第55回 中学生でもわかる意識のしくみ


ロボマインド・プロジェクト、第55弾
こんにちは、ロボマインドの田方です。

脳の進化の続きです。
進化の過程で、ついに、意識を獲得しました。
意識の獲得って、生物の進化で、最も劇的な進化ですよ。

たとえば、魚のヒレが足に進化して、陸に上がったとか、

想像すると、進化って、すごいなって思いますよね。

でも、意識がない状態から、意識がある状態への進化って、イマイチ、イメージできないです。

化石を調べてわかるわけじゃないから、意識の進化なんて、誰も研究なんかしてきてないんです。
でも、中学校の理科の教科書に出てこないとおかしいぐらい、大事な話なんですよ。

魚と哺乳類じゃ、見たり、感じてることが、全然、違うんですよ。
魚には、痛みのクオリアがないんです。
釣り針で釣り上げられたとき、もがいて痛がってるように見えるけど、僕らが感じてるような痛みを感じてるわけじゃないんですよ。

魚のヒレが足に進化したみたいに、「痛み」って感覚も、進化の過程で獲得したものなんですよ。
「歩く」ってことが魚には理解できないみたいに、「痛い」ってことは、魚には理解できないんですよ。
そんなことを、中学の理科の教科書に書いてないとおかしいんですよ。

たぶん、2045年度の中学2年の理科の教科書には載ってると思うんですけよ。
期末試験とかは、「次の三つの内、クオリアを持ってるのはどれか選べ」とか問題が出て、「えーっと、魚って、痛そうにしてるから痛みのクオリアもってるんじゃないかなぁ」って悩んだりするわけです。

意識って、当たり前すぎてよくわからないって、よく、言われるんです。
そこで、今回は、中学生でも分かるように、意識について、徹底的にわかりやすく説明しようと思います。

意識を持ってる人間からすると、意識なしで生きるって、想像できないんですよ。

でも、生きて行くだけなら、意識なんかなくても生きていけるんです。
いつも例にあげますけど、熱い鍋に触った時、思わず手を引っ込めますよね。
いわゆる脊髄反射です。
これが無意識です。
手を引っ込めたときには、熱いって、意識で感じてないわけです。
意識がなくても、ちゃんと環境に反応してるわけです。

その後、熱ぅって感じるのが意識です。
まぁ、最悪、こっちは、無くても生きていけるわけです。

釣り上げられた魚はもがいて、痛そうにしてますけど、あれは、僕らが感じるような痛みを感じてるわけじゃないんです。
釣り針から逃れるための反射行動です。
熱い鍋から手を引っ込める運動と同じです。
魚は、意識を持ってないので、その後、痛みを感じるわけじゃないんです。
釣り針が外れるまで、反射行動が続くだけです。

意識がなくても、生きていけるって、何となく、分かってきましたか?
外界に対して、決まりきった反応だけするだけでも、生きて行けるわけです。
もう少し、意識と無意識の違いについて考えていきます。

第19回「意識って何? 世界って幻想?!」で盲視の話をしました。
盲視っていうのは、脳の一部が損傷して、目が見えないっていう脳障害です。
盲視の面白いところは、本人は、目が見えないって思ってるのに、たとえば、ライトで壁を照らして、光の点がどこにあるか指差してみてっていうと、ちゃんと指させるんですよ。

本人に聞くと、「見えてない」って言うし、「じゃぁ、何で分かるの?」って聞いても、「あてずっぽうで指差しただけ」って言うんですよ。

「見えてない」って言ってるのは意識ですよね。
でも、実際は見えていたわけです。
見えていたのは無意識です。

これは、目で見たものの脳内の処理経路を示した図です。

見たものは、「どこの経路」という「背側視覚路」と、「何の経路」といわれる「腹側視覚路」の二つに分かれて処理されます。

盲視患者は、何の経路が損傷していて、どこの経路が生きていたわけです。
意識につながるのは、「何の経路」で、無意識につながるのが「どこの経路」なんです。
だから、意識では見えなくても、指差したりって動作はできたんです。

ここからわかるのは、環境に応じて動くことは、意識がなくてもできるってことです。
光の点を指差したり、熱い鍋に触って、思わず手を引っ込めたり。
そう言ったことは、意識がなくてもできるわけです。

盲視でもう一つ、面白い実験があります。
光の点は指差せましたけど、今度は、光の点を消して、「光の点は、どこにありましたか?」って質問すると、答えられなくなるんです。

どうも、無意識は記憶ができないみたいなんです。
ここ、意識の仕組みを理解するのに、ものすごく重要な点なんです。

無意識って、外界に直接、反応してるんでしたよね。
熱い鍋から手を引っ込めたり、光ってる点を指差したり。

世界って、刻一刻と状況が変わりますよね。
それに素早く対応することが、生きて行くのに重要なわけです。
天敵が襲ってきたら、すぐに逃げるとか。
重要なのは、今、現在の状況です。
目からの情報に、リアルタイムに反応することが、一番、重要なんです。

光の点はどこにあったかって、それは、過去の状況ですよね。
それでは、過去の状況に対応するには、何が必要でしょう?
それは、過去の状況を覚えておくことです。

過去の状況を覚えておくって、どうすればいいでしょう?
光の点は、白くて丸かったって、形だけ覚えていても意味ないです。
光の点を含む、見えてるもの全部を覚えておく必要がありますよね。

目からの情報って、色の点が何十万、何百万って集まったものですよね。
目で見て、認識してるものって、色の点々で覚えてるわけじゃないですよね。
これはホワイトボード、これはペンって風に理解してますよね。
ホワイトボードって、ツルツルの白い板で、ペンで字や絵を描いたり、消したりできるって。
何をするものか、意味を理解して認識してますよね。

そんな情報、目からの情報に含まれてるわけじゃないです。
過去の経験や知識と組み合わせてるわけです。
そこまでなると、単に見てるんじゃなくて、作り出してるわけです。
意識が、目で見ているものは、目からの情報を基に、脳内で作り上げてるわけです。

脳内で自分で作った世界だから、消えたとしても、さっきまで見えていたものを思い出すことができるわけです。
だって、自分が作ったものですから、作った世界を一時的に保存しておいて、それを確認すればいいですから。
これができるのが、意識です。

無意識の世界は、直接、外部世界に反応するだけなので、一瞬前であっても、眼の前から消えると、反応することはできないです。

無意識は、眼の前の世界の動きに反応するだけのプログラムです。

それに対して、意識の仕組みは、全然違います。
目からの情報を基に、世界を作り上げます。
そして、意識は、その世界を見て、認識します。
だから、過去のことも覚えることができます。

さて、ここで、進化による脳の違いを見てみましょう。

青が大脳です。
魚類や両棲類は、大脳が小っちゃいですよね。

それに対して、哺乳類は大脳がおっきいですよね。
ヒトなんて、ほとんどが大脳です。

さて、大脳って、感覚器からの入力を処理して、動作を制御します。
魚やカエルは無意識で動いてます。

無意識の制御って、感覚器からの入力に応じた一つの行動をするだけです。
簡単なプログラムです。

それに対して、意識は、さっきも言いましたよね。
感覚器からの入力によって、世界そのものを作り上げるわけです。
脳内に、世界を創るんですよ。

ファイナルファンタジーみたいなやつですよ。
本物そっくりの世界を創るわけです。
そりゃ、ものすごい計算量が要ります。

そう考えたら、魚類や両棲類の大脳が小っちゃくて、哺乳類、とくにヒトの大脳がおっきいのも分かりますよね。

生物の進化の過程で、大脳がこれだけ大きくなったってことは、意識を持つようになったからだったんですよね。

なぜ、大脳がこれだけ大きくなったのか。
意識をもつって、どういう感じなのか。
意識を持たないって、どういう感じなのか。

どうでしょう?
中学生でも分かるように説明したつもりですけど、いかがだったでしょうか?

次回は、人の高度な意識に近づいていこうと思います。
それでは、次回も、お楽しみに!