ロボマインド・プロジェクト、第578弾!
こんにちは、ロボマインドの田方です。
宇宙は何のために存在するのかとか、意識とは何かとか考えることがあります。
たとえば、スピリチュアルだと、量子力学とか取り上げられます。
観測者の意思が量子の挙動に影響を与える二重スリットの実験とか。
ただ、これもちょっと違うと思うんですよ。
何が違うかというと、科学を拡張して意識や心を捉えようとしているところです。
僕が思うに、科学を拡張して意識を取り込むんじゃなくて、科学も意識もどちらも説明可能な、もっと大きな世界観があると思うんですよ。
僕の考えは、世界は脳の外と脳の中の二つに分けられます。
脳の外の世界というのが、科学が扱う物理世界です。
そして、脳の中に、意識とか心があります。
目で見た世界は、脳内で仮想世界として構築されます。
意識は、この仮想世界を介して外の世界を認識します。
これは、僕が提唱する意識の仮想世界仮説ですけど、今読んでる『幻覚の脳科学』のオリヴァー・サックスも同じことをいっています。
この本は、幻覚の様々な例を紹介した本です。
なぜ、幻覚が見えるかというと、意識は脳内の仮想世界を現実と思ってみているからです。
仮想世界を作っているのは無意識です。
その無意識が、何かのきっかけで、現実世界に存在しないものを作ったとき見えるのが幻覚です。
無意識は、脳の外の物理世界をそっくりそのまま脳内に再現します。
それは、重力といった物理法則も含めて再現します。
だから、物が下に落ちると理解できるわけです。
無意識は、心の中にしか存在しない世界も扱います。
たとえばお金です。
お金を扱うのは経済学です。
それから、本を読んで面白いと感じますけど、これは文学です。
絵を見て美しいと感じますけど、これは美術です。
そう考えると、心の中を量子力学で全て説明しようとするのは、ちょっと無理がありそうです。
というか、科学から一方的に心や意識を解明するには無理があるんです。
心や意識を解明するには、科学だけじゃなくて、心も扱える、一段上の理論が必要なんです。
これが、今回のテーマです。
精神世界と物理世界を統合する大統一理論
それでは、始めましょう!
夜、眠りに入るときに見える幻覚があります。
入眠時幻覚といって、目をつむったとき見えます。
万華鏡のように絶えず変化し続ける模様が見える人もいます。
または、顔がはっきりと見えるという人もいます。
ただし、誰か知らない顔だそうです。
それから、文字や文章の幻覚を見る人もいます。
ただし、読もうと思っても読めないそうです。
入眠時幻覚は、ほとんどの人が一度は見たことがあるそうです。
ただ、夢と同じで、たいてい、忘れて覚えていないそうです。
僕も、入眠時幻覚を何度か見たことがあります。
それは、こんなエスニック調の模様です。
こんなにはっきりと見えたわけじゃありません。
ただ、目の前に見えるのは確かです。
想像とは明らかに違います。
目で見ているって感じがしました。
わからないのは、なぜ、これが見えたのかです。
スピリチュアル的に解釈すると、前世がインディアンだったとかっていわれそうです。
入眠時幻覚の研究によると、顔の幻覚を見るのは結構あることだそうです。
さらに、そのとき、側頭葉の紡錘状回顔領域が活性化していることもわかっています。
紡錘状回顔領域というのは、顔認識する領域で右脳にあります。
それに対応する左脳の領域では、文字や数字、音符を認識します。
だから、この部分が活性化すると文字や数字の幻覚が見えます。
入眠時幻覚を見ているときの脳状態はデフォルト・モード・ネットワークと同じだと言われています。
デフォルト・モード・ネットワークというのは、何もしていなくて、ぼぉ~っとしているときの脳状態です。
脳の複数の部位が同時に活動していて、よく、脳のアイドリング状態と説明されます。
脳の複数の箇所が絶妙なバランスで動き続けている状態です。
いろんな箇所が活動しているので、ランダムにいろんなものが思い浮かぶのでしょう。
この状態は、複雑系とか、カオス理論によく似ています。
気象学者のローレンツは、粒子で気象のシミュレーションを行いました。
https://www.youtube.com/watch?v=3T0T0_0zHNc
7:33~8:26ぐらい
単純な微分方程式で動く多数の粒子をコンピュータでシミュレーションしてみると、一つの定常的なパターンに落ち着きます。
これをローレンツ・アトラクターと言います。
デフォルト・モード・ネットワークも、脳の中でこんな風になっているのかもしれません。
デフォルト・モード・ネットワークで活性化する脳領域は、自己評価や記憶、他人視点を理解をするところです。
だから、この時の思考は、「あんなこと言わなければよかった」とか「なんで、あの人はあんなことを言うんだろう」といったことになりがちです。
考えても仕方がないのに、同じことをぐるぐる考える状態です。
ローレンツ・アトラクターがぐるぐる回っている状態と言えます。
さて、サックス先生は、最新の脳科学も紹介しますけど、結構、19世紀とか昔の研究を紹介するんですよ。
これについては、第572回で触れましたけど、サックス先生は19世紀の科学に魅了されているそうです。
それは、幅広い学問をまたいで人間を説明するというものです。
これは、僕も感じることです。
20世紀に入ってからの科学は、洗練されるんですけど、細かく分かれすぎて、面白みに欠けるんですよ。
たとえば、僕は、生物学者のエルンスト・ヘッケルとか好きなんですよ。
ヘッケルは、個体発生は系統発生を繰り返すって反復説を唱えました。
これは、動物が受精卵から成体に成長するとき、生物の進化の歴史をたどるって考えです。
つまり、人間の赤ちゃんは、お母さんのお腹の中にいる十月十日(とつきとおか)の間に、魚から爬虫類、サルへの形態をたどって人間になるわけです。
ただ、この考え、現代の進化生物学では否定されています。
まぁ、厳密には違うといいたいみたいですけど、でも、大雑把には合っていると思います。
同じことを、僕は、脳で考えています。
これは僕がいつも使う脳の系統図です。
僕が思うに、人間の赤ちゃんの脳も、この系統図に従って成長していくと思うんですよ。
ただし、それはお腹の中だけでなくて、生まれてから大人になるまでの成長の過程でです。
生まれたばかりの赤ちゃんは、お腹がすいたら泣くし、眠たくなったら眠ります。
これは、本能だけで行動している最も原始的な脳です。
それが少しずつ成長して、世界とはどういうものか理解していきます。
三次元空間があって、その中に物体があるとかって世界観です。
世界を理解するとは、脳の中に仮想世界を作るということです。
この世界観は、哺乳類とかサルでも持ちます。
そして、1歳~2歳になると言葉を話し始めます。
ここから人間の段階に入ります。
最初は「パパ」とか「ママ」とか簡単な単語です。
言葉を使うとは、世界にあるものを、別の記号で表現できるようになったと言えます。
記号で表現できるとは、ものを客観的に認識するということでもあります。
そして、認識するのは意識です。
または自分です。
つまり、客観的に世界を認識するとは、同時に、自分や自我が生み出されたともいえます。
さらに単語だけでなく、文を作って語ることもできるようになります。
言語は左脳の担当です。
言葉を話すようになって、左脳が発達してきました。
さらに、昨日起こった出来事を、言葉で話せるようになります。
これができるということは、目の前にない世界を想像する能力が生まれたということです。
さらに、想像したことを記憶することもできるようになります。
一般に、もっとも古い記憶は、3歳ぐらいだといいますけど、これは言葉を話すようになったころと一致します。
さらに成長すると、なぜなぜ期がはじまります。
「どうして空は青いの?」とか「どうして飛行機は落ちないの?」とか、なんでも知りたがる時期です。
理屈や原理を考えるのも左脳です。
見たものなんでも、「なんで、なんで」と聞くということは、この世で起こることは、なんらかの原因があると考えているからです。
これも、左脳の世界観です。
理屈や原理は科学の源ですよね。
つまり、科学を生み出したのは、脳の特性といえそうです。
つまりね、科学は一つの見方なんですよ。
見方というか信念です。
どういう信念かというと、この世界で起こる現象は、全て、何らかの因果関係があるという信念です。
この信念をもっているから、子供は「なんで、なんで」って聞くわけです。
科学者は、この世界を成り立たせる根本法則を解明しようとします。
因果関係があると思って世界を見ることで、重力とか電磁気力といった自然法則を発見したわけです。
何が言いたいかというと、今までの考えは逆だってことが言いたいわけです。
つまりね、科学は、世界は自然法則動かされていて、それを発見しようとしています。
でも、世界が何らかの法則で動いているというのは先じゃないんですよ。
そうじゃなくて、一番先にあるのは、世界は何らかの法則で動いているという信念です。
その信念で世界を見たから、自然法則を発見できたわけです。
でも、世界を動かしている法則は、自然法則だけじゃないです。
たとえば、お金も世界を動かしますよね。
そして、世界を動かすのは人です。
人を動かすのは、お金が欲しいといった欲望だったり、世の中を良くしたいという正義だったり、いろいろです。
いい悪いは置いといて、人は、何らかの目的に向かって行動するわけです。
これも、一種の法則ですよね。
何らかの法則で世界は動く。
こういう見方をすると、心の世界も科学の世界も、同じように扱えます。
じゃぁ、これで全てでしょうか?
じつは、これじゃぁ、まだ、足りないんです。
今まで出てきたのは、因果関係といった法則です。
これらは、脳の中でも左脳の世界観です。
右脳が含まれていないんです。
じゃぁ、右脳の世界観ってどういうものでしょう?
それは、因果関係とか理屈じゃありません。
右脳が使うのは直観です。
理屈というのは、ああだこうだと考えることなので時間がかかります。
直観は、パッと感じることなので、一瞬で終わります。
右脳が扱うのは、たとえば美術とか音楽です。
美しいとか、心地いいといった感じは理屈じゃないですよね。
それを見たとき、聴いた時感じるものです。
それが直観です。
もう少し説明すると、それは一種のパターン認識です。
ああだからこうなるといった情報処理じゃなくて、ある特定のパターンに当てはまると沸き起こるタイプの情報処理です。
でも、そんな直観とか、思いついたことだけで生きていたら、ちゃんとした生活ができないんじゃないでしょうか。
はい、その通りです。
だから、ほとんどの人は左脳で考えて生きているんです。
逆に言えば、左脳が右脳を押さえつけているんです。
じゃぁ、もし、左脳と右脳が別々になればどうなるでしょう?
ここで、興味深い症例をお見せします。
それは、自分の意思と関係なく手が勝手に動くエイリアンハンドです。
https://www.youtube.com/watch?v=V0QbcROOv-E
1:22~1:44
ケースから薬を取り出して飲もうとします。
左手でケースの蓋を開けたと思ったら壁に投げつけました。
さらに左手は右手に持ったケースを叩き落とします。
床に散らばった薬を右手で集めます。
集まったところを左手がまた散らかします。
これがエイリアンハンドです。
この人は、脳梁が損傷しています。
つまり、左脳と右脳が分断されているわけです。
そして、自分の思い通りに動かないのは左手、つまり右脳です。
いま「自分」って言いましたよね。
この「自分」が意識です。
その意識は、左脳にあるわけです。
薬のふたを開けて薬を飲まないといけないって理屈を理解しているのが左脳です。
ところがこの女性は、脳梁が損傷しているので、左脳は右脳を押さえつけることができません。
右脳が行うのは、直観で行うパターン認識ですよね。
たとえば、何かもの持ったら「投げる」って思いつきます。
容器を持っているのを見たら、「はたき落とす」って思いつきます。
集まった薬を見たら、「散らす」って思いつきます。
そして、思いついたと思った瞬間、実行しています。
「そんなことしちゃダメ」って理屈で考える左脳が押さえつけていないと、思いついたこと、全部やっちゃうんです。
これが右脳です。
さっき、デフォルト・モード・ネットワークで脳の複数の処理が同時に動いているっていいましたよね。
その中には、右脳の処理も含まれていると思います。
それらの中から、どれか一つを選び出すのが意識です。
通常、左脳優位となっています。
つまり、理屈で考えます。
ただ、同じものを見ても、複数の理屈が考えられます。
心理テストでコップの水っていうのがあります。
コップに半分の水が入っていたとします。
それを見て、半分しかないと思うか、まだ、半分もあると思うかとかです。
どっちでもいいんですけど、いずれも左脳が考える理屈です。
じゃぁ、右脳ならどうなるでしょう。
おそらく、「あっ、水、美味しそう」と思った瞬間、水を飲んでいるでしょう。
ここでは、左脳がいいのか、右脳がいいのかといった議論はしません。
今回は、別の見方をしようと思います。
それは、人間は、進化で何を獲得したのか、一段、深いところを考えようと思います。
人間のみがもつ能力として、言語能力とかいわれますよね。
僕は、それに対して、言語に先立つものとして、目の前にない世界を想像する能力があると言ってきました。
その人が心の中で思っている世界は、他の人にはわかりません。
だから、それを伝える方法として言語を生み出したというわけです。
言語に先立つ、より根本的な機能があるという考えです。
この考えは変わっていません。
今回、もう一つ重要なことに気付いたんですよ。
それが、デフォルト・モード・ネットワークです。
デフォルト・モード・ネットワークは、行動していないけど、脳が行動する準備段階にある状態です。
その時、脳の複数の領域が同時に活性化して絶妙なバランスの状態にあります。
そして、そこから意識が一つを選択して行動を決定します。
おそらく、動物はデフォルト・モード・ネットワークはないと思うんですよ。
動物は、入力があったら、それに対応する出力が決まっているだけです。
迷うことなく行動するだけです。
一方、人の左脳は、因果関係を理解できるようになりました。
だから、同じコップの水を見ても、「半分もある」と、「半分しか無い」の二種類の見方ができます。
さらに、水の分子構造はどうだといった科学的な見方もできます。
一方、右脳は、コップの水をみて「美味しそう」と思います。
そこには理屈はありません。
美味しいとか美しいと感じるのが右脳です。
同じものを見ても、複数の世界観を同時に持てるんです。
それが、デフォルト・モード・ネットワークという脳状態です。
いかがでしょう。
科学、言語、文学、アート。
これらを、脳が作り出す仮想世界というプラットフォームの上で、統一して扱うことができましたよね。
これが、精神世界と科学を統合する大統一理論です。
はい、今回はここまでです。
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それから、意識の仮想世界仮説について興味がある方は、よかったらこちらの本を読んでください。
それじゃぁ、次回も、おっ楽しみに!
第578回 心と物理を統合する大統一理論
