第584回 意識は傍観者である


ロボマインド・プロジェクト、第584弾!
こんにちは、ロボマインドの田方です。

今回は、この本の紹介です。
『あなたの知らない脳』

著者は、脳神経科学者のデイヴィッド・イーグルマンです。
サブタイトルは「意識は傍観者である」です。
つまり、この本でいいたいのは、意識はただの傍観者ということです。
もっといえば、意識はただ見てるだけで、何もしていないということです。
別の言い方をすれば、自由意志は存在しないです。

これは、このチャンネルで何度も取り上げたテーマです。
科学者の多くは「自由意志は存在しない」といいます。
でも、僕の考えは「自由意志は存在する」です。
だって、じゃんけんでグーを出そうとおもったらグーを出せるでしょ。
グーを出そうと思っても、チョキしかだせなかったら「自由意志は存在しない」と認めますけど、そんなことないですよね。

どう考えても自由意志は存在するし、自由意志が存在しないという納得する説明はあまり聞いたことありません。
ところが、僕を納得させる本に出合ったかもしれません。
それが、この本です。

たとえば、こんな心理実験が出てきます。
左右の写真をペアにして見せて、どちらが魅力的か聞きます。

すると、ほとんどの人は左の顔を魅力的だと答えます。
実は、被験者に知らせていませんけど、左の写真は目を見開いていて、右は普通の目をしています。
つまり、被験者は瞳が大きな人を魅力的と感じているわけです。
ところが、そのことを指摘した被験者は一人もいません。
理由を聞いても、特に理由はなくて、ただなんとなくとしか言いません。
つまり、意識は無意識に操られているんです。
たしかに、これなら自由意志はないと言えそうです。
これが今回のテーマです。
意識は傍観者である。
それでは、始めましょう!

さて、なぜ目を見開いた方が魅力的に感じるかです。
それは、目がパッチリ開いてる方が若くて健康に見えるからです。
年を取ると皮膚がたるんで、目も細くなります。
じゃぁ、なぜ、若い方が魅力的かというと、パートナーとして若い方が好ましいからです。
子孫を繁栄させるという本能から、若くて健康な人に魅力を感じるのは自然なことです。
本能に根差すことなので、意識のずっと奥の無意識から生み出されています。

意識は、それを受け取って魅力的と感じるだけなので、理由なんかありません。
ただ、こっちの方が魅力的と感じて指さすだけです。
感じたり指さしたりするのは意識です。
魅力的といった感情を生み出すのは無意識です。
たしかに、これだと、意識は無意識の言いなりとか、自由意志がないといわれても仕方がありません。
じゃぁ、意識は何のためにあるんでしょう。

じつは、意識がどのようにして進化して、なぜ生まれたのかまだわかっていなくて、専門家の間でも議論がわかれます。
だって、ほとんどの生物は意識がないですけど、それでも問題なく生きています。
しかも、意識がない生物の方が素早く動いて、意識がある人間の方が動きは遅いです。
そうなると、そもそも、何のために意識があるのかわかりません。
そこでいわれているのが意識のスパンドレイル説です。

イタリアにサンマルコ大聖堂があります。

ドーム型の天井が美しい教会です。
中に入ると、見事な天使の絵が描かれています。

「あのスペースは、きっと天使を描くために用意されたのだろう」と思います。
ところが、進化生物学者のスティーヴン・ジェイ・グールドは「そうじゃない」といいます。

構造を見ると、丸い天井の上にドームが配置されています。
すると、三角形の隙間が生まれますよね。
そこに天使が描かれています。
この三角形の隙間のことを、建築用語でスパンドレイルと言います。

進化もこれと一緒じゃないかとグールドはいいます。
生物はその環境で強いものが選択的に残った結果とも言えますし、種の保存の目的に沿った結果とも言えます。
だから、生物の形態は、何らかの目的に叶ったものとなります。
たとえばキリンの首は、サバンナの高い木の枝の葉っぱを食べる個体が選択的に残って進化した結果です。
ただ、それがすべてではありません。
建築でたとえれば、スパンドレイルです。

スパンドレイルはドームを丸天井で支えるときに仕方なくできた隙間です。
言ってみればオマケです。
そのままにしとくのはカッコ悪いから立派な天使を描いたわけです。
ただ、教会を訪れた人は、つい、天使の方に目が行きます。
でも、それは、じつはオマケなんです。
天使のために用意されたんじゃないんです。
人でいえば、たとえばヘソです。
お腹の真ん中にあって、いかにも意味ありげですけど、おへそは、へその緒の切れ端です。
なくていいものですけど、哺乳類の構造上、仕方なく残っただけです。
そして、意識もそれと同じじゃないかと言われています。
なくてもいいけど、脳の構造上、仕方なく生まれたオマケというわけです。

魚類や両生類は卵から生まれていましたけど、そこからさらに進化した哺乳類は母親の胎内である程度育ってから生まれます。
母親の胎内にいるときに必要なのがへその緒で、その名残がおへそです。

体だけじゃなくて、脳も進化します。

進化して獲得したのが大脳です。
大脳を獲得したとき、仕方なく生まれたのが意識というわけです。
本当でしょうか?
それでは、どのようにして意識が生まれたか考えてみます。

たとえばカエルは現実世界に直接反応して生きています。
天敵の鳥の影を見たら反射的に池に飛び込みます。
これが反射だけで生きている単純な生物の脳です。
わかりやすくするためにライントレーサーを考えます。
ライントレーサーは、ラインに沿って走行するマイコンロボットです。

仕組みは単純で、白か黒かを検知する四つのセンサーを持っていて、ラインに沿って走るようにマイコンがタイヤを制御します。
つまり、四つのセンサーの内、内側のセンサーが黒、外側のセンサーが白となるようにタイヤを制御するわけです。
ただ、いったんラインから外れると、四つのセンサーが全部白になるので、どっちに戻ったらいいかわからなくなって迷走します。
つまり、ちょっとしたことでうまくいかない非情にデリケートな生物と言えます。
これじゃぁ、すぐに絶滅していまいます。

じゃぁ、ライントレーサーの問題はどこにあるでしょう?
それは、真下のラインしか見ていないことです。
コース全体をみて、今、自分がどこを走っているかがわかれば、コースから外れたら戻ることもできます。
そのためには、コース全体と、その中の自分の位置という関係で世界を把握しないといけません。
ちょっと複雑ですけど、できないことはないです。

脳の進化で起こったわけです。
コース全体を把握するというのは、世界全体を把握するということです。
人間は目からの情報を元に、仮想的に世界を作り出したわけです。
それもリアルタイムにです。
そして、作り出した世界の中に自分を配置します。
これで、世界の中に自分がいると感じることができます。

ライントレーサーはセンサー入力で直接タイヤを制御していました。
カエルも目から入力で直接筋肉を制御しています。
これは単純な自動機械です。
がんばれば歯車で作れるような制御です。

ところがリアルタイムで世界を作るとなると、これはコンピュータでないと無理です。
つまりソフトウェアです。
ここで脳内の神経回路が飛躍的に進化したわけです。
今までは、電池と豆電球をスイッチでつなげた単純な回路でした。
それが、プログラムを実行できる複雑なコンピュータにまで進化したんです。
それが大脳です。

大脳を持つことで、世界そのものをソフトウェアとして実現することができるようになりました。
今までは、スイッチのオンオフで筋肉を動かしていましたけど、ここも大幅に進化させないといけません。
ソフトウェアで作った仮想的な世界を認識して、筋肉を制御する必要があるので、制御する部分もソフトウェアとなります。
この制御ソフトウェア、それが意識です。

そして、あらゆるものがソフトウェアとして扱えれるように進化します。
まず、天敵を検知したときの信号です。
それは、大脳だと偏桃体で生み出される恐怖の感情です。
そして、それを受け取る制御ソフトウェアが意識です。
じゃぁ、意識はどんなふうにその信号を感じるんでしょう。

それは、ヘビやお化けをみて「きゃー!」って感じるとかです。
ヘビは噛まれたら死ぬかもしれません。
お化けは死を連想させますよね。
ということは、どちらも死に近づくことを避けるための警告といえます。

注意してほしいのは、この「キャー、怖い」って感情は、意識が生まれて初めて感じることができるんです。
カエルも危険を検知する機能はあります。
ただ、それは筋肉を直接制御していたので、「怖い」と感じることはありません。
というか、怖いと感じる意識そのものがありません。

さて、怖いと感じた意識は危険から逃げますよね。
逃げるのは、自分の身を守るためです。
この時の自分というのは自分の体です。
一方、怖いと感じていた意識も自分です。
逃げる体は実体のあるハードウェアとしての体です。
怖いと感じるのは、ソフトウェアとしての自分です。
ここで、ハードウェアとしての自分と、ソフトウェアとしての自分がつながるんです。

それでは、あらためて考えますけど、意識は何のために作られたんでしょう。
それは、まずは、世界全体を認識するためでしたよね。
単純なライントレーサーは、コースから外れる終わりでしたけど、全体を見渡せると、環境に柔軟に対応できるようになります。
ということは、環境に対応するために生み出されたものなので、進化の目的に沿って生み出されたといえますよね。
つまり、大脳ができたオマケなんかじゃありません。

じゃぁ、ヘビやお化けをみて怖いと感じるのはどうでしょう?
瞳の大きな女性に魅力を感じるのはどうでしょう?
こういった感情をうみだしているのは無意識ですよね。
意識は、無意識が生み出した感情を受け取るしかできません。
考えて行動しているようで、無意識に操られています。
意識がこっちが魅力的と選んでいるようで、じつは、選んでいるのは無意識です。
これじゃぁ、やっぱり、自由意志があるとは言えないです。

はたして、そうでしょうか。

たしかに、感情のままに行動してたら意味がありません。
街で瞳の大きな女の子を見つけて「かわいい」といって、いきなり抱き着いたら捕まります。
夜中にお腹がすいて、キッチンでラーメンを見つけたとしても、この時間にラーメン食べると太るよなぁとか悩みます。
現在の欲求を満たした場合と、将来のデメリットとを想像して悩んでいるんです。
想像する世界はソフトウェアでできています。
そして、ソフトウェアでできた世界をつかって悩むのも意識というソフトウェアです。

つまり、悩むことができるのは、脳が進化して、ソフトウェアとして世界を認識できるようになって初めてできることです。
そして、悩んだすえ、ラーメンを食べるのやめようと決めたとします。
それは、現在の欲求より将来の理想を優先したからです。

現在の欲求とは、生きたいという個体保存の本能から生み出されたものです。
将来の理想とは、ダイエットに成功したスリムな自分です。
それは、モテモテの自分です。
ということは、これは、種の保存の本能に従った行動です。

ダイエットだけじゃありません。
ゲームやSNSを我慢して勉強したりします。
これは、テストでいい点を取って、いい学校に行くためです。
その社会で高い評価を得るためともいえます。
それも結果的にモテます。
となると、これも種の保存の本能に従った行動といえます。

大脳が発達して意識を生み出しました。
意識は、感情に流されて行動するただの傍観者じゃありません。
自分の意思で行動を決定することができます。
本能に打ち勝って行動を変更できます。
その意味では、自由意志を持っているといえます。

そうやって、ダイエットに成功したり、勉強して立派な学校にいったりします。
ただ、これは種を繁栄させるためといえます。
種の保存の本能に突き動かされた行動とも言えます。
そう考えたら、本当に自由意志があるといえるのでしょうか。
また、わからなくなってきました。


はい、今回はここまでです。
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それから、よかったらこちらの本も読んでください。
それじゃぁ、次回もおっ楽しみに!