第512回 小学生でもわかる心が体を動かす仕組み


ロボマインド・プロジェクト、第512弾!
こんにちは、ロボマインドの田方です。

第510回、511回と非認知能力について語ってきました。
非認知能力って、ほんと、わかりにくい言葉で、いかにも学者が作った言葉ですけど、一言で言えば、心のエネルギーのことです。
「楽しい!」って元気いっぱいの状態が心のエネルギーがいっぱいあるってことです。
何かに興味を持ったり、遊びや勉強に集中するには心にエネルギーがないとできませんよね。
生きてると、落ち込んだり、やる気がなくなることがあります。
これが、心のエネルギーが少ない状態です。

人は食べ物をエネルギー源にしますよね。
食べ物はアミノ酸などの栄養素に分解されて腸から吸収されます。
吸収された栄養素は血液で全身の細胞に運ばれます。
そして、細胞内のミトコンドリアで酸素と結合してATPが合成されます。
このATPが最終的に筋肉を動かすエネルギーになります。
だから、おなかがすくと力がでないわけです。

でも、これとは別に、心が元気でないとやる気が出ないです。
つまり、人の活動は、体と心から成り立っています。
でも、今までの科学は体の部分しか解明していません。
残り半分の心の部分は、まったく手つかずです。
それがようやくわかってきたので、わかりやすく説明しようと思います。
これが今回のテーマです。
小学生でもわかる
心が体を動かす仕組み
それでは、始めましょう!

体と心は、コンピュータで言えば、ハードウェアとソフトウェアの関係と言えます。
体の部分は顕微鏡で観察することで解明できました。
じゃぁ、心はどうやって解明したらいいんでしょう?

それは意識を使います。
今、こうして感じてるのが意識です。
意識も心の一部ですよね。
つまり、意識は、心というプログラムの中にあります。
だから、心の仕組みを解明するには、意識で感じてることをプログラムで再現すればいいんです。
心をプログラムで再現するには、まず、心のモデルを考えます。
たとえば、心が元気な状態というのは、心のエネルギーが満たされているということです。
それをうまくモデル化したのが、前々回提案した心のフライホイールモデルです。

フライホイールは、弾み車ともいいますけど、このおもちゃだと、この銀色の金属板のことです。
70222_1
実際に動かしてみますよ。
https://www.youtube.com/watch?v=6DvvZtrOKfo
(0:04~0:15ぐらい)
こんな風に床にこすって回転させると、そのあと、タイヤがずっと回転しますよね。
この仕組みをつかうと、こんな風にダンプカーを走らすこともできます。
(0:44~0:54ぐらい)

フライホイールのエネルギー源は、回転すると、回転を維持しようとする慣性力です。
フライホイールが回転してる状態が心にエネルギーがあるってことです。
やる気があって、いろんなものに興味を示して、集中して取り組むことができます。
心のフライホイールモデルが、かなり心に近いことがわかってきました。

今回、さらにわかったのは感情の仕組みです。
感情って、分け方によっていくらでもわけることができます。
それを、どう整理するかで悩んでたんですよ。
それが、感情って言葉と意味の関係と同じだって気付いたんです。

僕は、言葉の意味とは何かってずっと考えていて、それはほぼ解決できました。
元となるのは意識の仮想世界仮説です。

人は、目で見た現実世界を頭の中で仮想世界として構築します。
意識は、仮想世界を介して現実世界を認識します。
これが、僕が提唱する意識の仮想世界仮説です。

仮想世界というのは、コンピュータなら3DCGで再現できます。
たとえば、現実世界のリンゴは、仮想世界だと3Dオブジェクトのリンゴとなります。
重要なのは、3Dモデルということより、オブジェクトだということです。
オブジェクトというのは、一種のデータ構造で、赤とか丸いとか、甘酸っぱいってデータをまとめたものです。
リンゴの意味というのは、このオブジェクトです。
それを、テキストデータで表現したのが言葉です。
つまり、リンゴの本質はオブジェクトというわけです。

感情も同じです。
本質は、心のエネルギーです。
心のエネルギーはプラスとマイナスがあります。
プラスのエネルギーとは、たとえば「嬉しい」とか「楽しい」です。
これはプラスのフライホイールが回転します。
マイナスのエネルギーとは、たとえば「悲しい」とか「怒り」です。
これはマイナスのフライホイールの回転です。

プラスのエネルギーが物とか人に向けられるとき「好き」という感情になります。
マイナスのエネルギーは「嫌い」とか「怒り」といった感情になります。
「好き」な対象に対しては、近づきたいとか手に入れたいと思います。
「嫌い」な対象に対しては、遠ざけたいと思います。
「怒り」になると、対象を傷つけたいとか、破壊したいとまで思います。
そして、思いは行動を駆り立てます。

行動するにはエネルギーが必要です。
心のエネルギーが現実世界への行動のエネルギーとなるわけです。
だから、心のエネルギーモデルとして、フライホイールといった、エネルギーを発生させるモデルを使ったんです。

心のエネルギーは、さらに二種類に分けられます。
一つは、本能に基づく一次エネルギーです。
これは、例えば恐怖とか、食欲とかです。
山道を歩いていて、蛇が出てきたら怖くて、思わず逃げますよね。
これが恐怖という心のエネルギーによる行動です。
おなかがすいてる時、食べ物を見つけたら食べようとしますよね。
これが食欲という心のエネルギーによる行動です。
これは、人間でなくても動物なら持ってる心のエネルギーです。

もう一つは、人間しか持たない二次エネルギーです。
これが、やる気とか集中力といった非認知能力で、フライホイールモデルで説明できるものです。
それじゃぁ、一次エネルギーと二次エネルギーの違いは何でしょう?
それを図を使って説明します。
C:\Users\takata\AppData\Local\Microsoft\Windows\INetCache\Content.Word\2024年10月10日05時42分20秒0001.jpg
意識は、現実仮想世界を使って現実世界を認識します。
それとは別に、想像するときに使うのが想像仮想世界です。
そして、意識は体を制御して現実世界で体を動かします。

たとえば、公園で仮面ライダーごっこをする子供を考えてみます。
その子は自分が仮面ライダーになったつもりで遊ぶわけです。
カッコよく戦ってる仮面ライダーになりきってるわけです。
怪人やショッカー役の友達を倒しています。
怪人が逃げたら追いかけます。
公園から飛び出して追っかけてたら、いつもいる、近所の嫌なおじさんに出くわしました。
「こら、道路に飛び出したら危ないやろ」
「おまえ、もう小学3年やろ。いつまで仮面ライダーごっこしてるんや」
怒られてしゅんとなって、一気に冷めました。

さて、これを心のフライホイールモデルで説明してみます。
その子は、想像の中で、仮面ライダーになってます。
仮面ライダーになって、悪い敵を倒すところを想像します。
そりゃ、テンションがあがりますよね。
このとき、心のフライホイールの回転速度が上がるんです。
2024年10月15日05時11分38秒0001
ここから、心のフライホイールを回転させるエネルギーは想像仮想世界から供給されることがわかります。
つまり、フライホイールモデルには想像仮想世界が絶対必要ってことです。
そして、そのエネルギーは体を動かすエネルギーにもなります。
C:\Users\takata\AppData\Local\Microsoft\Windows\INetCache\Content.Word\2024年10月15日05時17分51秒0001.jpg
気が付いたら、仮面ライダーになりきって現実世界で戦っています。
怪人役やショッカー役の友達が次々に倒されます。
想像したとおりのことが現実で起こってるわけです。
すると、さらに想像仮想世界が活性化します。
これがさらに心のフライホイールを回転させます。

こうして、想像仮想世界、心のフライホイール、体、現実といった心のエネルギーの循環が生まれます。
これが夢中になって遊んでる状態です。

そこに近所のおっさんが出てきて怒られました。
「お前、もう3年やろ。いつまで仮面ライダーごっこしてるんや」
一気に現実に戻されました。

循環してた心のエネルギーが断ち切られました。
今まで元気に暴れてたのに、肩を落として、しゅんとなりました。
これが心のエネルギーがなくなった状態です。

ここからわかるのは、心のエネルギーの循環を加速させるのも、減速させるのも現実世界だということです。
最初に心のエネルギーを生み出すのは想像です。
想像どおりに現実になると、エネルギが加速して、循環し始めます。

そこに、想像と違う現実を見せられました。
自分は仮面ライダーでなくて、ただの小学3年の男の子です。
すると、一瞬でエネルギーの循環が止まります。

体は、心のエネルギーで動かされます。
それが最初にあらわれるのが表情です。
生き生きとした表情は、心のエネルギーから引き起こされれます。

顔の表面の筋肉だけで笑顔を作っても、作り笑顔にしかなりません。
そんなロボットには心を感じないのは当たり前です。
ChatGPTみたいに質問に答えるだけの会話なら、作り笑顔でもかまわないです。
でも、ドラえもんみたいに親友になれるロボットを作るには、心を作らないといけません。
その心のモデルがようやくできてきたんです。

心のフライホイールモデルに不可欠なのは想像仮想世界です。
想像仮想世界は、想像するときに使うだけじゃなくて、過去を思い出すときにも使います。
過去の楽しかった思い出、つらい思い出を思い出すときとかに使います。
フライホイールにはプラスとマイナスの二種類がありましたよね。
楽しい思い出はプラスのフライホイールが回転します。
辛い思いではマイナスのフライホイールが回転します。
重要なのはフライホイールはソフトウェアだということです。
だから、思い出すだけで回転します。
物理的なフライホイールだと、加速するまでに時間がかかりますけど、ソフトウェアだと一瞬です。
一瞬で、あの日の記憶がよみがえります。
たとえば、決勝戦で負けた悔しい思い出とか、一瞬で、その時の感情がよみがえります。
そして、その悔しさをばねに練習に励むこともできます。
こんなリアルな心も、心のフライホイールモデルで再現できます。

注意してほしいのは、想像仮想世界は人間しか持たないってことです。
つまり、人間しか持たない感情があるってことです。
たとえば、過去を思い出して悔しがったりするのは人間だけです。

でも、動物も、嫌な思いを覚えていますよね。
だから、動物病院を見ただけで犬は逃げようとします。
でも、それは注射をされた嫌な出来事を思い出したわけじゃありません。
動物病院を見た時、嫌な感情とか感覚がよみがえっただけです。
これは、山道を歩いいていて蛇が出てきて、思わず逃げるのと同じです。
本能に基づく一次エネルギーに近いものです。
一次エネルギーは現実世界の中でしか発生しません。
つまり、思い出したり想像したりして生まれることはありません。
現実に起こっていないのに、想像したり思い出したりして、怒ったり、喜んだりするのは人間だけです。
それに、戦争するのも人間だけですよね。
これは、敵が攻めてくるんじゃないかって想像するからです。

感情って、当たり前にあると思っていますけど、そうじゃないってことがわかります。
想像する仕組み、想像して発生する心のエネルギー、こういった複雑な仕組みがあって初めて生まれるものです。
だから、そんな仕組みを持っていない動物は、悔しいとか恨むとかって複雑な感情は持つことができません。

僕は、「見る」とか「ものがある」とかって当たり前のことをずっと考えていました。
こんな当たり前のことも、仮想世界っていう心の仕組みがないと感じられないってことがわかってきました。
たとえば、昆虫とか魚とかは、僕らと同じように世界が見えてるわけじゃないし、ものがあるとも思ってないわけです。
目があれば自然と見えるわけじゃないんです。
それと同じように、感情も自然と生まれるわけじゃありません。
最低限ある感情は、本能に基づく感情だけです。

何が言いたいかというと、AIについてです。
AIに人類が支配されるんじゃないかって心配をしいる人がいます。
それも、マンガや映画じゃなくて、科学者が真剣に考えています。
「ちょっと待てよ」って言いたいんです。
それって、AIも人間と同じように考えるってことが大前提になってるじゃないですか。

それって、あまりにも安直すぎないって言いたいんです。
まぁ、逆に言えば、それほど心について何も分かっていないってことです。
科学者ですら、心って、自然と発生すると思っているみたいなんです。
知能が生まれたら、必ず敵を支配するか、絶滅するかまで戦うと思っているようなんです。
でも、さっき言いましたけど、戦争するのは人間だけなんですよ。
複雑な感情を持ちえるのは、複雑な心が必要なんですよ。

それは、綿密に設計して初めて出来るものです。
設計の仕方を変えたら、全然別の心が生まれます。
僕らは人間の心しか知らないから、心はこれしかないと思ってるだけです。

心に関しては、言ってみれば、今の知識は中世レベルです。
つまり科学以前の迷信とか宗教レベルです。
AIは人類を滅ぼすのか、それとも人類の救世主かって、まさに、中世の宗教議論とそっくりじゃないですか。

いまは21世紀です。
そろそろ、その段階は卒業しないといけません。
そのためには、心は自然に発生するとか、敵を滅ぼすと考えるとかって人間の心が当たり前と考えるのはやめるんです。
そうじゃなくて、どんな仕組みで、どんな風に動くのかって心のモデルを作るところから始めないといけません。
その一例となるのが、心のフライホイールモデルです。

はい、今回はここまでです。
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それから、今回紹介した意識の仮想世界仮説に興味があるかたは、こちらの本を読んでください。
それじゃぁ、次回も、おっ楽しみに!