ロボマインド・プロジェクト、第509弾!
こんにちは、ロボマインドの田方です。
僕は人の心をコンピュータで作ろうとしています。
心は実際は脳の中で動いています。
だから、最終的には脳型コンピュータを作ることになると思うんですよ。
脳型コンピュータは世界中で研究されてますけど、そのほとんどは、ニューロンレベルから脳を作り上げようとしています。
これをボトムアップ・アプローチと言います。
それに対して僕が作ろうとしてるのは、一番上のレベルからです。
一番上っていうのは心のことです。
意識とか主観が、今、こうして見て、感じてるレベルのことです。
トップから降りて脳を機能に分解して脳を解明しようとするアプローチのことをトップダウンアプローチといいます。
そして、解明した機能を半導体のチップにしたら脳型コンピュータになります。
さて、それじゃぁ、心を最初に大きく二つに分けるとするとどう分かれるでしょう?
それは、右脳と左脳です。
おそらく、脳型コンピュータは、右脳チップと左脳チップに大きく二つに分かれると思います。
じゃぁ、右脳チップと左脳チップ、機能的にはどう違うんでしょう?
ざっくりいうと、右脳チップは画像や空間なんかの3D処理、左脳チップは理論的思考とかの言語処理です。
さて、今回は右脳チップを設計していこうと思います。
そのために、右脳で行う処理を機能に分解する必要があります。
そこで参考にするのが、この間から読んでる『脳の右側で描け』です。
世界中でベストセラーになってるだけあって、ものすごく具体的なことが描かれてあるんです。
半導体のチップの設計レベルに落とし込めるほどです。
これが今回のテーマです。
これが、右脳チップの設計図だ!
それでは、始めましょう!
人は、目で見た現実世界を頭の中で仮想世界として構築します。
意識は、この仮想世界を介して現実世界を認識します。
これが、僕が提唱する意識の仮想世界仮説です。
仮想世界というのは、コンピュータだと3DCGで再現できます。
これを図にすると、こうなります。
3DCGで作った仮想世界を意識プログラムは認識するわけです。
これは、あくまでも僕が提唱する仮説ですけど、果たして、本当にそうなってるでしょうか?
それじゃぁ、これを簡単な実験で証明します。
目の網膜に映るのは二次元画像ですよね。
それじゃぁ、意識が認識してるのは、二次元画像が、それとも、二次元画像から生成した3次元オブジェクトか、どちらでしょう?
これを確認します。
ここに二つのテーブルがあります。
左は細長いテーブルで、右は幅が狭くて正方形に近いテーブルです。
天板の形が全然、ちがいますよね。
はたして、本当にそうでしょうか?
(アニメーションで左のテーブルを動かして右のテーブルの天板に合わせる)
どうです?
まったく同じ形でしょ。
今、動かして形が合ったのは二次元平面です。
でも、これ、どう見ても、全然形が違いますよね。
なぜそう感じるかというと、意識が見てるのは3次元のテーブルだからです。
意識が見てるのは仮想世界です。
仮想世界は3DCGの三次元です。
だから、この二つのテーブル、違う形に見えるんです。
もし、網膜に映る二次元として認識してたら、同じ形に感じるはずです。
これで、意識が見てるのは3次元の仮想世界だってこと、わかりましたよね。
見た目やイメージを処理するのは右脳です。
だから、3次元の仮想世界を作るのも右脳です。
じゃぁ、右脳はどんな機能をもっているでしょう?
次は、右脳の機能を分解していきます。
これは、子供が描いた立方体です。
どれもおかしいですよね。
なんで、こんなおかしな立法体を描くかというと、立方体は四角だからって、正方形から描き始めるからです。
つまり、「四角」って言葉で考えて描くからおかしくなるんです。
言葉で考えるのは左脳です。
つまり、左脳は三次元を理解してないといえます。
それじゃぁ、立方体の正解な絵はどうかというと、こうです。
これなら、ちゃんと立方体に見えますよね。
これを見て正しい立方体と感じるのは右脳です。
つまり、左脳の処理と右脳の処理は別だってことです。
右脳でちゃんとわかっているのに、左脳を使うから間違った立方体を描いてしまうんです。
それじゃぁ、右脳は、どうやって、正確な立方体を描けたんでしょう?
それは、2次元画像から3次元画像を生成する機能があるからです。
それは、遠近法とか透視図法と呼ばれる機能です。
上は一点透視図法で描いた立方体で、下は、二点透視図法で描いた立方体です。
右脳は、この機能をつかって網膜に映った二次元画像から三次元オブジェクトを生成してるわけです。
だから、右脳チップを設計するときは、この透視図法の機能が必要って言えます。
左脳で描くと間違えるのは遠近法だけじゃないです。
この本はデッサンの本なので、左脳で描いて間違えたデッサンがいろいろ紹介してあります。
たとえば、生徒がかいたこの絵、ちょっと不自然です。
そこで頭を修正してみました。
右が修正した絵です。
かなり良くなりましたよね。
どこを修正したかというと、髪を増やしたというか、頭の大きくしたんです。
どうも、人は頭を小さく描く傾向があるそうです。
この間違い、初心者によくあるそうです。
おそらく、普段、頭より顔に注目するので、重要度から顔を大きく、頭を小さく描いてしまうんでしょう。
そんな風に重要度を考えるのは左脳です。
左脳で考えて描くと、つい、頭が小さくなるんです。
これも、左が最初に生徒が描いた絵です。
顔はそのままで、頭だけ修正したのが右です。
かなり自然になりましたよね。
こっちも同じです。
左の絵から、頭だけ大きくすると見違えるほど上手くなりました。
じつは、解剖学的に見て、あごから目までの長さ(a)と、目から頭のてっぺんまでの長さ(b)は同じなんです。
実際の写真でも確認してみましょう。
これは、イギリスの作家、ジョージ・オーウェルの写真です。
見てわかる通り、あごから目の位置まで(a)と、目から頭のてっぺん(b)までの長さは同じなんです。
これは意外ですよねぇ。
なんとなく、目は上から1/3の位置ぐらいにあると思ってましたけど、実は、1/2なんですよ。
上から1/3と思ってるのは左脳です。
でも、1/3で描いてみると不自然に見えます。
不自然だと思ってるのは右脳です。
つまり、右脳は正確な頭のプロポーションを知ってるってことです。
同じようによく間違うのは耳の位置です。
絵を描かせると、みんな、実際より耳を前に描いてしまいます。
この絵、誰が描いたかわかりますか?
これ、実はゴッホです。
ただし、かなり初期の絵です。
目の位置が上から
1/3にありますよね。
まだプロの画家とは言えません。
それから、おかしいのは耳の位置です。
かなり手前にあります。
さて、これから1年後のゴッホの絵がこれです。
見違えるほど上手くなりましたよね。
目の位置は頭とあごの1/2の位置にあります。
そして、耳の位置がかなり後ろに下がって、自然です。
さっきの絵と比べてみるとよくわかります。
解剖学的に見ると、耳の正確な位置はこうなります。
あごと目じりと、耳の後ろを頂点とする三角形を描くと、直角二等辺三角形になるんです。
つまり、あごから目じりまでの距離と、目じりから耳の後ろまでの距離は同じなんです。
これも意外でしたよね。
意外と思うのは左脳です。
耳を前の方に描きすぎて不自然に感じるのは右脳です。
つまり、右脳は解剖学的に性格な頭部の位置関係を知ってるってことです。
または、頭部の正確な3Dモデルを持ってるとも言えます。
右脳チップの処理内容がかなりわかってきました。
右脳チップは正確な顔の3Dモデルを持っています。
それから、標準的な顔モデルだけでなくて、個別の顔も右脳は記憶しています。
つまり、顔認識するのは右脳です。
だから、右脳が損傷すると、顔がわからなくなることがあります。
家族の顔を見ても誰かわからなくなるし、鏡で自分の顔をみても誰かわかりません。
これを顔失認といいます。
右脳チップが損傷すると、おそらく顔失認が起こります。
人間の脳を忠実に再現した脳型コンピュータと言えそうですよね。
最後は、第505回で紹介したチンパンジーと人間の違いについて考えてみます。
人もチンパンジーも色鉛筆を渡すと、紙に何か描こうとします。
これは、チンパンジーが描いた絵です。
こっちは、人間の2歳半の子が描いた絵です。
チンパンジーの絵によく似てますよね。
ところが、人間の子供は3歳ぐらいになると、こんな絵を描き始めます。
顔を描き始めるんです。
でも、チンパンジーはいくつになっても顔を描きません。
そこで、こんな絵を渡して、顔を描き加えるか試してみました。
その結果がこれです。
顔の縁にそって丁寧に線を重ねていますけど、目や口は描きません。
どうも、顔とは認識してないようです。
次は、人間の3歳半の子供に同じ絵を渡しました。
これがその結果です。
ちゃんと、目、鼻、口を書き加えましたね。
さて、これはどういうことでしょう?
その前に、チンパンジーの知能について説明します。
チンパンジーは、言葉は話しませんけど、言葉を教えた研究はいっぱいあります。
すると、「ボールを持ってきて」というと、ちゃんとボールを持ってきたりできるようになります。
つまり、「ボール」という言葉と、実際のボールを結び付けることができるんです。
チンパンジーに限らず、犬でも「オテ」とか「マテ」って言葉を覚えることができます。
つまり、哺乳類は簡単な言葉なら教えたら覚えることができるようです。
これは、言い換えたら、知覚入力と行動の組み合わせを覚えられるってことです。
進化的に古い生物、たとえば魚類とか両生類はこれができません。
知覚入力に対する行動が生まれた時から固定されてるわけです。
哺乳類ぐらいまで進化すると、知覚入力に対する行動を覚えたり、自由に変更できます。
この処理をしてるのが意識です。
つまり、哺乳類ぐらいに進化して、意識が生まれたと考えます。
最初に説明しましたけど、意識は仮想世界を使って現実世界を認識しています。
たとえば、現実世界にあるリンゴを仮想世界で3Dのオブジェクトとして生成します。
そして、リンゴオブジェクトに「りんご」って名前を付けます。
だから、目のまえにリンゴ、バナナ、ブドウがあったとして、「リンゴを取って」ってチンパンジーに言ったら、リンゴを取ることができます。
チンパンジーは言葉はしゃべりませんけど、手話を教えたら手話で会話できるようになります。
「バナナを食べたい」とかって手話で会話できます。
「リンゴ」とか「バナナ」って単語は、一種のシンボルです。
つまり、チンパンジーはシンボルを操作して、現実世界を表現したり、自分の希望を伝えたりできるんです。
ここまではいいですよね。
さて、こっからです。
チンパンジーはリンゴやバナナの言葉の意味は理解してます。
でも、リンゴやバナナの絵を描くことはできません。
これはどういうことでしょう?
言葉を扱うのは左脳です。
左脳は、言葉やシンボル操作します。
言葉は、仮想世界のオブジェクトに付けた名前です。
「リンゴを取って」といって、リンゴを取ることができるってことは、仮想世界のリンゴオブジェクトを取るところを想像して、それを実際に行動することができるってことです。
ところが、「リンゴ」って名前から、リンゴの絵を描くことはできません。
チンパンジーにできなくて、人間ならできるということは、そういう機能を人間は持っているということです。
それは、見たものを別の形体、たとえば紙と鉛筆で表現するということです。
言葉でなく、似た形で表現するということです。
不思議なのは、リンゴの実体と、「リンゴ」って言葉は全然違いますよね。
でも、リンゴの実体と、絵に描いたリンゴは似てますよね。
一見、絵を描く方が簡単に思えますけど、チンパンジーにはこれができないんです。
出来ないということは、言葉と絵とは根本的な仕組みが違うってことです。
というか、その仕組みがないから、教えても絵がかけるようにならないわけです。
現実世界で見たものを、別の似た形で表現する。
これが難しいんです。
さっき、チンパンジーに顔を描かせようとしたら、こんな風になぞっていましたよね。
つまり、チンパンジーにできることは、描いてあるものをなぞるとかです。
何かの実体を表現しようとするって機能がないわけです。
犬にこの絵を渡したら、たぶん、においをかいで食べものじゃないとわかったら興味がなくなります。
つまり、犬にとっての興味というか、世界に対する行動に「表現」って行動がないわけです。
どうも、表現という行動ができるのは人間だけのようです。
それは、ものの形を、別の物質で再現すると言い換えられます。
別の物質で再現するというのは、現実世界に再現するということです。
そして、再現するのは形とかイメージです。
イメージを扱うのは右脳です。
右脳は、現実世界にある物体の形を認識します。
形を認識するとは、仮想世界に3Dオブジェクトとして再現することです。
今度は、その逆です。
つまり、仮想世界にある3Dオブジェクトを現実世界に形として再現するんです。
それを言葉でするのは左脳です。
言葉でなくて、形で再現するんです。
鉛筆や絵の具で描いたら絵になりますし、粘土で作ったら立体造形になります。
右脳の機能として、見たものや頭に思い描いたものを現実世界で別の形体で再現するって機能があるんですよ。
これ、結構重要な機能だと思うんですけど、今まで気が付かなかったです。
言葉をしゃべるのと同じように、絵を描く機能って、人間しか持てない機能だったんです。
そして、その機能があるのは右脳です。
右脳チップを作るとき、この機能を追加することを忘れないようにしないといけません。
はい、今回はここまでです。
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それから、動画で紹介した意識の仮想世界仮説に興味があるかたは、こちらの本を読んでください。
それじゃぁ、次回も、おっ楽しみに!
第509回 これが、右脳チップの設計図だ!
