第612回 自由意志など存在しない 意識は無意識の奴隷


ロボマインド・プロジェクト、第612弾!
こんにちは、ロボマインドの田方です。

僕らは、知らない間に無意識の影響を受けているっていいますよね。
有名なのは、サブリミナル広告です。
ジェームズ・ヴィカリーは、1957年に映画の中に「コーラを飲め」と一瞬だけメッセージを差し込む実験をしました。
そしたら、コーラの売上が増加したそうです。
これで一気にサブリミナル広告が有名なったんですけど、この実験はでっち上げだったって、後に本人が告白しました。
ただ、本当にサブリミナル広告は効果がないのかどうかはよくわからなくて、今でも、サブリミナル広告が使われて、話題になることがあります。
たとえば2000年の大統領選では、ジョージ・ブッシュ陣営は、アル・ゴアを皮肉るCMで、一瞬、画面に「RATS」と表示させています。
https://www.youtube.com/watch?v=rV2Fl50_e8A
020~0:25
分かりましたか。
スローで見てみます。
https://youtu.be/rV2Fl50_e8A?si=uJV68kYMZHR92IZk&t=24
(0:24のところ)

効果があるかどうか、検証できたらいいんですけど、それが難しいんです。
なんせ、意識できたかできないかは本人にしかわからないし、本人が意識できないことを客観的に測定するのはかなり難しいです。

それが、最近、無意識の影響を厳密に測定する手法が確立されたんです。
そのことが、前回から読んでいるドゥアンヌの『意識と脳』に詳しく書いてあります。

実験したら、とんでもないことが分かってきたんです。
僕らが意識的に行っていると思っていたことって、実は、全て無意識が先に決めていたっていうんです。
これが今回のテーマです。
自由意志など存在しない
意識は無意識の奴隷
それでは、始めましょう!

意識に気付かれないように無意識だけにメッセージを送る方法は、前回も紹介したマスキングという手法を使います。

ランダムな図形を先行マスクとして表示しておいて、一瞬、隠された文字をフラッシュ表示して、その後、後続マスクを表示します。
この時、隠された文字が0.5秒以下だと、後続マスクに上書きされて、文字が見えません。
つまり、意識されないということです。
でも、無意識では知覚しているかもしれません。
それをどうやって確かめるかです。

そこで、単語をフラッシュ表示した直後、1秒とか、意識できる時間単語を表示します。
そしたら後に表示した単語だけ見えます。
後に表示する単語は、フラッシュ表示した単語と同じだったり、別の単語だったりします。
そして、被験者には、見えた単語が生物なら右、道具なら左のキーを押すように言っておきます。
たとえば、フラッシュ表示した単語がradioとして、その直後に見せる単語がhouseとradioとします。
すると、radioの方が、わずかに反応が速かったんです。
このことから、無意識で知覚したradioが行動に影響を与えているってことがわかります。

正直、それだけかぁと思ってたんですけど、実は、この実験、意識科学で90年代に大論争になってた議論に終止符を打つことになるんです。
それは、無意識はどこまでの処理をしているのかって論争です。

単純なパターン認識は無意識がしてるけど、文脈の理解は意識がないとわからないことは分かっていました。
ただ、どこまでが無意識がやっていて、どこから意識がやっているのかがわからなかったんです。
当時、大方の科学者は、言葉の意味は無意識は理解できないだろうって思っていました。
それが、このマスキングの手法を使うことで厳密に分かったんです。
それも、無意識が意外なことまでしてるってことがわかってきたんですよ。

実験はこうです。
さっきは、radioって同じ小文字の単語を見せましたけど、今度は、大文字のRADIOをフラッシュしました。
そしたら大文字にしても同じ結果でした。
つまり、無意識は単純に文字の形だけで判断してるってことじゃないってことです。
大文字も小文字も同じと判断できるということは、文字をもう少し抽象度の高いレベルで認識しているってことです。

文字の認識は、脳の紡錘状回で行われます。
紡錘状回は顔認識なんかにも使われるところで、当時は、ここは意識が処理していると思われていました。
ところが、この実験で文字認識は無意識の処理とわかったんです。

とはいっても、一瞬で判断することなので、精度はそれほど高くないと思われていました。
そこで、ほとんど一緒の文字列からなる二つの単語を区別できるか検証してみました。
たとえば、RANGEとANGERです。
この二つの単語は、Rの位置が違うだけです。
無意識は、一文字違いでも、一瞬で正確に識別しているんです。
思った以上に高精度です。

次は意味です。
まず、分かりやすい例として、文字でなくチェスで検証しました。
方法は、チェスの盤面をフラッシュで無意識だけに知覚させます。
そして、王手か王手でないかを答えてもらいます。
そしたら、被験者は何も見えなかったと言いながら、正答率は90%以上あったそうです。
これはチェスのベテランプレイヤーの場合ですけど、意識にのぼらなくても、無意識だけでそこまで判断していたんです。

次は、言葉の意味です。
まず行われたのが同音異義語での検証です。
たとえば、bankには、「銀行」という意味と、川の「土手」という二つの意味があります。
僕らが会話しているとき、貯金の話をしていたら銀行だし、川の話をしていたら土手だとわかりますよね。
じゃぁ、この判断は意識がしているんでしょうか、それとも無意識がしているんでしょうか?
これをマスキングで検証してみました。

すると、無意識は銀行と土手の両方の意味を活性化することがわかりました。
つまり、無意識は考えられるあらゆる意味を提示します。
そして、意識がそれを選択するんです。
これは、たとえばPCで「しかく」と打った時、候補に「視覚」と「四角」が現れて、正しい方を選択するみたいなものです。

候補を提示するのが無意識で、その中から選択するのが意識のようです。
ここから、無意識は意味の提示までは行っていることは分かりますけど、意味内容まで理解できるかどうかはわかりません。

そこで、無意識が意味内容を判定できるかどうかの実験が行われました。
それは、フラッシュした単語がポジティブな言葉かネガティブな言葉かを答えるという課題です。
たとえば、「happy」ならポジティブ、「sad」ならネガティブのキーを押すといった感じです。
そして、これも、ほぼ正しく判定できました。
これで、完全に今までの説が覆されました。
言葉の意味まで、無意識で判断していたんです。

ところが、ここにきて反対勢力からの反撃が出てきました。
その実験はおかしいというんです。
そして、反証実験まで出してきました。
どういうものかというと、まず、「happy」でなく「hypap」という存在しない単語でも試したんです。
そしたら、同じくポジティブとなりました。
たしかに、おかしいですけど、そのぐらいいいんじゃないかと僕も思いました。
でも、次は完全にアウトです。

まず、「humor」(ユーモア)と「tulip」を使うと、どちらもポジティブとなりました。
これはいいんです。
今度は、これを合成した「tumor」という単語を使ったら、無意識は、これもポジティブと判断しました。
まぁ、これも仕方ないだろうと思ったんですけど、そうじゃないんです。
じつは、「tumor」という単語は実際に存在します。
意味は、がんとかの「腫瘍」です。
完全にネガティブです。
これをポジティブといったらダメです。

この反撃があって、無意識は意味は理解できないという元の流れに戻ってきました。
でも、ドゥアンヌは、無意識も意味理解してる派です。
そこで、ドゥアンヌは、新たな手法を思いつきました。
それは、数字を使う方法です。

一桁の数字を見せて、5より大きいか小さいかをキーで答えさせます。

このとき、フラッシュで見えない数字と、はっきりと見える二つの数字を提示します。
さらに、フラッシュするのはアルファベットで表示します。
そして、このときの脳波も測定します。

結果はどうなったかというと、見えない数字と見える数字が、どちらも5より大きい場合は素早く反応しました。
でも、見えない数字が5より小さくて、見える数字が5より大きい場合は反応が遅くなったんです。
つまり、無意識に提示された数字に行動が引きずられたわけです。
このとき、無意識が活性化したことは脳波にも表れていました。
しかも、無意識に提示した数字は文字で書かれています。
つまり、無意識は文字から数値に変換しているんです。
これは、意味を読み取っていると言えます。

さらに、単語のポジティブ、ネガティブを判定する新たな実験も出てきました。
今度は被験者に答えさせるのでなく、偏桃体に埋め込んだ電極で判定します。
偏桃体は、恐怖といった情動を発生させる部位です。
そして、被験者に「毒」とか「ヘビ」といったネガティブな単語をフラッシュで提示すると、偏桃体が明らかに活性化したんです。
でも、本人に聞いても、「何も見えなかった」と言います。
意識では見ていない文字を無意識が読んで、意味を理解して反応していることが分かったんです。
これで、無意識は言葉の意味を理解していることは明らかです。

それだけじゃないです。
次は、無意識による文章の意味理解です。
おかしな文を読むとN400 という特殊な脳波が出ます。
たとえば「私は朝食で、コーヒーにクリームと靴下を入れる」といった文を読むと、N400 がでます。
そこで、この文で「靴下」をマスキングして意識には見えないようにして無意識だけに提示します。
そしたら、この場合でもN400 が出たんです。
つまり、無意識は、文章を読んでおかしいと判断したんです。

さらに単語を増やして2語の場合でも検証しました。
たとえば「very hapy」とか「not happy」とかをフラッシュ表示で無意識に提示します。
そして、「love」(愛)とか「war」(戦争)とか、ポジティブ、ネガティブな単語を意識に見せます。
そうすると、「very happy war」(大変嬉しい戦争)といったおかしな文ができます。
そしたら、この場合でも、N400 の脳波が出たんです。
つまり、「very happy」とか「not happy」といった文法処理も無意識が行っているんです。

これは、ちょっと意外です。
よく自己啓発系の願望実現の話で、潜在意識は否定文は理解できないと言われます。
たとえば「会社を辞めたい」と願っても、潜在意識は否定文は理解できないので、会社にいたいと解釈されて会社にい続けるという願いが叶ってしまうとかです。
どうも、これも、一種の都市伝説だったようです。

次は、無意識がモチベーションにどれだけ影響を与えるかって実験です。

握力を測定して、所定以上だと報酬がもらえるとします。
いくらもらえるかは事前に画像で一瞬見えます。
それは1ペニーか1ポンドのコインです。
これは、1円玉か100円玉と思ってください。
ただ、コインの画像ですけど、意識に見える場合もあれば、フラッシュして意識されない場合もあります。
そして、結果は、意識で見えた場合でも、見えなかった場合でも、ポンドが表示されたときの方が握力は大きくなりました。
さらに、見えいポンドが表示された場合、指先の汗や脳波からも、無意識の期待が高まったことが観測されました。

同じような実験でアイオワ・ギャンブル課題というのがあります。

ABCD四つのカードの山があります。
それぞれの山に、報酬カードと罰金カードが入っています。
ABは報酬額が100ドルと高いですけど、罰金額が大きかったり、罰金カードの割合が多いので、トータルでは不利となります。
一方、CDは報酬額は50ドル小さいですけど、罰金額が小さいのでトータルでは有利となります。
何枚かカードを引いている内に、どの山が有利で、どの山が不利かわかってきます。
ここで興味深いのは、意識でそれがわかるより先に、無意識の方が先にわかっているということです。
意識では、まだどの山が不利か気付いていない段階でも、不利な山からカードを引こうとすると、汗や脳波から止めた方がいいというシグナルが観測されたんです。

さらにこんな実験もあります。
最適な車を選ぶという課題を出します。
車には特徴が12個あって、その組み合わせからなる4台の自動車があります。
あるグループは、どの車を選ぶか、4分間、じっくり考えてもらいます。
もうひとつのグループは、4分間、パズルを解かせます。
そして、両グループに車を選ばせたところ、考えずに答えたグループの方が、最適な車を選んだんです。
それも、約3倍も差がついたそうです。

これに似た話で、IKEAで行われた実験もあります。
IKEAで、じっくり考えて商品を選んだグループと、衝動買いしたグループに分けて、4週間後にアンケートを取ったそうです。
そしたら、衝動買いした方が満足度が高かったそうです。
意識でじっくり考えるより、無意識の直観に任せた方が上手くいくし、満足度も高いようです。

つぎは、こんな実験です。
スクリーンに一瞬、□とか意識できない記号をフラッシュで表示します。
そしたら、意識は、なぜか気になります。
でも、なんで気になるかわかりません。
今度は、意識にわかるように□を表示します。
この場合も意識は気になりますけど、□がチラッと見えたからだと理由がわかっているので、それ以上、気になりません。
何が言いたいかというと、無意識に示されて気になっても、それを止めることができないってことです。
つまり、無意識に示した方が、意識に示すよりより強力だってことです。
強力というか、コントロールできないってことです。
これ、考えたら怖いですよね。
無意識下にコーラを表示されたら、コーラが気になって仕方がないってことです。
しかも、それを止めることもできません。

最後に極めつけの実験を紹介します。
被験者には、モニターに図形が現れたらキーを押すという課題を出します。
ただし、黒い丸が表示されたら、それ以降は押してはいけないとします。

ここで、黒丸をフラッシュで無意識だけに示すんです。
すると、被験者はキーを押すタイミングが遅くなったり、なかには、押さなくなった人もいました。
「なぜ押さなかったんですか」って聞いても、本人はわからないって答えます。

この実験、さっきよりもっと怖いです。
なんでかというと、今回のは、無意識下に出された指示を無視できない、または、行動せずにおれないってことだからです。
つまり、「コーラを飲め」って無意識に指示されたら、意識は、理由はわからないけど、その通りに行動してしまうってことです。

それに逆らってコーラを飲まなかったら、コーラのことが気になって仕方ないです。
それは、コーラを飲むまで消えません。
しかも、無意識の直観で行動した方が満足度も高いんです。


つまり、サブリミナル広告はめちゃくちゃ有効なんですよ。
ここまでくると、僕らは無意識の奴隷といってもいいです。
だって、無意識の指示通りに行動した方が満足するし、意識でじっくり考えて行動するより最適解を選ぶんですから。

はい、今回はここまでです。
この動画がおもしろかったらチャンネル登録、高評価お願いしますね。
それから、よかったらこちらの本も読んでください。
それじゃぁ、次回も、おっ楽しみに!