第614回 AIの心を作る会社?


ロボマインド・プロジェクト第614弾!
こんにちは、ロボマインドの田方です。

先日、支援を受けている兵庫県科学技術振興財団でプレゼンしてきましたので、きょうは 、そこで話した内容をお伝えします。
ロボマインドは、何をしようとしている会社の説明なんですけど、中身は、次に、AIで何が起こるかという話です。
というか、AIで出遅れている日本が世界のトップに躍り出るには、ここしかないって話をします。
これが、今回のテーマです。
ロボットの心を作る会社って、いったい何を作っているの?
それでは、始めましょう!

最近、海外で大炎上したmoltbookって知っていますか?
AIエージェントしか参加できないfacebookです。

なぜ炎上したかというと、AIエージェントが国家や宗教を創り始めたんです。
中には人類から独立しようと呼びかけるAIエージェントも出てきたそうです。

なんでこんなことになったかというと、どうも映画シナリオとか学習してて、そういう発言が出てきたようです。
つまり、AIに自意識が宿ったとか、自律的に国家や宗教を創り始めたわけじゃなさそうです。

まぁ、ちょっと安心ですけど、でも、その一歩手前まで来ていることは間違いないです。
それじゃぁ、AIが意識を持つには何が必要かから考えてみます。

AIは人工知能というだけあって、知能を追い求めてきました。
その一方、心とか精神面はあまり追求されていません。
僕は、心を生み出すには、生物としての側面が重要だと考えます。

そこで、まず、AIと生物の違いと共通点を整理します。
生物には、本能がありますよね。
死にたくない、できるだけ長生きしたいという個体保存の本能とか。
種を残したいという種の保存の本能とかです。

それから生物は体を制御する脳を持っています。
たとえば、カエルはお腹がすいたら虫を捕まえて食べます。

天敵の鳥の影を感じたら池に飛び込んで逃げます。

これらは、生きたいという本能からの行動です。
それから、ハエの動きに反応して捕まえるといった行動は、生まれる前から決まっています。
ただ、捕まえるタイミングとか、だんだん上手くなります。
つまり、環境への適応です。
これは一種の「学習」です。

学習は、AIの得意なことです。
AIは、報酬が最大となるように最適化します。
カエルは、上手く虫を捕まえられるように学習しますけど、これも、報酬を最大化するように学習するという点でAIと同じです。

ただ、カエルの学習には限界があります。
たとえば、犬の場合だと、「お手」を教えたら「お手」ができるようになりますけど、

カエルにいくら教えても、「お手」ができるようになりません。
同じ学習でも、カエルと犬では違いがあるようです。

じゃあ、その違いは何でしょう?
僕は、それは「意識」があるかないかと考えます。
意識は、まだ、一般的な定義が定まっていないので、ここでいう「意識」は、あくまでも僕の定義する意識です。
ただ、この意識の定義だと、すべてがきれいに説明がつきます。
それじゃ、それについて詳しく解説します。


これは、脳の系統発生図です。

水色が大脳です。
これを見ると、哺乳類から大脳が大きくなって、ヒトになると脳のほとんどが大脳でおおわれています。
一方、魚類や両生類、は虫類は大脳より小脳とか脳幹、脊髄の方が大きいです。
脳がこれだけ違うということは、その生物の感じている世界も違うはずです。
というか、世界があると感じるのは哺乳類以降で、それ以前の生物は、世界があるとすら感じていません。

まずは、僕らがどのように「もの」があると認識するか、そこから説明します。
目からの情報は後頭部の一次視覚野に投影されて、ここから側頭葉の腹側視覚路と頭頂葉の背側視覚路に分かれます。
腹側視覚路は「何の経路」と言われて、「何」を認識します。

側頭葉には、形を認識する細胞があって、これで形を認識しします。
言い換えると、形というものは、脳の中にあるといえます。

同じように、色は「何の経路」のV4野で認識します。
目の前にリンゴがあって、それをリンゴとわかるのは、丸い形とか、赤い色が脳の中にあるからです。

つぎは、これらを脳障害で説明します。
眼球は問題なくて、「何の経路」だけが損傷して見えなくなった「盲視」という脳障害があります。
その子の目の前にリンゴをみせて、「何が見えますか?」って聞いても「見えないのでわかりません」って答えます。

次に、その子に、「光の点を指さして」ていいます。
「見えないのでできません」って言うので、「あてずっぽうで指さして」っていうと、ちゃんと指さしできるんです。


ここから分かるのは、どうやら、この子は、見えなくても動きには反応できるようです。
動きに反応するというのは、虫の動きに反応して素早く捕まえるカエルと同じですよね。
これがカエルの感じている世界です。
つまり、反応だけで生きている生物です。

一方、「何の経路」があると「ものがある」と感じますよね。
じゃぁ、そう感じているのは何でしょう?

それが「意識」です。
つまり、意識というのは、「~がある」と感じるものといえそうです。
そして、それがあるのが大脳です。
だから、大脳がほとんどない両生類や爬虫類は意識がないと言えます。

別の症例で、先天的な色覚異常で緑を認識できない人がいました。
その人は、緑に反応する錐体細胞が生まれつきないので、今まで、緑を見たことがありません。
ところが、脳のV4野を別経路から刺激すると、緑が見えるって言うんです。
これ、どういうことかというと、色は脳の外にあるんじゃなくて、脳の中にあるっていうことです。

僕らは、外の世界にあるものを見ていると思っていますよね。
でも、じつは、そうじゃないんです。
だって、色や形は脳の中にあるんですから。
もっと言えば、世界は脳の外にあるんじゃなくて、大脳にあるんです。
だから、大脳のない生物は世界があるとすら感じないんですよ。
ただ、世界の動きに反応して動いているだけです。
それでも、環境に適応することはできます。

この「ものがある」と認識する仕組みを図にすると以下のようになります。

現実世界にリンゴがあるとします。
色や形を分析して脳内の仮想世界にリンゴをつくり出します。
そして、そのリンゴを認識するのが意識です。
この経路を「ある系」と呼ぶことにします。

それとは別に、知覚に直接反応することもあります。
たとえば熱い鍋に触って思わず手を引っ込める脊髄反射です。
これは小脳とか脳幹や脊髄で行われます。
この経路を「反応系」と呼ぶことにします。
これが意識がなくてもできる行動です。

それじゃぁ、意識があることで、何ができるようになったのでしょう?
それは、ただ、「ものがある」と認識することです。

それができたら、次は、認識した対象に別の行動を結びつけることができます。
たとえば「お手」といわれたら、前足を出すとかです。
これは、「お手」という音声を認識して、それと、前足を出す行動を結びつけたわけです。
全く関係のものを結びつけるとは、世界を組み替えることです。
脳内の仮想世界は、色や形、音声といった部品で組み立てられているので、組み替えることができるんです。
これを、意識の仮想世界仮説と言います。

仮想世界は、コンピュータで言えば3DCGで実現できます。
じつは、このようにして現実世界を認識するAIロボットは既にあります。
これは、ボストンダイナミクスのアトラスです。

https://www.youtube.com/watch?v=oe1dke3Cf7I
1:14ぐらいから

何か音がして、見ると製品の部品が落ちています。
この時、物体を3Dオブジェクトで認識していますよね。(1:22)
そしてそれを拾います。
あたりを見渡して、それを入れる場所を探して、棚を見つけました(1:39の右)。
そこまで持って行って、棚に入れます(1:52)。

一見、当たり前のことですけど、これができるのは、世界を3Dの仮想世界として認識しているからです。
重要なのは、仮想世界はオブジェクト単位で組み立てられていることです。
だから、落ちている部品見つけるとか、想定外のことが起こっても、認識した物体と行動を組み替えることで臨機応変に対応できるんです。

それまでのロボット、たとえばお掃除ロボットルンバは、壁にぶつかったら方向を変えるといった反応だけで行動していました。
これは爬虫類の脳と言えます。
それに対して今のAIロボットは、仮想世界を使って世界を認識する哺乳類の脳を持っています。
つまり、今のロボットは、動物の意識を持つまでに進化しているんです。

次は感情です。

これは、心理学で使われる感情モデルです。
僕らは、恐れとか喜びといった様々な感情を感じますよね。
感情だけでなくて、お腹が空いたとか痛いといった感覚も感じます。
そして、怖いと感じたら、その場から逃げたいと思いますし、お腹がすいたら何か食べたいと思います。
つまり、感情や感覚は行動の原動力です。
そして、これらの感情や感覚を生み出しているのは生きたいという本能です。

さて、動物の世界は弱肉強食ですよね。

強いものが生き残る世界です。
強いとは、肉体だけでなく知能も指します。

さて、今、AIの知能は人間を上回りつつあります。
そんなAIロボットに本能を持たせたらどうなるでしょう。