第97回 AI×人間 〜知性の誕生


ロボマインド・プロジェクト、第97弾!
こんにちは、ロボマインドの田方です。

今、見えてる現実世界は、頭の中に創った仮想世界って話を、ずっとしてきました。
詳しくは、第21回「意識の仮想世界仮説」を見ておいてください。

今までは、どちらかと言うと、現実世界をどれだけ忠実に再現してるかって話をしてきました。
これは、基礎レベル、低位のレベルの話になります。

今回は、もう少し上のレベルの話をしていこうと思います。
上位レベル、思考のレベルの話になります。

人は、どうやって考えるのか。
現実世界にある物から出発して、どうやって抽象的なことを考えれるようになるのか。
考えたら不思議ですよね。
人間の知性がどうやって生まれたかについて考えてみようと思います。

それでは、始めます。
第92回「ついに繋がった!!精神と物質」で、頭の中の仮想世界がどうやって作られるのかって話をしました。
頭の外の世界は、3次元の現実世界です。
それを見る目は、画像センサーと同じです。
画像センサーは、色のついた点々で外の世界を捉えます。

次に、頭の中に、3次元空間を作ります。
そして、眼からの点々を3次元空間に配置して、外の世界とそっくりの世界を頭の中に創り上げるわけです。
机や椅子がある世界を創り上げるわけです。
どうやって作ったかって言うと、点々を繋げて、このまとまりが机、このまとまりが椅子って作って行ったわけです。

そして、今度は、それに、机とか椅子って名前を付けました。
名前を付けて、記号化したわけです。

ここなんです。
重要なのは。
まとめるて一つの物を創ったこと。
そして、それに名前を付けたこと。
この二つが重要なんです。

意識が認識できるのは仮想世界にある物です。
最初は点々だけです。
点々は、位置とか色の情報を持ってます。
ただ、点々を認識してるだけじゃ、何が何だかわからないですよね。
肝心のことが見えてこないんです。
そこで、それをまとめて、机とか椅子って分けて、名前をつけるわけです。
そうしたら、あぁ、この部屋には、机と椅子があるなぁってわかりますよね。
一つ上のレベルで認識できるわけです。

記号化することで、意識は、点々の事は忘れます。
机とか椅子のレベルで認識できます。
すると、机を動かそうとか、椅子に座ろうとかって考えることができるわけです。

机を右に動かそうって考えるとき、机のこの点とこの点を右に動かそうとかって考えませんよね。
そんな、下のレベルの話は、自動で計算できるので、無意識に任せればいいわけです。
意識は、その上のレベルのことを考えるわけです。

今度は、オブジェクトとして考えてみましょう。
オブジェクトっていうのは、プログラム用語で、直訳すれば「物」となります。
オブジェクトは、属性を表すプロパティと、動作を表すメソッドを持ってます。

最初の点々オブジェクトは、色とか位置っていうプロパティを持っているわけです。
それから、移動するってメソッドも持っているわけです。

さて、点々オブジェクトがまとまって机オブジェクト、椅子オブジェクトとなりました。
机オブジェクトも椅子オブジェクトも、点々でできてるので、色とか位置、移動するってメソッドをもってるわけです。

それから、椅子オブジェクトは、人が椅子に座ることができますよね。
つまり、座るメソッドを持ってるとも言えます。
机オブジェクトなら、机で何か書くことができますよね。
だから、「書く」ってメソッドを持てるわけです。

これ、点々で認識してたら、絶対出てこないことですよね。
つまり、レベルを1段上げることで、意識は、上の段階で考えることができるようになるわけです。

これは一種の抽象化とも言えます。
もう少し考えてみましょう。

子どもは、お母さんに、これが椅子よって教えられます。
そうやって、自分が座ってる物が「椅子」っていう事を学習します。
別の日に、ほかの人が、別の椅子を指して、椅子って言ってるのを見たとします。
そういう事を経験して、椅子って言うのは、いつも、自分が座っている物を指してるわけじゃないって理解します。
どうやら、腰かけるもののことを、椅子って言うらしいって理解するわけです。

これも同じですよね。
よく似た物をまとめて扱うわけです。
形は違っても、同じ種類のものをまとめる機能があるようです。
これは、抽象化とか、概念化と言っていいと思います。

次は、机や椅子をまとめてみましょう。
机や椅子をまとめるとしたら、何て言うでしょう。
家具ですよね。
家具概念となるわけです。
家具概念の下に、机と椅子があるわけです。

名前を付けて、記号化すること。
記号化したものをまとめて、一段、上のレベルで認識すること。
これは、人間の知性の一つと言えますよね。

こうやって、言葉は概念でまとめることができます。
じつは、ロボマインド・プロジェクトで最初に取り組んだことが、こういった概念の整理です。
概念をツリー状に表現できる仕組みを作ったんです。
それでは、それをお見せしましょう。

これです。
これが概念ツリーです。
今、椅子概念まで展開してる状態です。
椅子概念は、家具概念の下にあります。
家具概念の下には、机概念や椅子概念があるわけです。
そして、椅子概念に含まれる単語は、こっちに書いますけど、「椅子」や「ソファ」や「ベンチ」です。

家具概念の上を見てみると、人工物概念です。
人工物概念の下には、家具概念以外にも、楽器や、医薬品といった様々な概念があるわけです。
人工物の親概念は無生物です。
無生物と同じ並びには、生物や場所って概念があるわけです。
こうやって、親子関係の概念で整理できるわけです。

概念関係は、親概念の持っている性質は子概念も持つわけです。
たとえば、生物の子概念には「動く生き物」と「植物」があります。
どちらも、生物なので、「生きてる」って状態と「死んでる」って状態があるわけです。
これは、無生物にはない状態です。
こうやって、親子関係で整理することができるわけです。

それから、家具概念以下には、机や椅子以外にも、棚や箪笥って概念がありますよね。
この棚や箪笥って概念には【親】ってついてますけど、これは、親概念が複数あるって意味です。

試しに、棚概念の親を確認してみましょう。
棚をクリックします。
左に、棚の親の概念ツリーが表示されます。
棚の親概念は、家具概念と収納具概念となるわけです。
棚って、家具っていう意味もあるし、収納具っていう意味もあるわけです。

こうやって、概念で整理することで、物事を、いろんな側面から見ることができます。
食器棚は、家具としてみれば、冷蔵庫の隣に置こうかとかって、部屋に配置するものとして考えれます。
収納具としてみれば、お皿はどの棚に入れようか、コップはどの棚に入れようかって考えるわけです。
同じものを見ても、いろんな見方ができるわけです。

こうやって、ものごとを概念体系で整理するのは人間だけです。
これこそ、まさに、知性です。
さて、それでは、なぜ、こんな風にものごとを整理できたのでしょう?

それは、同じ種類のものをまとめて、さらに記号化したからです。
まとめて記号化することで、一つ上のレベルで思考できるようになったわけです。
さらに、記号化したものを複数まとめて記号化することで、さらに上のレベルでまとめることができるようになるわけです。

まとめて記号化する。
この機能の獲得で、人間は、ものごとを抽象化して考えることができるようになったんです。
現実世界にあるもの、その物を扱うんじゃなくて、その物の性質や概念を抽出して、一つ上のレベルで思考できるようになったわけです。

人類は、抽象化能力を獲得することで、他の動物では持ち得ない知性を獲得したと言えます。
今回は、知性の中でも、概念を使った整理の仕方について解説しました。
次回は、概念とは別の方法での整理の仕方について解説しようと思います。

それでは、次回もお楽しみに!