がネットで知り合った医師から鎮静剤を投与されて死亡しました。
ALSというのは、全身の筋肉が動かなくなる難病です。
唯一動かせたのは目だけでした。
女性は、目の動きだけで文字入力してブログやSNSに思いを投稿してたそうです。
そこには「こんな姿で生きたくないよ」とか、「早く楽になりたい」などの言葉が並んでいました。
死にたくても死ぬこともできない辛さを訴えていたわけです。
そんな中、SNSで知り合った医師に130万円を支払って安楽死してもらったわけです。
ただ、日本では安楽死は認められていないので医師は嘱託殺人容疑で逮捕されました。
いろいろ考えさせられる事件です。
それから、コロナ禍で若い女性の自殺が増えています。
19歳以下で70%、20代で47%も増えているそうです。
2020年に自民党の政治家がSNSで「あなたたちのために政治に何ができますか?」と訊いたら、こんな要望が殺到したそうです。
「将来に対する不安が大きすぎて早く死にたいと毎日考えています。安楽死の制度化を望んでいます」とか、
「自分の子に迷惑をかけて死ぬのを待つだけなら、安楽死を合法化してほしいです」とかです。
若者たちの不安の原因は、他のアンケートで繰り返し出てきていて、はっきりしています。
それは「このままでは高齢者に押しつぶされてしまう」という恐怖です。
日本は人類史上、初めての超高齢化社会に突入しています。
現役世代何人で高齢者を支えるかをみると、2025年には1.9人に一人、2050年には1.4人で一人です。
さらに問題は世代間格差です。
2040年には国民の3分の一が年金受給者になって社会保障費は200兆円に達します。
それを現役世代で支えるとするとその負担は一人あたり年間400万円です。
次は、一生のうち、税や保険で国に支払った金額と、それを年金などで受け取る金額を世代間で比べて、どの世代が得してるか見てみます。
すると、80歳以上の世代だと6500万円得して、40歳未満だと、5200万円損するそうです。
その差、1億2000万円です。
高齢者を長生きさせるためにお金をつかって、将来のある若い人が絶望して自殺する構造が見えてきますよね。
かつては、将来が不安で自殺するのは高齢者でした。
ところが、今は、安心して長生きできるとなって高齢者の自殺率は下がっているそうです。
どこか間違っている気がします。
なぜ、こんなことになってるのかというと、高齢者が医療費を増やせって望んでるからです。
そして、高齢者の票を集めるために政治家が高齢者の希望を聞いているからです。
これが良く言われる構造です。
でも、僕は、ここにはもっと根本的な問題があると思っています。
それは脳と進化からから考えて初めて見えてきます。
これが今回のテーマです。
このままでは滅びる!
若者の自殺が増えて高齢者の自殺が減る国
それでは、始めましょう!
自殺するのは人間だけだと言われます。
これ、脳と進化から考えると結構深い話なんですよ。
魚は痛みを感じません。
これは僕の意見で、科学的に証明されているわけではありません。
そこで、まずはここを丁寧に説明します。
触覚や痛覚といった感覚器があるから痛みを感じると思う人がいると思いますけど、そんな簡単な話じゃないんですよ。
たとえば、人間みたいな痛みは植物は感じてないですよね。
これは、多くの人が同意すると思います。
たとえば、オジギソウに触ると葉っぱを閉じます。
これ、オジギソウは痛いとか気持ち悪いとか感じてるわけじゃないです。
ロボットで説明すると、触れられたと検知するセンサーと、葉っぱを動かすモータがあって、センサーに反応して葉っぱを閉じるように制御してるだけです。
魚も同じです。
釣られた魚がもがくのは、釣り針が痛くてもがいてるんじゃなくて、痛覚センサーが検知したらもがくって行動プログラムがあって、プログラムにしたがって自動でもがいてるだけです。
うまく行けば、釣り針が外れて逃げることができます。
おそらく、進化の過程で獲得したプログラムなんでしょう。
じゃぁ、痛いと感じるのは何でしょう?
それは、意識です。
魚の場合、きめられた行動しかとれません。
でも、意識は考えて行動できます。
つまり、意識があると、決められた行動だけじゃなくて、その場で考えて、今までと違う行動を取ることができます。
たとえば苦しいからと言ってすぐに逃げるんじゃなくて、我慢するということもできます。
おなかがすいたからと言っておなかいっぱいになるまで食べるんじゃなくて、我慢してダイエットする選択もできるとかです。
これが意識の役割です。
別の言い方をすれば自由意志です。
人は、進化で意識を獲得することで、自分で考えて行動を選択する自由意志を獲得したんです。
そして、行動を決めるときに参考にするデータが痛みとかの感覚です。
痛みや苦痛は生命の危機を知らせる信号です。
だから、やせたいからと言って何も食べないと死んでしまいます。
意識というのは、長期的な目標と、自分が今感じる感覚とを比べて考えて、最適な行動を選択できるわけです。
魚やオジギソウはセンサー入力に対する行動が決まっています。
つまり、行動を変更できる仕組みがないわけです。
行動を変更できる仕組みが意識です。
行動を変更できないということは、魚は意識という仕組みがないということです。
意識はセンサーデータの大きさを痛みという感覚として感じます。
その意識がないのだから、魚は痛みを感じないわけです。
そう考えると、痛み、意識、自由意志が全てつながっているのがわかりますよね。
人間の脳は、この複雑な仕組みを進化の過程で獲得したわけです。
それじゃぁ、意識にとって最も辛い状況を考えてみましょう。
意識の目的は行動を決定して体を動かすことです。
体を動かしたくても動かせない状況。
これほど辛い状況はないですよね。
生きるのも辛いはずです。
ALS患者が早く死にたいと思うのもわかります。
それから拷問っていうのは絶対嫌ですよね。
体を動かなくさせられて痛い思いをさせられるわけです。
死んだ方がマシだって思います。
僕だったら、知ってること、すぐに全部話します。
じゃぁ、今度はセンサーが故障した場合を考えてみましょう。
この前、近所のおまわりさんと話したんですけど、今年の夏も、結構、熱中症で亡くなるお年寄りがいたそうなんですよ。
なんでも歳をとると暑さを感じなくなるそうです。
暑さセンサーが故障してると言えますよね。
そうなると、真夏でもエアコンをつけずに寝て熱中症で亡くなるわけです。
暑いとか痛いとか、自然と感じる当たり前のことだと思ってましたけど、感覚はシステムが作り出したデータなんです。
だから、センサーが故障したら暑いとか痛いとか感じなくなるわけです。
さて、話はこっからです。
故障するのはセンサーだけじゃないです。
制御装置が故障する場合もあります。
制御装置というのは、センサー入力をもとに行動を決定する部分です。
意識の機能です。
意識は、現在、感じてる感覚だけでなくて、いろいろ想像して行動を決定します。
たとえば過去を思い出したり、将来を想像するときに使います。
このままだと将来困るから、今、頑張って働けば、将来、楽になるって想像するから、頑張って働こうって思えるんです。
それが、いくら働いても、稼いだ半分のお金が税金や保険で持っていかれて、それらが高齢者医療に使われる。
しかも、高齢者は、これからまだまだ増え続ける。
そう想像したら、そりゃ、将来に悲観して死にたくなりますよね。
じゃぁ、今度は高齢者の立場に立って考えてみましょう。
想像力というのは相手のことを想像、つまり思いやる場合にも使います。
つまり、高齢者の立場に立ったら、若い人に申し訳ないって思うはずです。
ところが、今の高齢者は、まだ医療費を増やせって言います。
医療費や年金を下げるって言おうものなら、「老人は死んでもいいと思ってるのか」って怒りはじめます。
でも、昔の年寄りは、そんなことなかったと思います。
節度があって、自分の立場をわきまえてたと思います。
若い人はお年寄りのことを考えて、お年寄りは若い人のことを考えて社会全体がうまく回っていました。
それが、いつのころからか高齢者がわがままになってきたように思います。
僕は、この原因は団塊の世代のだと思っていました。
今、定年退職して年金で暮らすようになってきた世代が、ちょうど団塊の世代です。
団塊の世代といえば学生運動や安保反対を叫んでた人たちです。
声を上げて自分たちの権利を要求するリベラルの考えが体に染み込んだ世代です。
そんな世代が高齢になって、安保反対の代わりに医療費を要求するようになったわけです。
でも、よく観察するとそうでもないことがわかります。
僕の母親は団塊の世代の上の世代で、学生運動なんかしてなかったですけど、やはり同じようなことを言っています。
十分な年金をもらっていますけど、まだ足りない、医療費をもっと安くしてくれないと困るって言います。
「そのお金は、自分が働いて払ったお金じゃなくて、今の若い人が働いたお金なんやで」って説明するんですけど、よく理解できないようです。
若いころはそうでもなかったんですけど、歳とともに、どんどんわがままになっていってる気がします。
いつからこうなったんやろうって思ってたとき、衝撃的な事実に気づきました。
それは、サザエさんの家系図を見た時です。
波平って、54歳なんですよ。
何が衝撃かっていうと、僕が今年55なんで、僕より年下なんですよ。
「えぇ!」ってなるでしょ。
たぶん、アニメやから老けてみえるだけで、きっと実写やったらもっと若いです。
そう思ってAIに波平の実写版をつくってもらいました。
どう見ても、年下に見えません。
いやぁ、自分では、ノリスケか穴子さんぐらいやと思っていました。
ところが、ノリスケは
26歳でした。
穴子さんは40代後半やろうと思ってたら、
27歳でした。
どちらも20代だったんですよ。
まぁ、それはいいとして、何が言いたいかというと、昔と今じゃ、高齢者の年齢が全然ちがうってことです。
サザエさんのアニメが始まったころは、日本人の平均寿命はまだ60代でした。
そこから50年、平均寿命がどんどん延びて、今じゃ女性の平均寿命は87歳です。
つまりね、問題は団塊の世代にあるんじゃないんですよ。
じゃぁ、どこが問題かというと脳です。
脳は成長とともに発達して成人するころに完成します。
最初に完成するのは大脳辺縁系などの情動を司る部分です。
そのあと、前頭葉などの制御系が遅れて完成します。
大脳辺縁系が司る情動というのは、怒ったり、喜んだりする感情の部分です。
前頭葉が司る制御系というのは、社会的な脳ともいえるところで、感情を抑えて自制するところです。
だから、思春期の頃は情緒不安定ですぐに怒ったり、笑ったり、泣いたりするわけです。
それが成人するころには落ち着いて、相手や社会全体のことを考えて行動できるようになるわけです。
さて、歳をとると、いろんな機能が失われますよね。
センサー機能が失われて、暑さを感じなくなる話はしました。
それは、脳も同じです。
そして、失われる順番は、最後に獲得したものから失われます。
つまり、最初に失われるのが社会的な機能です。
相手のことを思いやったり、社会全体のことを考えるって機能です。
そして、最後まで残るのが情動の部分です。
怒ったり、泣いたりする機能です。
歳をとると子供に返るって言いますけど、こういうことです。
そう考えると、今、起こっている現象がよくわかります。
医療の発達で、日本人の平均寿命が飛躍的に伸びました。
その結果、人類が経験したことのない高齢化社会に突入したわけです。
ただ、寿命が延びたといっても、脳は確実に機能低下しています。
昔は、脳が機能低下する前に亡くなっていたので、高齢者といっても頭ははっきりしていました。
自分のことをわきまえた節度ある老人です。
それが、今の高齢者は、脳の一部の機能が失われて判断力が低下しています。
その失われた機能が、相手を思いやるといった社会的な機能です。
それは、成人するころに獲得する最後の機能です。
それが失われるから、歳をとるとわがままな子供に返るわけです。
子供に返ったと思ってお年寄りを大切にしましょうとは良く言われることです。
まぁ、それはわかります。
ただ、それだけじゃだめなんです。
大事なものを見落としているんです。
それは、選挙権です。
選挙権は、成人しないと与えられませんよね。
なぜなら、成人してないと社会人としてちゃんと判断できないからです。
民主主義の根幹は主権在民です。
主権在民とは国民が国の在り方を決めることです。
国民というのは、成人して選挙権をもった人のことです。
社会のこと、みんなのことを考えずに、自分のことしか考えない人が国の在り方を決めたらどうなるでしょう?
自分たちのことしか考えなくなりなって、将来の国のことなんか考えない政策ばかりになります。
そうならないように、選挙権は大人にしか与えられないんです。
逆に言えば、社会全体のことを考えられなくなった人に選挙権を与え続ると、国を滅ぼしかねないってことです。
それが、今、この日本で起こっていることです。
人類は長い歴史の中で民主主義を獲得しました。
ところが、今、医療の発達で、人類が経験したことがない社会が生まれつつあるんですよ。
民主主義が想定していなかった社会です。
それは、子供に返って自分のことしか考えられない心を持った人が国の政策を決める社会です。
車の免許の場合、免許返納って制度があります。
それと同じで、選挙権の返納も、そろそろ真剣に考えないといけないんじゃないでしょうか?
そうしないと、この国は、間違いなく滅ぶでしょう。
はい、今回はここまでです。
この動画が面白かったらチャンネル登録、高評価、お願いしますね。
それから、よかったらこちらの本も読んでください。
それじゃぁ、次回も、おっ楽しみに!
第503回 若者の自殺が増えて老人の自殺が減る国
