第608回 好奇心を脳と進化から読み解く


ロボマインド・プロジェクト、第608弾!
こんにちは、ロボマインドの田方です。

2024年の大統領選で、トランプ大統領は、自分が大統領になったら、ジョン・F・ケネディ暗殺関連の機密文書を全て公開すると公約を掲げていました。
そして、再選後の2025年1月、JFK暗殺関連の全記録を公開せよとの大統領令を発令しました。
その結果、7万ページ以上の記録が公開されました。
その中には、暗殺当日、読み上げる予定の原稿もあって、そこには驚くべきことが書かれていました。
それは、エリア51に関することです。
UFOが墜落して宇宙人が運びこまれたとされるあのロズウェル事件についてです。
どうやら、そのことを公開されると困る一部の人達によって、ケネディ大統領が暗殺されたようです。

「エー、ウソ!」と思ったでしょう。
または、「やっぱり、宇宙人を隠していたんだ」と思った人もいるかもしれません。
そう思った瞬間、ドーパミンが出ているんです。
これが好奇心の正体です。

この好奇心こそ、人類をここまで進化させました。
これが今回のテーマです。
好奇心を脳と進化から読み解く
それでは、始めましょう!

今回も、スタニスラス・ドゥアンヌの『脳はこうして学ぶ』から取り上げます。

好奇心は一種の感情です。
感情を脳から定義すると、何らかの神経伝達物質がでている状態です。
好奇心を感じたとき出るのがドーパミンです。

ドーパミンはやる気や快楽にかかわる報酬系の神経伝達物質です。
報酬系は動機付けとも関連して、「欲しい」とか、「~したい」といった思いを駆り立てます。

好奇心は、感情の中でおちょっと特殊です。
感情の源は本能です。
本能の目的はできるだけ長生きして、種を残すことです。
だから、危険を避けて安全を求める行動を駆り立てます。
ここまでは分かりますよね。

好奇心は人間だけでなく動物も持ちます。
たとえば、犬とか新しい場所に連れて行くとクンクンあちこち嗅ぎまわります。
野生の動物も、洞窟を見つけたら、中にはいってクンクン嗅ぎまったりします。

でも、何がいるかわからない洞窟なんて危険です。
もし、クマとかいたら殺されてしまいます。
そんな危険な行為を駆り立てるなんて、本能に逆らう行為じゃないでしょうか。
でも、そうじゃないんですよ。

もし、その洞窟が安全とわかれば、新しい棲みかになるじゃないですか。
同じ場所にずっといたら、食べ物もなくなって生きていけません。
生き延びるには、新しい場所を開拓しないといけません。
動物を、新しい場所に向かわせる原動力となる感情が好奇心です。
そう考えると、好奇心も本能に基づいた感情と言えます。

その好奇心を生み出すのがドーパミンです。
ドーパミンは、「~が欲しい」と目標に駆り立てます。
ここで興味深いのは、ドーパミンは、目標を達成したときにピークになるんじゃなくて、その直前がピークになるんです。
報酬系がかかわる感情で有名なのはギャンブルです。
たとえば、ルーレットを考えてみます。
ルーレットで一番興奮するのは、ルーレットが止まった瞬間じゃなくて、止まる直前です。
あと少しで結果がわかるというとき、ドーパミンが大量に放出されます。

これ、考えたら不思議です。
だって、成功したという結果を手に入れたとき、最大の報酬が得られるように設計した方がいいですよね。
その直前じゃ、成功か失敗かわからないですし、そんな状態に最大の報酬を与えても、うまくいくかどうかわからないじゃないですか。
なぜ、直前がピークとなるように進化したんでしょう。

これはギャンブルで考えるから勘違いするんです。
ギャンブルなんて、せいぜい数千年の歴史しかないので、進化とは関係ありません。
ギャンブルは、進化で獲得した機能を利用した文化です。
文化は遺伝子に残りません。
遺伝子に残るには、何万年もかかります。

じゃぁ、好奇心を生み出した生物の歴史とはどういう状況でしょう。
たとえば、マンモスを狩るときを考えて見ましょう。

大勢で巨大なマンモスを囲んで、槍を投げてマンモスを倒します。
このとき、一番危険なのが、倒す直前ですよね。
マンモスも必死で暴れますし、それを倒すにはできるだけ近づいて槍を投げないといけません。
怖いから逃げ出したくなるのも本能による感情です。
その気持ちを押さえてマンモスを倒さないと、生き延びることはできません。
その時必要なのがドーパミンです。
怖いという感情より、「ウォー」って雄叫びを上げて、立ち向かわせる感情です。
つまり、ドーパミンの役割は、あと一歩で目標達成というとき、最後までやり切らせることなんです。
だから、目標達成の直前がピークとなるんです。

さて、動物でもある好奇心ですけど、人間の好奇心は何が違うのでしょう。
動物の好奇心の目的は、棲息場所の拡大でしたよね。
言い換えると、世界を知りたいという欲求です。
どこが安全で、どこが危険かわかれば、生き延びる確率が高くなります。

それじゃぁ、人間特有の好奇心とは何でしょう。
一言で言えば、知的好奇心です。
いろんなことを知りたいという欲求です。

子どもは、2~5歳ぐらいになると、「なぜなぜ期」が始まります。
「なぜ?」「どうして?」となんでも知りたくなる時期です。
これも一種の知的好奇心です。

じゃぁ、子どもたちは何を知りたがっているのでしょう?
それは、この世の仕組みです。

生まれたばかりの赤ちゃんは、はいはいしたり、積み木を置いたり、落としたりして遊びます。
これも世界を知ろうとする好奇心です。
ただ、これは現実世界を知ろうとする好奇心なので、動物でも持っている好奇心です。

それに対してなぜなぜ期で知りたいのは、「なんで、雨がふるの?」とか「なんで物は落ちるの」とかです。
それを知りたいと思うのは、物事が起こるには、全て、何らかの原因があると思っているからです。
原因があるなら、それを知りたいんです。
これも、世界を知りたいという欲求の一つです。

動物との違いは、動物が知りたいのは、目で見える現実世界です。
人間の知的好奇心が知りたいのは原因結果です。
原因結果は目に見えません。
でも、存在するのは確かです。
それがあるのは、現実世界というより、頭の中の世界です。
僕は、これを仮想世界と呼んでいます。

人は、目で見た現実世界を頭の中に仮想世界として構築します。
意識は、この仮想世界を介して現実世界を認識します。
これは、僕が提唱する意識の仮想世界仮説です。

そして、原因結果というのは、この頭の中の仮想世界に組み込まれています。
意識が知りたがるのは、この仮想世界が動く仕組みです。
これが知的好奇心です。

つぎは、好奇心を心理学者はどう定義しているか見てみます。
たとえばジャン・ピアジュは、好奇心とは「既に知っていること」と「これから知りたくなること」のギャップを検知したときに必ず生じるメカニズムと言います。

まず注目したいのは、「必ず生じる」です。
「必ず」とまで言うところが、あいまいな心理というより、機械的な仕組みに近いと言っているわけです。
そして、その仕組みとして、まずあるのが「既に知っている」ことです。
そのうえで、「これから知りたくなること」です。

注意してほしいのは「新たに知ったこと」じゃない点です。
新たに知ったことは、結果です。
さっきも言いましたけど、ドーパミンがピークとなるのは、結果がでる直前です。
だから、好奇心のピークも、知る直前なんです。
このことをまとめて、「既に知っていること」と「これから知りたくなること」のギャップを検知したとき、好奇心が生まれるとピアジュは定義したんです。

たとえば全10回の連続ドラマで考えて見ましょう。
第一回から第9回まで、不可解な連続殺人事件が起こります。
当初、犯人と思っていた人も殺されました。
残るは、自分も含めて数人です。
この中に犯人がいるはずです。

ここまでがすでに知っていることです。
「いったい、誰が犯人なんだ!」
これが「これから知りたくなること」です。

そのギャップがもっとも際立つのが最終回です。
名探偵が叫びます。
「犯人はお前だ!」
この瞬間が好奇心のピークです。

その後、名探偵が謎を解き明かしていきます。
「あの日、家に誰もいなかったですよね」
「でも、見落としていた人が一人いるんです」

ここは、事件の謎が解ける結果の段階です。
この段階で必要なのは、事件の謎を解明していく理性です。
理性は感情じゃありません。
新たな知識の獲得です。
知識の獲得、これが最終目標です。

ここまで導くのが好奇心の役割です。
だから、「犯人はお前だ!」と言った瞬間、一番ドーパミンが出るんです。
まだ謎は解明されていないけど、好奇心の役割はここまでで十分なんです。

この「既に知っていること」と「これから知りたくなること」のギャップというピアジュの定義、じつは、現代のAIと同じです。
いわゆる予測誤差に基づく学習です。

「既に知っていること」というのが、学習済みの知識です。
AIは、そこから次に起こることを予測するわけです。
そして、予測と結果が異なると、「えーっ」となります。
これがギャップです。
この「エー」を基準に、知識を更新します。
これが学習です。

ChatGPTも原理は同じです。
こうやってChatGPTは、最新の知識を得るんです。
でも、ChatGPTの作る物語はあまり面白くないですよね。
なぜかというと、知識の学習と面白さとは、考え方が違うからです。
今のAIは、面白さを判定したり、定量化できません。
それじゃぁ、最後に、物語の面白さについて考えてみます。

今までの話を整理すると、好奇心の目的は世界をより広く知ることです。
そのうち、人間が持つ好奇心は知的好奇心です。
これは、目で見て、手で触れる現実世界を知ることじゃなくて、目で見えない因果関係がある世界です。
それがあるのは頭の中の仮想世界です。

因果関係とは、「雨はなぜふるの」といった自然現象だけでなく、愛と憎しみで結ばれる人間関係も対象となります。
そして、世界を理解するとは、様々に絡み合った複雑な因果関係を解き明かすことです。
好奇心の役目は、謎を解明するまで、そこに意識を集中させることです。
複雑な問題は、集中しないと解けませんから。
そして、謎が解明される直前、好奇心による興奮がピークとなります。

ただ、それと物語の面白さは別です。
物語の面白さは、謎の解明の方にあります。
名探偵が鮮やかにすべての謎を解き明かしたとき、「あぁ、そうか!」ってなるんです。
面白さのピークはこっちです。

じゃぁ、その面白さって何でしょう?
それは、さまざまにはりめぐらされていた伏線が、一気に回収される快感です。
たとえて言えば、複雑に絡み合っていた糸が、糸の端を引っ張るとするすると解れる気持ちよさです。
または、ボーリングでセンターピンを倒すと、残りの全てのピンが倒れる気持ちよさです。

このとき、因果関係のつじつまが、全て合っていないといけません。
誰が誰に恨みを抱いていたとか。
誰もいない密室で、なぜ、人が殺されたのか。
それができる人物はだれかとか。
複数の謎が、一人の人物に焦点を当てると、すべて解けていきます。

バラバラの出来事があるわけです。
出来事は、因果関係でつながっています。
因果関係は、たとえて言えば、ドミノ倒しのようなものです。
最初のドミノが原因です。
それが倒れると、次々にそのあとのドミノが倒れていきます。

(イラスト不要)
バラバラに配置されたドミノがあったとします。
それだけじゃ、全部倒れません。
でも、ある場所にドミノをおいて、それを倒すと、すべてのドミノが倒れる場所があるとします。
でも、その場所は、誰にも分りません。
それは意外な場所にありました。

面白さを定義すると、こんな感じです。
どれだけ面白いかは、どれだけ多くのドミノが、たった一つのドミノで倒れるかです。

謎が謎を呼ぶ段階、この時必要なのが、集中力を途切らせない好奇心のドーパミンです。
そうやって何十もの伏線が積み上がります。
そして、それらが解決する直前、ドーパミンがピークとなって最も興奮します。

そして、一つのピースを置くことで、すべての伏線が一気に解決していきます。
この快感が、面白さです。
このとき、無理があると気持ちよくありません。
「あぁ、そうか!」って理屈で納得できないと、あぁ、面白かったってなりません。

物語の面白さとは、好奇心で伏線を積み上げてていく段階と、最後にきれいに理性で回収する絶妙なバランスにあるんです。

これらをすべて満たす最適解を探すことは人間には限界がありますけど、コンピュータならできそうです。
じつは、これこそが、ロボマインド・プロジェクトの最終目標なんです。

あっ、それから大事なことを忘れていました。
冒頭で語ったケネディ大統領の暗殺の話、あれ、全くのデタラメです。
好奇心のドーパミンを出すとこまではできたんですけど、それを理性で回収できないパターンです。
ドーパミンが出たからと言って、それが正しいとは限らないので、その点だけは注意しておきましょう。



はい、今回はここまでです。
この動画がおもしろかったらチャンネル登録、高評価お願いしますね。
それから、意識の仮想世界仮説に興味がある方は、こちらの本を読んでください。
それじゃぁ、次回も、おっ楽しみに!