ロボマインド・プロジェクト、第607弾!
こんにちは、ロボマインドの田方です。
今回も、スタニスラス・ドゥアンヌの『脳はこうして学ぶ』の続きを読んでいきます。
今回から、第三部「学習」に入ります。
第三部、最初のテーマは注意です。
人の持つ潜在能力は集中力から引き出されます。
まずは、あなたがどれだけ集中力を持っているかテストします。
https://www.youtube.com/watch?v=xNSgmm9FX2s
0:04~0:24
白チームが、何回、パスをしたか数えてください。(セリフだけ僕の音声。「Go」から動画の音声)
0:25~
正解は「13回」です。
ところで、ムーンウォークするクマは見えましたか?(セリフは僕の声)
0:41~
右からクマがやってきて、ど真ん中で踊って、ムーンウォークで去っていきますよ。
もしかして、気付かなかったですか?
もちろん、最初と同じ動画です。
この実験、有名なので知っている人もいたと思います。
僕も知っていましたし、以前、紹介したことがあります。
ただ、今回の動画は以前のとは別バージョンで、パスも早くて、集中しないとちゃんと数えられません。
そうしたら、知ってた僕も、まんまと引っかかってしまいました。
なぜ、こんなことが起こったんでしょう?
人間の脳は、進化によって抽象概念を理解できるようになりました。
動物が理解できるのは、目に見える具体だけです。
抽象概念とは、たとえば数の概念だったり、時間、言語とか、目で見えないし、触ることもできません。
さっき数えたのは、バスケットのパスの回数、つまり、数です。
意識は、数えることに集中することで、現実世界が見えなくなったんです。
つまり、抽象概念を理解できるようになったことで、本当の世界が見えなくなったんです。
これが今回のテーマです。
注意を向けると世界は消える
それでは、始めましょう!
今回の話、本当の世界とは何?ってことです。
とういか、本当の世界なんて存在しないんです。
数えることに注目すると現実世界が見えなくなりましたよね。
現実世界を認識するのも、数を数えるのも意識です。
意識は一つの世界しか認識できません。
だから、数を数えることに集中しているとき、現実世界が見えなくなるんです。
現実世界は具体的な世界です。
それと同じで、抽象世界というのもあります。
抽象世界というのは、脳の中にある抽象概念を使って認識する世界です。
それは、現実世界の一部を切り出して、抽象世界に当てはめて認識する世界です。
次は、世界についてもう少し深掘りしていきます。
世界には、世界を構成する要素と、要素を操作するメソッドがあります。
数世界だと、1とか2といった数が要素で、1,2,3と数えることがメソッドです。
現実世界の要素は、物体で、物体の動きがメソッドです。
世界を理解するとは、意識が、その世界を構成する要素やメソッドを操作することです。
バスケットのパスの数を数えるときで考えます。
まず、現実世界からバスケットのパスを切り出して、それを数世界の数という要素に当てはめます。
そして、数世界の数えるというメソッドをつかってパスの数を数えるわけです。
これが数世界の理解です。
一方、現実世界を認識するとは、ゴリラとか、ゴリラが踊るとかを認識することです。
意識は同時に一つの世界しか認識できません。
だから、バスケットボールのパスの数を数えているとき、ゴリラがムーンウォークしても見えないんです。
見えないということは、存在しないのと同じです。
現実世界が見えなくなった根本原因は、抽象世界というもう一つの世界を認識するようになったからです。
抽象概念は生まれつき持っているものですけど、抽象概念を理解できるようになるには、生まれた後の学習が必要です。
その話は前回、第606回、前々回第605回で語っていますので、興味ある方はそちらをご覧ください。
抽象概念を理解できるのは人間だけですけど、学習は人間以外の動物もします。
学習とは、言ってみれば、ニューラルネットワークの結びつきを強化することです。
怖いとか、驚いたりとか、強い感情が発生したとき、その時の状況が記憶に残りますよね。
これも一種の学習です。
感情は神経伝達物質を発生で生じます。
ラットに9kHzの音を聞かせると同時にアセチルコリン回路を電気刺激した実験があります。
アセチルコリンは覚醒に関する神経伝達物質です。
9kHzってこんな音です。
https://www.youtube.com/watch?v=rIbBhbmWrO4
(ちょっとだけ)
さて、その結果がこれです。
これは、ラットがどの周波数を聞いた時、脳の聴覚野のどこが反応するかを示した野マップです。
左が通常のラットで、青紫の色が9kHzに反応する領域です。
右は、実験後のラットの聴覚野です。
なんと、聴覚野のほぼ全域が9kHzに反応するようになったんです。
実際、このラットは、9kHzの音が気になるらしくて、9kHzの音にすぐに反応するようになりました。
ただ、その分、他の音に反応しなくなったんです。
つまり、このラットの世界から、9kHz以外の音が消えたわけです。
見たり聞いたり触ったりできるのが現実世界です。
それはたった一つしかありません。
でも、同じ世界を経験しているはずなのに、脳によっては見えなかったり聞こえなかったりするわけです。
つまり、世界というのは、脳の外にあるんじゃなくて、脳の中にあると考えた方がしっくりきます。
それが、僕が提唱する意識の仮想世界仮説です。
人は、目で見た世界を頭の中に仮想世界として構築します。
意識は、この仮想世界を介して現実世界を認識します。
これが、意識の仮想世界仮説です。
何のために仮想世界を作るかというと、意識が認識しやすいようにです。
仮想世界を作るのは無意識さんです。
無意識さんは、意識さんに現実世界を正しく認識させるという重要な使命があります。
ただ、意識さんは同時に一つのことしか認識できません。
ここに、大きな問題が起こりました。
それは、現実世界では同時に複数のことが起こっても、意識は、それを同時に認識できないということです。
そこで、無意識さんは仮想世界を作るとき、必要でないものを作らないことにしました。
つまり、意識さんが数を数えているときは、踊るクマは作らないんです。
これが、無意識さんが編み出した解決方法です。
でも、二つの重要な出来事が同時に起こる場合もありますよね。
そこで、こんな二つの課題を同時に出す実験をしてみました。
第一の課題は、高い音が聞こえたら、左手でキーボードの何かのキーを押す。
第二の課題は、文字Yを見たら、右手で別のキーを押す、です。
すると、第一の課題は通常の速さで実行されました。
でも、第二の課題は、かなり遅れて実行されました。
脳は第一の課題を処理している分だけ、第二の課題が遅れたんでしょう。
脳は同時に一つの出来事しか対処できないからです。
ここまではわかりますよね。
興味深いのはこの後です。
遅れた時間は、ゆうに数百秒ありました。
意識が気付くのに十分な長さです。
ところが、本人に聞いてみると、「いや、遅れてないですよ」って言うんです。
「どちらも、すぐに実行しましたよ」って言うんです。
よく聞くと、どうも、第一の課題が終わった後に、タイミングよく、第二の課題が現れたって言うんです。
同時に出たはずなのに、どういうことでしょう。
これ、無意識さんの仕業です。
無意識さんの使命は、意識さんが仕事しやすいような世界を作ることです。
だから、パスを数えるときは、不要なクマを削除します。
今回、意識さんには、二つの課題が同時に与えられました。
でも、同時にはできないので、無意識さんは、まず、第一の課題をだして、それが終わってから第二の課題を出したんです。
だから、意識さんは、第一の課題を処理し終わった後、第二の課題が来たと感じたんです。
まさか、第一の課題と第二の課題が同時に出てたとは思ってもいません。
なぜなら、意識さんが認識する世界が、実際にそうなっていたからです。
これ、コンピュータ・プログラムの世界ではキューと言われるテクニックと同じです。
キューとは行列のことです。
レジでは列を作って並びますよね。
なぜなら、レジのお姉さんは一人ずつしか処理できないからです。
ここでいうレジのお姉さんが意識です。
レジのお姉さんにとっては、一列に並んでるお客さんしか見えません。
これが意識が感じる現実です。
でも、実際は、複数のお客さんが同時にレジに来て、並ばないといけないから仕方なく並んでいるだけです。
お客さんが同時に来るのが本当の世界です。
こんな風に、意識さんが仕事しやすいように脳内では現実を歪めているんです。
だから、本当の現実がどうなっているかなんか、意識さんには絶対にわからないんです。
最後に、学習についての実験を紹介します。
取り上げるのは言語の学習です。
それも、架空の言語です。
その言語は、こんな文字でできています。
FOGという単語は、右の図のように表現されます。
じつは、この単語、左のように、FとOとGの文字に分解できます。
まず、このような単語を16個覚えてもらいます。
その時、二つのグループに分けて、二つの学習方法で教えます。
一つのグループには、単語は文字に分解されることを教えて、文字に分解して覚えるように指示します。
もう一つのグループには、単語が文字に分解できることをあえて教えず、単語全体の形で覚えるように指示します。
そして最後にテストします。
その時、脳のどの部分が活性化したかも調べます。
最初のテストはFOGかBEDかを見極められるかです。
どちらの単語も覚えた16個の単語です。
その結果がこれです。
左は、単語を文字に分解して覚えたグループ、右は単語を形で覚えたグループです。
文字に分解して覚えたグループだと、左脳を使って覚えたことがわかりますよね。
単語の形で覚え他グループは、右脳を使っていることがわかります。
そして、結果は形で覚え他グループの方が成功率が高かったです。
ただし、これは既に覚えた単語に対してです。
次は、未知の単語を見せて、どちらがBINで、どちらがGAPかを答えさせるテストです。
これがその結果です。
単語に分解して覚えたグループの成功率が79%だったのに対し、形で覚え他グループは58%の成功率です。
これは、偶然でもありうる確率です。
これはどういうことでしょう?
文字に分解して覚えたグループは、単語と文字の関係に注目ました。
すると、教えなくても、新たな文字を発見したりできるようになりました。
だから、見たことない単語を見ても、文字からわかるんです。
ここ、もう少し深掘りしてみます。
単語を文字に分解するというのは言語処理です。
言語処理は左脳が行います。
一方、ものの形を処理するのは右脳です。
だから、単語を形で覚えたグループは右脳で覚えたんです。
ここで注目してほしいのは、これは言語だということはどちらも知っていたということです。
言語とわかっていても、注目する場所によって、右脳で処理していたんです。
そして、右脳で処理したグループは、新しい単語にうまく対処できませんでした。
考えたら当たり前です。
脳の間違った場所を使っているからです。
言語を処理するには、左脳を使わないといけません。
つまり、正しく学習するには、何に注目するかが重要なんです。
さらに考えてみます。
世界には現実世界とか抽象世界がありましたよね。
世界は、要素と要素を操作するメソッドでできています。
つまり、世界というのは、脳の中にある一種のプログラム、または処理回路です。
現実世界という世界は、脳の外にある見た目だけの世界です。
現実世界には、意味はありません。
意味があるのは、抽象世界です。
数の世界なら、どちらが大きいとかどちらが小さいとかっていうのが意味です。
人間社会なら、どちらが偉いとか、偉くないが意味です。
抽象世界は、数とか言語、形や音楽といった様々な世界があります。
そして、抽象世界ごとに要素やメソッドが異なります。
今回、第一のグループには、単語を文字に分解して覚えさせました。
つまり、第一のグループは、言語世界のメソッドを正しくつかいました。
一方、第二のグループは、言語といいながら、形世界のメソッドを使っていました。
すると、第二のグループは、どんなに単語を見せても、形としてしか理解できません。
つまり、同じものを見ても、正しく理解できないということです。
ここで、正しいについて考えます。
ここでいう正しいとは、正しい世界、または正しい脳の処理回路をつかって処理したことです。
つまり、正しさは脳の中にあるんです。
だから、世界を正しく理解するとは、現実世界のデータを正しい処理回路に渡すと言えそうです。
間違った処理回路に渡すと、いつまでたっても正しく理解できません。
外にあるのは、見た目の世界です。
それが現実世界、または具体世界です。
脳内にあるのは抽象世界、または処理回路です。
現実世界にあるものをデータに変換して、脳内の処理回路で処理します。
このとき、正しい処理回路で処理して、初めて現実世界を正しく理解できるんです。
そう考えると、本当の世界は脳の中にあるとした方がしっくりきます。
脳の外にあるのは、かりそめの世界です。
脳内の処理回路で処理されて、はじめて意味のある本物の世界となるんです。
それを感じるのが僕らの意識です。
だから、僕らは、意味のある世界に生きているんです。
はい、今回はここまでです。
この動画が面白方ったらチャンネル登録、高評価お願いしますね。
それから、意識の仮想世界仮説にかんしては、こちらの本を読んでください。
それじゃぁ、次回も、おっ楽しみに!
第607回 注意を向けると世界は消える