第596回 人は、なぜ、世界が存在すると思うのか


ロボマインド・プロジェクト、第596弾!
こんにちは、ロボマインドの田方です。

8月になってから、YouTubeの更新を毎週火曜の週一回としました。
木曜は、過去の動画を第一回から順に再配信することにしました。
ただ、これは、ロボマインド・プロジェクトが後退しているわけじゃありません。
むしろその逆で、次のステージ、いや、最終ステージに来たからです。

YouTubeを始めたのは、強制的に心の仕組みを考える時間を確保するためでした。
5年以上、YouTubeを続けることで、ほぼ、その目的が達成できました。
つまり、マインド・エンジンの設計図は、ほぼ完成したというわけです。
実は、今、マインド・エンジンを作り直しているんですけど、そのことについては、おいおい説明していきます。

あらためて動画を第一回から見直してみると、思った以上にアイデアの根幹は変わっていないんですよ。
変わったのは解像度が上がったことと、全体の整合性というか、すべてがつながってたことです。
過去動画をみると、同じようなテーマを何度も取り上げてます。
そのときは、特に何も考えていなかったのですけど、今、見直すと全部つながっているんですよ。
つながっているというか、一つの理論で全てを説明できるんですよ。

たとえば、世界は存在するとかしないとかって、このチャンネルで何度も取り上げたテーマです。
それから、意識は何のために存在するのかってテーマも何度も取り上げました。
こういった大きなテーマって、答えも大きくなりがちなんですよ。
たとえば、ある人は、意識が存在するのは宇宙の真実を探求するためだとかっていう人もいます。
そうなんですかねぇ。

それから、AIとかロボットがどんどん人間に近づいてきましたよね。
すると、AIは世界をどう認識するかって議論があちこちでされています。
そんなとき、最近、ユクスキュルの名前をたまに聞くことがあります。

ユクスキュルはドイツの生物学者、哲学者です。
生物には固有の世界観をもっていて、そのことをユクスキュルは「環世界」と呼びます。

例として、ユクスキュルはマダニを取り上げます。
マダニって、人間とか動物の血を吸うでしょ。
でも、じつは、最初は木の枝にいて、動物が通りかかるのを待っているんです。
それも、何年も動かずにじっとしているんです。
動物が通りかかると、その匂いで動物が近づいてきたって気付きます。
マダニは目も悪くて、明るいか暗いぐらいしか見分けがつきません。
でも、それだけで、動物がちょうど真下に来たってことは分かるので、そのタイミングで動物に乗り移ります。
そして、動物の皮膚の体温を感じたら、そこが皮膚だとわかるので、そこから血を吸います。
これがマダニです。

どうです。
木の上で動かずに何年も待つとか、匂いと光を感じて飛び降りるとか。
人間が感じる世界と全く違う世界を生きているでしょ。
ユクスキュルは言います。
人間中心で世界を考えてはだめだと。
生物ごとに、全く異なる世界を感じていると。
それが環世界というわけです。

なるほどと思います。
ただ、僕はちょっと違和感を感じるんですよ。
どこに違和感を感じるかというと、マダニは、本当に、そんな風に世界を感じているのかという点です。
僕が思うに、ユクスキュル自身も、人間中心の視点でしか見れていないと思うんですよ。

どういうことかというと、ユクスキュルは、マダニが、どんなふうに世界を感じて、どんなふうに生きるかって想像しているでしょ。
どんな風な世界を感じてるかって想像してるって時点で、すでに、世界があることが前提になっているじゃないですか。

本当にマダニは世界があると思っているのかって言いたいんです。
つまりね、世界があると思うのも、人間中心の考えじゃないかってことです。
人間中心で考えるべきでないというなら、世界があると思うことから疑うべきなんですよ。

5年間YouTubeを続けてきてわかったことがあります。
それは、全てつながっていて、すべてを説明する理論があるってことです。
全てというのは、世界がなぜ存在するのかってことから、AIロボットの議論で、なぜユクスキュルを取り上げたのかまで全部です。
これらすべての行動を説明する理論があるということです。
これが今回のテーマです。
人はなぜ、世界が存在すると思うのか。
それでは、始めましょう!

まず最初に世界とは何かから考えましょう。
今、あなたは世界の中にいて、世界を見て、世界には色がありますよね。
もし、そう思っているのなら、そこから間違っています。
なぜなら、世界には色なんて存在しないからです。
世界にあるのは、いろんな周波数の光です。
色があるのは、脳の中です。
目の網膜の錐体細胞が三原色の光を検出しているから色を感じると考えている人がいますけど、それも間違いです。

別の感覚で別の感覚を感じることを共感覚と言います。
たとえば数字に色を感じる共感覚とかです。
あるところに、網膜の錐体細胞が生まれつき損傷していて、緑をみたことがない人がいました。
ただ、その人は数字の5に緑を感じる共感覚者でもありました。
すると、その人は緑色は見たことはないですけど、数字の5を見たとき、見たことの内緑を経験するんですよ。
こんな話を聞くと、色は現実世界になくて、色があるのは脳の中だってことがわかりますよね。

今度はコウモリで考えてみます。
コウモリは超音波を発して、その反射音で空間認識しています。
反射音は、物体の位置や方向だけでなくて、動きや材質までわかります。
つまり、反射の仕方で、固くてつるつるした物体か、モフモフした動物か区別できます。

目で見るか、音で聞くかの違いはありますけど、認識する者に共通するものがあります。
それは、三次元空間です。
これが世界です。
自分が、どんな世界にいるか正確に把握しようとしているわけです。
その手段として光を使うか、音を使うかの違いがあるだけで、どっちが正しいというわけじゃありません。
いや、世界そのものかという点から考えると、どっちも正しくありません。
物理的な現実世界は気体や液体、固体が三次元空間に配置されるわけです。
空間にはあらゆる波長の電磁波があって、気体分子もあらゆる波長で振動しています。
液体や固体もいろんな分子や電子でできています。
それらすべてを認識することが現実世界を正しく認識するということです。
でも、そんななこと不可能ですし、仮にできたとしても、情報が多すぎて何が何だか分からないです。
つまり、重要なのは現実世界を正確に把握することじゃなくて、必要な情報を適切に把握することです。
じゃぁ、必要な情報とは何でしょう?
それは、自分がどこにいて、どう動いたらいいのか決めるための情報です。

じゃぁ、何のために動くんでしょう?
それは、餌を捕まえたり、天敵から逃げるためです。
もっと言えば、生きるために行動するわけです。
生物の目的はできるだけ生きて、種を増やすことです。
それは、どんな原始的な生物でも、人間であっても同じです。

冒頭で、世界は何のために存在するのか、意識は何のために存在するのか、たった一つの理論で全て説明できると言いましたよね。
ここで答えを言います。
それは、生物の根本的な目的、「生きるため」です。

それでは、一つずつ解説していきます。
餌を捕まえたり、天敵から逃げるためにはどこに何があるか把握しないといけませんよね。
そのために空間認識が必要です。
物体の位置情報を得る手段として、光とか音を使うわけです。
さらにその物体が何かも知りたいわけです。
かといって、物体の分子構造とかまでわかりません。
使う手段によって分かるものが変わってきます。
光なら色がわかりますし、音なら、表面がつるつるしてるのかザラザラしてるのかです。
つまり、手段によってその生物が認識する世界が変わるわけです。
もっと言うと、脳内に光の波長を分解したものが予め用意されているわけです。
それが色です。
そして、光で世界を認識する生物は、色を使って世界を組み立てます。
音で世界を認識する生物は、表面の粗さで世界を組み立てます。
いずれにしても、目的はどう動いたらいいか決めるためです。
そのために、世界を認識するわけです。

同じ世界を生きていたとしても、生物は、それぞれ、全く別の世界を認識しています。
僕らが、今、見ているような世界を、他の生物も認識しているわけじゃありません。
人間中心の視点で世界を認識すべきでない。
ユクスキュルの言いたいことです。

でも、僕は冒頭で、ユクスキュル自身も人間中心の見方から逃れていないって指摘しました。
次は、このことについて解説します。

たとえばゴキブリについて考えてみます。
僕が子供の頃は、台所にごきぶりホイホイを仕掛けていました。

中に餌を置いて、その匂いにおびき寄せられたゴキブリが粘着シートで捕まるという仕掛けです。
子どもの頃、思っていたのは、なんでゴキブリはこんなのに引っかかるのかってことです。
だって、仲間が捕まって出れなくなっているの、外から見たらわかりますよね。
そんなの見たら、ここはいったらヤバイってわかるじゃないですか。
それなのに、なんで簡単に捕まるんでしょう。

それは、ゴキブリは単純なプログラムで動いているからです。
たとえば、餌の臭いがしたら、それに近づいて、その餌を食べるとか。
そして、そのプログラムは生まれる前から決まっていて、変更できないんです。
だから、簡単に捕まるんです。
これを避けるには、この世にごきぶりホイホイってものがあって、それに近づいちゃダメってプログラムを仕込んでおかなければいけません。
でも、生まれる前にそんなことわかりません。
じゃぁ、どうすればいいんでしょう?

それは、生まれた後にプログラムを変更するんです。
じゃぁ、それはどうやったらいいでしょう。
そのためには 、ごきぶりホイホイに入ったら、出れなくなるってことを理解できないといけませんよね。
つまり、AすればBとなるって因果関係です。
それがわかると、AすればBとなるなら、BとならないためにCをするってプログラムの変更ができます。

じゃぁ、これができるためには、最低限、何が必要でしょう。
それは、これはAだ、これはごきぶりホイホイだって世界を認識することです。
ここにきて、はじめて、世界の認識が出てきました。
つまり、何のために世界を認識するかというと、それは、行動を変更するためです。
逆に言えば、行動を変更できないゴキブリは、世界を認識していないといえるんです。

じゃぁ、世界を認識していないとすれば、ゴキブリはどんなふうに生きているんでしょう?
それは、餌の匂いを察知するとその方向に向かいます。
目もあるので、餌がある位置を目でも認識して、その方向に移動して、餌にたどり着いたら食べます。
注意してほしいのは、感覚器からの臭いや視覚情報と、移動とか食べるといった行動がひと固まりのプログラムとなっていることです。
そして重要なのは、そのプログラムの中に世界とかエサを認識する主体がないことです。
認識する主体というのが、意識のことです。
意識がなくて、センサー入力に反応して動いているだけです。

これでわかりましたよね。
ゴキブリには意識がないってことが。
そして、ユクスキュルはどこを勘違いしていたかです。
それは、どんな生物も世界があると認識していると思っていることです。
ここが、ユクスキュルが、まだ、人間中心主義から離れられないことです。

生物には、世界を認識するタイプと、認識しないタイプがいます。
いずれにも共通するのは、できるだけ長く生きるために行動することです。
それが、どんな生物でも持っている本能です。

次は行動について考えてみます。
まずいえるのは、生物が行動する目的は、生きるためです。
お腹がすいたら食料を食べるとか、眠くなったら眠るとか、すべて生きるためです。
これは原始的な生物から人間まで、あらゆる生物に共通します。

じゃぁ、その行動を駆り立てるものは何でしょう。
それは、感情や感覚です。
それは体の内側から湧き出る一種の情報です。
だから、お腹がすいたり、眠いと感じるわけです。
ただ、感じるのは意識がある生物です。
意識がないタイプの生物は感じる主体がないので、内側からの情報で直接体を動かして自動で動きます。

いずれにしても、内側からの情報というのも、生きるためといった生物の本能に根差したものとはいえます。
さて、社会的動物になると、生きるために、その社会で強くならないといけませんよね。
弱いと、下手すると殺されたり、殺されなくても、パートナーに選ばれなくて子孫を残せません。
ここでも、本能に根差して行動しているわけです。

だから、社会的動物は、その社会の中で強くなろうとしますし、自分が強いと見せかけようとします。
それは人間でも同じです。
人間社会だと、体力だけでなくて、お金とか頭の良さ、家柄とか社会的地位がその人の強さです。
そして、お互いに自分の地位や強さを競って、自分の地位を下げられたり、下に見られたりすると起こったり、腹が立ったりします。
そんなの、なんか人間として小さいなぁとは思いますけど、生物であるかぎり、そんな感情が湧いてくるのは仕方ないです。

だから、そうでない人を見ると尊敬します。
僕がリスペクトするある文化人がいて、その人が、昔、ツイッターでこう言っていました。
私の怒りは多くは義憤であり、私憤はあまりない。
「世の中はこうあるべき」なのに「そうなっていない」ことが爆発の大元であって、自分自身がバカにされたり、ないがしろにされという場合は、むしろ悲しくなってしまう。

それを読んで、いやぁ、さすがだなぁ、僕もそうなりたいって心から思いました。
その方は、ツイッターでよく炎上してたんですけど、たしかに、すべて義憤からの怒りでした。
それからしばらくして、また、炎上していたんですよ。
それから、その方は、かなり以前、やらかしたことがあって、その時も、そのことを掘り返されていたみたいなんです。
そしたら、「あれは法的に解決したんだ。お前らにごちゃごちゃ言われる筋合いはない!」っツイッターで反論していました。
それ見て、「えーっ、思いっきり自分のことで怒っているやん」って悲しくなりました。

何が言いたいかというと、そんな立派な人でも、自分のことを強く見せたいって生物の本能からは逃れられないってことです。
これがすべてがつながっているということです。
そして、すべての行動を説明するたった一つの理論です。

それから、AI研究者がユクスキュルを取り上げるって話もしましたよね。
じゃぁ、なぜ、ユクスキュルを取り上げたんでしょう。
これも、わかりますよね。

AI研究者は、強化学習のアルゴリズムは知っていてもユクスキュルなんて知りません。
ユクスキュルなんて名前も変わっているし、こんなのを取り上げたら、ちょっと物知りだって思われるじゃないですか。
その社会で自分を強く見せようとする生物の本能です。

ねぇ、たった一つの理論で、すべて説明できたでしょ。
なぜ、意識が存在するのか、人はなぜ、世界が存在すると思うのか、人はなぜ、バカにされたら怒るのか、なぜ、AIの議論でユクスキュルをとりあげるのか。
すべて一つの理論で説明できました。

はい、今回はここまでです。
この動画がおもしろかったらチャンネル登録、高評価お願いしますね。
それから、よかったらこちらの本も読んでください。
それじゃぁ、次回も、おっ楽しみに!