ロボマインド・プロジェクト、第504弾!
こんにちは、ロボマインドの田方です。
今回は、右脳の本を紹介します。
学習やビジネスに右脳を活用しようとか、スピリチュアル寄りの話とか、右脳関係の本はいっぱいありますよね。
今回紹介するのは、そんなのとちょっと違います。
それは、この本です。
『脳の右側で描け』です。
デッサン技法の本です。
完全な美術の実用書です。
なんで僕が美術の本を紹介するか、最初に説明しておきます。
第500回で、ロボマインド・プロジェクトの振り返りをしました。
僕が知りたいのは脳や心の仕組みです。
普通、脳を研究するなら、MRIや脳波計で脳を観察する必要があります。
そんなの、とても個人で研究できるものじゃありません。
でも、僕は25年前、僕なら一人で出来るって思ったんですよ。
なんでかっていうと、僕が知りたいのは意識や主観です。
つまり、ニューロンとか低レベルの処理が知りたいんじゃなくて、意識などの高レベルの処理が知りたかったんです。
僕の考えでは、意識は、脳というコンピュータの上で動くプログラムです。
今、目の前に机があるとか、壁があるとかって感じてるのが意識です。
その意識は、一種のプログラムというわけです。
じゃぁ、そのプログラムの中身を調べるにはどうしたらいいでしょう?
意識というか自分はプログラムなわけです。
じゃぁ、その自分が感じていることを詳細に書き出したら、それが意識の処理内容になるじゃないですか。
ねぇ、このやり方なら、MRIも脳波計もいらないでしょ。
だから、一人でできるって思ったんですよ。
さて、今回の話は右脳と左脳です。
僕が知りたいのは、右脳と左脳の処理の違いです。
それを、実感として感じたいんですよ。
「あっ、今、右脳が活性化してる」とか、「左脳の切り替わった」とか。
でも、どうしてもそれが分からないんですよ。
頭の片側がしびれたりかゆくなったりしたらわかりやすいんですけどそうはならないんですよ。
そこで、今回の本です。
この本には、右脳でデッサンする具体的な技法を解説してるんですよ。
そこには、「こう感じてるときは左脳を使ってる」「こう感じたら、それは右脳だ」って具体的に書いてあるんですよ。
まさに、これが僕の知りたかったことです。
これが今回のテーマです
脳の右側で描け
それでは始めましょう!
まず、最初に練習するのがこれ、ルビンの壺です。
二人の顔が向かい合ってるようにも見えるし、一つの壺にも見える絵です。
これを描きます。
最初に上下の水平線を描いて、まず左の顔から描きます。
描く時、おでこ、鼻、口、あごとかって言いながら描きます。
左の顔を描き終わったら次は右です。
このとき、左右対称となるように描かないと壺っぽく見えません。
ここで、おでこ、鼻、口って言ってると、なぜかうまく描けません。
そこで、次は何も言わずに、左の線の角度がどのくらいか、カーブの曲がり具合はどのくらいかって形だけに注目しながら右を描きます。
すると、今度はきれいに左右対称に描けます。
はい、ここです。
じつは、この時、左脳と右脳が入れ替わったんですよ。
おでこ、鼻、口、って言葉ですよね。
言葉を司るのは左脳です。
おでこ、鼻って言って描いてる時は、左脳を使ってたんです。
一方、線の傾きとかカーブの曲がり具合ってのは見たままの形です。
見たままの世界を感じるのが右脳です。
だから、形に注目して描くときは右脳を使ってたんです。
言葉には意味がありますよね。
でも、本来、世界には意味なんかありません。
世界に意味を与えているのは左脳です。
デッサンの目的は世界を見たまま、忠実に描くことです。
そこに意味という解釈が入ると、見たままの世界でなくなるんです。
だから、デッサンが狂うんです。
こんな風にして、「今、右脳を使ってる」「今、左脳を使ってる」って実感できるんです。
MRIなんか使和なくても、右脳と左脳の処理の違いがわかるんです。
絵を上手に描くには右脳を使えばいいってわかりました。
でも、人は左脳優位なので、普通に描こうとすると、左脳で描いてしまいます。
何とか強制的に右脳で描くことはできないんでしょうか?
そこで次の練習は、逆さにして絵を描くことです。
脳は何か見ると、それが何かを判断します。
「何か」を判断するのは左脳です。
「何か」というのは意味です。
でも、それがさかさまになってると、見慣れないので左脳はそれ以上意味を読み取ろうとしません。
つまり、出しゃばりな左脳が、ちょっとおとなしくなるんです。
これだけじゃよくわからないと思うので実例で説明します。
これは、サッチャー首相の写真をさかさまにしたものです。
とくにおかしなところはないですよね。
それじゃぁ、これを元に戻しますよ。
(ゆっくり180度回転させる)
ねぇ、おかしいでしょ。
正しい位置にあると、すぐに、表情がおかしいってわかるでしょ。
これだけおかしな顔なのに、逆さにすると全く気付かないんです。
これ、どういうことかっていうと、顔をみると、左脳は表情を読み取ろうとするんです。
表情って、実は、ものすごく微妙で、ちょっと口角が上がっただけで笑顔に見えて、ちょっと口角が下がっただけで怒ったように見えます。
この微妙な違いを読み取るには、基準となる表情との比較をしないといけません。
基準となる表情って記憶の中にある見慣れた標準の顔です。
でも、見慣れない逆さの顔だと、標準の顔がないので、標準との違いがわかりません。
だからおかしな表情でも気づかないんです。
意味を読み取れないと、純粋な形に注目するんです。
この時、右脳が優位になるんです。
だから、逆さの絵をデッサンします。
課題として出されるのはピカソの『ストラヴィンスキーの肖像』です。
これを逆さにしたものをデッサンします。
もちろん、逆さのまま描きます。
このとき、いくつか約束があります。
まず、描いてる間は絶対に、絵を元の正しい位置に戻してはいけません。
見本の絵も、自分が描いてる絵もです。
元の位置に戻すと、すぐに左脳が出てきて意味を読みと取ろうとします。
それから、描く時は必ず一人になれるとこで描きます。
誰かが一緒にいると、つい、話してしまいます。
せっかく右脳優位になっていても、会話して言葉を使ったとたん、すぐに左脳に戻ってしまいます。
それほど、右脳優位でいることは難しいんです。
描く順番はどこからでもいいです。
上からでも下からでもいいです。
ただ、最初に全体の輪郭を描いて、次にその中を埋める描き方はNGだそうです。
一部を完成させて、それをちょっとずつずらしながら描くそうです。
そのために、たとえば見本の絵を隠して一部だけ見えるようにして、それをずらしながら描いてもいいって言います。
これ、意外ですよね。
だって、学校では、全体をとらえて、徐々に細かく描きましょうって習うじゃないですか。
デッサンの本なんか見ても、そう書いてあります。
どうも、この書き方は左脳を使ってるようなんです。
ここで思い出すのが自閉症の画家、スティーブン・ウィルシャーです。
彼は、一度みた風景を完全に記憶して、記憶だけでこんな絵を描きます。
すごいでしょ。
彼は、いわゆるサヴァンです。
サヴァンというのは、自閉症の中で特殊な能力がある人のことを言います。
彼の場合、絵を描く能力です。
彼が絵を描くとこも見たことがあります。
こんな風に、左から順番に描くんですよ。
まず全体を描いて、徐々に細かく描いていくわけじゃないんです。
ペンでいきなり細部から書いていくんですよ。
自閉症は右脳優位と言われています。
これが右脳の世界の捉え方なんでしょう。
それから、もう一つ思い出すのは障害者施設「やまなみ工房」のアート作品です。
ここでは、障害者にアート作品を創らせているんですけど、それが、今や世界の注目を集めています。
その作品がこれらです。
特徴は細部です。
たとえばこの絵、拡大するとこうなります。
背景になんか描いてあるなぁって思ってよく見たら、全部、ちっちゃい人間なんです。
すごいでしょ。
右脳優位になるとこんなのを創り出すんです。
それから、この本には、他にもいくつかアドバイスが書いてあります。
絵を描いてるとき、頭の中で言葉で考えるとしたら、視覚的な言葉だけ使うようにって。
たとえば「この線はこっちに曲がっている」とか、「この形はここが曲がってるとか」です。
絶対にやってはいけないのが、名前で呼ぶことです。
つまり、「手」とか「足」って呼ぶことです。
名前で呼ぶと、その瞬間、意味をもった左脳で考えてしまうからです。
手を描く時は、手と認識しないで、手の形にだけ集中するようにします。
そうしてると、だんだん楽しくなってきます。
細かい部分が少しずつつながって、ジグゾーパズルみたいに熱中してしまいます。
これが、右脳のモードに入ってる時です。
気が付いたら何時間も経っていたりします。
右脳には時間がありません。
時間を感じるのは左脳です。
「気が付いたら」というのは左脳に戻ったときです。
その時になって、初めて、今まで夢中で絵を描いてたって気付くんです。
「絵を描く」という意味の行動をしてたと左脳が解釈したわけです。
これが左脳と右脳の世界の見方の違いです。
この本では、さらにこうも書いてあります。
形だけに集中して絵を描いてる時、それはスポーツでいうゾーンに入っているときと同じだって。
目の前の形だけに集中するとか、スポーツだと、球の動きとか、相手の選手の動きとかに集中してる時です。
共通するのは、それは、今、見える世界です。
形とか動きだけです。
それ以上の意味はありません。
世界には意味なんかありません。
意味があるのは、左脳だけです。
右脳は、ありのままの世界を、そのまま感じます。
だから、ゾーンに入ると、世界がはっきり見えます。
デッサンしてると形だけが見えます。
プロ野球で打撃の神様といわれた川上哲治選手は「ボールが止まって見えた」の言葉を残しています。
これがゾーンに入った時感じる世界です。
スポーツだと、ゾーンに入ると結果として現れます。
さて、デッサンだとどうなんでしょう?
逆さに描いて、本当にデッサンがうまくなるんでしょうか?
この授業を受けた大学生がいました。
その人は、最初、課題を勘違いして、見本の絵を正しい位置にして模写したそうです。
それがこの絵です。
描き終わってから、課題を間違ったことに気が付いて、翌日、今度は絵を逆さにして、もう一度同じ絵を描きなおしたそうです。
その絵がこれです。
ねぇ、見違えるほど上手くなってるでしょ。
これが右脳で対象を捉えるということです。
この本、世界で500万部も売れたそうです。
これだけ売れるってことは、単に「右脳を使おう」ってふわっとした話じゃなくて、実際にデッサンが上手くなるって実用的な本だってことです。
右脳の素晴らしさはわかりましたけど、左脳も重要です。
世界から意味をくみ取るのは左脳の役目です。
左脳があるおかげで、世界をより深く理解できます。
ただ、意味を中心に世界を見ると、世界を正しく見ることができません。
重要なのさ左脳と右脳の両方を使うことです。
でも、普通の人には、それが難しいです。
そこで、最後に天才、レオナルド・ダ・ヴィンチを取り上げます。
ダヴィンチは、多くのアイデアをノートにメモとして残してますけど、それらはすべて鏡文字で書かれていました。
文字は左右反転で、右から左に書かれています。
鏡に映して、初めて読めます。
その理由として、アイデアを盗まれないようにしてたとか言われていますけど、この程度のトリック、簡単に見抜かれます。
そうじゃなくて、おそらく、鏡文字を書くことで、右脳と左脳の両方を鍛えてたんじゃないかって僕は思っています。
絵を上下反転させると、形に注目して、右脳が活性化しましたよね。
それと同じで、鏡文字を書こうとすると、自然と形に注意がいって右脳が活性化するんですよ。
それと同時に、文章を書くので左脳を使わざるを得ません。
つまり、鏡文字で書くことで、右脳と左脳の両方が活性化して、よりいいアイデアが出てくるんだと思います。
ダ・ヴィンチはそのことに気が付いて、鏡文字で書いてたんじゃないでしょうか。
はい、今回はここまでです。
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それから、よかったらこちらの本も読んでください。
それじゃぁ、次回も、おっ楽しみに!
第504回 脳の右側で描け
