ロボマインド・プロジェクト、第521弾!
こんにちは、ロボマインドの田方です。
前回の続きです。
今、意識が宿ったAIアバター「もこみ」を作るプロジェクト・エデンを開発しているとこです。
メタバース、エデンに暮らすAIアバターがもこみです。
AIアバターの心がマインド・エンジンです。
メタバースとマインド・エンジンがほぼ完成してきて、今、それを連結して最初のデモを作ろうとしてるとこです。
一番最初のデモなんで、目が覚めるところを作ることにしました。
なんでかっていうと、このプロジェクトの目的は意識を作ることです。
哲学者ジョン・サールは、意識を、こう定義しました。
「夢を見ない眠りから覚めて、再び夢のない眠りに戻るまでの間に持っている心的性質」
つまり、意識のはじまりは目が覚めた時なんです。
目が覚めた時、まず、ここはどこで、今何時かって思いますよね。
なんでかっていうと、「今」、「ここ」が、世界と自分の関係を決める基準となるからです。
過去からずっと続く世界と、生まれてから今までの自分とが結びつくのが「今」「ここ」です。
だから、起きたら、まず、確認するのが「今」と「ここ」です。
毎朝起きて、当たり前のようにやってることですけど、ものすごく重要なことをしてるんですよ。
詳しくは、前回、第520回の動画をご覧ください。
今回は、これをプログラムで実現できる程度に掘り下げます。
「今」「ここ」を確認するって、簡単なようで、意外と難しいんですよ。
たとえば、「今何時?」と思ったら時計をみるでしょ。
時計を見て、「7時かぁ」って思ったとしましょ。
今が「7時」とわかったわけですよね。
じゃぁ、時間がわかるってどういうことなんでしょう?
それをプログラムで定義するってどうすればいいんでしょう?
これが今回のテーマです。
世界を認識する意識プログラム②
それでは、はじめましょう!
まず最初に世界と脳の関係から考えます。
脳は一種のコンピュータです。
脳というコンピュータで実行されるプログラムが心です。
ここまではいいですよね。
脳はいろんな処理をしています。
おしゃべりしたり、食べたり、心臓や肺も動かさないといけません。
これは、コンピュータだとマルチタスクとかマルチスレッドプログラミングといって、複数のプログラムが同時に動いていることです。
たとえば、Windows OS上で、エクセルとかWordとか同時に開いて作業するのと同じです。
そして、意識も一つのプログラムです。
じゃぁ、意識とはどんなプログラムでしょう?
多くの人は、意識はOSじゃないかっていうんですけど、じつは、そうじゃないんです。
意識は、数あるアプリケーションソフトの一つに過ぎません。
じゃぁ、OSは何かっていうと、それがマインド・エンジンです。
意識は、マインド・エンジンというOSの上で動く一つのプログラムです。
僕らの意識は、こうして目の前の世界を見て、今、部屋にいるとか、壁があるとかって感じていますよね。
そう感じてる意識は、脳の中でいっぱい動いているプログラムの一つです。
ここで注意しないといけないことがあります。
それは、もし、意識プログラムがエクセルだとしたら、エクセルの表を操作してるところをイメージしたらダメってことです。
そうじゃなくて、エクセルの中にいるところを想像しないといけないんです。
どういうことかというと、エクセルが認識できるのは、セルに入力されたデータだけです。
そう思って、もう一回目の前の世界を見てください。
壁とか窓がみえるでしょ。
それがセルに入力されたデータです。
言ってみればエクセルのシートが仮想世界です。
外の現実世界にあるものを無意識がオブジェクトに変換してエクセルの仮想世界シートに貼り付けるわけです。
意識は現実世界を直接見ることはできません。
意識が認識できるのは、無意識によって変換されたオブジェクトだけです。
これが意識の仮想世界仮説です。
さて、ここからが本題です。
今、目が覚めました。
目が覚めるというのはシステムが起動したということです。
システムはいろんなプログラムから構成されていて、そのうちの一つが意識プログラムです。
それ以外に多くの無意識プログラムがあります。
そのうちの一つが、仮想世界を作るプログラムです。
仮想世界は、目からの視覚情報を元に壁とか机とかオブジェクトで作ります。
オブジェクトというのは、プロパティという属性と、メソッドという動きと、概念の親子関係を持っています。
リンゴオブジェクトの親概念は果物とか食べ物です。
プロパティは赤い色とか甘酸っぱいって味です。
メソッドは食べるとか皮をむくとかです。
そいて、これがリンゴの意味となります。
こんな風にして、オブジェクトは要素に分解して定義することができます。
すると、今度は、「じゃぁ、どこまで分解したらいいのか」って問題が出てきます。
現実世界にある物体なら、分子とか原子とかって分解していって、最後は素粒子になります。
じゃぁ、仮想世界の素粒子は何で、どこにあるんでしょう?
それは脳の中のニューロンです。
例えば色です。
色って、可視光の一部の波長領域だと思っている人がいると思いますが、それは違います。
たしかに、網膜にある錐体細胞は特定の可視光に反応しますけど、それを色に変換してるのは脳の中のV4野です。
あるところに緑色に反応する錐体細胞がなくて緑色を経験したことがない人がいました。
ただ、その人は数字を見たら色を感じる共感覚の持ち主でした。
そして、その人は、数字の5を見た時、緑色を感じるそうです。
つまり、物理世界に存在する緑色の波長の光は経験したことがないのに、緑色は知ってるわけです。
さっきのエクセルでたとえると、現実世界の可視光を検出してセルの背景を塗りつぶす機能があったとします。
色を選択するときに使うのがカラーパレットです。
さっきの人は、現実世界の緑を検出する機能が壊れたわけです。
でも、カラーパレットは生きています。
だから、何らかの方法でカラーパレットの緑色を活性化したら、エクセルの意識は緑色を感じるんです。
つまりね、現実世界に緑色の波長の光があるから意識は緑を感じるわけじゃなくて、カラーパレットに緑色があるから緑色を感じるってことです。
この逆のパターンもあります。
たとえば第416回では、脳を損傷して色が見えなくなった人の話を紹介しました。
その人は、交通事故にあってから白黒しか見えなくなったそうです。
トマトジュースを見ると真っ黒に見えるそうです。
目は損傷してないので錐体細胞は生きているので、色には反応しています。
ただ、V4野で色を作り出すニューロンが損傷したんでしょう。
エクセルならカラーパレットが壊れてしまったということです。
だから、意識は白黒しか感じれなくなったんでしょう。
整理すると、エクセルの意識が認識する世界というのは、エクセルが持ってる機能で作られます。
僕らの意識が認識する仮想世界も同じです。
その一つが色ですし、味とか香りもです。
つまり、知覚して感じるものは仮想世界を構成する素粒子というか材料です。
このことをクオリアとも言います。
色や味だけでなく、意識は形や重さ、さらにはうれしいや悲しいといった感情も感じますよね。
これらはすべて仮想世界を構成する材料です。
仮想世界にあるものはオブジェクトでしたよね。
そして、オブジェクトはこれらの材料で作られるわけです。
だから、リンゴは赤いとか、リンゴは丸いって意識は感じるわけです。
さて、今、やろうとしてるのは、朝、目が覚めた時、「今」、「ここ」を認識するところです。
意識がどうやって、「今」、「ここ」を認識するかです。
意識が認識するのは仮想世界です。
仮想世界にはオブジェクトが配置されます。
そして、オブジェクトは色や味といった材料、またはクオリアで作られることがわかりました。
次は、「今」、「ここ」という現実世界について考えます。
じつは、これは、クオリアとはちょっと考え方が違うんです。
クオリアは、あくまでも仮想世界の材料でしたよね。
それはエクセルの中にあって、エクセルの中で完結します。
でも、「今」「ここ」っていう現実世界は、仮想世界でもあって、現実世界でもあります。
どういうことかというと、「リンゴを思い浮かべて」といったらリンゴを思い浮かべることができますよね。
その時のリンゴは仮想世界で完結しています。
でも、目のまえにあるリンゴを見るときは、それは頭の中の仮想世界にもありますし、現実世界にもあります。
それらは一体となっています。
つまり、目のまえにある世界は、頭の外の現実世界と、頭の中の仮想世界が交差する特殊な状況なんです。
それが、「今」、「ここ」です。
逆に言えば、目の前の世界は頭の中だけで完結してないってことです。
それじゃぁ、まず、「今」「ここ」の「ここ」から考えます。
「ここ」というのは三次元空間ですよね。
まず、これを定義していきます。
現実世界というのは、プロジェクト・エデンの場合、メタバース空間です。
ようやく、プロジェクト・エデンに戻ってきました。
これは、AIアバター、もこみが町を歩いているときの画面です。
左上に細かい数字が書かれていますけど、これは、もこみの位置や向かっている方向を示しています。
つまり、これが「ここ」です。
もっといえば、「ここ」は座標で定義できます。
意識は自分を中心として考えます。
重要なのは、現実世界には、体があるってことです。
メタバースなら、AIアバターの体です。
何が言いたいかっていうと、この体が現実世界と仮想世界をつなぐ接点となるということです。
だから、現実世界の三次元空間は、体を原点とした相対座標として考えるんです。
だから、目の前1mのところにリンゴがあるとかって認識します。
これを、北緯何度、東経何度にリンゴがあるなんて思わないでしょ。
つまり、意識は、自分を原点とする座標軸で空間や位置を定義してるってことです。
これで、「今」、「ここ」の「ここ」が定義できました。
次は、「今」、「ここ」の「今」です。
「今」を定義するには時間という概念が必要です。
ただ、時間というのは目に見えません。
見えないだけじゃなくて、聞こえるものでもないし、香りがあるものでもありません。
つまり、時間というものは五感で感じられるものじゃないんです。
ということは、時間というものは現実世界に存在しないと言えます。
逆に言えば、意識が認識できるデータで時間を作れば、それを意識は感じられます。
たとえば、エクセルで考えてみます。
一つのシートが今、現在を表す現実仮想世界とします。
シートは複数枚あるとして、それを時間順に並べたとします。
今現在のシートの右に続くのが過去のシートです。
今現在のシートの左に続くのが未来のシートです。
そして、シートの見出しに日付や時刻を付けましょ。
これが時間です。
立体的にイメージするとすれば、シートを貫く軸を想定して、その軸が時間軸です。
そして、時間軸の原点は「今」のシートです。
整理します。
意識プログラムは、カラーパレットとか時間軸を持っています。
そして、目の網膜にある赤の錐体細胞が反応すると、無意識がカラーパレットの赤を矢印で刺激します。
意識はこれを受けて、「赤だ」って感じます。
時計が7時を表示してるのを見ると、無意識は時間軸の7時のとこを、「今」の矢印で刺激します。
これを受けて、意識は「7時かぁ」って感じます。
つまり、色や時間を理解するというのは、無意識が、仮想世界のもつカラーパレットや時間軸を矢印で指すことと同じです。
ようやく、時計を見て「7時かぁ」って思う仕組みの説明が終わりました。
でも、これはシステム開発でいうところの要件定義です。
要件定義というのは、客先にいって、こんなシステムを作りたいって聞き出すことです。
そこで、「意識を持ったAIを作ってくれ」としか言われなかったら、「お客さん、それだけじゃ、ちょっと作れないです」ってなります。
今回の話は、ギリ、作れるかもしれませんってとこです。
「それじゃぁ、ちょっと持ち帰って、一度、仕様書を書いてみます」ってなります。
仕様書っていうのが、プログラムの一歩手前の段階です。
残念ながら、今回は、要件定義で時間切れとなりました。
仕様書の話は、次回とさせてください。
はい、今回はここまでです。
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それから、意識の仮想世界仮説に関しては、よかったらこちらの本も読んでください。
それじゃぁ、次回も、おっ楽しみに!
第521回 目が覚めて、世界を認識する意識プログラム②
