第508回 左脳で描くと作画崩壊する!


ロボマインド・プロジェクト、第508弾!
こんにちは、ロボマインドの田方です。
アニメのネタで、作画崩壊ってのがあります。
ガンダムとかでよくありました。
なんかポーズがぎこちなかったり、

頭が妙にちっちゃかったり、

顔が妙に長かったりとか。

昔のアニメだからかと思ってたら、そうでもないです。
コナン君とか、ちっちゃくて婦警さんに踏みつぶされそうです。

いや、ちっちゃいのはコナン君だけじゃないです。
それか、ベッドが10mぐらいあるかのどっちかです。


こっちは、ちょっと目が大きすぎます。

目を大きくすればかわいくなるってわけじゃないようです。
むしろ、妖怪に近いです。

こっちは、ほぼ垂直の坂道です。

郊外のマイホームって、こんな感じなんですかねぇ。

プロのアニメーターでも正確な作画って難しいみたいです。
だから、普通の人が正確にデッサンできなくて仕方ないんです。
そんな人のために、正確にデッサンを描く方法があります。
それが、この間から紹介してるこの本『脳の右側で描け』です。

実は、デッサンが狂う一番の原因は左脳を使ってるからです。
左脳は世界を意味でとらえます。
右手が前で、左手が後ろでって意味で考えて絵を描くとぎこちないポーズになってしまうんです。

これでザクに勝てるとは思えません。
でも、うまい人が描くと、きっちり決めてくれます。

これはかっこいいですよねぇ。

作画崩壊って、見てたらすぐにわかりますよね。
作画崩壊を見抜いているのは右脳です。

ほとんどの人は左脳優位です。
考えるときは言葉で考えます。
じゃぁ、右脳っていつ、使ってるんでしょう?

これがよくわからなかったんですけど、作画崩壊は見てすぐわかります。
ということは、右脳もずっと働いているってことです。
左脳ばかり使ってるようなんですけど、右脳も普段から働いているんです。

その右脳を使えば、正確なデッサンができます。
今まで、いろんな方法を学んできましたけど、今回も、意外な右脳を使ったデッサンの方法を紹介します。
そして、なんでこの方法だと右脳で描けるのかわかると、左脳と右脳の役割分担が見えてきます。
これが今回のテーマです。
左脳で描くと作画崩壊する!
それでは始めましょう!

今回注目するのはスペースです。
絵画だと、何もない空間のことです。
この「ない」というのが重要です。
というのも、左脳が注目するのは「ある」です。
右脳は、あるとかないとか関係ありません。
右脳の役目は見たままの世界を作ることです。
だから、何かあればそこから世界をつくりますし、何もなければ、周囲からないものを補って世界をつくります。

これだけだとよくわからないと思うので例を出します。
これは、オオツノヒツジのデッサンです。

なかなかうまいです。
この絵、どこが難しいかわかりますか?
それは、角の部分です。
横からみた角を描くのは比較的簡単です。

クルっと描いたらいいんです。
でも、正面から見たとき、回転してる角の前後の奥行を感じさせないといけないんですけど、これが初心者には難しいんですよ。
下手なアニメータが描くと、作画崩壊しそうな構図です。

でも、これを作画崩壊させずに初心者でも正確に描く方法があるんです。
それは、あえてあるものを描かないって方法です。
何もない空間だけを描くんです。
右側がそれです。
 
ちゃんと角が描けてるでしょ。
くるっとまわってるように感じられます。
なんでそう感じるかっていうと、ないものを右脳が補ってるからです。

人は、目で見た現実世界を頭の中で仮想世界として構築します。
意識は、仮想世界を介して現実世界を認識します。
これは、僕が提唱する意識の仮想世界仮説です。
仮想世界というのは、コンピュータの3DCGを想像してください。

意識の仮想世界仮説の説明は、今まではこれで終わってたんですけど、今回、これに右脳と左脳の役割を加えます。
右脳の役割は見たままの世界をつくることです。
つまり、3次元空間に3Dオブジェクトを生成して3DCGの仮想世界を作るのは右脳です。
右脳は、三次元の立体でものを認識するので、どんな角度からどんなふうに見えるのか完璧に再現できます。

目に見えるものがわずかでもあれば、そのほかの部分を自動で補うことができます。
だから、ヒツジを描かずに、周りの空間が描いてあれば、描いてないヒツジを右脳が補ってくれるんです。
これが、逆に下手な絵を描いたとしたら、右脳が知ってる完璧な世界とずれが生じます。

それが「なんか、ちょっとおかしい」って感じる作画崩壊の正体です。

次は、実際のデッサンの具体例を見てみます。
これは受講生が描いたデッサンです。

プロジェクターが乗ったカートです。
なんか、デッサンがくるっていますよね。
それじゃぁ、同じ受講生に、実体を描かずに、スペースで描いてもらいました。
 
それが右の絵です。
こっちの方がデッサンに狂いがないです。
たとえば、下の車輪を見てください。
左だと、車輪が横一列に並んでぎこちないですよね。
右の方が自然です。

なんで、車輪を横一列に描いたかというと、床は水平で、車輪は全部、床についてるから一列に並んでるはずだって思ったからです。
これが意味で考えて描いたってことです。
つまり、左脳を使って描いたわけです。

何もないスペースには左脳は興味がないので、スペースを描く時は右脳だけを使います。
だから、正確にかけるんです。
そして、何もないスペースがあると、右脳が3Dオブジェクトを生成してあてはめるんです。
だから、下手に何か描くより、何もないスペースだけにしたほうが、よりリアルに世界を感じられるんです。

右脳が見たままの世界をつくったとしたら、次にそれを解釈するのは左脳です。
解釈するというか、右脳が作った世界に意味を書き加えることです。
左脳は、右脳が作った世界を信じて疑いません。
具体例で説明します。

心理学者のペター・ヨハンソンは被験者が選択したカードについて理由を尋ねる実験をしました。
たとえば、こんな実験です。

被験者に二枚の女性の顔写真を見せて(A)、好きな女性を選んでもらいます(B)。
そして、選んだカードを渡して(C)、その女性のどこが好きか答えてもらいます(D)。
じつは、この実験、カードを渡すとき手品のトリックを使ってカードをすり替えるんです。
つまり、被験者は自分が選んだ女性とは違う女性の写真を渡されるんです。

まぁ、こんなの、すぐに気付くと思いますよね。
ところが、気付く人はほとんどいなかったそうです。
そして、そのあと、実際は選んでない女性の魅力について語り始めるそうです。
「イヤリングが素敵と思った」とか「クルっとした髪がいいなぁと思った」とかって。

この実験、顔写真だけじゃなくて、二つの政治政策のどちらかを選ばせるとか、二種類のジャムをどっちかを選ばせる実験もしてみたんですけど、どの実験も被験者はすり替えられたことにほとんど気付かなかったそうです。
たとえばジャムの実験では、二種類のジャムを味見してもらって好きなジャムを選んでもらいます。
この時、トリックを使ってすり替えて渡します。
そして、渡されたジャムをもう一度味見してもらって感想を聞くと、なぜ、こっちのジャムの方がおいしいと思うかって、とうとうと説明し始めるそうです。

興味深いのは、正しいものを渡した時と、すりかえたものを渡した時で、説明の長さが同じくらいだったそうです。
つまり、正しい選択の理由と、間違った選択の理由を、どちらも同じくらいの分量、説明するそうです。
説明できる量は固定されてるようなんです。
おそらく、選択の理由のパターンが最初からいくつか用意されてるんでしょう。
そして左脳は、その場の状況に応じた理由を、用意されたパターンから選び出すんです。
その場の状況っていうのが、右脳が作り出した世界です。
左脳の役目は、右脳が作り出した世界に理由を与えることです。
右脳が作り出した世界を疑ったりしません。
これが、左脳は提示された世界を疑うことはしないってことです。
いやぁ、結構、面白いでしょ。

右脳が作った見たままの世界というのは、3Dオブジェクトの形の部分です。
左脳が認識するのは、3Dオブジェクトの中身、つまり意味の部分です。
左脳はオブジェクトの意味をつなぎ合わせて世界を解釈します。
たとえば自分の行動には理由があるとかって因果関係を使ってつなぎます。
だから、自分がそれを選んだ理由を、とうとうと語ることができるんです。
たとえ、本当はすり替えられていたとしても、それには気付きません。
なぜなら、左脳は、右脳が作った世界を疑いませんから。
というか、右脳が作った世界こそが現実です。
現実は疑うのでなく受け入れるものです。

こうやって、左脳と右脳は役割分担が出来ています。
役割分担がきれいにできてる限り、左脳も右脳も違和感を感じないんです。
違和感を感じるのは、右脳の役割に左脳が干渉した場合です。
ゆがんだデッサンを見て、右脳が違和感を感じるわけです。

それじゃぁ、この逆のパターンてあるでしょうか?
つまり、右脳は違和感を感じないけど、左脳で考えると違和感を感じる絵です。
それもあります。
それは、エッシャーのだまし絵です。

たとえばこの絵、パッと見、どこもおかしくないです。
パッと見で感じるのは右脳です。
でも、よく見ると柱のつながりがおかしいです。
一階の天井の奥から降りてる柱が手前につながっています。
天井の手前の柱が奥につながっています。
これがおかしいと思うのは意味を感じる左脳です。

この絵もそうです。
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パッと見、どこもおかしくないです。
でもよくみるとあり得ないことが起こっています。
水路は90度に曲がっていますよね。
でも、それが上下に柱でつながっているんですよ。
違う位置にあるものが上下につながってるんです。
それも、三か所の柱、どれもおかしいです。
頭がこんがらがってきます。
でも、全体を眺めてもおかしさに気づきません。
右脳をうまくだましてるわけです。

作画は崩壊してないけど、意味の方が崩壊してるわけです。
空間を把握する右脳を空間的にだますって、これはなかなかできることじゃないです。
さすが、エッシャーです。

さて、今回の話で、右脳と左脳はきれいに役割分担してるってことがわかりました。
目に見える三次元世界を作るのが右脳の役割です。
右脳が作るのは3Dのオブジェクトです。
左脳が使うのはオブジェクトの意味の部分です。
意味というのは、名前とか年齢とか、目に見えない部分です。
そして、左脳はオブジェクトの意味をつなげて世界を解釈します。
たとえば因果関係でつなげます。
因果関係とは、原因があって結果が起こることです。
因果関係でオブジェクトをつなげると世界に時間が生まれます。
だから、時間を感じるのは左脳だけです。
逆に、右脳が感じるのは、三次元空間だけです。
今、この瞬間の世界だけです。
右脳は時間を感じません。

僕は昔から、何とか、これとは別な風に感じる世界ってあり得ないのかって考えてきました。
でも、そう考えるのが右脳と左脳なので、右脳でも左脳でも想像できない世界って想像できないんですよ。

アニメとか小説で異世界転生ものってありますけど、異世界といっても、主人公の役割が戦士とかヒーローに変わるだけです。
時間や空間に変わる、新たな次元がある世界に転生するってことは絶対にないです。
まぁ、たとえそんなのつくれたとしても誰も理解できないです。

じゃぁ、今度は逆から考えてみます。
僕らが感じてるこの世界観は、右脳と左脳が作ってるんですよね。
右脳と左脳は大脳にあります。
大脳は進化の過程で最後に獲得したものです。

つまり、脳がここまで進化してない生物は、僕らみたいに世界を認識してないってことです。


科学が目指すのは、誰が見ても、たとえ人がいてもいなくても、普遍的に存在する世界を解明することです。
でも、ここにきて、普遍的な世界の存在が危うくなってきました。
つまり、僕らが感じてる世界って、僕らの脳だからそう感じてるだけです。
科学は、普遍的に存在する世界を解明しようとしてきましたけど、それは、人間の脳にとって普遍的に感じるだけです。

世界のおかしさに最初に気づき始めたのは、20世紀の始め、量子力学が生まれた時です。
物体には粒子性と波動性の二種類ある世界です。
僕らの脳の中にはなかった世界観です。
科学が拡大した瞬間です。

それから100年たちました。
21世紀初頭の今、もっと根本的な科学の危機が迫ってきています。
それが、今見て、感じているこの世界は、たまたま、この右脳と左脳だから、そう感じるだけだってことです。
科学は、量子力学以来、また新たな見方をしないといけないのかもしれません。
それは、この世界を脳の内側から見るという見方です。
さらに科学を拡大させる必要がありそうです。

その第一歩が、今、見てる世界は、現実世界そのものじゃなくて、頭の中に作った仮想世界という見方です。
このことに興味がある人は、よかったらこちらの本を読んでください。

はい、今回はここまでです。
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それじゃぁ、次回も、おっ楽しみに!