第525回 目が覚めて、世界を認識する意識プログラム⑥


ロボマインド・プロジェクト、第525弾!
こんにちは、ロボマインドの田方です。

「意識が宿ったAIアバター『もこみ』を本気で作るプロジェクト」

の最初のデモシリーズ、とうとう6回目になってしまいましたけど、今回が最終回です。

さて、僕が作ろうとしてるのは誰も作ったことがないものなので、本や論文を探しても書いてありませんし、考えてもわかりません。
でも、天からアイデアは降りてきます。
そういう意味では、このプロジェクト、天任せといってもいいです。

そういうと、大丈夫かって思うかもしれないですけど、これで20年以上、続いているんで、どうも、僕はそういう能力はあるみたいです。
誰でもできるかどうかはわからないですけど、知りたい人もいると思うので、やり方だけでも語っておきます。

じつは、意外と簡単で、わからないことを天に投げるだけです。
そしたら、必ず、答えが降りてきます。
注意しないといけないのは、アイデアを降ろすとこじゃなくて、質問を投げるとこです。
どういうことかというと、天は、質問には正確に答えてくれますけど、もっとこうした方がいいとかってアドバイスはしてくれません。
だから、質問の仕方が悪いと、思った通りの答えが得られないんですよ。

たとえば、今回、僕は、「朝起きて、時計を見て『7時かぁ』って思うプログラムを教えて」って投げました。
それで前々回、無意識と意識がメッセージのやり取りをしながら時間を確認するってプログラムが降りてきました。

これ、一応、プログラムとしては成立します。
でも、普段、僕らが意識で感じてるのとはちょっと違うんですよ。
僕らは「7時」って無意識からメッセージを受け取るじゃなくて、時計を見て「7時」って思いますよね。
この「見る」って経験をするのが意識です。
この答えだと、この「経験する」が抜けてたんです。

そこで、「意識が、『経験する』仕組みを教えて」って投げました。
そうして返ってきたのが「注目」するって仕組みです。
それが、前回、第524回の話です。
後は、これをつなげるだけです。
これが、今回のテーマです。
目が覚めて、世界認識する意識プログラム⑥
それでは、はじめましょう!

もこみが、朝、目が覚めました。
「何時だろう?」
そう思って、時計を見ました。
7時です。
「7時かぁ」そう思ってもこみはベッドから起きました。
このとき、心の中でどんな処理が行われてるのかを再現するのが最初のデモです。

まず、大前提となるのが意識の仮想世界仮説です。

人は、目で見た現実世界を頭の中で仮想世界として構築します。
意識は、この仮想世界を介して現実世界を認識します。
これが意識の仮想世界仮説です。

仮想世界を作るのは無意識です。
現実世界を再現した仮想世界のことを現実仮想世界と呼びます。

今、僕らは目の前の世界を現実と思ってますよね。
でも実は、意識プログラムは直接現実世界を見てなくて、現実仮想世界を見ているんですよ。

今回は、この意識プログラムの中身の話です。
前回、前々回の話をまとめたのがこの図です。


意識プログラムは注目世界と主体と感情を持ちます。
主体というのが、意識の核となる部分で、今、こうして世界を見ているって感じてる意識のことです。

今回、意識プログラムの中に主体というのを作ったのは、広い意味での意識と、狭い意味での意識を区別するためです。
広い意味での意識は、僕らが感じられるものの最大範囲と思ってください。
見えたり、聞こえたりといった五感で感じるものは、当然、意識が感じるものです。
それ以外に、過去を思い出したり、未来を想像したり、数学の計算したりとか、全部意識で感じられるので、これらも広い意識に含まれます。
それから、うれしいとか悲しい、怖い、安心といった感情も意識が感じるものなので広い意識に含まれます。

狭い範囲の意識というのが主体のことです。
現実世界を感じて、いろいろ考えて、行動を決定するプログラムです。
それが主体です。
自由意志の中心となるものです。

そして、前回、新たに取り入れたのが注目世界です。
注目世界は、現実仮想世界の内、注目している部分のことです。
現実仮想世界というのは、現実そのものです。
今部屋でYouTubeを見ているとします。
特に気にしてないけど、部屋には天井があるとか、床があるとかって知ってますよね。
でも、今、注目してるのは目の前のスマホとかモニターです。
目に見えるものすべてを注目してるわけじゃないってことです。
現実仮想世界の内、意識が、今、注目しているものを格納するのが注目世界です。

広い意味の意識というのは、意識が認識できるものです。
「天井がある」って言われるまで、天井のこと意識してなかったでしょ。
意識していない天井は、現実仮想世界にはあるけど、注目世界にはないわけです。

現実仮想世界というのは、頭の外の世界と頭の中の世界とを結びつける特殊な役目があります。
頭の外と中を結びつけるのが、今がいつで、ここがどこかって情報です。
だから目が覚めた時、無意識は現実仮想世界に時と場所を設定します。
場所は、記憶のデータベースから自分の部屋とすぐにわかります。
こんな簡単な処理は無意識が自動で行います。

記憶からじゃわからないのは、今が、何時かです。
そういった難しい判断は意識に任せます。
その時使うのがメッセージボックスです。
無意識は、「今、何時か設定して」との依頼をメッセージボックスに入れます。
すると、そのメッセージは意識に届けられます。
それが、意識が、「今、何時やろう?」って思うことです。

意識につながっていることは意識が感じることができて、メッセージボックスからの通知もその一つです。
逆に、無意識が仮想世界を作ったり、データベースにアクセスしたりしてることは意識につながっていないので意識が感じることはありません。

さて、メッセージで渡された課題を解決するのが主体の役目です。
主体が直接アクセスできるのが注目世界で、注目世界の中には三次元世界と論理世界があります。

課題を解決するには、まず、課題の意味を理解できないといけません。
主体は注目世界を操作できます。
注目世界を操作して、世界がどうなれば、その課題を解決したことになるのかわかることが課題の意味の理解です。
ただ、課題の意味を理解できても、課題の解決方法がわからないこともありますよね。

たとえば、映画をみて感動して、俳優になりたいと思ったとします。
これが課題です。
課題を解決した状態とは、自分が俳優になることです。
これが課題の意味を理解するということです。
でも、どうやったら俳優になれるかわかりません。
これが課題の解決方法がわからないとういうことです。

今、出された課題は、時間を設定するです。
「今、何時か設定する」とは、どういう状態になれば時間を設定したことになるのでしょう?

時間に関することなので、時間世界を使います。
時間世界は、過去を思い出したり、未来を想像したりするときに使う世界です。

今、意識は目の前の現実世界に注目しているので、注目世界は現実仮想世界となっています。
意識はその他にもいろんな世界について考えることができて、その一つが時間世界です。
現実仮想世界は、今という時とここという場所からなりましたよね。
時と場所のセットを場面と呼ぶことにします。
そして、場面を時間を基準に並べた世界が時間世界です。

注目世界の特徴は、主体が操作できることです。
たとえば、目のまえにリンゴがあるとして、それをつかんだり、つかむとこを想像したりできますよね。
これは、現実仮想世界は三次元空間と物体で作られていて、三次元空間にある物体はつかむことができるということです。
この「つかむことができる」というのは、つかむというメソッドを自分が持っているということですけど、厳密にはちょっと違います。
まず、つかむ自分というのは自分の体ですよね。
体があるのは三次元世界です。
だから、厳密には、「つかむ」というメソッドは、自分が持ってるというより、3次元世界が持っているといえるんです。
主体は、三次元世界のつかむメソッドを使って、物体をつかむということです。

これと同じで、時間世界は「思い出す」とか「予測する」といったメソッドを持っています。
過去を思い出したり、未来を予測したりできるのは、主体が時間世界のメソッドを使えるからです。
さて、時間世界は複数の場面を持っていましたよね。
そして、場面には時間が設定されていますよね。
逆に言えば、時間世界というのがまずあって、その場面を特定する情報が時間です。
これが時間の定義といえます。

時間世界のうち、目の前の現実世界の時刻が「今」です。
「今、何時か設定する」が課題でしたよね。
これは、時間世界の今に、現実世界の今の時刻を設定するということです。
これが課題の意味となります。

「今、何時か設定して」とのメッセージを受け取った瞬間、主体は、これは時間に関することだと判定して、注目世界に時間世界を設定します。
これができるということは、主体は「世界を判定する」という機能をもっているといえます。

注目世界に時間世界を設定すると、それまで入っていた三次元世界は、後ろに後退します。
じつは、注目世界は複数の世界を持つことができて、その内、今、最も注目してる世界が注目世界となります。
現実の三次元世界は後退したといっても、まだ、注目世界の中にあるので、いつでも呼び戻せる状態にあります。
さて、課題は理解できましたけど、まだわからないのは、どうやって今の時刻を設定するかです。

もちろん、時計を見ればいいです。
これを主体の処理と無意識の処理に分解します。

主体ができるのは、メソッドを使って注目世界を操作することです。
それから、注目世界がどうなれば課題が解決したかを判断することもできます。
あとは、必要なメソッドがわかればいいわけです。

でも、どんな場合にどんなメソッドを使うかとか、いろんな場合があるので、それは膨大なデータになりますよね。
主体のプログラムが直接アクセスできるのは、メモリに入る程度の小さなデータだけです。
膨大なデータは、コンピュータならデータベースで管理しててHDDとかに保存されています。
そこで、主体は無意識に頼んでデータベースを調べてもらいます。
「どうやれば今の時間がわかるの?」って聞くわけです。
データベースの検索は、通常、SQLクエリで行います。
この場合なら、「今、何時か設定する」ってメソッドを持つオブジェクトを検索するといったSQLクエリです。
無意識は、このSQLを発行してデータベースを検索します。
すると、時計オブジェクトが見つかったので、無意識は「時計を使う」って主体に返します。

これで時計を使えばいいってことがわかりましたけど、今度は、時計がどこにあるかわかりません。
そこで、これも無意識に「時計はどこにある?」って質問します。
今度聞かれたのは場所です。
場所は三次元世界のプロパティです。
そこで、無意識は三次元世界テーブルから時計のある場所を検索すると「部屋の壁」が見つかって、これを主体に返します。
「部屋の壁」と受け取ると、主体は、これは三次元世界のことだと判定して、後退してた三次元世界を注目世界に設定します。

注目世界に三次元世界が設定されると、主体は、三次元世界のメソッドを使ってその世界を操作できます。
今、注目世界には、今いる部屋の壁が入っていて、壁に時計がないか調べるわけです。

「○○が○○を持つか?」とういう基本プログラムを主体は持っています。
主体は、このプログラムを使って、壁にあるものを順番に取り出します。
壁には、窓とかカーテンとかあって、順番に調べると時計が見つかりました。

さて、課題は「今、何時か設定する」です。
注目世界は論理世界と三次元世界から構成されます。
三次元世界というのは、3Dオブジェクトで作られた見た目の世界です。
「壁に時計がある」と見つけた時使ったのが三次元世界です。

三次元世界の3Dオブジェクトは、それぞれ論理世界に意味オブジェクトを持ちます。
3Dオブジェクトと意味オブジェクトの違いは、3Dオブジェクトは3Dデータで表現できるもので作られていて、意味オブジェクトは、プロパティとメソッドを持つデータ構造です。
ここで、時計のメソッドとして「今、何時か設定する」とあります。
これは、時計が今の時刻を表示するのとはちょっと意味が違います。
今の時刻を表示するというのは、見た目の話なので、これは三次元空間世界です。
そこで表示されるのは、時計の長針と短針の位置だけです。

論理世界の「今、何時か設定する」メソッドはそれとはちがいます。
このメソッドは、時間世界の今の場面に現在時刻を設定します。
ただし、このメソッドは、パラメータとして現在の時刻を渡さないといけません。
それをするのは主体の役目です。

主体は、まず、長針と短針の位置から現在時刻を読み取ります。
それは、画像認識で行うことで、今のAIでも出来ます。
そうやって、「7時」と読み取ると、その時刻をパラメータとして、時計オブジェクトの「今、何時か設定する」メソッドを実行します。
すると、注目世界が時間世界になって、その中の今の場面の時間に「7時」が設定されます。
これで、課題であった「今、何時か設定する」が達成されたわけです。

僕らの意識が感じるのは、主体がやり取りしたデータです。
それじゃぁ、今回、主体がやり取りしたデータをまとめてみます。
まず、無意識から「今何時か設定して」ってメッセージが届きましたよね。
これが「今、何時かなぁ?」って思うことです。
そして、時計を見ましたよね。
実は、この間、「どうやったら時間がわかる?」と質問して、「時計や」って無意識から答えを受けて、さらに、「時計はどこにある?」って聞いて、「部屋の壁や」受け取ってます。
ただ、これらは一瞬のことなのでほとんど気付かなくて、ただ、「時計を見よ」って思って時計を見るだけです。
毎日やってる行動は、ほとんど無意識で行っているから、ほとんど意識にも上らずに、自然と行っているわけです。

こうやって、「今、何時やろ?」って思って、時計をみて「7時かぁ」って思いました。
この「7時かぁ」というのが、今の時間を理解したってことです。
今の時間を理解するというのは、時間世界の今の場面に、現実の現在時刻を設定したってことです。
これが、時計を見て時間がわかるってことです。

長くなりましたけど、ようやく、「7時かぁ」を理解する心のプログラムが完成しました。
今、出来たのは、たったこれだけですけど、ここには心のシステムの重要な構成が全て詰まっています。
あとは、その応用です。
応用というのは、言葉の意味理解とか会話です。
その話は、また、次にしましょう。


はい、今回はここまでです。
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それから、動画で紹介した意識の仮想世界仮説については、こちらの本を読んでください。
それじゃぁ、次回も、おっ楽しみに!