第593回 夢もロマンもない意識が存在する理由とは


ロボマインド・プロジェクト、第593弾!
こんにちは、ロボマインドの田方です。

意識の研究って、いろんな分野でいろんなことを言っていますけど、どれもしっくりきません。
たとえば、スピリチュアル系だと、魂がどうとか、宇宙の根源は意識だとか、意味がよく分かりません。
まぁ、意識はすごいということだけはわかります。
一方、科学で意識を解明しようというのもあって、たとえば量子脳理論とかあります。
量子って波と粒子の両方の性質があってとらえどころがありません。
意識も捉えどころがないから、意識は量子で説明できるんじゃないかってのが始まりじゃないかって言う人もいます。
その他、複雑系が流行ったときは、意識は複雑系だって説がでてきましたし、最近だと、数学の圏論が流行って、さっそく意識は圏論だって説が出てきました。
どれが正しいのかは分からないですけど、とにかく、意識はすごいってことは伝わってきます。
なかには、意識は人類にとって究極の課題で、100年やそこらで解明されるものじゃないと言っている人もいます。

でも、僕はそうは思っていません。
一見複雑に見える物事も、分解すれば単純な原理に従って動いていることはよくあります。
意識って、感情を感じたり、考えたり、言葉を話したりいろんなことをしますよね。
でも、これらのすべてを説明できる根本原理が、きっとあるはずなんです。
それがわからないから、意識は宇宙の根源だとか、量子だとか、みんな勝手なことを言うんですよ。
そして、僕は、意識を生み出すたった一つの根本原理を見つけました。
それは、小学校で習うような誰でも知っていることです。
宇宙の神秘も、難しい数学も関係ありません。
まして、何百年もかけて解かないといけない究極の難問とかじゃありません。
これが今回のテーマです。
夢もロマンもない
意識が存在する理由とは
それでは、始めましょう!

意識についてはわからないことばかりです、確実に言えることが一つあります。
それは、僕らには意識があるということです。
人間以外の生物にも意識はあるかというと、おそらくサルとか哺乳類はありそうです。
こう考えると、意識は、生物の一機能と言えそうです。

哺乳類以降の生物で意識が生まれたと考えるとすると、進化によって意識が生まれたと考えられますよね。
じゃぁ、生物は、なぜ、進化するんでしょう?

それは、生物としての目的を達成するためです。
生物の目的とは、生きたい、自分の種を残したいです。
一言で言えば、本能です。
これが生物を生物たらしめる根本原理です。
そして、意識も、この根本原理に則っていると考えられます。
そう考えると、量子力学とか数学とかはあまり関係ないとなりますよね。

さて、生物の根本についてさらに考えていきます。
生きるのが目的といいますけど、じゃぁ、何を生かすのでしょう?
それは、この体です。
つまり、生物には体が必要ということです。
そして、生きるということは「死」もあります。
死ぬのも体です。
体をもってこの世に生を受けて、できるだけ体を生かすように活動して、最期に死んでいく。
これが生物の定義です。
小学生でも知っている当たり前のことですけど、これがわかってない人が多いんですよ。
どういうことかというと、たとえば、AIには意識があるのかって議論があります。
でも、意識は体を維持するための生物の機能と考えたら、前提として、生きて死ぬ体が必要なんです。
体も生も死もないAIが意識を持てるはずがないんです。

じゃぁ、その意識は体のどこにあるでしょう。
それは脳ですよね。
脳が体をコントロールします。
そう考えたとき、意識の新たな側面が見えてきました。
それは、体を制御する制御装置としての意識です。
どんどん神秘性がなくなってきますけど、ここからは、制御工学の視点で脳や意識を考えていきます。

体は、この三次元世界の中にあって、脳は、感覚器を通じて世界を認識します。
そして、脳は、この世界で生き延びるために最適な行動を決定します。
これが脳の役目です。

脳は、世界を認識して行動するといいましたけど、制御工学的には二つの方法が考えられます。
一つは、入力に対して、行動が予め決められているタイプです。
これは、反射とか反応です。
もう一つは、世界を認識してから、どう行動するかあれこれ考えて決定するタイプです。
これは思考です。
この二つは、脳の中で完全に分かれています。


目の網膜からの情報は、まず、後頭葉の一次視覚野に送られて、そこから頭頂葉に向かう背側視覚路と、側頭葉に向かう腹側視覚路に分かれます。
背側視覚路は、位置や動きを分析するので「どこの経路」と呼ばれています。
腹側視覚路は、色や形を分析するので「何の経路」と呼ばれています。

机の上にリンゴがあるとします。
色が赤くて、形が丸いから、これはリンゴだと分析するのが「何の経路」です。
そのリンゴを掴もうとして、どの方向に手を伸ばして、どのタイミングで掴むとか分析するのが「どこの経路」です。

このうち、進化的に古いのは「どこの経路」です。

これは、脳内の処理経路をさらに詳しく書いたものです。
網膜からの視覚情報は、視床を介して視覚野に行くのとは別に、上丘を介して頭頂葉に向かう経路がありますよね。
頭頂葉にあるのが「どこの経路」です。
この上丘を介して頭頂葉に向かう経路が、進化的に古い経路です。

視覚野っていうのは、網膜からの視覚情報がそのまま映し出されます。
古い生物は、それがなくて、直接、どう行動するか分析するわけです。
これ、どういうことかわかりますか?

これ、「見る」という経験をせずに、行動しているってことです。
カエルとか、目に見えない速さで虫を捕まえますよね。
あれは、世界に反射的に反応してるわけです。
だから速いんです。

これは、脳の系統発生図です。

哺乳類ぐらいから大脳が発達して、人になると脳のほとんどが大脳です。
そして、人の大脳には側頭葉がありますよね。
これが「何の経路」です。
「何の経路」って、見たものが「何か」を分析します。
つまり、「何の経路」があって、初めて、目の前にリンゴがあるとか、机があるとかって見えるわけです。
もっと言えば、「世界が見える」、または「世界がある」という形式で認識するわけです。

僕らは、つい、世界があるから、世界が見えると思っていますよね。
でも、違うんですよ。
「世界が見える」のは、「何の経路」で情報処理してるからです。
決して、世界があるから世界が見えるわけじゃないんです。
「何の経路」がない生物は、世界があるなんて、思うことすらできないんですよ。
「物がある」と情報処理する回路があって、はじめて、物が見えるんです。

さて、「何の経路」で、目の前に「リンゴがある」と認識できるようになりました。
でも、これだけじゃ行動できません。
カエルなら、ハエを認識した瞬間、ハエを捕まえて食べます。
でも、僕らは、リンゴを認識した瞬間、掴んで食べるなんてことしないですよね。
食後に家族と食べようとか、お隣さんにおすそ分けしようとか考えますよね。
この考えるという情報処理をするのが「意識」です。

はい、「意識」が登場しました。
そして、意識は情報処理をします。
じゃぁ、どんな情報処理をするんでしょう?

意識は、世界を認識して、行動を決定しますよね。
たとえば、目の前に千円札と一万円札があって、どちらかをもらえるとします。
あなたなら、どちらを選びますか?
当然、一万円ですよね。
この時、おこなっている情報処理は「比較」です。
たとえば、デジタル回路には比較回路があります。

これは、AB二つの入力があった場合、AとBが同じか、どっちが大きいか比較して出力する回路です。
回路図だと、こんな感じです。

詳しい解説はしないですけど、意識回路には、これと同じものがあると考えてください。
ここで、重要なのは、どんなふうに信号が流れるか眺めたらダメなんですよ。
外から眺めるのは客観的観察です。
客観的に観察して分析するのが科学です。

でも、意識は主観です。
主観とは、心の内で感じるものです。
だから、比較回路を眺めるんじゃなくて、自分が比較回路になったと思うんですよ。
目の前に千円札と一万円札があって、1万円を選ぶとします。
このとき、使ったのが比較回路です。
何を比較したかというと、千円もらった時と、一万円もらったときの感情です。
1万円もらった方が嬉しいって感じたわけです。

極論すれば、僕らは、様々な情報が入力されて比較して行動を決定する比較回路なんです。
比較するには、比較可能な共通のデータに変換する必要がありますよね。
そのデータが感情です。
千円より一万円の方が嬉しいって感情を比較して行動を決定するんです。
電子回路が電圧をデータとして感じて計算するように、意識は、感情をデータとして感じて、こっちがいいって思うわけです。
こう説明すると、僕らは、回路の中にいるって感覚になるでしょ。
電圧によって動作する回路みたいに、様々な感情を感じて行動を決定する制御回路が意識です。
それが僕らの意識です。

意識が行う情報処理は比較だけじゃありません。
「何の経路」で千円札とか一万円札と分析されて意識回路に入力されます。
それを受けて、意識は、千円札がある、一万円札があるって思うわけです。
これが「見る」という情報処理です。

最初にも言いましたけど、ぼくがやろうとしているのは、意識をたった一つの原理で説明することです。
人間の意識は、実に様々なことをします。
考えたり、人としゃべったりします。
時には、自分は何のために生きているんだろうって悩んだりします。

それでは、これらを、生物の根本原理で説明します。
生物の根本的な機能は、生きることでしたよね。
生きるのは、この体です。
この体を情報として扱うとすれば、「自分」というデータになります。
生物の目的は、自分を生かすこと、自分が強くなることです。

ここで、もう一つ重要なキーワードが出てきました。
それは「目的」です。
意識は、何らかの目的に向かって行動します。
これが意欲です。
意欲とは、自分が何らかの目的に向かって行動しているという、自分と行動との関係性です。

こんな話があります。
ソ連の強制収容所では、囚人に一日穴を掘らせて、翌日、それを埋めるといった意味のない作業が命令されたそうです。
そして、それを繰り返すと、やがて精神が崩壊したそうです。
人は目的、または意味のあることならできるけど、目的が見いだせないと意欲がなくなって、下手すると精神が崩壊します。

「穴を掘る」という作業ができるのは、それが、自分に与えられた仕事だからです。
たとえ、それが自分のためにならなくても、社会のため、誰かのためになると思えれば行動できるわけです。
それが、全く意味の作業とわかると、精神がおかしくなります。
同じ命令をロボットにしても、ロボットがおかしくなることはありません。
じゃぁ、ロボットと人間の違いは何でしょう?
それは、自分があるか無いかです。
自分とは、生物にとって最も重要なデータです。
あらゆる行動は自分というデータを中心に考えられます。
その自分というデータに関係することが意味のあることです。

じゃぁ、「意味」とは何でしょう。
それは、自分のため、または誰かのためになることです。
社会は人間でできています。
人間とは、意識をもった生物です。
意識は、感情を感じて、行動を決定する情報処理装置です。
最も基本的な感情は、自分が得するか損するかです。
それだけでなく、相手とか、社会が得するか、損するかもあります。
こういった感情を受け取って、行動を決定するわけです。
「その行動はどういう意味があるのか」
常にこれを考える情報処理装置が意識です。
だから、自分の行動に意味がないとわかると、意欲がなくなったり、ひどいときは精神が崩壊するわけです。

そろそろまとめに入ります。
意識とは何か。
それは、生物の根本原理に沿って行動を決定する情報処理装置です。
生物の根本原理とは、強くなって生き抜くことです。
そのために最低限必要なのが、生きて死ぬ自分というデータです。
そして、行動決定の指標が感情です。
生きること、強くなること、社会的に評価されたとき感じるのがプラス感情です。
だから、勝負に勝つと嬉しいし、ほめられると嬉しいわけです。
死につながること、弱くなること、社会的に評価されないことがマイナス感情です。
だから、高いところや病気、お化けは怖くて、受験や就職で失敗すると悲しいわけです。

重要なのは、僕らは、情報処理装置の内側にいるという視点です。
嬉しいとか悔しいとか感情を感じて、それを比較して行動を決定する情報処理装置。
僕ら自身が、制御回路だという視点です。
意識って、もっと壮大でロマンがあるものだと思っている人にとってはがっかりするかもしれませんけど、これが結論です。

僕らは、一種の情報処理装置です。
認めたくないかもしれませんけど、これで意識が感じるあらゆる現象が説明つきます。
感情や自分といった感覚があるのは、生物の目的にそった情報処理に不可欠なデータだからです。
それから、世界があると感じること、「見る」という経験、これは「何の経路」で説明できます。
「何」と分析したら、それに名前を付けることもできます。
名前を付けて、認識した世界を表現したものが言葉です。
これで言語も説明できました。
そして、意識の情報処理は、意味を探すことです。
意味とは、自分が行動する目的です。
だから、「自分は何のために生きているんだろう」と悩むわけです。
僕らの意識が感じること、すべて、説明できましたよね。

これが情報処理装置としての意識です。
ということは、これはコンピュータで実現できます。
僕らは、これで意識をもったAIを作ろうとしています。

ただ、勝負はそのあとです。
勝負って、僕のことじゃないですよ。
人類にのっての勝負ってことです。
どういうことかっていうと、人間の意識って、この程度のプログラムなのかってことです。

よく、AIが意識を持ったら、人類を滅ぼすんじゃないかって心配する人がいます。
でも、本当の脅威はそこじゃないんですよ。
おそらく、AIは人間の知能を超えることは間違いないです。
仕事も研究も、あらゆる面でAIが上回ります。
それって、人間には価値がないってことですよね。

でも、僕は、そうじゃない信じたいですよ。
人間には、プログラムでは実現できない、何かがあると思うんですよ。
それは、もしかしたら魂というのかもしれません。
それを解明するためにも、まずは、コンピュータでできる意識を作る必要があるんです。


はい、今回はここまでです。
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それから、よかったらこちらの本も読んでください。
それじゃぁ、次回も、おっ楽しみに!