第90回 意識の数学モデル


ロボマインド・プロジェクト、第90弾!
こんにちは、ロボマインドの田方です。

前回、意識の始まりについて考えました。
今回は、それをさらに推し進めて、意識の数学モデルまで考えようと思っています。

って、また、大きなことを言ってしまいましたねぇ。
さて、どうなるんでしょう。

それでは、始めます。
意識は、進化の過程で獲得したものです。
だから、進化的に古い生物には意識がありません。
たとえば、カエルとかです。
でも、意識がなくても、生物は生きて行くことができます。
エサを見つければ食べて、敵が来たら逃げるってプログラムがあれば生きて行けます。
これは、無意識のプログラムです。

そんな生物の脳の中に、あるとき、新しいプログラムが生まれました。
プログラムといっても、何万個っていう要素が集まってるものです。
一つ一つの要素は、様々なデータを持てて、要素同士繋がったり、離れたりできます。
でも、まだ混沌としてて、形がありません。

それらの要素が、少しずつ、動き始めました。
感覚器からの情報を基に動き始めました。
たとえば、眼からの外の世界の情報です。

外は、3次元空間です。
3次元空間の位置情報が要素のデータに割り当てられていきます。
すると、要素によって外の世界が創られていきます。
これを仮想世界と呼ぶことにします。

仮想世界は、外の世界を映しとったものなので、椅子とか机といった形がうまれてきました。
椅子や机は、現実世界では、それぞれが一つの塊で、まとまってます。
なので、仮想世界でも椅子の塊、机の塊となるように繋がっていきます。
これが椅子オブジェクト、机オブジェクトとなります。
こうやって、仮想世界は、3次元空間にオブジェクトが配置された形で作られていきます。

つぎに、仮想世界を認識するプログラムが生まれました。
認識するとは、オブジェクトと、その位置などのデータを自由に取得できるということです。
この仮想世界を認識するプログラムを「意識」と呼ぶことにします。

意識は、仮想世界が外の世界を真似て創られてニセモノだとは思っていません。
仮想世界が、世界そのものだと思っています。

こうやって、意識は、仮想世界を通して外の世界を認識するようになりました。
さらに、意識は、自分の体を制御することもできます。
意識は、仮想世界を通して現実世界を認識して、自分の体を動かすわけです。
これが、意識の始まりです。

さて、こんな意識を持った生き物。
無意識だけで生きている生物と、いったい、何が違うんでしょう?
それは、世界との関わり方です。

無意識で生きている生物はカエルです。
カエルは、目で見た光景に反応しているだけです。
黒い点が動けば、虫と思って食べようとします。
特定のパターンの動きに反応して、勝手に体が動きます。

たとえ、それがスマホのアプリだったとしても、虫のパターンと認識すれば、勝手に動きます。

食べれないとわかると、やめればいいと思うんですけど、いつまでも続けます。

なぜかというと、世界をパターンで認識して、そのパターンに行動が直接、結びついているからです。
このパターンなら、エサだから、食べるとか。
このパターンなら、天敵だから、逃げるとか。

ライントレーサーってマイコンロボットがあります。(動画)
床に描かれたラインに沿って走る車です。
ライントレーサーは、ラインからずれたとセンサーで判断したら、真ん中に戻るように制御しながら走ります。
さて、このライントレーサー、自分が床に描かれたラインに沿って走る車だと、認識してるでしょうか?

それは、してません。
世界が3次元空間だとか、自分は3次元空間の中を動いてる車だとか、そんな高度な認識はできないです。

ライントレーサーは、何も考えてないんです。
ただ、センサーのからのパターンがこうなったら、ハンドルをこう切るってだけです。
センサーからのパターンとハンドルの動かし方の関係が決まってるだけです。

世界のパターンと、そのパターンに対する自分の動き。
これが、無意識が世界に対する関わり方です。
これが無意識で生きてる生物です。

それじゃぁ、意識を持つと、どうなるのでしょう。
意識は、仮想世界を通して世界を認識します。
仮想世界は、3次元空間と、それに含まれるオブジェクトからなります。
3次元空間に、机や椅子といったいろんなオブジェクトがあります。

3次元空間が世界全体です。
オブジェクトは位置情報を持ってるので、意識は、どの位置に机があって、どの位置に椅子があってって認識できます。
世界に存在するものを、位置という関係性で把握してるわけです。

意識が認識できるのは3次元世界だけじゃありません。
時間世界を考えてみましょう。
時間は過去から未来へ流れる1次元です。
時間世界には、今日とか、昨日とか、明日といったオブジェクトがあるわけです。
今日を基準にすれば、昨日は過去で、明日は未来です。
時間世界に含まれるものは、過去か未来といった時間の関係で捉えるわけです。

3次元世界のオブジェクトは、位置の関係で捉えてましたよね。
時間世界は、オブジェクトは、時間の関係で捉えてます。
共通点は何でしょう。
それは、世界とオブジェクトを、関係性で捉えるということです。
XYZの座標軸とか、時間軸といった関係を表す軸です。
何らかの関係を表す軸を使って、その世界全体を見渡したり、特定の部分を注目できたりできます。
意識は、世界を全体と部分の関係で捉えることができるわけです。
これが、意識の世界へのかかわり方です。

無意識の世界のかかわり方は何でしたか。
世界のパターンと、行動でしたよね。

全然違いますよね。
もう一つ、重要な違いがあります。
それは、意識が世界を認識しても、行動に結びついていません。

行動しないってことじゃないですよ。
世界の認識と、行動とが直接結びついてないだけです。
世界を認識してから、必要に応じて行動するわけです。

意識は、世界を自由に認識できます。
ある部分を認識したり、全体を認識したり。

部分的にみて、虫がいると判断して食べようとしても、食べれないとわかったとします。
そこで、全体を見ます。
すると、どうやらスマホの中で動いてる虫だとわかるわけです。
スマホっていうオブジェクトがあって、その中で動く虫は食べれないって、学習するわけです。

こうやって、学習できるわけです。
これができるのも、部分を見たり、全体を見たりと、世界を自由に認識できるからです。
そして、意識は、認識と行動とを自由に繋げたり、切り離したりできます。
これが学習です。

無意識は、パターンと行動で世界に関わっています。
だからといって、学習できないわけじゃないです。
ただ、学習するとしても、世界をパターンとして認識してるので、出来ることと言えば、認識するパターンを微調整するぐらいです。
スマホとか、根本的に違うものが出現したら対応できません。

意識が認識する仮想世界は、現実世界と同じ3次元空間で作られています。
だから、部分を見て間違ったら、全体から見直すこともできます。
すると、スマホのように、想定してないものが出現しても対応できるわけです。
これは、現実世界を正しく認識してるから可能となったといってもいいです。

さて、こっからが、今回の本題です。
人間と同じような知性を持ったロボットを作るにはどうしたらいいかって研究が世界中で行われています。
人がプログラムを書いてロボットを動かしたんじゃ、いつまで経っても、人間の知性はうまれないってことは分かってきました。

そこで、何もない状態から、ロボットを成長させようって研究が行われています。
赤ちゃんは、何も知らない状態から世界を認識して、人間らしくなるんだから、赤ちゃんと同じように、何もない状態から成長させようってわけです。
カメラで捉えて、自分で学習して、椅子だとか、机だとか認識させようってことです。

このアプローチは、おそらく間違いないと思います。
ただ、気を付けないといけないのは、その、根本となるプログラムです。

カメラで捉えた映像を学習させただけじゃ、世界をパターンで認識してしまいます。
認識したものと正しい行動とを学習させれば、パターンに反応するロボットになります。
これじゃぁ、無意識で動くロボットになってしまいます。
カエルのようなロボットはできても、人間のような意識にはなりません。

意識を生み出そうとするなら、いきなり現実世界を認識したらだめなんです。
現実世界を認識する、その前の準備が重要なんですよ。

世界は、全体と部分の関係で成り立ってると。
そういう形で認識する意識を、まず、最初に作るわけです。
全体と部分でできた仮想世界です。

現実世界はその後です。
カメラでとらえた現実世界から仮想世界を作るわけです。
意識は、この仮想世界を通して現実世界を認識するわけです。

何万、何十万って要素があって、カメラからのデータを基に仮想世界を作り上げていくわけです。
ちょっと考えただけでも、このプログラムを作るの、かなり大変そうですよねぇ。
たぶん、その数学モデルとかも考えないといけない気がします。
そんなの、ぜったい、僕には無理です。

だから、僕は、その一番大変な部分は横着することにしました。
要素が自動計算して仮想世界を作るんじゃなくて、仮想世界は僕が創ることにしました。
3DCGで仮想世界を作ることにしました。

ロボマインド・プロジェクトの目的は、意味を理解して、自然な会話ができるAIを創ることです。
だから、その過程は省略したわけです。
でも、意識の一番核となるのは、その省略したところにあるのは間違いないです。
そこは、僕より、もっともっと頭のいい人に任せることにします。

僕は、ちょとズルをして、その先の言葉の世界に行こうと思ってます。
でも、開発は省略しても、考えることは、続けて行きますよ。
次回も、省略した部分を、考えていこうと思っています。

よかったら、チャンネル登録、お願いしますね。
それでは、次回も、お楽しみに!