ロボマインド・プロジェクト、第89弾!
こんにちは、ロボマインドの田方です。
前回、動詞の意味を説明するのに将棋ロボットのAIを使いました。
将棋AI、これ、結構使えそうです。
意識の仮想世界仮説を理解するのに、最低限の構成はそろってるんです。
つまり、会話ができる、最低限の心のモデルとも言えます。
そこで、今回は将棋AIを使って、意識の仮想世界仮説を、これ以上ないくらい、分かりやすく説明しようと思います。
今回の動画みたら、今、あなたが見てるこの世界は、現実世界じゃないってこと。
自分が創り出した世界を見てるってことの意味が、きっとわかります。
それでは、さっそく、始めます。
将棋ロボットは、ロボットアームを持っていて、人間と対戦します。
将棋ロボットの頭脳に相当するのが将棋AIです。
将棋AIは、仮想盤面を持ってます。
カメラで現実世界の将棋盤を撮影して、その内容を仮想盤面に設定します。
それでは、将棋AIの意識がどういうものか、詳しく見て行きましょう。
仮想盤面は、縦9列、横9列の表のようなものです。
表のマス目に、仮想的な駒、駒オブジェクトが配置されます。
駒オブジェクトは、飛車とか王将といった名前と、動ける範囲が設定されています。
将棋AIの意識は、この仮想盤面と駒オブジェクトを認識します。
つまり、意識は、現実世界の盤面を直接認識してるわけじゃありません。
これ、どういうことか分かりますか?
どのマス目に、どの駒が配置されてるかの情報しかありません。
実際の駒が、マス目の中でちょっと斜めに置かれても、その情報は消えます。
必要なのは、どのマス目にどの駒が置かれてるかだけだからです。
つまり、この時点で、仮想盤面は現実世界そのものじゃないんです。
もっと言いますよ。
将棋AIの意識が認識できるのは、仮想盤面と駒オブジェクトだけですよね。
ということは、将棋AIにとって、世界は盤面と駒が全てなんですよ。
当然、世界にはそれ以外の物がいっぱいありますよ。
でも、それらは将棋AIにとっては、存在しないんです。
認識できないものは、存在しないも同じなんです。
現実世界の盤面を仮想世界の盤面に変換してるのは、将棋AIの無意識です。
無意識の役目は、カメラが捉えた現実世界を、意識が認識できる仮想世界に変換することです。
というか、意識が認識できるものは、はじめっから決まってるわけです。
駒と盤面です。
駒と盤面だけを使って、現実世界に近くなるように仮想世界を組み立てるわけです。
つまり、仮想世界は、自分が認識できるものだけで創られてるんですよ。
だから、意識は、何も悩むことも、何の矛盾も感じないわけです。
人間の場合も同じです。
第21回「意識の仮想世界仮説」で盲点の話をしました。
盲点は、眼の構造上、どうしても見えない点です。
眼からの情報を基に、無意識が仮想世界を創り上げるんですけど、見えないからと言って、世界に穴をあけるわけにはいかないです。
そこで、無意識さんが、周りと同じ色で穴を埋めて、意識さんに気づかれないように世界を創ってるって話でした。
こうやって見渡しても、世界にはつぎ目も穴も開いてなくて、自然に感じられますよね。
これ、全部、無意識さんが一生懸命作ってくれてるからなんですよ。
ホワイトボードがあって、叩いたら、こんな音がするって。
何の不思議もありませんよね。
でも、そこを不思議に思わないといけないんです。
なんで、ホワイトボードを叩いたとき、指が突き抜けないんですか?
そんなこと、叩いてみないと分からないでしょ。
でも、叩く前に知ってるって、どういうこと?
それは、既に自分が知ってるホワイトボードで作られてるからです。
ちょっと、分かりにくいですよねぇ。
じゃぁ、将棋で説明します。
将棋AIは、歩は、前に一つずつしか進めないって知ってます。
それは、仮想盤面上の歩オブジェクトの動きが、そう決められてるからです。
だから、歩がずーっと、まっすぐ進んだり、斜めに進んだりすると、おかしいってなるわけです。
ホワイトボードに指が突き刺さって行くと、おかしいって思うのは、ホワイトボードをオブジェクトとして認識してるからなんです。
ホワイトボードオブジェクトは硬いって、最初から知ってるわけです。
仮想盤面に見たことのない駒があると、将棋AIの意識も、どうしていいか戸惑うはずです。
なんや、この駒。
ダルマ?!
こっちは、
ちょびヒゲ髭??
ちょびヒゲは、どう動くんや?
って、なりますやん。
でも、そうならないってことは、世界は、全て知ってるもので出来てるんですよ。
無意識さんが、知ってるオブジェクトで作ってくれてるんですよ。
ほんで、もう一つ重要なのは、意識が認識する仮想世界は、他人と共有できるってことです。
仮想世界って、現実世界から、自分が認識できるように、勝手に作ってるわけです。
だから、それぞれ、違う世界を認識してるんです。
でも、仮想世界を創る材料が同じだったとします。
盤面と駒です。
見てる現実世界は同じです。
同じ現実世界を見て、それを元に、同じ材料で世界を組みてたら、同じ仮想世界ができますよね。
別の意識であっても、同じ仮想世界を認識できるわけです。
そうなると、何が嬉しいかって言うと、コミュニケーションが成り立つんですよ。
相手と将棋ができるんですよ。
同じ盤面を見て、将棋のルールも共有するわけです。
目的は、相手の王将を取るってことです。
交互に指して、互いに相手の王将を取ろうとするわけです。
このやり取りが、コミュニケーションです。
駒には、名前と動きが決まってるわけです。
名前は、名詞、動きは動詞です。
それを言葉に置き換えれば、文になるわけです。
将棋の棋譜は、「2六歩」とか書いたりしますけど、これは、歩を、2六の位置に動かしたって言う意味です。
ちゃんと、名詞と動詞を使って文になってますよね。
お互いに一手ずつ指して、それを棋譜にすれば、会話と同じです。
こうやって、会話が成立するわけです。
ロボマインド・プロジェクトの目的は、会話ができるAIです。
将棋AIは、最もシンプルな、会話ができる心のモデルと言えます。
ここで、今までの話を整理しておきます。
会話ができる心に必要なものをまとめておきます。
まず、現実の世界があります。
そして、その現実の世界を基に作られる仮想世界です。
そして、その仮想世界を認識する意識です。
って、これ、間違いなんです。
そうじゃないですよ。
どこが間違いか、わかりますか。
それは、スタートです。
最初にあるのは、現実世界じゃないんです。
ここを間違うから、今まで、上手くいかなかったんです。
このモデルの最も基本的な構造は何でしょう。
最低限の構造で、今も続いてる構造です。
それは、意識と仮想世界です。
もっと言います。
認識する側と、認識される側です。
まず最初に起こるのは、この分離なんです。
認識する側が意識です。
認識される側が仮想世界です。
意識が、仮想世界を認識するってとこから始まるんです。
これは、最後まで、絶対に変わりません。
つぎは、仮想世界です。
仮想世界を創る材料が、最初、混沌としてあるわけです。
仮想世界は入れ物と、そこに入るものでできてます。
たとえば、入れ物が3次元世界だとすると、そこに入る物は3Dオブジェクトとなるわけです。
赤ちゃんは、見たり、手で触ったりしながら、仮想世界を創り上げていくわけです。
ハイハイすることで床を認識して、それを3次元世界に創り上げるわけです。
ぬいぐるみを触って、ぬいぐるみのオブジェクトを創るわけです。
赤ちゃんが、どうやって世界を認識するかについては、第68回~第73回「赤ちゃんが獲得したもの①~⑤」を参考にしてください。
とにかく、最も重要なのは、認識する物とされるものが分離したってことです。
ここからスタートしたから、世界を認識する自分って感覚を持てるんです。
世界から自分を分離して認識できるんです。
それじゃ、逆に、そうじゃない生物って、どうなってるんでしょう。
現実世界に反応して動く生き物です。
エサを見つけたら食べて、天敵が来たら逃げて。
世界に反応してるだけです。
それって、世界の中に自分が組み込まれてるんです。
世界と自分が分離してないんです。
分かります?
世界に反応してるだけですよ。
風に揺れる葉っぱと同じですよ。
自分の意志で動いてるわけじゃないんですよ。
世界に動かされてるだけなんですよ。
現実世界に反応するように作ったら、意識は生まれないんですよ。
自由意志は持てないんですよ。
自由意志をもった意識を持つには、最初が肝心なんです。
重要なんで、もう一度言いますよ。
現実世界を認識する前に、認識する物と、認識されるものを、先に創るわけです。
認識する物が意識。
認識されるものが仮想世界。
現実世界が出てくるのは、その後なんです。
あとは、仮想世界を現実世界に近づけていくんです。
意識が認識できるのは、あくまでも、仮想世界です。
仮想世界を通してしか、現実世界は認識できないんです。
僕らが直接感じてるのは仮想世界なんですよ。
仮想世界が本物なんですよ。
現実世界なんか、永久に直接感じることはできないんです。
このこと、絶対忘れないでくださいよ。
これが、今回、一番、言いたいことです。
これが、心のモデルの絶対不変の基本構造です。
意識のセントラルドグマです。
この基本構造の上に、細かい要素が追加されて、会話ができる人間の心が完成するわけです。
そして、それを解明していくのが、ロボマインド・プロジェクトです。
ロボマインド・プロジェクト、よかったら、応援してください(チャンネル登録お願いします)
それでは、次回は、基本構造に追加される、最も重要な要素について、説明していきますね。
それでは、次回も、お楽しみに!