ロボマインド・プロジェクト、第91弾!
こんにちは、ロボマインドの田方です。
今のAIブームの主流は機械学習です。
脳の中で機械学習が行われてるのは間違いないです。
そこで今回は、ゼロから意識が発生するまでを、機械学習で説明してみます。
まず、生物の目的は、長生きすることと、子孫を残すことです。
天敵から逃れて、食糧を確保して、繁殖するわけです。
これらができるように、環境に少しずつ適応していくわけです。
天敵から逃げ遅れると、殺されて死んでしまいます。
エサを見つけれないと、飢え死にしてしまいます。
そうならないように、学習するわけです。
素早く逃げたり、素早くエサを捕まえたり。
さて、これを機械学習で実現していきましょう。
機械学習で必要なのは、大量のデータと、正解です。
たとえば、手書き数字を認識する場合には、大量の手書き数字の画像と、そらが1か2かといった正解データです。
縦一本の線なら1とかって、パターンを学習していくわけです。
これと同じことを生物はやるわけです。
たとえば、カエルがハエを取る場合です。
目の前にハエが飛んでたら、それに向けて舌を伸ばすわけです。
でも、最初は、うまくいかないです。
そこで、ちょっとずつ、タイミングを変えたりします。
そしたら、あるとき、上手く捕まえることができました。
それは、ハエが、どっかに止まった瞬間でした。
つぎから、ハエの動きが止まった瞬間を狙うことで、ハエを捕まえる確率が格段に向上するってわけです。
これ、まさに、機械学習そのものです。
何度も試して、成功したときに報酬を与えることで学習するわけです。
何を学習するかというと、ハエの動きに対する舌を伸ばすタイミングです。
ハエの動きのパターンと、自分の行動です。
特定のパターンを認識したとき、自分はどう動くかを学習したわけです。
ブロック崩しとか、テニスゲームみたいなゲームを機械学習で攻略したってAIがありますけど、これも同じですね。
こうやって、機械学習を使って環境に適応するわけです。
でも、カエルにもゲーム攻略AIにも、意識はありません。
機械学習じゃ、意識は生まれないんでしょうか?
もう少し考えていきましょう。
おそらく、カエルがハエを取る方法は、生まれたときから決まっています。
ハエの動きを見て舌を出すってことは、遺伝子レベルで決まっているわけです。
調整できるのは、動くタイミングだけです。
全く違うハエの取り方を編み出すなんて無理なんです。
たとえば、わなを仕掛けてハエをとるなんて、そんなカエル、見たことないですよね。
でも、人間は、いろんな方法を考えつきます。
じゃぁ、全く違う方法を考えつくには、どうすればいいでしょう?
世界に対して、いろんな方法を試せないとダメです。
そのためには、世界そのものを認識する必要がありますよね。
一部だけみていてはだめです。
全体を見渡したりできないといけません。
ところがですよ、例えば人間の目がはっきりと見える範囲は、角度にして1度ぐらいだそうです。
手を伸ばしたときの、親指の爪の大きさぐらいしか、はっきり見えないそうです。
これじゃぁ、とても、世界全体を認識することはできないですよね。
そこで採った方法が、頭の中に世界を創るって方法です。
頭の中に世界を創ってしまえば、全体を見たり、一部を拡大して見たり、自由に見れますよね。
それじゃぁ、どうやって頭の中に世界を作ったらいいでしょう?
それは、頭の中に3次元空間を作って、その中に、目で見た世界を、仮想世界として組み立てていきます。
眼の網膜からの映像は、色のついた点々です。
その点々を、頭の中の3次元空間に配置して仮想世界を組み立てるわけです。
頭の中に組み立てた仮想世界なら、全体を見ることができますよね。
それでは具体的にやってみましょう。
たとえば、目の前に壁が見えたとしましょ。
見た通りになるように、点々を3次元空間に配置するわけです。
でも、距離が正確には分からないので、見た通りになるように適当に置きます。
つぎに、手を伸ばして実際に壁を触ってみると、実際の距離がわかります。
そこで、点の位置を正しい位置に調整するわけです。
これを何度も繰り返すことで、だんだん、見ただけで、ほぼ正確に仮想世界を組み立てれるようになります。
これ、まさに機械学習です。
それじゃぁ、さっきのカエルとの違いはなんでしょう?
それは、目的が仮想世界だということです。
現実世界とそっくり同じ世界を創ることを目的に学習させたわけです。
目で見た距離と、実際の距離が一致するように報酬を設定して機械学習させたわけです。
学習するのは、距離だけでなく、硬さや手触りといったものまで含めます。
そうすれば、見ただけで、硬さや手触りまで分かるようになります。
そして、それをやってるのが人間の赤ちゃんです。
生まれたばかりの赤ちゃんは、まだ、現実世界を知りません。
見るもの、全て触ろうとします。
時には、口に入れたりします。
これ、何をしてるかというと、頭の中に仮想世界を創ってるわけです。
こうやって、現実世界を認識するわけです。
赤ちゃんの話については、第68回~第73回「赤ちゃんが獲得した物①~⑤」も参考にしてください。
さて、カエルと人間の赤ちゃん、どちらも機械学習をしています。
でも、人間には意識があって、カエルには意識がありません。
違いは何でしょう?
それは、学習する目的です。
カエルは、外の世界に対して、最適に動くことを目的にしてます。
赤ちゃんは、外の世界そっくりの仮想世界を頭の中に創ることを目的にしてます。
これを、図に表してみます。(ホワイトボード)
こっちが、カエルで、こっちが赤ちゃんです。
カエルは、現実世界に対する自分の行動が最適となるように学習するわけです。
このループで機械学習が行われるわけです。
赤ちゃんの場合、現実世界と仮想世界が一致するように、このループで機械学習が行われるわけです。
自分の身体も、この仮想世界にあるわけです。
そして、その身体を動かすのが意識です。
さて、この図から、何が読み取れるでしょう?
それは、現実世界と、自分の行動を最適化するように機械学習してちゃ、意識は生まれないってことです。
なぜ、意識が生まれないんでしょう?
それは、自分の行動を、現実世界に最適化するようにしているからです。
もっと言えば、自分が世界に組み込まれているわけです。
自分が世界と一体になってるといってもいいです。
これって、どういう事かというと、自分の意志、自由意志で動けないってことです。
世界に合わせて行動してるだけなんです。
でも、生物の基本的な機能は達成できます。
エサを取ったり、天敵から逃げれるようになります。
でも、それだけです。
意識は生まれません。
それが、こっちのループだと、仮想世界が生まれます。
機械学習で最適化されるのは仮想世界です。
つまり、仮想世界は現実世界と一体となってるわけです。
そして、意識は仮想世界を認識します。
自分が創った仮想世界なので、全体を見ることもできます。
そして、その仮想世界に自分の身体が含まれるわけです。
意識は、自分の身体は自由に動かすことができます。
つまり、自由意志で自分の身体を動かすことができるわけです。
なぜ、カエルに出来なかったことができたのでしょう?
それは、こっちは、仮想世界を機械学習させてるからです。
つまり、現実世界と一体となってるのは仮想世界です。
自分の行動は、現実世界と切り離されてるわけです。
カエルのように、現実世界に反応して、勝手に体が動くってわけじゃないんです。
たとえば、犬は、目の前にエサがあると、すぐに食べようとします。
でも、しつければマテとヨシを理解できます。
マテと言われれば、食べるのを待って、ヨシといわれてから食べるようになります。
これができるのは、意識は、仮想世界を認識して、新しい状況に対して、全く新しい行動に変更できるからです。
現実世界に対する行動が決まってるカエルは、どんなにしつけても、マテとヨシができるようにはなりません。
意識がどうやって生まれたか、これでわかったでしょうか?
AIブームの今、機械学習は世界中で行われています。
人間と同じようにロボットを機械学習させて、人間と同じような意識を生み出そうとしてる研究もあります。
でも、今回の話を聞いて分かりましたよね。
現実世界に対する動作を機械学習させても意識は生まれないんですよ。
現実の環境に上手く対応して、上手に歩いたり、走ったりできるロボットはできるかもしれません。
でも、できるのはそこまでです。
その延長線上では、意識は生まれないんです。
今のAIを、次に進化させるヒントは、ここにあるんです。
次回は、この次のAIについて、もっと掘り下げて考えていこうと思います。
それでは、次回も、お楽しみに!