ロボマインド・プロジェクト、第85弾!
こんにちは、ロボマインドの田方です。
物語って、ほんと、強力です。
面白いか、面白くないかは別にして、つい、引き込まれてしまいます。
たとえば、物語のない映像とか考えてみましょう。
自然の風景とかだけ流す映像とか。
環境ビデオとかいったりしますけど。
打ち寄せる波が延々と流れてたり、
森の中の小川のせせらぎの映像とか。
落ち着きますよね。
勉強するときとか、バックで流してると集中できたりします。
とそこに、小川の奥の森に、何か人影が見えたらどうでしょう。
何か叫んでいます。
「ンハハハハ、お前も蝋人形にしてやろうか」
ぜったい、勉強に集中なんか、できないですよね。
絶対、そっちに意識が行ってしまいますよね。
これが、物語りの強力さなんです。
明日の試験、落としたら留年確定やって分かってても、頭は蝋人形でいっぱいになりますわ。
これが、人間なんです。
これ、どういうことでしょう。
まず、このことから考えていきましょう。
おそらく、人は、何らかの意味を、常に探してるんだと思います。
意味と言うより、感情を発生させるものです。
危険とかです。
道歩いてて、車が突っ込んできたら、何を差し置いても、すぐによけますよね。
これが意識による行動です。
意識の行動とは別に、無意識の行動もあります。
脊髄反射がこれにあたります。
鍋とかに気づかずに触れて、思わず手を引っ込めるのが脊髄反射です。
反射の特徴は、無意識で動いくことです。
そして、熱い!と感じるのは、手を引っ込めた後なんです。
意識は、何か感じたり、怖いとか感情が発生して、それをきっかけに行動します。
無意識は、感じる前に自動で動きます。
人間は、意識と無意識の2種類のプログラムで動いてるわけです。
魚やは虫類は、意識を持ってなくて、全ての行動は無意識だと考えられます。
このことが何を意味するかと言うと、魚は、痛みという感覚を持っていないわけです。
つまり、痛いと感じてないわけです。
詳しくは、第31回「クオリアってなんだ②」で語ってますので、そちらも参考にしてください。
話を戻しますと、意識の持つ機能は、感情を探索することと言えそうです。
危険といった感情は、最優先で回避しないといけないので、危険がせまってないか、常にチェックしてるわけです。
それから、第74回「脳の中のCPU①」で取り上げたウェイソンの4枚のカード問題。
これは、未成年の飲酒を見抜くのと、母音の裏が偶数かを見極めるのと、数学的に同じ問題でも、難しさが全然ちがうっていう心理学の実験でした。
これなんかも、ズルをしてるやつがいないか探す機能があるって考えれば理解できます。
それから、前回、第84回「サピエンス全史 ハラリが勘違いしてたこと」です。
サルの行動をみて、「あっ、サルが嘘ついて仲間を騙してる」って。
あの、ハラリが、つい、うっかり勘違いした話。
これなんかも、まさに、人間の脳にある機能が発動した例と言えます。
社会活動してるとき、相手は嘘をついてないか、ズルをしてないかってチェックする機能が常に働いてるわけです。
ほんで、それを見つけるとビーって警告音が出るわけです。
警告音が出ると、すぐにそれに応じた言動が出るわけです。
「あ~、こいつ、嘘ついてる!」とか。
お互いにその機能を持って社会活動してるから、社会の秩序が守られてるわけです。
でも、それは人間だけってことを、つい、うっかり忘れてたんですよねぇ。
あの、天才ハラリですら。
サルは、そんなこと考えて行動してなかったんですよ。
詳しい内容は、前回のYouTubeを見てください。
とにかく、それほど、この機能は強力だってことです。
この機能が発動すると、他のことは忘れて、それに意識が向いてしまうんですよ。
この機能が、人間の行動を司る原動力と言えそうです。
さて、物語りです。
ここでいう物語は、かなり広い意味で使ってます。
ドラマや映画のストーリーから、学校で起こった、ちょっとした出来事まで。
その最小単位が、今、説明した、感情です。
それが組み合わされて、大きな物語が生まれるわけです。
そして、その大きな物語に突き動かされて、人は活動してるわけです。
これが、人間社会です。
人間社会は、物語りによって作られていると言えます。
ホモ・サピエンスが、獲得した最大の機能です。
それでは、その物語を、解明していこうと思います。
その前に、ここで、整理しておこうと思います。
ロボマインド・プロジェクトの目的です。
第79回「好きなことだけして生きて行く」でも語りましたけど、当初の目的は物語の自動生成でした。
その目的は、今も変わっていません。
ただ、物語をコンピュータで作るために、言葉の意味を理解しないといけないことがわかってきて、自然言語処理の意味理解から取り掛かり始めたわけです。
ところが、言葉の意味理解って、調べれば調べるほど、奥が深い問題だってわかってきたんです。
言葉の意味が理解できるっていうのは、相手が何を言いたいのかがわかるってことです。
何を意図して、そう発言してるのか理解できなければいけません。
その人を、突き動かす原動力を解明しないといけません。
単純なものは、生物が持つ本能です。
複雑なものは、人間社会を前提として生まれた感情です。
嫉妬とか、出世したいとか、承認欲求とか、そういったものになります。
助けて欲しいけど、人に弱いとこは見せたくないとか。
そんな複雑な思いを表現しようとすると、必然的に、複雑な言語を生み出さざるを得ません。
それが、人間の言語です。
複雑な言語を生み出してるのは、人間の心です。
つまり、人間の心は、複雑な言葉に対応するだけの複雑な仕組みを持ってるわけです。
あの時、こうしとけばよかったのにって後悔の言葉を口にできるには、後には戻れない時間の概念を、心が持ってるからです。
勉強やスポーツを頑張るのは、承認して欲しいって思いがあるからかもしれません。
それを理解するには、承認欲求のデータ構造が必要で、承認欲求が満たされた状態と、満たされない状態を心のモデルで再現する必要があるわけです。
こうやって、丁寧に心を創る必要があるわけです。
そこまでできて、ようやく、言葉の意味が理解できるんです。
会話ができるAIって、簡単に言いますけど、これだけのことができないと、会話なんかできないんですよ。
複雑な人間の心、その物を作らないと、会話ができないんですよ。
でも、今の自然言語処理は、ほぼ100%、言葉しか見てないです。
テキストデータをいじくることしかしてないです。
それじゃ、言葉の意味は絶対わからないんですよ。
コンピュータで、心その物を創るってアプローチを取らないと、会話も意味理解もできないんです。
でも、複雑な心の仕組みを創るって、そんなこと、誰もやっていません。
やってるとしても、喜んだり、悲しんだりって感情を持ったロボットぐらいです。
でも、そのロボットが持つ言葉は、「嬉しい」と「悲しい」だけです。
複雑な人間の感情や、物語を理解するには、それを表現できるだけの複雑な心を創る必要があるんです。
そこまで複雑な心のモデルを創ろうとしてるのは、ロボマインド・プロジェクトだけなんですよ。
でも、どう考えても、僕一人でやれるレベルの研究じゃないですよね。
本来なら、学会や研究会でやることですけど、そんな物は、この世にありません。
正直言って、これ、一人で続けるの、かなりキツイです。
なんか、ちょっと、おかしな話になってきましたねぇ。
ロボマインド・プロジェクトは終わるんちゃうかとか、
田方、死ぬんちゃうかとか。
そんなことないですよ。
大丈夫です。
ロボマインド・プロジェクトは、まだまだ続けますよ。
僕が止めたら、他にやる人がいなくなります。
ここで止めるわけにはいかないです。
ただ、もし、他で同じようなことをやってるって話を知ってたら、ぜひ、教えてください。
それから、ロボマインド・プロジェクトに興味がありそうな人がいれば、ぜひ、ロボマインド・プロジェクトを教えてあげてください。
それから、チャンネル登録もお願いします。
それでは、次回は、いよいよ物語を理解する仕組みを解明していきたいと思います。
ホモ・サピエンスが、物語りを生み出すことができた心の仕組みです。
それでは、次回も、お楽しみに!