ロボマインド・プロジェクト、第519弾!
こんにちは、ロボマインドの田方です。
・・・・・
ワハハハハ・・・
イーヒヒヒ・・・
・・・・
はい、今、つられて笑った人、おめでとうございます。
あなたは人間と判定されました。
どういうことかというと、このつられて笑うっていうのは人間しかできない能力なんですよ。
お母さんが笑いかけると、赤ちゃんも笑うことが知られています。
それから、お母さんが舌を突き出して見せると、赤ちゃんも舌を突き出します。
これは、なんと、生後数時間の新生児の赤ちゃんでも確認されています。
これ、よく考えたら不思議なんですよ。
だって、生まれたばかりの赤ちゃんは自分の顔を見たことがないわけですよ。
それでも、母親が舌を出すのを見て、自分も舌を出すわけです。
つまり、他人のマネをするって能力は、生まれつき持ってるわけです。
お母さんが笑いかけると、赤ちゃんも笑うっていうのは、もっと不思議です。
赤ちゃんは自分の笑顔も見たこともないですし、口角をあげると笑顔になることもしらないでしょ。
というか、笑顔の本質は、口角をあげるとかってことじゃないです。
笑顔の本質は、楽しいとか、ウキウキする気分とか感情です。
その感情に連動して顔の筋肉も動いた結果が笑顔です。
つまり、赤ちゃんは、生まれつき、「笑う」ということの本質というか意味を知ってるわけです。
さて、今のAIは、人と同じようにしゃべったり、笑ったりできます。
でも、重要なのは表面に現れる現象じゃなくて、その奥にある本質ですよね。
言葉が表面に現れる現象なら、言葉の本質は意味です。
そして、赤ちゃんは、「笑う」の意味を生まれつき知っています。
つまり、笑うの意味を学習して学んだわけじゃないんです。
一方、今のAIは強化学習です。
データを大量に学習して、表面に現れる言葉とか見た目を人間と同じにすることを目指します。
でも、いくら見た目が人間そっくりになっても人間にはなれません。
なぜなら、奥にある心が再現されてないからです。
だから、僕は人の心を忠実に再現した心のモデルを提案しています。
ただ、人の心がどういうものか科学的に決まったものがあるわけじゃありません。
だから、心のモデルは他にも考えられるはずです。
そうやって、いろんな心のモデルをいろんな人が提案して、その中から、これが一番人間の心に近いんじゃないかって議論すべきだと思っています。
そこで、今回は、今まで僕が提案してきた心のモデルを捨てて、まったく別のやり方で心のモデルを組み立てることとします。
これが今回のテーマです。
田方仮説全否定
最新心のモデル
それでは始めましょう!
新しい心のモデルのヒントになるのが、さっき説明した赤ちゃんです。
赤ちゃんは、生まれつき「笑う」の意味をしっていますし、お母さんが笑いかけると、自分も笑います。
つまり、真似をする能力を生まれつき持っているんです。
これは脳の中のミラーニューロンの働きです。
今回も、ラマチャンドラン博士の『脳の中の天使』を参考にしています。
ラマチャンドラン博士は、人の心の「心らしさ」は、ミラーニューロンが生み出しているっていうんですよ。
そこで、「心」を明確にするために、心がないロボットとの違いを考えながら心に必要な機能を探っていきます。
たとえばオートマタです。
https://www.youtube.com/watch?v=ux2KW20nqHU
(0:21~0:28ぐらい 1:12~ぐらい)
オートマタというのは、18世紀~19世紀にかけてヨーロッパで作られたからくり人形です。
こんな風に、ペンにちゃんとインクを付けて、紙に文字を書いたりできます。
(1:40~ぐらい)
仕組みは、歯車やカムからなる複雑な機械です。
このオートマタ、どう見ても心がないですよね。
でも、人と同じように文字は書けます。
人と会話するChatGPTも、オートマタの延長にあると言えます。
じゃぁ、オートマタやChatGPTと人の心の違いは何でしょう?
そのヒントになるのがミラーニューロンです。
ミラーニューロンといのは、マカクザルの脳の実験をしているときに発見されました。
マカクザルの脳に電極を挿して、ものをつかむときに発火するニューロンを特定しました。
次に、人間が同じようにものをつかむのをみせると、同じニューロンが発火したんです。
つまり、自分が行動するときだけでなく、他人が物をつかむときにも発火したんです。
これがミラーニューロンです。
ここには、重要な要素がいっぱい含まれています。
一つずつ、見ていきますよ。
まず、サルは人がつかむのを見て「つかむ」のミラーニューロンが発火したんですよね。
でも、よく考えたら、サルの手と人間の手はかなり違います。
何が言いたいかというと、これ、単なる視覚情報の学習じゃないってことです。
学習じゃなくて生まれつき、「つかむ」っていう行動が脳の中にあったわけです。
そして、生まれた後、現実世界で「つかむ」という行動をしたとき、そのニューロンが発火するんです。
これは「つかむ」の意味といってもいいです。
そして、人間が「つかむ」という行動をしたのを見た時も、同じニューロンが発火します。
これは、「つかむ」の意味から判定しています。
「つかむ」に必要なのは手とか指の動きですよね。
手に毛が生えてるとか、服装とかは関係ないです。
それがわかるには、膨大な映像データが必要ですよね。
それをしてるのが今のAIです。
でも、人の心はそんなことしてません。
だって、新生児の赤ちゃんでも、母親が舌を出すと、自分もマネして舌をだすんですから。
全く未経験のことでも、最初からできるってことは、生まれつきってことです。
じゃぁ、オートマタはどうでしょう。
オートマタは歯車やカムの機械で文字を書いてましたよね。
これは学習じゃないです。
歯車やカムは、どっちかというと生まれつきというか、最初っから組み込まれています。
人の脳も、生まれる前に「つかむ」って機能が組み込まれているといえます。
じゃぁ、人とオートマタの違いは何でしょう?
さっきのオートマタはペンにインクを付けて紙に文字を書いていましたよね。
でも、一連の動作は決まっています。
自分が何をしてるのかもわかっていません。
つまり、意味を分からず行動してるわけです。
言葉の意味は辞書に書いてますよね。
言葉の意味を、言葉で説明してるわけです。
そして、その説明に使われる言葉がわからなかったら、さらに調べますよね。
そうやって調べていくと、最終的に言葉で説明できない言葉が出てきます。
それは、最も基本的な言葉とか、最も原始的な言葉で、それ以上説明のしようがない言葉です。
じゃぁ、その言葉の意味はどうやって定義したらいいんでしょう?
これが、言葉の意味の難しいところです。
だから、いまだに意味とは何かって、決まった定義がないんですよ。
それに対して、今回、重要なヒントが見つかりました。
それがニューロンです。
たとえば「つかむ」のミラーニューロンは、自分や他人がものをつかんだ時に発火します。
これ、まさに「つかむ」の意味を知ってるニューロンといえますよね。
ミラーニューロンに近いものに「カノニカルニューロン」というものがあります。
カノニカルニューロンは、つかめるものとか、手で持てるものを見た時発火するニューロンです。
これも「つかむ」とか「もつ」の意味を知ってるニューロンといえますよね。
つまり、最も原始的な意味は、ニューロンで定義されると言えます。
オートマタは、ペンにインクを付けて文字をかいてましたよね。
一連の動きがつながっています。
人は、ここまでがペンにインクを付ける行動で、ここからが文字を書く行動って、見てたらわかりますよね。
見てわかるということは、頭の中に原始的な行動のニューロンがあって、その発火するニューロンが次々に変化するわけです。
現実世界での行動の意味というのは、ミラーニューロンとかカノニカルニューロンが担っているといえます。
これが、最も原始的な意味です。
そして、それをつなげて複雑な行動が実現できます。
原始的な行動を言い表したのが、最も原始的な単語です。
そして、その単語をつなげて表現したのが文です。
こう解釈すれば、言葉の意味がニューロンで定義できますよね。
整理すると、言葉の意味とは、「つかむ」とか「笑う」といった生まれた時から脳にそなわっている単純な行動で定義できます。
これは、もっと言えば、言葉の意味を定義するには、この現実世界で行動する体が絶対必要ということです。
AIはニューラルネットワークで学習しますけど、こが人間の脳のニューロンとどこが違うかはっきりしました。
それは、AIのニューロンは現実世界の行動に結びついてないことです。
現実世界で行動しない体を持たない限り、いつまでたっても意味を理解する心は生まれないとも言えます。
さて、じゃぁ、体さえあれば、それで人と同じ心を持てるんでしょうか?
次はこの問題です。
ミラーニューロンは、自分の行動だけじゃなくて、他人の行動にも反応しましたよね。
でも、他人が物をつかむのを見たからと言って、自分の手が動くわけじゃありません。
ただ、他人が物をつかむと感じるだけです。
でも、自分が物をつかむときも、同じ「つかむ」のミラーニューロンが発火して、今度は自分の手が動きます。
つまり、自分と他人を区別してるってことです。
区別できるってことは、まず、自分と他人というものがあると理解してるわけです。
もう一つ例を出します。
いろんな動作に反応するミラーニューロンが見つかっています。
でも、それは必ず、人やサルの動作です。
ボールの動きに反応するミラーニューロンは見つかっていません。
何が言いたいかというと、脳は人と物の違いも認識してるってことです。
何かの動きがあるとします。
まず、区別するのは、それが人か物です。
そして、人の場合、その行動に対応するミラーニューロンが発火します。
それと、その行動が自分か他人かも区別します。
もし、自分と他人を区別しなかったらどうなるでしょう?
誰かの動きを見たら、必ずその動きを真似てしまいますよね。
それが起こらないということは、他人の動きを見てミラーニューロンが反応したとき、自分の動きを抑制する回路が動いていると考えられます。
実際、前頭葉症候群という障害になると、この抑制回路が損傷して、反響動作といって、コントロールの効かない模倣動作をし続けるそうです。
これ、自分の意志どおりに体が動かないってことですよね。
ここにきて、自由意志が出てきました。
整理しますよ。
脳には、基本的な動作に関するニューロンがあって、それらの組み合わせであらゆる行動が組み立てられます。
自分で行動するときだけじゃなくて、他人の行動を見た場合もそれらのニューロンが発火します。
そして、「こう行動したい」って衝動が沸き起こります。
そして、自由意志は、それらの衝動を抑制して、自分で任意の行動を決定することができる機能と言えます。
行動を抑制したり、選んだりする機能、それが何かわかりますか?
それは、意識です。
これで、ニューロンから意識が定義できましたよね。
さらに、意識は行動のニューロンの発火を受けて、行動の意味を理解します。
つまり、意味を理解するのも意識だってことです。
これに対してオートマタや今のAIは決められた動きや処理をするだけです。
こう動きたいという思いや、それらを抑制したり、選んだりする機能はありません。
つまり、今のAIには意識や自由意志がないと言えます。
そして、行動と結びついたミラーニューロンが意味だっていいましたよね。
じつは、ミラーニューロンと言語野とは重なる部分が多いんです。
つまり、言葉の意味とミラーニューロンはかなり関係が深いとも言えます。
そして、ミラーニューロンの最も重要な機能は、他人の行動でも自分の行動でも発火することです。
つまり、他人の気持ちが理解できるといえます。
逆に解釈すれば、他人から自分がどう思われてるかも理解できるってことです。
これは、自分が他人を認識するように、自分のことを他人の視点、つまり客観的な視点で見ることができるってことです。
これは、メタ認知と言ってもいいです。
ミラーニューロン一つで、人の心に必要なかなりのことが説明できました。
整理すると、まず、行動の最小単位がミラーニューロンで決められます。
行動の最小単位というのは、最も原始的な意味です。
それは「つかむ」といった自発的な行動だけじゃなくて「笑う」といった感情も含まれます。
そして、ミラーニューロンの発火を感じるのは意識です。
意識が発火を感じることが意味を理解するということです。
逆に言うと、意味がまず脳の中にあって、それに単語をあてはめて言葉が生まれたと言えます。
発火するミラーニューロンを感じて、抑制するか行動するか決めるのは意識です。
これが自由意志です。
そして、ミラーニューロンは自分の行動だけでなく、他人の行動を見ても発火します。
つまり、共感です。
お母さんが喜んでるのを見ると、赤ちゃんもうれしくなるわけです。
だから、お母さんが笑ってるのを見ると、赤ちゃんも笑うわけです。
これが、ミラーニューロンを使った新しい心のモデルです。
こんな風に、皆さんも、ぜひ、心のモデルを作ってみてください。
そして、それぞれの心のモデルをAIに実装して会話させて、どの心のモデルが一番人間らしいかのコンテストをするんです。
その中には、ひっそりと人間も紛れ込ませておくんです。
そうして、人間より人間らしいふるまいをしたAIができたとき、それこそが人間をこえた超知能です。
ぜひ、応募してください。
はい、今回はここまでです。
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それじゃぁ、次回も、おっ楽しみに!
第519回 田方仮説全否定最新心のモデル
