ロボマインド・プロジェクト、第505弾!
こんにちは、ロボマインドの田方です。
現代社会は、左脳でつくられています。
つまり、言語思考者が作り上げた社会です。
逆に言えば、右脳優位の人は置いてきぼりにされています。
今回も、前回から紹介している本『脳の右側で描け』の続きです。
作者のベティ・エドワーズは大学の美術の教授でありながら認知心理学の博士でもあります。
ベティ・エドワーズは、左脳優位の人が作った言語社会を指摘します。
たとえば、最近だと、文字の読み書きが上手くできない人をディスレクシアといって学習障害といわれますよね。
でも、絵をうまく描けない大人はいっぱいいますけど、学習障害とはいわれません。
これが、言語思考者のつくった世界というわけです。
じゃぁ、もし、右脳優位の人が社会をつくったとしたらどうなるでしょう。
右脳優位の人は言語でなくて視覚で考えます。
ビジュアル・シンカーとも言います。
右脳優位の人の社会だと、コミュニケーションは絵で行います。
そんな社会だと、絵が描けない大人は学習障害とされるでしょう。
僕らの世代で、絵が描けない芸人といって思い出すのは浜ちゃんです。
HEY!HEY!HEY!で、よくゲストと一緒に絵を描いてました。
それじゃぁ、いくつか見てみましょう。
最初のお題はミッキーマウスです。
ドン。
う~ん、ギリギリわからないでもないです。
かろうじて、耳に特徴が現れています。
じゃぁ、これは何のキャラクターかわかりますか?
これ、ムーミンだそうです。
これはわからないですよねぇ。
じゃぁ、次は食パンマンです。
ドン。
これも分からないですよねぇ。
食パンマンは頭が丸いってのは思い出せたみたいです。
でも、どうも、浜ちゃんはあれを髪型と思ってるみたいです。
次はバカボンのパパです。
ドン。
雰囲気はあるんですけど、明らかに髪型がおかしいですよね。
リーゼントになってます。
その根元をハチマキでキュッとまとめてます。
もう、ムチャクチャです。
次は、アニメキャラクターでなくて、一般的な絵です。
まずはスフィンクスです。
どん。
う~ん、ま、わからないではないです。
ただ、顔が完全に人の顔になってます。
これじゃぁ、風に吹き飛ばされないように必死でこらえてるおっさんです。
次はタツノオトシゴです。
どん。
これも雰囲気はあります。
ただ、これも、なぜか人の顔になってます。
最後はかわいいチワワを描いてもらいましょ。
どん。
完全に人間の顔です。
これじゃ、人面犬です。
いやぁ、浜ちゃん、右脳社会だったら、完全に学習障害です。
しゃべりがうまいから、言語社会でうまくやっていけてるわけです。
それじゃぁ、いつから、左脳優位の社会になったんでしょう?
それから、人は、いつから絵を描くようになったんでしょう?
これらを進化を辿って解き明かしていきます。
これが今回のテーマです。
チンパンジーは、なぜ、絵を描かないのか?
それでは、始めましょう!
人類はサルから進化しましたよね。
人類が絵を描いたり、言葉を話すようになったのはおよそ7万年前と言われています。
そのあと、さらに複雑な絵、複雑な言語を獲得してきました。
それは脳が進化して起こったことです。
人類が7万年かけて獲得したことを赤ちゃんは7歳までの間に獲得します。
赤ちゃんは、人類の脳が辿ってきた進化を1万倍の速さで辿っているんです。
それを確認するために、チンパンジー、ホモ・サピエンス、赤ちゃんがどんな絵を描いたか比較してみます。
まずはチンパンジーの描いた絵です。
チンパンジーの「アイ」にペンを渡すとこんな絵を描きます。
ペンを滑らすと紙に線が引かれるのが面白いんでしょう。
いろんな線を紙に描きちらします。
簡単なようで、これはチンパンジーぐらい知能が高くないとできません。
もしかしたら、訓練したらできる動物もいるかもしれませんけど、報酬とか与えなくても、チンパンジーは自発的にこんな絵を描くんです。
つまり、好奇心で描くんです。
さらに興味深いのは個性もあります。
こっちは、別のチンパンジー「パン」が描いた絵です。
あきらかに、さっきのアイの描いた絵と違うでしょ。
同じ色を同じ場所に塗り分けようとしてるのがわかります。
同じような絵は子供も描きます。
これは、2歳半の子供が描いた絵です。
チンパンジーの描く絵に近いですよね。
何かを描くというより、ペンを動かすと線が描けるってことが面白くて描くんです。
チンパンジーと同じで好奇心で描いているんです。
次は、人類最初の絵です。
現在、人類最古の絵とされるのは、南アフリカのブロンボス洞窟で発見された石です。
この石には、明らかに人工的に刻まれた線が描かれています。
これも、チンパンジーや2歳の子と同じように、石の表面に線が刻まれるのが面白くて描いたんだと思います。
チンパンジーとちがって、曲線でなくて直線となってますけど、石だから直線状にしか線を刻めなかったからでしょう。
どうも、ものに何か跡を残せるとわかると、直線や曲線を描かずにいられないんでしょう。
これが好奇心です。
ここまではどれも同じです。
違いが出てくるのは次の段階です。
これは3歳半の子供が描いた絵です。
目や口を描いて顔らしいのを描き始めます。
さらに、手足らしいものも描かれます。
こっちの絵も顔になってますよね。
手足らしきものも描いてあります。
ところが、こんな顔の絵、チンパンジーはいつまで経っても描かないんですよ。
そこで、何とか無理やり顔を描かせようとして考えたのがこれです。
顔の輪郭だけ描かれた絵です。
この絵を渡すと、果たして、チンパンジーは目や口を描き加えるでしょうか?
結果はこうなりました。
顔の輪郭をペンでなぞっただけです。
どうも、これを顔と認識してないようです。
ただの線としか思っていないわけです。
じゃぁ、人間の3歳半の子に同じ絵を渡すと、どうなったでしょう?
これがその結果です。
ちゃんと目と鼻、口を描き加えました。
チンパンジーと人間じゃ、脳の中身が違ってきたってことがわかります。
それまでは、ペンを動かしたら、その軌跡が紙に残るのが楽しくて描いてたわけです。
ところが、人は3歳頃になると、顔を描き始めるんです。
つまりね、頭の中に思い描いてるものを紙にかいてるんですよ。
これの意味、わかりますか?
これ、頭の中に何かを思い描くことができるようになったってことです。
今までは、思い描いてたわけじゃないです。
単に、ペンの軌跡が紙に残ることが楽しかっただけです。
言ってみれば、これは現実世界で起こる現象です。
でも、顔を描くってことは、頭の中にあるものを表現したわけです。
チンパンジーはそれができないということは、チンパンジーは頭に何かを思い描くことができないってことです。
または、チンパンジーが理解できるのは、現実世界にあるものだけとも言えます。
頭に何も思い描けない限り、いくら紙とペンを渡しても、絵を描けないってことです。
子供は、丸と点で顔を描いて、「パパ」とか「ママ」とかって言います。
または、「ポチ」とか、飼ってる犬の名前を言います。
それを見てお母さんは、「上手に描けたねぇ」っていうわけです。
今、何が起こったかわかりますか?
これ、子供の頭の中にあるものを、絵を介してお母さんと共有したわけです。
自分が頭で思ったことがお母さんに伝わったわけです。
それが、子供はうれしいんです。
今までは、紙とペンの物理的な現象を楽しんでただけですけど、今は、頭の中にあるものをお母さんと共有したわけです。
もっといえば、シンボルを使ったコミュニケーションです。
そう考えると、2歳から3歳の間に、とんでもなく大きな脳の進化が起こったってわかりますよね。
そして、最初に現れる最も原始的なシンボルが顔です。
目、鼻、口からなる人間の顔は、最も強力で普遍的なシンボルだと言えそうです。
さっきの浜ちゃんんの絵を思い出してください。
タツノオトシゴを描いても、
チワワを描いても、
必ず人間の顔が登場してきてたでしょ。
これ、チンパンジーやゴリラには絶対に描けないんですよ。
浜ちゃんは、ゴリラじゃなくて人間だったんですよ。
まぁ、それはいいとして、子供の絵は次の段階に進みます。
5~6歳ごろになると、こんな感じの絵を描けるようになります。
いかにも子供が描きそうな絵ですよね。
まず、地面と空が地平線で区切られています。
地面には家族と家があって、空には太陽があります。
つまり、何か対象を一つだけ描くんじゃなくて、空間全体を描くわけです。
絵に描けるってことは、頭の中に、こんな光景を思い描いてるってことです。
つまり、頭の中に思い描くものが、一つの対象から、世界まで広がったわけです。
別の見方をすれば、注目するものが、一つの対象から、一歩引いて、全体としてみることができるようになったとも言えます。
そして、重要なのは、一歩引いて全体をみたとき、そこには自分もいることです。
世界の中に自分がいるわけです。
つまり、客観的に自分を捉えているわけです。
パパとかママと対等に自分を捉えているわけです。
ミラーテストという動物行動学の実験があります。
額にペンキをつけて、鏡を見せます。
そして、鏡をみて、額のペンキを取ろうとしたら合格です。
このテストに合格するには、鏡に映っていいるのが自分だとわからないといけません。
ミラーテストに合格するのは、人間と、霊長類でも頭がいいボノボぐらいだそうです。
チンパンジーでもできる個体は少ないそうです。
ミラーテストに合格できるっていうことは、世界の中に自分がいるって形式で世界を理解してるわけです。
そうやって理解できる具体的な心のモデルとして、僕は、仮想世界モデルを提唱しています。
それは、目で見た現実世界を頭の中で仮想世界として組み立てて、意識は、その仮想世界を介して現実世界を把握するというモデルです。
仮想世界は、いま見てる目の前の現実世界だけじゃなくて、頭の中に思い浮かべるときにも使います。
これを想像仮想世界と言います。
想像仮想世界は、昨日の出来事を思い出したり、楽しい出来事を想像したりするときに使います。
5~6歳ぐらいになって描く絵は、まさに、想像仮想世界を使ってるわけです。
想像仮想世界にあるものを紙に写し取ろうとするわけです。
つまり、このころ、脳の中に想像仮想世界が生まれたと考えられます。
それから、このころの絵にはもう一つの特徴があります。
それは、対象がパターン化されてるってことです。
人とか家とか、こなれた書き方ができるようになります。
たとえば、家には三角の屋根があって、ドアには必ずドアノブあるとかです。
ベティが今まで何千枚って子供が描いた絵を見て来たそうですけど、ドアノブがないドアはみたことがないそうです。
そこまで、パターン化されているわけです。
これは、一種のシンボルとも言えます。
シンボル化は言語の第一歩です。
つまり、このころから、右脳と左脳の情報処理が分かれてきたと言えます。
左脳はシンボル化の部分です。
それがやがて言語になります。
それじゃぁ、右脳の処理は何でしょう?
さっきの絵で確認してみます。
たとえば、この絵から右の木を取り除いてみます。
すると、ちょっと、バランスが悪く感じるでしょ。
右の空間が広い気がします。
ここに何か描きたくなりますよね。
だから、この子は木を描いたんです。
つまり、全体の構図です。
構図っていう概念は、このころに既に生まれているんです。
全体のバランスとか構図、これが右脳が行う処理です。
これは、どんな子供でも持っています。
ここまでは、みんな、楽しく絵を描いてた頃です。
ところが、7歳ぐらいになると、絵が得意な子と絵が苦手な子にわかれます。
たとえば、立方体をリアルに描こうとします。
でも、子供が立方体を描くとこんな風になります。
立方体を描こうとしてるのはわかりますけど、ちょっとおかしいですよね。
それは本人もわかっています。
だから絵を描くのが嫌になるんです。
正解はこうです。
こう描けたら、気持ちがいいですよね。
でも、実際に子供が描くと、こうなります。
なんでこうなるんでしょう?
それは、「四角」って言葉に惑わされるからです。
立方体は四角だから、四角から描こうとするんです。
でも、紙に描く時、必ずしも四角にはならないんです。
四角じゃない形をかいて、結果として四角に見せるんです。
四角という言葉と、見た時に感じるものが違うわけです。
これは、左脳と右脳の処理の違いともいえます。
見た目の形を感じるのは右脳です。
四角という言葉の意味を理解するのは左脳です。
言葉から絵を描こうとすると、左脳と右脳で葛藤が生じるんです。
それを克服できないと、絵をうまく描けないわけです。
だから、このころから絵を描ける子と描けない子に分かれるんです。
現代社会は言語思考者の脳が作りだしています。
だから、絵をうまく描けなくても社会人として立派にやっていけます。
絵が描けなくても気付かれることはありません。
でも、何かのきっかけで「食パンマン描いて」っていわれたします。
そんなとき、こんな絵を描いたら、絵が描けないことがバレます。
なんでこんな絵になったかというと、食パンは上が丸いって意味と、頭には髪の毛があるって意味で考えるからです。
これらを統合して描くと、丸い髪型のただのおっさんになるわけです。
でも、正解はこうです。
全然、違いましたよね。
上手に絵を描くには、意味でなくて、見たままを描かないといけないんです。
その能力を持つのが右脳です。
はい、今回はここまでです。
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それから、動画で紹介した意識の仮想世界仮説に興味がある方は、よかったらこちらの本も読んでください。
それじゃぁ、次回も、おっ楽しみに!
第505回 チンパンジーは、なぜ絵を描かない?
