第57回 自由意志のクオリアと意識の関係 〜誰も指摘しない自由意志の本当の意味


ロボマインド・プロジェクト、第57弾
こんにちは、ロボマインドの田方です。

今回のテーマは、自由意志!
自由意志って、あるかないかって視点で見てると、本当の意味がわからないです。
そこじゃなくて、クオリアから見ると、自由意志の本当の意味が見えてくるんです。

えっ、クオリアと自由意志って関係あるの?

そう思いますよね。
進化の過程で、なぜ、クオリアを獲得したかがわかると、自由意志の意味がわかるんです。

えっ?
ますます、わからなくなりましたか?

それじゃ、もう少し丁寧に解説していきます。
自由意志に関しては、第39回~42回の「自由意志は存在するか」シリーズで取り上げましたけど、そっちは、表の解説です。
今回は、自由意志の裏の解説になりますけど、表の解説も、ぜひ、見ておいてください。

基本的なおさらいしをておきますと、現在の最新科学では、人間には自由意志がないというのが主流の考えです。

一般に言われている自由意志の考えは、自由意志があると思って行動してるけれど、それは後付けの理由だそうで、本当は自由意志がないそうです。
僕の頭が悪いだけだとは思うんですけど、この説明、何を言ってるのか、さっぱり意味がわからないんです。

僕は、自由意志は、進化によって獲得したと考えてます。
進化の順に話します。
カエルには、意識がないって話しましたよね。
カエルは、眼の前に動く虫を認識すると捕まえます。

動く虫の認識と、捕まえるという行動が直結してるわけです。
目からの映像を処理して認識したり、行動を制御するのは大脳です。
この大脳が進化して、やがて意識を獲得したってわけです。

第54回「脳と心の進化論④」で、カエルとヒトの違いを説明しましたが、覚えていますか?

図を描いて説明しますね。(ホワイトボードに書く)

まず、カエルです。
これが外にある世界です。
これが目です。
目から映像信号が入力され、それを画像処理して、体を制御するプログラムがあるわけです。
(ホワイトボードに書く)このプログラムが大脳にあるわけです。
(ホワイトボードに書く)
次は、ヒトです。
ヒトは、目からの映像を基に、外の世界を頭の中に創り上げます。
詳しくは、第21回「意識の仮想世界仮説」をご覧ください。
頭の中には、世界を認識するプログラムがあります。
このプログラムは、体も制御します。

(ホワイトボードに書く)頭の中に創った世界を構成するのがクオリアとなります。
(ホワイトボードに書く)そして、それを認識するプログラムが意識となります。
(ホワイトボードに書く)この意識のシステムを実行するのが大脳です。
さて、ここからが本題です。
カエルや魚は意識もクオリアも持ちません。
外界に直接反応して体を動かすだけです。

魚は、痛みのクオリアを持っていません。
釣り上げられた魚がバタバタするのは、痛いと感じてるわけじゃありません。
反射反応で動いてるだけです。

人間が、熱い鍋に触れたとき、思わず手を引く脊髄反射と同じです。
熱いと意識で感じてから手を引くわけじゃなくて、無意識の反射反応で手を引いてるわけです。
つまり、外界に反応して生きて行くのに、意識は必要ないわけです。

それでは、なぜ、進化の過程で意識を獲得したのでしょう?
魚を考えてみましょう。
魚は、体に何か触れるとか、異物を感じると、それから逃れる行動を取ります。
たいていの場合、それで上手くいきます。
釣り針が引っかかった場合も、上手くいけば釣り針を外して逃れることができます。
上手く逃れられないと、釣り上げられますが、異物を感じてるので、何とか逃げようとバタバタします。

それでは、人間の場合を考えてみましょう。
たとえば、手に何か感じたとします。
見たら、虫がとまっています。
思わず、払いのけますよね。
たいていは、これで解決します。

でも、ハチだったら、どうでしょう。
チクッて痛みを感じて、刺されたとします。
そんな場合は、手で振り払うだけじゃだめです。
もし、針が刺さってたら、針を抜かないといけません。
毒が入ってるかもしれません。
そんな場合、毒を吸いだして吐き出したりします。

魚との違いを考えてみましょう。
魚は決められた行動しかできません。

人間も、決められた行動しかできなかったら、ハチを追い払って終わりです。
そのままにしてたら、毒が回って死んでしまうかもしれません。
でも、人間の場合、適切な対処をします。
対処の仕方がわからなければ、知ってる人に対処してもらったり、教えてもらったりできます。

魚と人間の一番の違いは、なんでしょう?
それは、行動を変更できることです。
魚は、違和感を感じたとき、取り得る行動は一つに決まっています。
魚は、考えて、別の行動を試してみることができません。

もし仮に、魚が痛みのクオリアを感じたとしましょう。
たとえ、痛みを感じたとしても、行動を変更できないのであれば、痛みを感じる意味はありません。
ただ、苦しいだけです。

何が言いたいか、わかりますか。
苦痛のクオリアを感じることの理由は、その苦痛を避けるために、別の行動を選択できるということです。
行動を変更できるということです。

苦痛を避けるにはどうすればいいか。
そう考えることができるのは、別の行動を選択できるからです。

行動を変更するのは意識です。
つまり、意識は自由意志を持っているといえるのです。

では、自由意志をもっていないプログラムとはどういうものでしょう?
それは、認識した状況に対して行動が決まっているプログラムです。
たとえば、眼の前を黒い虫が動いてたら、食べずにおれないカエルとかです。

たとえ、それがスマホアプリの虫でも、虫と認識したら、行動を変更できないわけです。

それでは、どうやって、自由意志を獲得できたんでしょう?
(ホワイトボード)

カエルは現実世界を直接認識して行動しますよね。
ヒトの意識は、現実世界を直接認識してるんじゃなくて、頭の中に作り上げたクオリアを認識します。

たとえばリンゴを見た場合、頭の中にリンゴのクオリアを創るわけです。

カエルだったら、リンゴと認識した瞬間、ガブッとかぶりつくかもしれません。
でも、人間はそうはなりません。

今、食べようか、後から食べようか、考えることができます。
今、食べるのにしても、包丁で皮をむいて食べようか、そのままかぶりつこうかとか。
いろいろ想像することができます。

クオリアを認識するから、考えることができるわけです。
考えてから、自由に行動することができるわけです。
これが自由意志です。

そろそろまとめにはいります。

苦痛のクオリアが存在する理由は、苦痛を避ける行動を選べるからです。
逆に言えば、行動を選べるから、クオリアが存在すると言えます。
行動の選択とクオリア、どちらが先かはわかりません。
ニワトリが先か、卵が先かわからなのと同じです。
自由意志とクオリアとは表裏一体といえるわけです。

意識は、クオリアを自由に操作できます。
クオリアの操作、これが考えるってことです。

考えた結果、自由に行動を決めることができます。
これが自由意志です。

クオリアと意識と自由意志。
これらは切っても切れない関係なんです。

進化の過程で意識を獲得したということは、自由意志を手に入れたということと同じなんです。
これが、今回の結論となります。

これからも、ロボマインド・プロジェクトは、意識の意味を分かりやすく解説していきます。
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それでは、次回もお楽しみに!