ロボマインド・プロジェクト、第515弾!
こんにちは、ロボマインドの田方です。
イーロンマスクのスペースXの計画によると、有人の宇宙飛行士が火星に到着するのは2028年の予定だそうです。
いよいよ、人類が火星に降り立つ日が現実のものとなってきました。
そうなってくると悩ましいのが、火星人への手土産です。
そんな場合は、とりあえず、ひよこ饅頭が無難です。
「あのう、地球から来たんですけど、よかったら、これどうぞ」
そしたら、
ウピー!、プルプルプル、プシュー、プシュー、プシュー
「うぁぁ、やばい。怒ってる、怒ってる」
「いや、あれは、おれは怒ってるんやない、喜んでるんや」
「ホンマか?こっちの方がよかったんちゃうか」
そういうて、今度は、もみじ饅頭渡します。
そしたら、今度は、
「はぁ~、えぇ~」
「なんか、がっかりしてるで」
「またかぁ、って顔してる」
「いやいや、あれは喜んでるんやって」
「そうは見えんけどなぁ」
何が言いたいかというと、宇宙人とコミュニケーションを取るのは難しいってことです。
でも、えらい人はちゃんと考えています。
たとえば、1977年に打ち上げられた惑星探査機ボイジャーには、宇宙人へのメッセージが載せられていました。
こんなのとか、
こんなのです。
これは数の概念を書いてます。
それから、1997年に公開された映画「コンタクト」は、SF映画の傑作と言われています。
ジョディ・フォスター主演で、原作はカール・セーガンです。
宇宙人から謎の機械の設計図が送られてくるんですけど、問題は、どうやってこれを伝えるかです。
映画「コンタクト」では素数が使われていました。
数学こそ、全宇宙共通の普遍的な概念ってわけです。
やっぱり、えらい人が考えることは違いますよねぇ。
ひよこ饅頭とか、もみじ饅頭じゃないんですよ。
でも、はたして、本当にそれでいいんでしょうか?
つまりね、共通する概念さえあれば、コミュニケーションできるんでしょうか?
この考えの前提には、進化した生物はコミュニケーションを取るって前提があります。
はたして、本当にそう考えていいんでしょうか?
これが今回のテーマです。
なぜ、宇宙人とコミュニケーションがとれると思うのか?
それでは、はじめましょう!
まず、もっとも根本的なとこから考えてみます。
宇宙人でも、さすがにこれは同じやろうってものです。
まず、同じこの宇宙に生きているってことは言えますよね。
そして、それを何らかの感覚器で知覚してるでしょう。
最低限いえるのは、知覚して、何らかの情報処理することです。
何が言いたいかというと、同じ宇宙にいても、情報処理が同じでないと、コミュニケーション取れないってことです。
たとえばビデオカメラは映像や音声をセンサーで知覚して圧縮とかの情報処理して記録します。
でも、ビデオカメラと会話できません。
そういうことです。
なんでこんな話をしてるかっていうと、前回から紹介してるラマチャンドラン博士の本『脳の中の天使』を読んでるからです。
脳の本を読むと、僕らが当たり前に思ってたことが当たり前じゃないってことがわかります。
たとえば、僕らは体があると思うじゃないですか。
そう思うのは、体があるからですよね。
でも、違うんですよ。
たとえば、幻肢って症状があります。
これは、たとえば腕が切断された人が、腕があると思う症状です。
ラマチャンドラン博士の最初の本『脳の中の幽霊』でも取り上げられました。
そこには、切断した腕が存在すると感じる患者、ヴィクターが登場します。
ヴィクターの体のあちこちを綿棒で触ると、あるところで失われた手を触られたと感じるといいます。
それは、顔です。
なんと、顔に失われた手の感覚マップが見つかったんです。
それがこの図です。
今回の本、この写真が出てたんですよ。
『脳の中の幽霊』は、僕は、何度も読み返しています。
だから、ヴィクターの写真をみて、「あのヴィクターに、ついに会えた」って、ちょっと興奮してしまいました。
まぁ、それはいいとして、今度は、ヴィクターの頬に水を垂らしたそうです。
そしたら、存在しない腕に水が流れ落ちるのを感じるって言います。
今度は、その腕をあげてもらいます。
そしたら、「重力に逆らって、水が腕を登っていきます」って言います。
なんでこんなことが起こるかっていうと、脳の中に体のマップがあるからです。
感覚野っていうんですけど、顔のちかくに手が配置されていますよね。
腕を失ったヴィクターは、手の神経が顔まで侵入したんです。
だから、顔を触られると失った腕を触られたと感じたんです。
それから、幻肢で困るのは、存在しない手が痛んだり、かゆく感じることです。
存在しないので、対処のしようがありません。
でも、ヴィクターは、存在しない手がかゆくなったとき、頬をかくと収まるようになったそうです。
いやぁ、なかなか興味深いですよね。
何が興味深いかっていうと、腕があると感じるのは、腕が存在するからじゃないってことです。
そうじゃなくて、脳の中に腕を感じる場所があるから、腕があると感じるってことです。
つまり、感覚器からの情報を脳内で自分の体に作り上げるプログラムがあるから、体があると思うんです。
だから、プログラムにバグがあると、体が存在しなくても体があると感じるんです。
ラマチャンドラン博士を有名にしたのは、幻肢を鏡を使って治療したことです。
詳しくは、第291回で紹介してうので簡単に説明します。
左腕が切断されたとして、右手を鏡に映して動かすと、失われた左腕が動いてるように感じるんです。
今回の本には、その実験の写真も載っていました。
これです。
左腕が切断されてないですけど、右手を鏡に映すと、左手があるように見えますよね。
この実験はいろんな人が追試試験しています。
ある医者は、鏡の前にレンズをおいて、鏡に映る手が、右手の半分ぐらいの大きさにみえるようにしたそうです。
そしたら、失った左手も半分ぐらいになったって感じたそうです。
それだけじゃないです。
その患者は、失った手にずっと痛みを感じてたそうですけど、その痛みも半分ぐらいになったそうです。
これも面白いですよね。
次は、情報処理の中身を見て行きます。
視覚や触覚などの感覚器から情報を得たとして、どんなふうにそれを処理して、管理するでしょう。
情報処理の方法なんて、いくらでも考えられますけど、脳内では主に二つの情報処理があります。
二つというのは右脳と左脳です。
それじゃぁ、体で考えてみます。
右脳は、空間配置とか、自分のボディイメージを作り出します。
ボディイメージは、右手がある、左手があるって自分の体のイメージのことです。
それから、僕は、今、部屋の中にいます。
そう感じるのは、右脳が部屋と自分の位置関係を作り出してるからです。
じゃぁ、この情報処理にバグが生じるとどうなるでしょう。
頭頂葉の側頭葉に隣接するところに角回と呼ばれる領域があります。
右脳の角回を電極で刺激すると、幽体離脱するそうです。
自分が体から抜け出て、天井から自分を見下ろしてるのを感じるそうです。
このことから、自分の体と、自分の心は別だってわかりますよね。
自分の体と自分の心を結びつけているのは、右脳の角回ってわけです。
注意してほしいのは、右脳が処理するのは空間的なことで、意味は別です。
意味を処理するのは左脳です。
左脳の角回は、計算や抽象化、言葉の比喩なんかの処理を行います。
角回の前には縁上回があります。
左脳の縁上回は、熟練した動作の処理を行います。
たとえば、針で縫うとか、釘を打つとか、バイバイって手を振る動作です。
左脳の縁上回が損傷した人に、「バイバイと手を振ってください」といってもうまくできないんです。
どうしていいかわからなくて手をみつめたり、手を振り回したりするそうです。
手が何かもわかっていますし、麻痺してるわけでもありません。
ただ、バイバイができないんです。
言い換えれば、バイバイの意味を理解できてないわけです。
意味を理解するのが左脳とは、こういうことです。
僕は、コンピュータで再現可能な心のモデルとして意識の仮想世界仮説というのを提案しています。
人は、目で見た現実世界を頭の中に仮想世界として構築します。
意識は、この仮想世界を介して現実世界を認識します。
仮想世界というのは、たとえば3DCGで作られます。
現実世界のリンゴは、仮想世界のなかの3Dオブジェクトのリンゴとなります。
オブジェクトというのは、一種のデータ構造で、色や形といった属性や動作をまとめたものです。
リンゴだと、赤いとか、丸いって属性を持ちます。
手の場合だと、手をふるって動作を持ちます。
これらの属性や動作が意味で、それが左脳が処理する部分です。
そして、3DCGで描画する三次元データの部分が右脳で処理する部分です。
ボディイメージとか、部屋の中の自分の空間的な位置とかです。
手の位置は右脳で管理して、手を振るとかって動作は左脳が管理するわけです。
こうしてみると、意識の仮想世界仮説は、人の脳とおなじように情報処理してると言えます。
さて、幻肢の話に戻りますけど、幻肢患者のハンフリーは他とちょっと違う特徴がありました。
ハンフリーは左腕がありません。
実験に協力してる学生の左腕をラマチャンドラン博士がたたいたりすると、ハンフリーは、存在しない腕をたたかれたって感じたそうです。
いや、これもまた、ややこしい話です。
頬を触られたら、存在しない腕を触られたって感じるのも不思議ですけど、まぁ、これは理解できないことはないです。
さっき説明しましたけど、脳内で、顔と手の神経の混線が起こってると考えたらわかります。
でも、今回起こったのは、他人の手と自分の手の混線です。
それも、切断された手です。
これ、どういうことでしょう?
同じような話は別にもあります。
トロント大学で脳外科手術してた時のことです。
脳の手術は意識が有る状態で行うことができます。
脳に直接電極を指してニューロンを観察していました。
それで、手を針でつついたとき活性化するニューロンを特定したそうです。
つぎに、医師が自分の手を針でつつくのを患者に見せたそうです。
そしたら、その患者のニューロンが、自分の手がつつかれた時と同じくらい激しく反応したそうです。
これってどういうことでしょう?
脳は、自分と他人を区別してないんでしょうか?
そうとも言えます。
正確に言うと、他人が感じることを、自分と同じように感じる機能があるってことです。
このニューロンのことをミラーニューロンと言います。
この機能があるから、他人の気持ちを理解できるんです。
つまり、共感です。
それじゃぁ、まとめます。
今、ここに自分がいますよね。
自分は体がありますよね。
でも、体があるから、自分の体があると思うわけじゃないんですよ。
体があると思うプログラムが脳の中で動いてるから体があると思うわけです。
だから、たとえ腕がなくなっても、そのプログラムが動いてたら、腕があると思うわけです。
腕だけやないです。
自分が部屋のここにいると思うのも、そう思うプログラムがあるからです。
部屋の空間と、自分の体の位置関係を管理するプログラムです。
そのプログラムは右脳の角回にあります。
だから、角回を電気刺激すると、部屋の中の自分の体の位置がずれるんです。
幽体離脱して、自分を天井から見降ろしたりするんです。
ボディイメージを作り上げるプログラムと、自分の空間的な位置を管理するプログラムがあって、初めて自分を定義できます。
自分を定義できるから、他人も定義できます。
自分と他人を区別できるってことです。
つまり、これだけのプログラムがあって、初めて、自分以外に他人がいることが理解できるんです。
自分は体が合って、手を針でつつかれると痛いと感じます。
でも、これだけじゃ、他人も手を針でつつかれて痛いと感じません。
他人の痛みを感じるにはミラーニューロン、つまり共感のプログラムも必要です。
ここまでそろって、ようやく、相手も、自分と同じように感じると思えるわけです。
つまり、これだけの機能がそろって、初めて、宇宙人とコミュニケーションが取れるってことです。
さて、冒頭で話しましたけど、偉い学者は、どんなに離れた星の宇宙人でも、同じ宇宙にいる限り、数学という概念は共有できると考えました。
だから、数学を使ってコミュニケーションが取れると考えました。
でも、これ、とんでもない勘違いなんですよ。
どこを勘違いしてるかわかりましたか?
それは、宇宙人も人間と同じ心を持ってると思うとこです。
ちょっと考えたらわかると思うんですけど、これ、みんな勘違いしてるんです。
だから、宇宙人が出てくるSF映画は、必ず地球に攻めてきます。
AIも同じです。
人類を支配するか、絶滅させるかって、本気で心配します。
もちろん、友好的な宇宙人のSFもありますし、AIと共存するAIアライメントって研究もあります。
でも、どちらにしても、人間みたいな心を持ってることは疑ってないんです。
同じ宇宙に生きていても、全く別の情報処理してることは十分に考えられるんです。
たとえば、自分と他人を区別しないとか、意味で考えなくて、ただ世界を感じるだけとか。
そんな宇宙人とコミュニケーション取れるわけないでしょ。
数学の概念とか、素数を使ったら宇宙人とコミュニケーションを取ろうと思うのは、火星にひよこ饅頭もっていくのと、そう変わらないです。
早く、このことに気づきましょう。
はい、今回はここまでです。
この動画が面白かったらチャンネル登録、高評価お願いしますね。
それから、動画内でも紹介した意識の仮想世界仮説に興味がある方は、よかったらこちらの本を読んでください。
それじゃぁ、次回も、おっ楽しみに!
第515回 なぜ、宇宙人とコミュニケーションがとれると思うのか?
