ロボマインド・プロジェクト、第60弾
こんにちは、ロボマインドの田方です。
さて、意識の進化って視点から見てみると、いろんな物が見えてきました。
たとえば、第57回「誰も指摘しない自由意志の本当の意味」では、自由意志は、進化の過程で獲得したものだって話をしました。
今回も、複雑すぎて、扱いに困っていたあれが、意識の進化から見ると、きれいに整理できるって話をしようと思います。
複雑すぎて、扱いに困ってたあれって何かというと、それは、言語です。
まずは、言語って、今まで、どんな風に扱ってきたかを見てみましょう。
たとえば、比較言語学ってのがあります。
比較言語学では、ほかの言語と比較して、共通性を見つけようとする学問です。
インド・ヨーロッパ語族とか音韻論とかって出てくるんですけど。
これが、ホント、複雑すぎて、何が何だかわからないんです。
それから、ノーム・チョムスキーって有名な言語学者がいます。
彼は、普遍文法とか言って、人間が共通に持つ、普遍的な文法を見つけようとしていました。
ちょっと勉強すれば分かるんですけど、普遍文法って、ホント、複雑なんですよ。
僕が思うに、言語って、立体パズルみたいなもんだと思うんですよ。
それを、いろんな方向で切って、その断面の形を分析するのが言語学みたいなんです。
こことここの形がよく似てるとかって。
僕のやろうとしてるのは、それとは、ちょっとやり方が違うんです。
たぶん、その立体パズルって、何万年って時間をかけて、順番に組み立てられたと思うんですよ。
それを一旦、バラバラにして、一つ一つ分析して、組み立てられた順に組み立てれば、もっとスッキリすんんじゃないかと思っています。
たとえば、過去形って文法があります。
言語学が扱うとすれば、「~だった」「~でした」は過去形とかってなると思うんです。
僕は、そういった単語とか文法の分析は最後だって考えています。
その前に、過去形を理解するには、時間って概念を持ってないと理解できないって考えます。
時間の概念を理解できる心のモデルって、どういうものかって考えていくわけです。
それから、たとえば、尊敬語って文法もありますよね。
目上の人に使う言葉です。
尊敬語が理解できるには、人間関係の上下関係が理解できないと理解できないですよね。
上下関係って、どんなモデルになるのかなって考えるわけです。
時間とか、上下関係とか、これが立体パズルの1ピースってわけです。
そして、その立体パズルを、1ピースずつ、プログラムで作れば心が組みあがるわけです。
そして、それをやろうとしてるのが、ロボマインド・プロジェクトってわけです。
それでは、最初の1ピースを考えてみます。
最も簡単な言語についてです。
ミツバチの8の字ダンスって聞いたこと、ありますか?
ミツバチって、蜜のありかを見つけると、巣に戻って、その位置を仲間に教えるそうです。
その方法が、巣の上を8の字で歩きまわって教えるので、ミツバチの8の字ダンスって言われています。
8の字を描いて歩くんですけど、その向きとか、回数で方向とか距離を教えるわけです。
蜜のありかを、ダンスって記号で表現したわけですから、
ミツバチの8の字ダンスって、最も原始的な言葉と言えるかもしれません。
さて、このミツバチの言語を、意識の進化から読み解いてみましょう。
ミツバチのダンスって、生まれつき持ってる機能です。
教えられたわけじゃないんです。
世界中のミツバチが、同じダンスをするわけです。
これ、言語とちょっと違いますよね。
犬のことを「ドッグ」っていったり、「イヌ」っていったりするのとは違います。
ミツバチのダンスって、どちらかというと、カエルが舌を伸ばしてハエをとるのと同じだと思うんです。
遺伝子に書き込まれていて、後から変更もできなくて、死ぬまで同じダンスを踊ります。
蜜を見つけたら、こう行動するって決められたプログラムが作動してるだけなんですよ。
人間でいうと、無意識の反射反応と同じです。
意識がしてる行動じゃないんです。
意識の第一の鍵は何だったか、覚えてます?
そう、クオリアです。
現実の犬に対応するクオリアがあって、それに対して、「ドッグ」って名付けたり、「イヌ」って名付けたりするわけです。
この仕組みができて、初めて、言葉ってものが生まれるわけです。
それじゃぁ、この意識の視点からミツバチのダンスをみてみましょう。
ダンスの仕方って、後から変更できません。
これって、クオリアじゃないですよね。
だから、意識言語学からみると、ミツバチのダンスは言語にならないわけです。
あっ、意識言語学ってのは、僕が、さっき思いつた言葉なんで、知らなくても大丈夫ですよ。
それでは、犬が「マテ」とか「お手」とかって覚えるのはどうでしょう?
これは、後から教えられるものです。
英語か日本語かによって、言い方が違うので、これは言語って言っていいと思うんです。
「お手」って行動のクオリアがあって、それと、「お手」って言う言葉を結び付けたと言えます。
クオリアを持つ哺乳類なら、最低限の言語は話せそうです。
それでは、知能が高いと言われるチンパンジーはどうでしょう?
チンパンジーに手話やPCを使って言葉を覚えさせる研究があります。
すると、千以上もの単語を覚えれるようになったそうです。
ちゃんと、会話も成立したようなんです。
バナナが食べたいとか、ボールで遊びたいとか話せるようになったようなんです。
でも、そこまでだったようです。
人間のような、複雑な会話はできなかったようです。
たとえばバナナを貰ったとしましょう。
「今日も、また、あのおばちゃん、バナナ持ってきよったわ。
でも、もう、バナナ、飽きてきたんよなぁ。
でも、まぁ、そう言うわけにもいかんし、ウッキー言うて、喜んだふりしてバナナ食べといたわ。
そしたら、『明日も来るわね!』って嬉しそうに手をふってたなぁ。
ほんま、こういうの、難しいよなぁ」
そんな、独り言、言ってたとしたら、どうでしょう?
ここまできたら、十分ですよねぇ。
もぅ、人間の心と同じやん、ってなりますよね。
でも、そうはならなかったんです。
単語を何千個覚えても、こんな風にしゃべれるようにはならなかったんです。
一体、何が足らないんでしょう。
さっきのチンパンジー、バナナをくれたおばちゃんに気を遣ってましたよねぇ。
これができると、かなり、人間の心に近いと言えそうです。
どうやったら、それができるんでしょう?
それが、意識の第二の鍵です。
覚えてますか、第二の鍵。
客観的に自分を見るって話です。
ここを詳しく説明しますね。
人間も、他の動物も感情は持ってます。
なにか、美味しいものをもらうと嬉しいとかです。
嬉しいは、感情のクオリアです。
何か、自分にとってプラスになる出来事が起こると、嬉しいの感情が発生するわけです。
感情を発生するのは、自分です。
でも、感情を持ってるのは、自分だけじゃありません。
自分以外の人も、感情を持っています。
でも、それって、どうすればわかるでしょう?
他の人も、自分と同じだと理解しないといけません。
相手も、自分と同じ心を持ってるって理解できないと分かりません。
逆に言えば、自分を客観的に観察できる必要があるわけです。
それがわかれば、相手も、同じ心があるって理解できるわけです。
「こんなこと言うたら、相手はどう思うかなぁ」
「毎日、毎日、バナナばっかりで、もう飽きたわ」
「あぁ、そんなん、絶対言われへんわ!」
ってなるわけです。
これが、人間の心です。
複雑な人間の感情は、こうやって生まれるんです。
第17回「AIに必要なのは羞恥心だ!」で、人間にとって一番重要なのは、恥って感情だって話をしました。
これこそ、相手が自分のことをどう思ってるかって理解できないと生まれない感情です。
「あいつは、こんなこともできないんだ」って相手をバカにする感情を、自分は持ってるわけです。
それがあるから、逆に、他の誰かが、自分に対して、「お前は、そんなこともできないのか」って思われてないか恐れるわけです。
それが、恥です。
ここまでの感情を持つAIを作ろうとしているのがロボマインド・プロジェクトです。
今、意識の第二の鍵として、客観的に自分を見るところまで手に入れました。
次は、相手も自分と同じような心のモデルをもっていること。
これに気づけるかどうかです。
相手も自分と同じ心のモデルをもっているとは、どういうことでしょう?
次回は、その話をしたいと思います。
それでは、次回も、お楽しみに!