ロボマインド・プロジェクト、第541弾!
こんにちは、ロボマインドの田方です。
僕はあんまり物欲とかないんですよ。
IT関係の仕事してる人は、ガジェットとかみんな大好きです。
アップルがVRゴーグルとか出したら大騒ぎしますよね。
ただ、このApple Vison Pro、60万円以上します。
さすが、アップルですよね。
もちろん、かなり高性能だそうです。
でも、僕はそんなに興味ないんですよ。
なんでかっていうと、それ以上のもの持ってて、そっちの方がよっぽど興味深いんですよ。
たとえば、こうやって目をつぶるでしょ。
そしたら、目の前が真っ暗になりますよね。
でも、目を開けたら、一瞬で目の前に部屋が見えるんですよ。
これ、考えたらすごいですよ。
だって、一瞬でこれだけ高精細な3Dで世界を作り上げるんですから。
それも、あんな重いゴーグル付けなくてもいいんですよ。
最近はゴーグルだけじゃなくて、触覚フィードバック付きのVRグローブっていうのがあります。
触った感覚まで再現できるそうです。
いや、たしかにすごいです。
でもですよ。
たとえば、こうやって壁を触ってみます。
そしたら、リアルに壁を感じます。
叩いてみます。
音もしますよね。
視覚、聴覚、触覚が完璧に同期して再現されるんですよ。
よくできてますよねぇ。
ゲームでこんなことしたら、よく、手が壁に入り込んだりしますけど、そんなこと、一度も経験したことがないです。
これ、完璧です。
もしかして、「何を当たり前のこと言ってるんや」って思っていませんか?
これはヴァーチャル・リアリティじゃなくて現実だろうって。
じゃぁ、あなたは現実世界があるってどうやって認識してるんですか?
たとえば、今、あなたは目の前に部屋があると認識してるとします。
そう認識しているのはあなたの意識ですよね。
じゃぁ、意識は、どうやって部屋があるとか、机があるとかって認識してるんですか?
カメラで撮影することはできますよ。
でも、それだけじゃ二次元の写真です。
三次元の机を感じるには、三次元の机を作り出さないといけないんですよ。
それをゴーグルの中でやってるのがVRシステムです。
人間は、それを脳のなかでやってるわけです。
脳のなかで現実世界を仮想的に構築して、それを認識するのが意識です。
そう考えたら、僕らはApple Vison Proなんかより、よっぽどすごいシステムを持ってるでしょ。
「これすごいよなぁ」って、つい、夢中になって遊んでしまうんですよ。
遊ぶと言っても、机や壁を触ったり、目を開けたり閉じたりするだけですけどね。
ここ20年程、そんなことばっかりやってるから、あんまりお金がかからないんですよ。
まぁ、それはいいとして、僕が興味があるのは意識の仕組みです。
意識があるから机があるとかって認識できるわけでしょ。
でも、生物は、どれも人間のような意識をもっていないですよね。
じゃぁ、意識がない生物は、どんなふうに感じているんでしょう。
その話が、今、読んでる『脳のなかの天使』の意識の章に出てきます。
いやぁ、意識の話は面白くて、読んでたらいろんなアイデアが出てきて、なかなか読み進められないです。
これが今回のテーマです。
意識がない生物は、どんなふうに感じてるのか?
それでは、はじめましょう!
前回、第540回で意識には二種類の意味があると説明しました。
意識する側と意識される側です。
意識する側とは自分とか自己のことです。
意識されるとは側とは、意識するもののことです。
リンゴの赤を意識するといったときの赤です。
これをクオリアともいいます。
自己とクオリアはペアになっています。
光と影のようなものです。
どちらかが存在すれば、関らずもう一方も存在します。
これはどういことかというと、どちらもデータだということです。
データということは、データでないものもがあって、それをデータに変換したということです。
たとえば、赤でいえば、物理世界では波長約700nmの電磁波です。
これはデータでなく物理現象です。
それを、「赤」という文字やRGBのカラーコードで(255,0,0)で表現したものがデータとしての赤です。
これがクオリアです。
クオリアが、何らかのデータとして表現したものだとすれば、そのデータを読み取る者がいますよね。
それが自己とか自分です。
自己とクオリアとは、データを読む側と読まれる側とも言えます。
これが意識のペアということです。
さて、その上で、自己について考えます。
ラマチャンドラン博士は、自己の特徴をいくつか取り上げます。
たとえば身体性です。
自己の身体性というのは、これが自分だといったとき、これって、この体を指しますよね。
自分と体は一体と思うことです。
これが自己の身体性です。
それから、連続性です。
あなたは、生まれてから今までずっと連続していますよね。
途中途切れたり、別の人に入れ替わったりしてないですよね。
まぁ、どれも当たり前のことを言っているだけです。
ただ、当たり前と思うのは、言い換えたら、それしか経験したことがないということです。
それ以外を経験したとき、初めて、今まであったことが当たり前じゃないと思うわけです。
たとえば、宇宙に行ったとしたら、空気もないし重力もありません。
それを経験して初めて、宇宙では空気があるのは当たり前じゃない、重力があるのも当たり前じゃないとわかるのです。
地球という特別なとこにいるから、空気も重力も当たり前とおもっていただけだって。
それと同じです。
ただ、僕らはそれ以外を経験したことがないだけです。
それ以外を経験したことがある人の話を聞けば、これが当たり前じゃないとわかります。
たとえば身体性です。
第297回で自分で自分の足を切断した男の話を紹介しました。
この人は、身体完全同一性障害という障害を持っています。
これは、自分の体の一部が自分と思えなくなる障害です。
それが耐え切れなくなると、自分で自分の体を切断するそうです。
その人は、足を切断した後、安心した表情をしていたそうです。
自分の体が、自分の体だけでできてるって安心感を初めて感じたそうです。
それって、僕らが普段感じている当たり前のことですよね。
こんな話を聞くと、自分の体が自分の体と思えるのは当たり前じゃないとわかります。
自己の連続性もです。
あなたは生まれてからずっと続いている自分を感じているはずです。
でも、たとえば第317回で紹介した大庭さんは、心筋梗塞で倒れて記憶喪失になりました。
過去41年間の記憶を失いました。
それだけじゃありません。
夜寝ると、昨日までの出来事を全部忘れてしまうんです。
だから、壁にはA4に拡大した免許証を貼ってあります。
毎朝起きたら、それを見て、自分がどこの誰かを思い出すんです。
いや、思い出すというより、自分を作り上げるんです。
こんな話を聞くと、生まれてからずっと続く自分というのも当たり前じゃないと思いますよね。
さて、じゃぁ、なんでこんなことが起こるんでしょう?
それは、自己というのがデータだからです。
データとうのは書き換えたり変更できたりするものです。
だから、都合のいいと言うか、扱いやすい形に作り上げることができます。
それが自己というデータです。
じゃぁ、逆に、データじゃないものはあるんでしょうか?
それが、物理現象とか物理的な存在です。
電磁波もそうですし、物理的な肉体もそうです。
だから、物理的な存在は変更したり書き換えたりできないので、物理的な存在にデータを合わせます。
つまり、物理的な肉体に、データとしての自分をあてはめるわけです。
そのデータをうまく合わせられなかったのが身体完全同一性障害です。
過去から続く自分という感覚も、そういうデータを作り出しているからそう感じるだけです。
データだから消えることもあります。
それが記憶喪失です。
自分というものは単なるデータです。
実体のない幻想といってもいいかもしれません。
人は、進化した結果、自分という幻想を作り出したわけです。
進化で獲得したということは、その方が生存に有利ということです。
たとえば、過去の失敗を反省して、次は同じ失敗をしないように考えたりしますよね。
これができるのは、過去から未来に続く自分を認識できるからです。
でも、たとえば昆虫とか、餌の臭いとかで簡単に罠に引っかかります。
助けてあげても、同じ罠に何度も引っかかります。
これが意識を持っていない生物というわけです。
さて、ここからが本題です。
じゃぁ、意識を持っていない生物は、世界をどんなふうに認識しているのでしょう?
いや、この問いかけは正しくありません。
なぜなら、認識するのは意識だからです。
意識を持っていないということは、世界があるとかって認識していないはずです。
じゃぁ、世界をどんなふうに感じているんでしょう?
これも、意識がないと感じることもないんですよ。
これが難しいところです。
そもそも、経験したことがないことを想像することはできないので、意識がない生物の感じ方を表す言葉が存在しないんですよ。
これじゃぁ、埒が明かないので、ここでは感じるを使います。
意識がない生物は、どんなふうに感じて生きているんでしょう?
意識を使わないということは無意識です。
無意識が物理的な肉体を直接制御しています。
たとえば心臓です。
心臓は意識的に動かせないですけど、無意識が自動で制御していますよね。
肺は、意識で止めることもできますけど、普段は無意識が制御しています。
たとえば、走ったとします。
そしたら、はぁはぁ息をして、心臓がバクバクしますよね。
走ることで血液中の酸素が使われるわけです。
それを補うために肺ではぁはぁ息をして空気中の酸素を取り込みます。
取り込んだ酸素を血液を循環させて体中に行きわたらせるために心臓がバクバクするわけです。
こう言ったことが、意識しなくても自動で起こっていますよね。
これが無意識が制御する体です。
別の言い方をすれば、心臓と肺は、ある程度自律性を持って活動しているわけです。
肺は血液中の酸素濃度が低くなるとより活動して酸素を取り込もうとするし、心臓も、血液中の酸素が少なくなったから、血液をより循環させようとしてしてるだけです。
走ってるのか、泳いでるのか、緊張してるのか心臓は気にかけません。
何らかの信号に応答して自動で動いているだけです。
いろいろな器官がそれぞれ、自律分散的に勝手に動いているけれど、結果として全体が調和した動きとなっているわけです。
これで思い出すのがサブサンプション・アーキテクチャです。
サブサンプション・アーキテクチャというのは、ロボット研究者のロドニー・ブルックスが提唱した概念です。
たとえば6本足のロボットを考えます。
普通は、中央の脳がどの足をどのように動かすのか複雑な制御をしますよね。
それを、サブサンプション・アーキテクチャでは、言ってみれば各足に小さい脳を持たせたようなものです。
足についた脳は、全体のことなんか考えずに、前後の足にぶつからないように、前進することだけを考えさせます。
こんな風に単純な制御だけさせると、中央で複雑な制御をするよりうまくいくんです。
さらに、これを階層化します。
一番下の層は足の動きだけ考えまsう。
たとえば一番上の層は、天敵を見つけて怖いって感じます。
その下の層は、それを受け取って、どっちの方向に全力で逃げようって感じます。
そして、一番下の層は、それを受け取って全力で足を動かします。
これで、全体として調和の取れた動きが取れるんです。
環境に素早く反応して、生き残ることもできます。
これがサブサンプション・アーキテクチャです。
サブサンプション・アーキテクチャを提唱したロドニー・ブルックスは、後にiRobot社を設立してお掃除ロボットルンバを発売しました。
そして、ルンバにも、当然、サブサンプションアーキテクチャが使われています。
そして、当然、ルンバには意識はありません。
昆虫に意識がないのと同じです。
意識がない生物は、それぞれの器官が単純なルールで独立して動いています。
単純なルールですけど、学習することはできます。
だから、環境に合わせて、より高速で動けるようになります。
ただ、全体を制御するものはありません。
なぜなら、全体を制御するには全体を見渡せないといけません。
じゃぁ、全体って何でしょう。
それは、自分の体全体でもあるし、体の周囲の状況でもあるし、さらには、過去や未来の状況です。
それって、世界ですよね。
それも、今、見えてる世界だけじゃなくて、過去の世界や、起こるか起こらないかわからない未来の世界でもあります。
それを認識するっていうのは、結局、世界そのものを作り上げないといけないじゃないですか。
それが、仮想世界です。
そして、世界そのものを作り上げて、それを認識するのが意識です。
仮想世界を作り上げてるデータがクオリアで、それを認識するのが自己とも言えます。
クオリアと自己とは必ずペアとなっています。
さて、最後に今のAIについて考えます。
大量の入力データを学習して最適な出力をしているのが大規模言語モデルです。
これは、いってみれば、サブサンプション・アーキテクチャの足と同じです。
つまり、これをいくら階層化しても意識は生まれません。
それから、今、AI業界では、次は世界モデルと言われるようになってきました。
自然言語から二次元画像、動画と進んで、今、三次元動画を作れるようになってきましたよね。
これは、実質、物理シミュレータです。
リアルタイムで三次元物理世界を生成するわけです。
つまり、仮想世界そのものです。
そして、それが最も期待されているのがAIロボットです。
つまり、現実世界に身体をもったロボットです。
でも、仮想世界は、認識する意識があって初めて意味をなすんでしたよね。
世界だけつくっても意味がありません。
ところが、世界モデルを使ったAIロボット研究では、意識を持たせようとしてるって聞いたことないんですよ。
やろうとしてるのは、ロボットの身体がいかに環境に上手く適応するかってことです。
それじゃぁ、サブサンプション・アーキテクチャです。
仮想世界まで作ってるのに、肝心の意識を持たせようとしてないんですよ。
ただ、仮想世界を使って、意識を持たせようとしているところもあります。
それが、ロボマインドです。
今年中には、意識をもったAIをお披露目できると思いますので、もう少しお待ちください。
はい、今回はここまでです。
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それから、意識の仮想世界仮説に関して興味がある方は、こちらの本を読んでください。
それじゃぁ、次回も、おっ楽しみに!
第541回 意識がない生物は、どんなふうに感じてるのか?
