第574回 パラレルワールドへ転生する方法


ロボマインド・プロジェクト、第574弾!
こんにちは、ロボマインドの田方です。

僕がよく見てるYouTubeチャンネルにBTTPっていうのがあります。

タイムトラベルとか不思議系のチャンネルで、僕は、結構、こういう話、好きなんですよ。
BTTPさんが解明しようとしているのはタイムリープです。
タイムリープというのは、意識だけが過去に戻ることで、体ごと過去に戻るのがタイムトラベルです。
それから、意識だけがパラレルワールドに行くことをパラレルシフトといったりします。
そして、これらは明晰夢を見ているときによく起こるそうです。
明晰夢というのは、夢の中で、これは夢だとわかって、意識的に行動できることです。

明晰夢でパラレルワールドに行っても、たいていは、目が覚めると、元の世界に戻ります。
ところが、中には、そのままパラレルワールドで暮らす人がいるそうです。
2チャンネルとかには、パラレルワールドから転生したって人の話が時々出てきます。
まぁ、たいてい、やり取りしてる間に矛盾点が出てきたり、回答がなくなったりするんですけど、中には、本当かもって思う話もあるんですよ。

BTTPさんは、そんな話を取り上げて、さらに、最新科学から解明しようとするんです。
たとえば、量子力学では、あらゆる可能性の世界が存在する多世界解釈があります。
これが、いわゆるパラレルワールドです。

パラレルワールドは、この世界と少しずつ違っていて、そこには、もう一人の自分が暮らしています。
そして、明晰夢を見ているとき、意識がパラレルワールドのもう一人の自分に乗り移るわけです。
これが物理学からの解釈です。

僕も、パラレルワールドに興味がありますけど、僕の解釈はちょっと違います。
物理学から解明しようとするのが外からのアプローチとすると、僕がやろうとしているのは内からのアプローチです。
内からのというのは、脳の内側という意味です。

ただ、脳内現象って言い方は、あまり好きじゃないんですよ。
なんでかっていうと、脳内現象って言った段階で、真実じゃないってなってるじゃないですか。
脳の内側と外側、これ、どっちが正しいとかじゃなくて、二つの見方があるだけなんですよ。
どっちも対等なんです。
ただ、内側からの説明って、ほとんど見かけないんですよ。
そこで、今回は、パラレルワールドを内側から解明していこうと思います。
これが今回のテーマです。
パラレルワールドへ転生する方法
それでは、始めましょう!

この間から読んでいるのがオリヴァー・サックスの『幻覚の脳科学』です。

前回、第573回は閃輝暗点を紹介しました。
閃輝暗点というのは、片頭痛の前兆として見える一種の幻覚です。

それは、キラキラしたギザギザがゆっくりと視界に広がる幻覚で、20~30分ほどで消えます。
そして、そのあと、ひどい頭痛が起こります。

ただ、必ず頭痛が起こるわけじゃなくて、サックス先生は、閃輝暗点は見えるけど、頭痛は起こらないそうです。
僕はその逆で、片頭痛はあるんですけど、閃輝暗点は見たことがありません。

閃輝暗点の原因は、何らかのきっかけで後頭葉のニューロンの活動のバランスが崩れることです。
後頭葉には一次視覚野があるので、それで、視界にノイズとして閃輝暗点が現れるわけです。

さて、今回紹介するのは癲癇です。
癲癇も、脳の神経細胞の異常な電気活動です。
こちらは、片頭痛よりより強烈で、ひどい場合は脳全体で異常放電が起こって、全身がけいれんして気を失うこともあります。
これを大発作と言います。
癲癇には、小発作とか部分発作といって、脳の一部で異常放電が起こる場合もあります。
この場合には、けいれんや意識を失うこともなくて、数秒~数分で収まります。
周りの人も気づかないことも結構あります。
ただし、その間、本人は幻覚を見たり、異常な経験をすることがよくあります。

片頭痛は、後頭葉の異常放電ですけど、後頭葉は、低次の視覚処理を行うので、ギザギザといった抽象的な幻覚が見えます。
一方、癲癇は高次の視覚処理をする側頭葉や頭頂葉で起こるので、具体的でリアルな幻覚が見えます。

さて、さっきも言いましたけど、世界は脳の外と内の二種類の見方ができます。
脳の外というのが客観的に観測可能な物理科学の世界です。
脳の内というのが、意識や主観で感じる世界です。

脳は、目からの情報を基に外の世界を脳内に再構築します。
意識は、この脳内に作られた仮想世界を認識します。
これは、僕が提唱する意識の仮想世界仮説ですけど、オリヴァー・サックスも、人は脳内に作り上げた世界を見ていると言っているので、このモデルは脳科学者も共有しているといえます。

僕が脳科学者の本を読むのは、脳が正常でなくなったとき、内側からどんな世界が見えるかといった話を紹介してくれているからです。
それを参考にすれば、内側から見える世界が、どんなふうにして組み立てられるかがわかるからです。

ところが、ほとんどの人は外の世界と内の世界をあまり区別していないというか、同じだと思っているんですよ。
でも、そうじゃないんですよ。

たとえば、色ってありますよね。
色って、脳の外の物理世界にあると思っていますよね。
でも、物理世界にあるのは、単に波長が異なる光です。

そういうと、「いや、それを目の網膜で色に変換しているから、物理世界にも色がある」という人がいます。
でも、そうじゃないんですよ。

色を作り出しているのは、脳の視覚野の一つ、V4野です。
だから、交通事故などでV4野を損傷すると、目の網膜が正常でも、白黒の世界を経験します。

逆の例もあります。
網膜の異常で色を感じれない人がいます。
その人は共感覚者でもありました。
共感覚というのは、数字に色を感じるとか、別の感覚が別の感覚として感じる人のことです。
その人は、色は見えないんですけど、数字の4を見ると緑を感じるんです。
つまりね、現実世界の緑は目では見えないんですけど、数字を見たとき、緑を見るんですよ。
このことから、色があるのは、脳の外じゃなくて脳の中ってことがわかりますよね。

ちょっと顔を上げてみてください。
目の前に部屋とか、世界が見えますよね。
それが、内から見た世界です。
そして、その世界の材料の一つが色というわけです。
内側の世界は、物理的に存在する材料で作られているわけじゃないんですよ。
そう考えると、内側の世界には、もっとほかの材料があるはずです。
それを探るのに、脳障害でどんな世界を感じるのかが役に立つわけです。

片頭痛の前兆で閃輝暗点が見えるように、癲癇の前兆を感じる人がいます。
ある人は、癲癇の前兆として、見る人がみんなよく知った人、親しい人に感じるそうです。
理性では知らない人とわかっていても、あまりにも親しく感じるものだから、つい、挨拶してしまうそうです。

これの逆のパターンでカプグラ症候群という脳障害があります。
これは、親しい人が、偽物と感じる症状です。
母親を見て、「宇宙人に乗っ取られていて、本物の母さんじゃない」とか言ったりします。
これは、母親に感じていた親しみとか親近感を感じなくなったからそう思うわけです。

よく知っているとか、親しみの感覚は人だけでなく、場所にも感じますよね。
たとえば、子供時代に住んでいた場所を訪れると「懐かしい」と感じますよね。
初めて訪れた場所なのに「前に来たことがある」と感じることを既視感とかデジャヴっていいます。
これも、「よく知っている」という感覚を、初めての場所に間違って貼り付けたからでしょう。
これらのことから、内側の世界を構成する材料として「よく知っている」という感覚があると言えそうです。

さて、大学生のローラは、癲癇を患っています。
そして、癲癇の発作がおこったとき、奇妙な感覚を感じるそうです。
ローラは、普段から、はっきりとした夢を見るそうです。
その夢は、夢の中でも、またこの場所に来たとわかって、そのことは、起きてからもはっきりと覚えているそうです。
これは明晰夢ですよね。

そして、癲癇の発作が起こったとき、必ず夢で見た場所に行くそうです。
その場所は、10代の頃に住んでいたシカゴだそうです。
ローラは、夢や癲癇発作で何度もその場所を訪れているので、地図を書いてもらったそうです。
地図には、実際の目印となる建物が入っているんですけど、地形が妙に変形していたそうです。
つまり、現実のシカゴとはちょっと違うわけです。
この世界のシカゴとはちょっと違うってことは、そこは、パラレルワールドのシカゴのようです。
そして、ローラは言います。
癲癇の発作が起こっている数秒の間、自分は現実に存在しないその街にいるって。
つまり、パラレルワールドに行ってたわけです。

それから、ここでも「よく知っている」場所って感覚が出てきましたよね。
これは、「良く知っている」は、内側の世界の材料です。

ここで脳の地図を見てみます。

目の網膜からの映像は、まず、後頭葉のV1に送られて、V2、V3、V4と順番に処理されていきます。
片頭痛の原因はV1で発生します。
だから、最も低次の視覚処理による幻覚が見えます。
それが閃輝暗点です。

視覚処理は、側頭葉に沿って進みます。

そして、たとえば紡錘状回顔領域では顔の認識、海馬傍回場所領域では場所を認識をします。
側頭葉癲癇の発生源は、これらの処理をする側頭葉なので、場所や人に関する感じ方がおかしくなるんでしょう。

別の人の例もあります。
中年の歌手、セルマは発作がおきると、突然、さらわれたと感じるそうです。
さらわれるというのは、どこか遠い場所にさらわれるということです。
今、この場所にいると感じながら、それと同時に、別の遠い場所にもいるとも感じるそうです。
これを二重意識といいます。
さらに、その場所で、話すことも読むことも、それから、歌を歌うこともできるそうです。
ただ、自分の体の中にいないように思えるそうです。
これも、意識だけがパラレルワールドの別の体に入ったと言えそうですね。

今度は、癲癇の手術の話をします。
カナダの脳外科医、ワイルダー・ペンフィールドは多くの癲癇患者の手術をしました。

脳には痛覚がないので、脳外科手術するとき、患者の意識がある状態で行うんですよ。
そして、脳に電極を挿して、何を感じるか確認しながら取り除く部位を決めます。
ペンフィールドは20年にわたって500人以上の側頭葉癲癇患者の手術をしました。
そして、そのうち、40人以上が手術中に二重意識を経験したそうです。

つまり、手術中に、全く別の場所にいると感じるそうです。
体は、今、手術室にいるとわかっています。
でも、それと同時に、意識は、たとえば森の中で馬に乗っていると感じるそうです。
これも、まさに、意識がパラレルワールドに行ったと言えそうです。

さて、ここまでを整理します。
無意識は、目からの視覚情報を基に、現実世界とそっくりの仮想世界を頭の中に作ります。
意識は、この仮想世界を、現実世界と思っています。

脳内には仮想世界を作る材料があって、無意識はその材料を使って仮想世界を組み立てます。
癲癇発作が起こったり、脳手術で側頭葉を刺激したりすると、脳の処理回路が混線して、無意識は記憶とかから別の世界を作り出したりします。
そうなると、意識は、現実世界と、別の世界を同時に経験します。

さらにローラの場合には、現実世界が消えて、意識は、完全に別の世界に飛ばされていました。
そこは、いつも夢で見ていた世界で、かつて住んでいたシカゴに似ていますけど、現実とはちょっと違う世界です。
つまり、パラレルワールドです。
ただ、発作が収まると、現実世界に戻ります。

それから、仮想世界を作る材料として、「よく知っている」という感覚があります。
無意識が仮想世界にこれを貼り付けると、よく知っているとか、懐かしい、親しみを感じるとなります。

さて、癲癇の発作で、無意識が混乱して、目からの情報でなく、記憶や夢を基に世界を作ってしまいました。
つまり、パラレルワールドです。
すると、意識は、パラレルワールドに行ったと感じます。

ほどなくして、発作が治まったとします。
すると、無意識は目からの情報をもとに現実世界を作ります。
意識はそれを感じて、現実世界に戻ってきたと感じます。

さて、ここでです。
無意識はまだ混乱していて、現実世界に「よく知っている」を貼り付けませんでした。
その代わり、今までいたパラレルワールドのほうに「よく知っている」を貼り付けたとしましょ。
すると、その人は、どう感じるでしょう?

現実世界に戻ったのに、良く知らない世界と思いますよね。
つまり、パラレルワールドにいると感じるわけです。
逆に、パラレルワールドの方が、よく知っているなじみの世界と感じます。
つまり、本人からしたら、元の世界からパラレルワールドに飛ばされたと感じるわけです。
これが、パラレルワールドへ転生する方法です。

はい、今回はここまでです。
この動画がおもしろかったら、チャンネル登録、高評価お願いしますね。
それから、意識の仮想世界仮説については、よかったらこちらの本を読んでください。
それじゃぁ、次回も、おっ楽しみに!