第71回 赤ちゃんが獲得したもの③ 〜ねぇ、絵本読んで!


ロボマインド・プロジェクト、第71弾
こんにちは、ロボマインドの田方です。

今回は、第69回の続きです。
赤ちゃんが獲得したものシリーズの3回目です。

赤ちゃんが言葉を覚え始めるタイミングと、指差しをするタイミングが、だいたい同じだって話をしました。
指差しは、言葉を使ったコミュニケーションの基盤となる機能ってわけです。

ここ、ものすごく重要なんで、おさらいしときます。
赤ちゃんは、子宮の中にいるときは、自分と世界との境がなくて、混然となった世界にいます。
そのまま生れ出ても、赤ちゃんの頭の中は、まだ、自分と世界とが、ぐっちゃぐちゃに混ざったままです。
おぎゃあって泣いたら、お母さんがおむつを替えてくれたり、おっぱいを飲ませてくれたり、何でもしてくれました。
泣くと、自分が快適になるように世界が動くわけです。
自分と世界の区別がないとは、こういう事です。

それが、目が開いて、自分で動くことができるようになると変わってきます。
目で見たり、手で触ったりすることで、自分と世界の境目がわかってきます。
動くことで、どこまでが自分の体で、どこからが外の世界かを認識するようになります。
こうやって、頭の中に、自分と世界とを分けて創り上げていきます。

それから、自分の意志で動かせるものと、動かせないものがあることがわかってきます。
自分の意志で動かせるものは、自分の体です。
自分以外のものは動かせません。
こうやって、世界の中に、自分の体があることがわかってきます。

自分の体を動かすことで、世界に働きかけることができると分かります。
ハイハイすれば、世界の中を移動できるってわかります。

今までは、泣いたら、何でもお母さんがしてくれてました。
それが、自分の意志で行動できるようになります。

自分が頭で思っても、思った通りにならないことがあることもわかってきました。
自分の頭で思うことと、世界とは切り離されてるってことです。
自分が思う事、それが心です。

自分には心があって、同じように相手にも心がある。
それがわかってきました。
自分の心で思ったことは、思っただけでは、相手には伝わらないってことも分ってきました。
そして、外の世界は、自分と相手で共有しているってこともわかってきました。

そこで、初めて、指差しができるようになります。
自分が心で注目してるものを、共有する外の世界で示すこと。
それが指差しです。
すると、相手もそれに目を向けます。
相手の心もそれに注目することができます。
自分の心で思っていることが、共通の世界を介して、相手に伝わったわけです。
これがコミュニケーションです。

自分の心、相手の心、共有する世界。
この三つがそろって、コミュニケーションの基盤が整ったわけです。
これが、人間社会で生きて行くために、最も基本となる構造です。
それが、頭の中に完成したわけです。
この構造。
これが、人間として、最も重要な脳の基本構造なんです。
こっから先は、この基本構造の上に、いろんな物を付け足していくわけです。

でも、基本構造は絶対に揺らぐことはありません。
たとえば、自分が頭の中で思っただけで、世界が変わることはありません。
「カレーが食べたい」と思ったら、目の前にカレーが現れるってことはないです。
自分が思ったことが、何も言わなくても相手に伝わることもないです。

これが理解できるってことは、基本構造を持ってるってわけです。
自分の心、相手の心、共通の世界って構造が頭の中にできてないと理解できないんですよ。
基本構造を飛び越えて、ものごとが作用することはないってことです。

次は、共通世界にあるものに、一つずつ、名前を付けていきます。
これが言語の世界です。
言語の世界が成り立つのは、この、基本構造が絶対に必要なんです。

さて、こっから先は言語の世界です。
言語を使うようになると、子供の頭の中が、かなり、大人に近づいてきます。
大人が認識してる世界と、そう、かけ離れてないです。

それでも、まだ、大人には理解しがたいことがあります。
たとえば、絵本です。

子どもは、同じ絵本を、何度も読みたがります。
同じ昔話を、何度でも聞きたがります。

結末は分かってるのに、同じ話を何度も聞きたがります。
なぜでしょう。

赤ちゃんは、目につくもの、何でも触ってましたよね。
そうやって、壁の肌触りはこんな感じ、カーテンはこんな感じって覚えるわけです。
これは、頭の中に世界を作り上げてたわけです。

絵本を何度も読むのも同じだと思います。
絵本を何度も読むのは、社会を学ぶためです。
悪い鬼は、桃太郎に退治されるんです。
悪いことすれば、正義の味方が来て、やっつけられるわけです。

動物を助けたら、あとで、恩返ししてくれるんです。
良いことしたら、いつか、お返しがあるんです。
そうやって、社会の仕組みを覚えるんです。

同じ絵本を読むたびに、悪いことしたら、やっつけられるのを、毎回、確認するんです。
良いことしたら、良いことが起こるってことを何度も確認するんです。
そうやって、社会の機能が頭の中に定着していくんです。

子どもは意外な結末なんか、求めてないんです。
あ~、そう来たかって、どんでん返しを期待して、絵本を読んでるわけじゃないんです。

意外な結末や、どんでん返しが面白いって分かるのは、当然、こうなるだろうって、当たり前のストーリーを持ってるからです。
頭の中に、当たり前のストーリーが完成していなければ、意外な結末の面白さはわからないわけです。

今は、基本構造に、基本機能を追加してる段階です。
基本機能を何度も動かすことで、基本機能が定着して、安定して動くようになります。

ピタゴラスイッチってあるでしょ。
ビー玉とかを転がして、いろんな機能が動いてゴールするやつ。
ピタゴラスイッチ作る時って、たぶん、基本的な機能がちゃんと動くか、確認して作ると思うんですよ。

ボールが、ちゃんとレールに沿って動くかとか、ドミノが全部倒れるとか。
そうやって、基本機能が安定して動くことがわかったら、ちょっとずつ、難しい機能を追加していくわけです。

村で暴れて村人を困らせた鬼が、毎回、桃太郎に退治されることで、悪いことをしたら桃太郎に退治されるって機能が定着するんです。

それが、昼間は優しい桃太郎が、夜になると別の人格が現れるとか。
夜な夜な、村で暴れてた鬼は、じつは、桃太郎の別人格だったんですとか。
そんな話になると、子供たちは混乱してしまうんですよ。
まぁ、大人も混乱しますけどね。

こうやって、頭の中の世界に、社会のルールの機能を追加していくわけです。
勘違いしないように説明しときますけど、この動画の目的は、心をもったAIを作ることですよ。
正しい子育てとかとちゃいますから。

さて、そう思うと、今回の機能、AIにどう使ったらいいでしょう?
それは、行動決定です。

基本構造は、私の心、あなたの心、共通の外の世界です。
今、追加された機能は、共通の世界のルールです。

悪いことをしたら怒られる。
動物をいじめたら罰があたる。

自分が頭で思っただけじゃ、外の世界は変わりません。
外の世界に影響を与えるのが、自分の行動です。
自分が行動したとき、世界はどう動くか、シミュレーションするときに、世界のルールを使うわけです。
悪いことしたら怒られるから、悪いことしないように行動するわけです。

こうやって、人間社会に溶け込むAIができるわけです。
そういう心をもったAIを作るには、基本構造、基本構造の上で動く機能、そういったものを意識して設計する必要があるわけです。

そのために、赤ちゃんは何を習得してるかを解明しているわけです。
これが、ロボマインド・プロジェクトです。
他のAI研究とは全く違いますが、人間と同じ心を創ろうとするには、この方法しかないと思っています。
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次回は、ちょっと意外な方法で、子供の脳について解明していきます。
この話を聞くと、世の中の見方がガラッと変わると思います。
それでは、次回もお楽しみに!